スペードの3

  • 講談社 (2014年3月1日発売)
3.44
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784062188500

みんなの感想まとめ

複数の視点人物が織り成す物語が特徴的で、章ごとに異なる主人公たちの短編がゆるやかに繋がりながら、深いテーマを探求する作品です。読者はそれぞれのストーリーを楽しむ中で、登場人物たちの生き様や葛藤に共感し...

感想・レビュー・書評

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  • 朝井リョウの小説は、視点人物が次々に変わっていく特徴がある。

    章ごとの短編物語を楽しみながら、それがゆるやかに繋がっていく中で見つける新しい発見もあって、なんかミルフィーユみたいだ。幾重にも重なった物語の層をガブっとほおばる瞬間が心地よい。

    『スペードの3』には3人の主人公がいる。
    3つのストーリーをそれぞれに楽しみながら、気がつくと、総体としての物語の意味を考えている。
    そう、小説を読んでいるといつもやってくる、「この小説は何を描いているの?」って疑問だ。

    それは、歌劇団を経て落ちぶれた女優に成り果てたつかさのセリフによって導かれる。

    「やめないよ、私」

    朝井リョウはいつも、辞める人(多くの場合それは天才と呼ばれるべき人)を描きながら、諦めずにもがく平凡な人々の生き様を描く。

    醜くても笑われてもいいからとにかく続けること、変化を志すこと、一歩前へ進むこと、自分の殻を破ること、美しくなること、理想の自分を目指すこと。

    複数のキャラクターに「私」という一人称視点を与えるこの作家の技法は、モブや脇役に過ぎない平凡な人にもちゃんと「私」という自我があって、みんな手探りで「私」をまっとうしようと生きている、ということを教えてくれる。

    究極の人間讃歌だ。

    どうしても『桐島、部活辞めるってよ』とか『何者』とかの大傑作と比べると、見劣りがちにみえる些細な物語だけど、「えっ?こいつがあの人?」って仕掛けもあるし、あいかわらず思春期の機微を描くのが上手だし、オススメです!

  • 生徒会長、ピアノ伴奏者をやるよーな仕切り屋の少女、転校生がきてからそのリーダーの座が…。学生の時虐められコンプレックスがあった少女。卒業後ある女優のおっかけを通じて出会う。その華やかな女優の苦悩。それぞれのその後がきになる作品。

  • 正直微妙だなぁ。
    新鮮味がなかったし中途半端。
    表題作は良かったけれど残りの二編が無理やりっぽい感じもするし、やや出来も良くない。

    もちろん繊細な感情表現の巧さや、女性でしか分からないような表現、例えばトイレの場面などはさすがだなと唸るほど。

    でもちょっと主人公の美知代ちゃんを追い詰めすぎじゃない?ここまでするかなぁ。
    スクールカースト(この言葉嫌いだけど)について書く作家さんはたくさんいるけれど、もっとリアリティがあるような・・・。
    ちょっと今回は狙ってる感が強すぎるか。
    読んでて冷めちゃって感情移入まで行かず。
    ちょっと大人の女性を書くのは早かったのかも。

    いや多分もっと評価すべきだとは思います。
    でもなんせ期待度が高いので評価が辛くなってしまうのは致し方ない。
    若くして傑作を出しちゃうと後が大変ですね。

    と言いつつ、桐島を読んでない私。
    桐島もスクールカーストの話しらしいので読んでみないと。

    • 九月猫さん
      vilureefさん、こちらにもお邪魔します♪

      うん、うん。うなずきっぱなしです(笑)

      出来の良し悪しは、私は良いと思ったのです...
      vilureefさん、こちらにもお邪魔します♪

      うん、うん。うなずきっぱなしです(笑)

      出来の良し悪しは、私は良いと思ったのですが、
      vilureefさんと同じく、「狙ってる感」は拭えないですね。
      巧さが裏目に出ているというか。
      痛くて黒くて、怖かったけれど、感情移入できなかったのも同じです。

      「想像して、それを文章にする」というのはどの作家さんにとっても必要なことですが、
      朝井さんはその能力が特に長けているのではないかと思うんです。
      でも読んでいて「巧い」とか「達者」とか「長けている」と思った時点で、
      物語ではなく作家さんを見ている=ツクリモノであることを意識しちゃう。
      だから感情移入できずに冷めるんですよね。
      大人の女性を書くのは早かったかも、というところも同意です。
      しかも今回は、「女性」で自分より随分「年上」で「醜い心理」まで書いちゃうぞと
      一度にチャレンジしすぎたような気がします。

      って、長々と書いちゃいましたが、
      vilureefさんがおっしゃってる意味と違っていたらごめんなさい(汗)

      「桐島」ってスクールカーストのお話なんですか?!
      (あれ?向こうのコメントのお返事にも同じようなこと書いた気が(^^;) )
      2014/05/02
  • 3人の女性を主人公にした話。常に人より少し前に出ている事に優越感を抱く姿、コンプレックスだらけの姿、友人に対してわだかまりを持ってしまう姿。この物語のように極端ではないけれど、どれも自分にもある姿だなと感じた。主人公達以外の脇役もそれぞれ女性の嫌な部分が滲み出ていて、読んでいてげんなり。どの話も救いがなく重かった。色んな意味で怖い。怖くて痛い。
    宝塚を舞台にしたのかな?勿論、違うな~と思う部分もあったけれど、細かい描写がよく研究されてると感心した。

  • 痛い。闇い。黒い。読みながら何度思ったことか。

    優越感・劣等感・嫉妬・羨望・憧憬・嫌悪・軽侮……隠しておきたい感情・見せたくないし見たくない感情ばかり綴られる。

    『スペードの3』
    某歌劇団出身のミュージカル女優つかさ様のファンクラブを仕切る美知代の物語。
    子どもの頃から委員長タイプの彼女。感じていた優越感は「あのコ」の出現によって劣等感にすり替わり、焦燥と嫉妬に襲われる。昔も今も。
    ――いくら待っていても、革命は起きない。私から動かないと。

    『ハートの2』
    自分の容姿に劣等感を持つむつ美の物語。
    容姿のせいで自分に自信がなく、小学校でも中学校でも軽んじられていた彼女の踏み出した小さな一歩は呼び名を変えるところから。
    ――誰かのためなんて言い訳せずとも、自分のためでいいのだ。私は、私のために、よりよくなりたい。

    『ダイヤのエース』
    美知代、むつ美のあこがれの存在である、つかさ様の物語。
    舞踊学校の同期で女優の円(まどか)が引退するというニュースに、昔から彼女に抱いていた鬱屈した想いが頭の中でぐるぐる巡る。
    ――どうしていつもあの子だけ。私にはなんにもないのに。


    朝井さん作品を読むのはまだ2作目。作風もわかっていないけど、前回も今回も「達者な文章と端正な構成」と思う。
    それは、どんなに巧くてもツクリモノ=小説であることも実感させるけれど、勿体なさを感じるよりも、ほっとするのが正直なところ。
    リアルを超えたリアル。
    彼と同世代を描いた等身大の物語はその辺りどうなんだろう?ぜひ読んでみなければ。

    • 九月猫さん
      vilureefさん、こんばんは♪

      お返事遅くなってごめんなさい~っm(_ _)m

      「情熱大陸」観ました観ました!
      あれ観て、...
      vilureefさん、こんばんは♪

      お返事遅くなってごめんなさい~っm(_ _)m

      「情熱大陸」観ました観ました!
      あれ観て、朝井さんが「リョウくん」と呼びたくなる好青年だったので、
      「世界地図の下書き」を読もうと思ったんですよー(*^-^*)

      私はこの本が2作目なので、構成も巧いなと思ったのですが
      「何者」を先に読むと二番煎じに感じるんですね。
      先日お話しした読む順番の問題がここにも・・・!!
      「少女は卒業しない」は爽やか全開、っとφ(・ェ・o)~めもめも。
      朝井さん作品、この2作は読むことにします。
      全部追えるといいんですけれど、読むのが遅いので・・・(T_T)ムリっ
      なので、こうしていろいろと教えていただけるとありがたいです♪
      本当にいつもありがとうございます(*´з`)♡
      2014/05/08
    • 九月猫さん
      koshoujiさん、こんばんは♪

      コメントありがとうございます。
      お話させていただくのは「初めまして♪」ですよね。
      なのになのに...
      koshoujiさん、こんばんは♪

      コメントありがとうございます。
      お話させていただくのは「初めまして♪」ですよね。
      なのになのに、お返事遅くなってしまって、ごめんなさいっm(__)m

      朝井さん、文章と構成がとても巧いなぁと感じます。
      「世界地図の下書き」→「スペードの3」と読み、どちらも傾向が違う作品だったうえに、
      朝井さんのこれまでの作品と違うとか「こんなのも書くんだ?」という感想をよく見るので
      なんだか私にとってはまだ「つかみどころのない」作家さんです。
      でも、他にも読んでみたいと思う魅力ある作家さんでもあります。

      vilureefさんに、まろんさん。
      そして朝井さんファンのkoshoujiさんもおススメの「少女は卒業しない」は
      ぜったいに読もうと思います。
      おススメありがとうございますー♪
      2014/05/08
    • koshoujiさん
      九月猫さん、コメントありがとうございます。
      「少女は卒業しない」是非お読みください。
      ついでに「もう一度生まれる」と「星やどりの声」もお...
      九月猫さん、コメントありがとうございます。
      「少女は卒業しない」是非お読みください。
      ついでに「もう一度生まれる」と「星やどりの声」もお薦めです。
      もちろん「桐嶋、部活やめるってよ」もですが。
      結局全作品お薦めしてしまいますが(笑)
      でも、私にとっては、常に感動させてくれる若き天才作家です。
      2014/05/08
  • 舞台女優・つかさ様のファンクラブ運営幹部の美知代と、そのファンクラブに入会したつかさ様に似ている可愛らしいアキ、そしてそのつかさ様。
    こころにしっとりした暗闇を持っている女性たちを描いた作品です。
    美知代の章のタイトルである「スペードの3」は大富豪で唯一ジョーカーに勝てるカードです。アキの章は「ハートの2」でつかさは「ダイヤのエース」。彼女たちはそれぞれ自分の『切り札』を胸に秘めて生きている。自己承認欲求を満たすためのカードなんて必要?という朝井リョウからのメッセージでしょうか。

    それぞれの章は繋がっているけど、ストーリー自体は中途半端で終わってしまっていて消化不良で終わります。でも登場人物の承認欲求を見てザワザワ・チクチクするのが朝井リョウの楽しみ方。スッキリしたいわけじゃないのでおけ。

  • とある歌劇団がらみで、若い女性の生き方をめぐる連作集。
    「スペードの3」「ハートの2」「ダイヤのエース」の3編。

    「スペードの3」
    香北つかさのファンクラブは、つかさが歌劇団を卒業してもなお、「ファミリア」として続いていた。
    ファン達を仕切る美知代は、有名化粧品会社勤務と思われているが、実際は関連会社の事務。ファンクラブのリーダーとしてここでしか感じられない優越感にしがみついていた。
    子供の頃はそつのない学級委員だったが、ある日かわいくて才能もあるクラスメートにあっさり、その座を追われた過去があった。
    そしてここでもまた‥
    美知代の生き方が最初から破綻するだろうと思われて、意外性がないですね。
    学級委員が大人になればただの人、って普通だし。
    追い詰めるほうも、感じ悪く見えてしまう。
    展開に少々難あり、ってことかな。

    「ハートの2」
    地味で目立たない女の子だった明元むつ美。
    劇団のスター・香北つかさに憧れていた。
    演劇部では裏方の美術を務めて、重宝がられていた。
    それなりのやり甲斐もあったが、がんばって、変身することに‥?

    「ダイヤのエース」
    男役のスターだったつかさは、退団後、だんだん仕事が減ってきている。
    オーディションで演出家に「いつも優等生でリーダー的な存在だった恵まれた人間が、人の心を動かすことなんて出来るのか」と厳しい言葉を浴びせられ、答えられない。
    (え、本気で‥?そんなこと言う人間がいるのか)
    つかさの同期の沖乃原円(まどか)には、生い立ちにドラマチックな不幸があり、劇団受験の頃からテレビ番組に取り上げられていた。
    そんな円が引退することになり‥
    つかさも引退を妄想するが‥

    作家さんが恵まれた優等生であることに批判的な見方をされたことでもあるのかな?
    いやそんな‥ めちゃ変てこな面白い人じゃないですか。
    人間はみんな違いますからねえ!
    若くして有名になることもある意味、特異な不幸かも(苦笑)

    前に読んだんですが、登録もし忘れていたよう。
    登場人物が歌劇団のファンらしく感じられず、あまり好きになれなかったので、感想を書くのをためらったのです。
    ずっと読んでいる作家さんなので、一応、書いてみました。
    こういう作品もあったね、という若い作家さんの道筋をたどる気持ちで。

  • うーん、面白くないわけではないんだけど、なんていうか、こう...あんまり来ないんだよな。
    嫌な人じゃないのにすごく自分にとっては何もかも上手くいかなくなってしまうような存在に、振り回される姿は読んでいてちょっと辛い。
    いやいや悪くないんだけどね、朝井リョウくんの爽やかさは全くないね。

    演劇というモチーフを通して、自分を演じている3人の女性のお話です。
    学級委員で今もファン会員をまとめるリーダーの美千代、クラスの底辺的存在だったけど自分のために頑張って自分を変えたむつ美、特別な物語がない女優のつかさ。
    それぞれすごく頑張っていて、そんなに苦しまなくても大丈夫だよと肩をぽんと叩いてあげたくなるような子たちで、ハッピーエンドまでは行かないけど、最近の言い方なら「ありのままの」自分をちょっと見つけられた感じです。
    愛季ちゃんがどっちかっていうと計算高そうな印象だったんだけど、ふつうにすっごくいい子なのかしら。

    それにしても、何で朝井リョウくんを読んで「ああ、女って嫌だなー」って思わないといけないのか。

  • 相変わらず読みやすく、わかりやすい。

    一話目は何かにハマったオタクの物語ではなくて、そういう小さな世界を探して王様になろうとする人が、そんな自分の行き場の無さをちゃんと自覚する話。
    二話目は誰かの模倣でもいい、誰かのためという欺瞞を捨てて、自分のために、なりたい自分になろうと決意する話。
    三話目は、人を羨み嫉妬する自分を、なんの物語もないけれど努力はしてきた自分を、ちゃんと受け入れる話。

    朝井さんの目線はいつも優しいな、と思う。
    弱い人や流されやすい人はいても、どうしようもない悪人はいない。みんな自分なりに精一杯足掻きながら、間違えながら、生きているのだなと思う。

  • ------本文冒頭
    ファミリアは砂鉄に似ている。誰も、磁石の力に逆らうことはできない。

    ―――朝井リョウの表現について簡単に研究してみる。

    189P
    “たった四人だと、春休みの学校はこんなにも広い。”
    相対的なものの見方。
    同じ学校でも人が多ければ狭く感じるし、少なければ広く感じる。
    同じ気温でも、シチュエーションが異なれば、暑くも感じるし、寒くも感じる。
    もう一つ、これもそうだ。
    215P
    “からっぽの胃の中に、ぬるい水が落ちていく。満たされている感覚よりも、空白の部分が際立つ感覚のほうが強い。”
    満たされることよりも、空白になる感覚から物事を表現する。
    このような感覚の表現が新鮮で的確なのだ。
    彼の小説には、そういった表現が頻繁に使われる。
    これは天性の才能だろう。
    或いは、幼い頃から物理的な現象や心の中で思い描く感覚が人一倍鋭いのか。 

    研ぎ澄まされた五感から産まれ出てくる文字表現。
    現代作家の中でこれほど優れて心に染み入るような文字表現できる人間は数少ない。
    この作品でも、このような秀逸な表現が至る所で見られる。
    そして、まるで女性の内面を知り尽くしているかのような心情表現。
    これもまた、彼の天賦の才というべきものだろう。

    演劇界のスターと、それを取り巻くファンたちの姿。
    彼女たちはどんな理由で、どんな視点で、その位置を保っているのか?
    叙述ミステリーのような一面をも持ったこの作品のなかで、彼女たちは葛藤する。

    • 九月猫さん
      koshoujiさん、こんばんは♪

      先日は同作の私のレビューに花丸とコメントをありがとうございました。
      そちらにもお返事書いておりま...
      koshoujiさん、こんばんは♪

      先日は同作の私のレビューに花丸とコメントをありがとうございました。
      そちらにもお返事書いておりますが、おススメいただいた「少女は卒業しない」は
      近いうちに読もう!と決めました(*^-^*) 楽しみです♪

      研究風のレビュー、いいですね。
      215ページの表現は私も印象深かったです。
      この感覚は実際に何度も感じたことがあるのに、「空白」で表現することはなく……
      確かに新鮮ですね。

      朝井さんは、私にとってまだまだ未知の、でもなんだか惹かれる作家さんです。
      koshoujiさんの本棚には、朝井さんの他にも興味がありながら未読の作家さんも多く、
      選書とレビューを参考にさせていただきたいなと思います。
      ということで・・・フォローさせていただきました。
      どうぞよろしくお願いいたします(*- -)(*_ _)ぺこり。
      2014/05/08
  • 面白かった。
    感想見ると結構「暗い」とか「痛い」とかを多く見る。
    3編とも劣等感に付き纏われているからそう感じるのかもしれない。
    その割には読みやすくて、実際サクッと読めた。

    私はハートの2とダイヤのエースが好きだった。

    坂町先輩とどうなったんだろう?
    むつ美が綺麗になったことは、明らかだけど。

    つかさ様の気持ちもすごくわかる。
    自分は徒花にしかなれない。
    実力もある、注目もされてる。でも、徒花。
    あの子には勝てない。
    努力しても得られないものがある。
    ずるくなれる人間じゃない。
    劣等感しか生まれない。

    誰しも多少の劣等感があるはずだから、読みやすいのでは?

    しばらく経って気づいたけど、これファミリア内で革命が起きたのか。
    教室で強かった美知代と、弱かったむつ美。
    ファミリア内で強かった美知代が、新入りのアキによって立場を覆される。
    革命なんて起きないと言ったむつ美は自分の力で強くなり、革命を願ってた美知代は弱くなった。

  • 宝塚歌劇団をイメージモデルに、その周囲の女性3人を描いた群像劇。

    なんだかんだと、つい著者の作品はほとんど全部読んでしまっている私。本作はその中でも、私個人の評価としてはいまひとつのほうかも。

    乱暴に言ってしまうと、ハートフルなものと、人間心理の微妙なダークサイドを描いたものとに分かれる著者の作品だが、本作は後者。
    こういうタイプの作品は嫌いではないのだが、小技を効かせようとしすぎて散漫になってしまった印象が否めず、少々残念である。
    次回作に期待。

    どうでもいいことだけど…大富豪ってそんなルールだったっけ。忘れてる〜。

  • 作者は男性なのに、どうして女の嫉妬心が解るんだろう?
    特に思春期の外見に関するそれは、男性の理解を超えるものだろう。
    自分のイヤな所(むつ美で言うと癖毛)が受け入れられず、
    この世の終わりかというほど悩んでしまう。
    そして自分が欲しいものを持っている人が、羨ましくて妬ましい。
    あぁ、かつて通った道だと思う。
    むつ美の大変身は正直無理があると思ったが、
    この若さでこれだけ女性心理が描ける男性作家は、他にいないんじゃないかな。

    最後に、気になったことを一つ。
    「桐島」の時は美しいと感じた技巧的な比喩表現が、今回あまりに多過ぎて少々鼻白んだ。
    ピリッと印象に残るような、もう少し効果的な使い方があるのでは?

  • 朝井リョウはどんどん変化していく。
    でも、行間に埋め込まれた、赤ん坊の爪のような薄くて鋭い刃は健在なので、読み進めるに連れてどんどん細かい切り傷が増えていく。ヒリヒリと、痛くてたまらない。
    特別な場面はないのに、ずっとドキドキして、怖くてたまらなかった。
    「学級委員」の立場を守ろうとする心理。特別な物語を求める心理。「自分のため」を押し隠そうとする心理。
    どれもみな思い当たることばかりで、だからドキドキするんだろうと思う。

    「待っていても革命なんか起きない」という言葉がいちばんぐさっときた。誰も他人のためになんか、革命を起こさない。変えるのはいつも自分だ。
    ダークで、やりきれない物語の底に、そっと置かれた励まし。「そこにあるのは、そのときのその人自身」
    ぶるっと心が震える一節だった。

  • 朝井リョウさんは、女性の心情とか、女性特有の人間関係、嫉妬を含む友情みたいなものを自然に描かれる印象があるのですが、、

    この本も、まさに、という感じでした。

    3人の主人公は、それぞれ自分の劣等感と自分以外の誰かに向けた嫉妬心と葛藤しながら『ここにいていい理由』を見つけようとしています。

    自分の世界を守ることに必死だったり、
    新たな武器を身につけようとしたり、
    すべてをリセットしようとしたり、、

    必死にもがきながら、自分から動かないと意味がないことに気づいたり、何度失敗してもめげずに立ち上がったり、理由なんてなくてもいいのだと、ありのままの自分を受け入れられたりと苦しい中にも希望を見出していく、そんな物語でした。

    希望も、明確なものではなく、おぼろげで、『兆し』くらいのものだけど、それでも救いにはなるかな、と思います。

  • 「○○女子」と枕詞につく言葉は色々あるけれど、この話は紛れもなく、辞書的な意味での、女子の話。

    女子。女子学生の意味の「女子」。

    主人公は女性が3人。

    1話ごとに主人公が入れ替わる。

    学生時代のと現在の様子が一話の中で描かれる。

    朝井リョウさんの小説って、いつものっけから不穏で、ずっと暗い。

    朝井リョウさんのエッセイは頭からっぽで読める抱腹絶倒だから、小説とのテンションが、同じ人が本当に書いたのかなと思うほど。

    今回の『スペースの3』について。

    著者の朝井リョウさんは男性だけど、
    どうしてこんなに女子のこと分かるのだろう。学生のときの女子グループ、よく観察していたのだろうか。

    第1章の「スペードの3」ミュージカル女優のファンクラブのまとめ役の美知代の話。

    第1章が一番おもしろい。

    ちょっとした叙述トリックにまんまとひっかかる、チョロいな私は。
    どういう繋がりか分からなくて、最初からパラパラと読み返した。

    学生のとき、こういう美知代みたいな女はいた。

    小さな世界(クラス)を牛耳って、あたかも世界のリーダーは自分だ、みたいな顔をして、取り巻きまでいるような女。

    他の女子へのちょっとした優越感が心地よい。歪んだ感じ。
    朝井リョウさんの小説という感じ。


    第2章
    第1章にも登場した、地味で冴えないむつ美の話。

    この本の中で気持ちがよくわかるのはむつ美。

    第3章、第1章の美知代がファンクラブに入っていた、つかさの話。

    何か人生の転機になるような特別なエピソードなんて、きっとみんな後付けじゃない。

    第3章は朝井リョウさんの「何者」思い出した。何者かになった人も、ずっとずっともっと超越した何者になりたいのかもね。










  • よかった。
    それぞれが持つ切り札。いつ使うか、使えるようにするのかは自分次第だし、それでも覆せない最強カードがあるのも揺るがない事実。
    ダイヤの1がよかったですね。物語の主人公になるのはいつだってドラマを持った人だと思ってきたけど、こんな人が主人公になるの待ってた。

  • 途中の展開が、何となく辻村深月さんの「太陽の坐る場所」に似ている。

    小学校時代から始まる目に見えない序列や女同士の複雑な人間関係、黒いものが渦巻いていて朝井さんには珍しい感じのストーリーだと思った。

    章同士の絡みがもっとあると良かった。唐木田とのその後や、「アキ」が成長して容姿・オーラが何故つかさそっくりになったか、社会人になって性格を一変させた過程の記載があるかと思ったら無くて拍子抜けした。
    一気に読み進めたくなる本だけど、伏線だと思ってたものが回収されていなくて、読み終えた後しっくりこない感じ。

  • ちょっと期待外れかな〜。話しとしては面白いと思うけど、リアリティに欠ける感じが…。

    女性特有の少し癖がある仲間意識、連帯感、腹黒さは分かるんだけど、まだまだ粗削りな文章だった気がします。

    表題作のスペードの3は学生時代の人間関係、いわゆるスクールカーストというんですかね、それをそのまま大人になっても引きずっている美知代の話。この話が一番良かったけど、こんな人いるかな?とか思ってしまいました。

    大人の女性を描くのはまだ早かったのでは…という印象でした。

  • ミステリ的な手法を用いてみたり(しかもそれがちゃんと効いてるんだよね)
    新境地といえる部分もありつつも
    章ごとに目線が違ってて尚且つ繋がってる話の造りや
    読後に受けるちょっとした痛みやなんかはもう
    朝井リョウの真骨頂といっても過言ではないかも(いや、過言か)。
    時系列の使い方がこれまた効果的なのか
    繋がりが以前ほどがっちりじゃないところが
    学校の中から外の広い世界に飛び出した感じがして
    朝井氏も社会人になったんだなぁと何となくしみじみ。
    とはいえどんな手法を使っても最後には
    『朝井リョウ』の世界にちゃんと着地するんだよなぁ…。
    この若さで揺るぎないスタイルを持っているのは凄いことだと思う。

    個人的には美知代が嫌い(爆)。
    最後に圭子とアキに遣り込められる(?)シーンはスカッとした(笑)。
    それと、3編めで悩むつかさ様がいじらしいというかなんというか。
    (傍目で見て)不幸な自分を売りにできる沖乃原円って人は
    一般的には強かとか計算高いとか言われる種類の人だと思うんだけどどうだろう???
    2編めのむっちゃんに関しては…なんつーか
    1編めに出てきた彼女を考えるだに『よく頑張った』と誉めてあげたい。
    そして弟がやっぱりひどいと思った(爆)。

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著者プロフィール

1989年岐阜県生まれ。2009年『桐島、部活やめるってよ』で、「小説すばる新人賞」を受賞し、デビュー。11年『チア男子!!』で、高校生が選ぶ「天竜文学賞」を受賞。13年『何者』で「直木賞」、21年『正欲』は第34回「柴田錬三郎賞」を受賞し、どちらも映画化された。作家生活15周年記念作品『イン・ザ・メガチャーチ』は第9回「未来屋小説大賞」を受賞した。その他著書に、『どうしても生きてる』『時をかけるゆとり』『死にがいを求めて生きているの』『スター』『生殖記』等がある。

朝井リョウの作品

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