金を払うから素手で殴らせてくれないか?

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 389
レビュー : 60
  • Amazon.co.jp ・本 (178ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062188197

作品紹介・あらすじ

「おい鈴木、米原正和を捜しに行くぞ」とその米原正和が言った──。失踪した米原正和の行方を、当の米原とともに追う鈴木。会社を休んで、米原の自宅、立ち寄り先を米原をともに捜す。果たして、米原は見つかるのか?

感想・レビュー・書評

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  • ポストモダンと悪ふざけは区別がつかない。
    いや、ポストモダンって悪ふざけなのかもしれない。
    「第三の警官」(http://booklog.jp/item/1/4560071888)「V」(http://booklog.jp/item/1/4105372076)(トカゲがでないほうね)も悪ふざけだし・・・。
    電子書籍の千円分の無料チケットがあったので、名前がひっかかってた木下古栗(ふるくり)の最新刊を読んだわけだが、これがプロットもなにもなく、ころがるだけの即興詩のような勢いで、ぎりぎりセーフなところに位置する「危ない」小説で、面白い、面白くないという次元でなく、あれ?なんでこんなの読んでいるんだろう、しかもスマホで、指先をスライドさせながら?、と電車の中でふと降り過ごして、まあ、次の駅で降りればいいや、と思うと、その駅のホームが改札を出なきゃ、反対側のホームに行けず、駅員に「木下古栗を読んでて降りそこないました」と正直には言わず、「すみません、ちょっと・・・・」とごにょぎょとごまかすと、駅員は興味なさそうに改札を通してくれて、え?地上にでなきゃいけないの、と階段を上ると、あーこの風景観たことある、車でよく通る場所だと、パッと東京の地図がつながった気がして、ちょっとうれしくなったのも、古栗さんのおかげ、と思う1月の東京。
    どこにつながるかわからない不安になる古栗の小説がきっとポストモダンとつながっているような気がする。
    もしかいしら、すごい作家なのかもしれない、と眉に唾をつけながら思う。

  • じわじわ名前を聞いていながらも、なかなか手に取る機会がなかったので、この際、勢いで読んでみた。それにしてもタイトル上手すぎ。どんなシチュエーションなのかわくわくしてしまう。

    表題作を含む中編3編。それぞれの書き出しから速球ぎみの変化球なので、「おっ?」と読み進むと、ストーリー構成とかまるで考えてなくて、単に思いつきだけで進行させてるんじゃないかと思うくらいに、進行が一筋縄ではいかない。「ええっ、そこ行きますかあっ?」という進行の転換が、なにしろ素っ頓狂で素晴らしい。ぽんぽん話題が飛ぶ女子のトークを聞いている感じというか、ジャンピングロジックで、メインの話題がどんどんすり替わっていく。

    『IT業界 心の闇』は、心の闇どころの話じゃない、闇鍋ぎみの驚愕の進行と結末でびっくりするのだが、個人的には『Tシャツ』が好み。ふらりと来日した怪しいアメリカ人と周囲の人々の交流が、哀愁とハートウォーミング感を漂わせるかと思えば、なんだこれ。まち子さんの数ページにわたるご乱行っぷりが素晴らしく、なんか宇宙の真理に力ずくで持っていく感じもワンダホーである。表題作の『金を払うから素手で殴らせてくれないか?』は、意外と技巧的で、「これがメタフィクションというやつか」というのが、わりと素直にわかる(自分がつい最近つかんだだけかもしれないけど)。タイトルの台詞が効いてくるタイミングと、意外な社会正義感に持っていくところが、「へ?」と思いつつ、なんとなく納得するような気もするし。

    この「へ?」という展開で引っぱられる感じは、よく考えたら、円城塔さんの『後藤さんのこと』を読んでる感じに似ている。たぶん、小説には、メインストーリーや伏線といった道具立てを楽しむものと、文体を楽しむものがあるんだと思う。テキスタイルでいえば、織り出される模様の美しさを楽しむか、織りの技巧そのものを楽しむかの区別みたいな。この本は明らかに後者。筒井康隆さんの『ダンシング・ヴァニティ』や、松田青子さんの『スタッキング可能』がお好きなかたは、楽しめるんじゃないかと思う。作品に振り回されて、最後に「なんじゃこりゃあ」と半笑いでつぶやきたいかたには、熱烈におすすめいたします。

  • やばい…この人はやばい……小説を読んで「やばい」しか感想がない、ってなかなかないことだけど、しかしやばい。
    前から「頭のおかしそうな人いるな」と思って気にはなっていたのですが、やっと読みました。結果、樋口毅宏からかっこよさを抜いたかんじというか。舞城王太郎からさわやかさを抜いたかんじというか。会田誠の再来というか(まだ生きてます)。
    まちがいなく馬鹿なんだけど、これこそが文学かも。とかいって違うかも。ただ、すごいくだらないことを書いてるのに上品なかんじがするのが見どころかなと思う。
    友達が「こんなの書いた」と言ってもしこれを持ってきたなら「うん、いつか大物になる気がする!でもちょっと、店におけるかどうかは…店長にきいてみないと…ちょっと場所がないかも…ちょっと今忙しいから…」って逃げたくなるような、でも友情を誇りたいような、捨てたいような、でも次の日なんか気になってゴミ箱から拾っちゃうような作品。
    いや、面白かったです。

  • 全国の書店員を苦笑させた「本屋大将」作家・木下古栗、その新刊。
    今作も全く人間性を感じさせない淡々とした描写を駆使して、IT社会に潜む闇、薄れ行く人々の繋がり、そして消費税増税という現代日本が直面する社会問題に、ギンギンに研ぎ澄まされた言葉のナイフでズカズカと斬り込んでくる。しかし斬り込むだけ斬り込んで切りっぱなしなので、こちらの傷口はもう、膿んで爛れてグッチャグチャである。

    前作から2年半、待った甲斐があったというもの。と言うか、早く全集とか出してくれ。消費税10%でも買うから(多分)。

  • 饒舌でめくるめく作品世界の毛布を纏える文体かと思えば、ジャン=リュック・ゴダールの編み出した「ジャンプカット」の手法を取り入れたかのような『Tシャツ』まで。読者は著者が描く物語の眩しすぎるほど荒々しく輝く断片を両の目に叩きつけられるように提示され、軽い盲状態に陥るかのよう。しかし目が慣れてきた後に眼前に広がる作品世界に驚きと喜びを持って受け入れるのだ。

    著者の持ち味である不条理な設定と現実の世界とは、もうあまり差異がないように思えてくる。木下古栗が作り出した世界の裂け目はすぐそこにあり、もはや我々読者は裂け目から向こう側へ移住している。救いようのない茫漠たる荒野が広がっていようとも、この本のこんな一文が乾いた希望を持たせてくれる。

    「どう生きたって結局は苦しいことしか残らない世の中、たとえ束の間の夢であれ、こんなに気持ちのいいことがある。これがあればどうにか絶望をごまかしごまかし、余生を全うできそうだ。」

    まだまだ木下古栗とは切っても切れそうにない生活が続きそうだ。

  • ランニングシャツのような爽快感があると聞いていたのだけど、わたしには正直よくわかりませんでした。でも未知の読書体験ができて楽しかったです。
    パースが狂ってるというより時間と空間を省略してる感じ。さっきまで遠くにいたのに瞬きした一瞬で目の前にあるっていうような。行間を読むとはいうが、行間にはぎっしりみっちり文字じゃない文字が詰め込まれているから読んでも通じないだけなのかも。

    ボロは着てても心は錦な人々の悲喜こもごも、まち子がまち子を推してくるまち子連打のまち子三昧のまち子尽くしな『Tシャツ』が好みでした。

  • 吹き出しそうになりながら読んだ。

  • 文学

  • なにこれ(笑)って感じかな。テレ東のドラマや鳥肌実を楽しく見れる人はきっと楽しい。真面目な人はダメかもしれない。でも、丁度いい感じだと思う。逆に。逆にとはいえいい感じで描けていると思う。どれもスッとグッと一気に読み通せた。とりあえず三作品楽しく読ませてもらったという感じ。

  • どの話もめちゃくちゃで常識を覆される。
    ・IT業界 心の闇
    IT業界で病んでいるエンジニアの話かと思ったらとんでもなく違う世界の話だった。わけがわからないよ。
    ・Tシャツ
    ハワードがたくさん出てくる。まず始めから状況がよく理解できず、数Pで読むのをやめた。
    ・金を払うから素手で殴らせてくれないか?
    失踪した、という体の米原が目の前にいるのに一緒に捜索するという話。
    最後の展開は( ゚д゚)ポカーン

    頭が疲れました。

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著者プロフィール

1981年、埼玉県生まれ。2006年、「無限のしもべ」で群像新人文学賞を受賞。10年、「いい女vs.いい女」で絲山賞を受賞。著書に『いい女vs.いい女』『金を払うから素手で殴らせてくれないか?』等。

「2016年 『グローバライズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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