スペードの3

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062188500

感想・レビュー・書評

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  • とある大劇団夢組男役の元トップスター・香北つかさ。
    彼女のファンクラブ「ファミリア」を仕切る美知代。
    ファミリアに最近入ってきたアキ。
    3人の女性をメインにした中篇3作。

    誰もが抱えるダークな気持ちをうまく抽出してくる朝井氏。「何者」を読んでいたときと同じ、言い当てられたなぁとドキっとする箇所がいくつもあった。
    いっぱい引用したな。。。
    男性の朝井氏がよくこんなに女性の気持ちがわかるなぁと今回も驚き。よく見てる。

    今回は宝塚をモデルに絡めたストーリー。去年から公演観に行ったり気になっていた団体が取り扱われてて、不思議な親近感を持ちながらあっという間に読破。
    最初の美知代にちょっとムカムカしたけど、アキの指摘を受けて変わろうとしたり。
    悶々と悩んでいたつかさが、自分自身を脚色することはできない。「そこにあるのはそのときの自分自身、それだけ」と気付けた所がよかった。

    見栄を張ったりずるをしてはいけない。やっぱりそれって絶対誰かにばれているんだろうな。
    とりあえず円はキライ、というか生理的にイヤ。あんな人がずっと隣にいたらストレス半端ないと思う。

    大富豪や大貧民のルールを全然知らなかったから、タイトルの意味を知ったときに軽く衝撃受けた。

    最後に。今回初めてサイン会に参加して朝井氏と初対面。とても丁寧で謙虚な方でお会いできて嬉しかった。
    サインで入れていただいた私の名前は間違っているけど(笑)ずっと大切にする。

  • 「朝井リョウって、実は女なんじゃ…?」と疑いたくなるくらい、女の醜いドロドロした部分がリアルに描写されていました。
    3人の女性が主人公の中編連作。
    それぞれの物語の仕掛けにあっと言わされ、感情のどす黒い部分を見せつけられ、ボディーブローのようなダメージが。でもページをめくるのをやめられず。

    ただ見せつけてダメージを与えるだけではなく、それぞれの主人公が自分の醜い部分と向き合い、一歩踏み出す姿が描かれていて、どの人物も、最後には立ち上がろうとしていきます。
    特に最後のお話が、何にでも物語が求められ、羨みからやっかみに変わっていく現代社会が描写されていて、ホント痛かった。
    自分は間違いなく、つかさ側なのでめちゃくちゃ共感してしまい、ラストのつかさのセリフに泣かされました。

    SNS・まとめサイトに依存気味な人、リーダーというより仕切り屋体質な人、「物語消費」大好きな人は是非ご一読を。…って、私だな(笑)

    でも冷静に考えてみると、小説で「物語を無理にでっち上げなくてもいいんだよ」と書いてしまうって、とんでもないことだよなぁ…。

  • ・朝井リョウの作品は思わず目を覆いたくなるような場面をありありとリアルに描写するところが生々しくて好きだ。
    そしてそれはスケールの大きいものではなく、誰もが日常的に感じたことのある、身近な場面や欲望だったりするからより自分に肉薄して感じるものがある。
    ・日常の何でもない場面の切り取り方や、言動や所作の比喩の方法がとんでもなくうまく、よくある場面だけれどまだ誰も言語化していない新しいものに感じさせる。
    ・緊張感の煽り方がうまい。読んでいて自分の中でホラー映画の今にも怖いものが飛び出る時の音楽が鳴り響いているかのような音楽や心臓の高鳴りを覚える。

    ○スペードの3
    ・自分のささやかなプライドを保ってくれるものを少しずつ侵されていく怖さと焦燥感の煽り方がうまい。
    ・中盤のどんでん返しも綺麗で驚きがある。
    ○ハートの2
    ・行間が広い。醜いと言われた明元むつ美がスペードの3に出てくるほどの美しい女性になることがわかっているから、学生時代の決断や行動に説得力が出る。こうして他人のためではなく、自分のために欲を出すことを恐れなくなって大きく変わっていったのだということがわかる。
    ○ダイヤのエース
    ・3つの物語の中で一番刺さった。
    ・何不自由ないことがコンプレックスになることもある。そう考えると自分の不幸な状況にそっと手を差し出してくれるような気がした。
    ・誰をも魅了してしまう人間って一定数いて、その中でも苦悩があるし、努力もしている。憎んでいる人のそういう姿を見て上手に憎めなくなるというのがこの物語で一番好きだった。

  • 自分の小中学生の頃と重ね合わせながら読んだ。むっちゃんの変わりたいと思って行動を起こせるところが素敵だった。たくさんファンのいる芸能人でもそれぞれ悩みや嫉妬が多いんだろうなと思った。

  • 面白いです。
    この人の世界観、モノの言い方。
    クセになりそう。

  • 「○○女子」と枕詞につく言葉は色々あるけれど、この話は紛れもなく、辞書的な意味での、女子の話。

    女子。女子学生の意味の「女子」。

    主人公は女性が3人。

    1話ごとに主人公が入れ替わる。

    学生時代のと現在の様子が一話の中で描かれる。

    朝井リョウさんの小説って、いつものっけから不穏で、ずっと暗い。

    朝井リョウさんのエッセイは頭からっぽで読める抱腹絶倒だから、小説とのテンションが、同じ人が本当に書いたのかなと思うほど。

    今回の『スペースの3』について。

    著者の朝井リョウさんは男性だけど、
    どうしてこんなに女子のこと分かるのだろう。学生のときの女子グループ、よく観察していたのだろうか。

    第1章の「スペードの3」ミュージカル女優のファンクラブのまとめ役の美知代の話。

    第1章が一番おもしろい。

    ちょっとした叙述トリックにまんまとひっかかる、チョロいな私は。
    どういう繋がりか分からなくて、最初からパラパラと読み返した。

    学生のとき、こういう美知代みたいな女はいた。

    小さな世界(クラス)を牛耳って、あたかも世界のリーダーは自分だ、みたいな顔をして、取り巻きまでいるような女。

    他の女子へのちょっとした優越感が心地よい。歪んだ感じ。
    朝井リョウさんの小説という感じ。


    第2章
    第1章にも登場した、地味で冴えないむつ美の話。

    この本の中で気持ちがよくわかるのはむつ美。

    第3章、第1章の美知代がファンクラブに入っていた、つかさの話。

    何か人生の転機になるような特別なエピソードなんて、きっとみんな後付けじゃない。

    第3章は朝井リョウさんの「何者」思い出した。何者かになった人も、ずっとずっともっと超越した何者になりたいのかもね。










  • 毎回、本当に痛いところをついてくるなーという感じ。1話目は特におもしろいし、タイトルの意味を全く気付けていなかった
    誰しも嫉妬心はあるし、なりたい自分になり切れないもどかしさ、難しさは当然あるんだとある意味励みになると感じた。
    自分を変える勇気はなくとも何かきっかけがある、変えることって難しいけど大きい成長

  • 面白かった。
    感想見ると結構「暗い」とか「痛い」とかを多く見る。
    3編とも劣等感に付き纏われているからそう感じるのかもしれない。
    その割には読みやすくて、実際サクッと読めた。

    私はハートの2とダイヤのエースが好きだった。

    坂町先輩とどうなったんだろう?
    むつ美が綺麗になったことは、明らかだけど。

    つかさ様の気持ちもすごくわかる。
    自分は徒花にしかなれない。
    実力もある、注目もされてる。でも、徒花。
    あの子には勝てない。
    努力しても得られないものがある。
    ずるくなれる人間じゃない。
    劣等感しか生まれない。

    誰しも多少の劣等感があるはずだから、読みやすいのでは?

    しばらく経って気づいたけど、これファミリア内で革命が起きたのか。
    教室で強かった美知代と、弱かったむつ美。
    ファミリア内で強かった美知代が、新入りのアキによって立場を覆される。
    革命なんて起きないと言ったむつ美は自分の力で強くなり、革命を願ってた美知代は弱くなった。

  • 全3章で構成されていてサラッと読める。相変わらず自分の見たくない気持ちに焦点が当てられててつらい。

    学級委員長の気持ちがとっても分かる。人を見下して自分は安全地帯にいるけど、結局欲しいものは手に入らないし、何もかも持ち合わせている人にサラッと抜かれてく。つらいなあ。わたしも学級委員長タイプの人間だわ。

    あきみたいな美少女で良い子とか、人生に物語がある人とか、自然とみんなに好かれる人とかが実は1番厄介だよね。到底敵わないもん。
    でもこの先も自分を生きていくしかないんだから、アキみたいにそんな自分を受け入れて強く生きようと思います。

  • 全3章で構成されるこの作品。
    各々主人公が異なりますが、連作の形です。
    どの主人公も“自分”というものに対し、どこか劣等感を抱き、苦しむ姿が印象的。
    足掻いても満たされないまま大人になり……という主人公もいました。
    そのうえで“自分と向き合うこと”を強く勧めてくるような感覚も感じられました。
    でも正直入り込みにくい感覚もあり、最終的に何がどうなったのか不明な部分もあって……ちょっと残念でした。

  • いい意味ではらはらする読み物でした

  • 913-A
    人気作家コーナー

  • イヤなもの読んでしまった
    ・・・って感じ

  • 全体として緩やかにつながっているが3章立ての主人公格はそれぞれ別
    1,2章のことがすっきりしないまま3章で解消されるかと思いきやそれもなくもやもやが残る感じ

  • 2014年の本だからファンコミュニティのあり方はやや古風に感じるけど。舞台を観たことはあるからこの設定には入りやすかった。
    女グループの怖さにぎょっとする第1章。名前のトリックも驚き。
    観客は作品の外の演者(俳優)の物語も求めている。それがないことに悩むつかさ視点の第3章も発見があった。

  • 2022.08.12

    なんとなくヅカっぽい話なのかな?と思って読み始めたらビンゴ!ドンピシャでした。

    第1章のファンクラブのまとめ役の美知代の章がいちばん濃くて、いちばん響いた。
    愛季がアキではなくむつ美というミスリードもうまい!
    むつ美の、同じ条件の中で同じ環境の子たちと一緒に手を繋いで、手に入れられないものを見ているだけ。その中でちょっとリードしている自分に優越感を感じてるって美知代に言うとこが刺さった。ここでわかるわかる!て共感する人とかグサッとくる人多数だと思う。

    第3章の、音楽学校から卒業後の組子の人生がそれぞれ感じられて、本当に入団後から卒業まで、その後はこんな感じなんだろうなーと想像できて面白く読めた。
    円は娘役トップだったのかな。退団後、順調に女優としての地位を固めていたけど、結局は背景や物語なんてなくっても、彼女に才能や実力があったてことなんだよね。
    つかさは準トップで退団ということで樹里咲穂さんや彩吹真央さん、美弥るりかさんをなんとなくイメージしながら読んだ。(この3人のなかでは樹里さんがいちばんつかさっぽいかな…?)

    愛季のストーリーも文庫版書き下ろしでぜひ入れて欲しかったなあ。

  • 心当たりがありすぎる。
    雪の日に並んだあの光景

  • 香北つかさこと、つかさ様とそのファンたちの自分の立ち位置、マウンテンの取り合いの話。
    スペードの3はファンクラブ、ファミリア代表の江崎美知代は学生時代学級委員長だった。転校生の尾上愛季にその立ち位置を奪われる。嫌われていた明元むつ美がアキとして、入会してきたことにより、美知代は自分の立ち位置を認識させられる。
    ハートの2はむつ美がアキになって、自分の立ち位置を確保していくさま。
    ダイヤのエースはつかさ。つかさにはいつも一緒にいた円がいた。主役はいつも円。どうやったら円を退け、主役になれるか。

  • | ´ʖ̼`|

  • 宝塚歌劇団のような女性のみで構成されている歌劇団の1人の男役スターとそのスターのファンクラブに属する2人の女達、この3人を一人ずつ描いた中編小説集。3つの話は少しずつ重なっていて面白い。

    「そうそう、これこれ!」と思うような、朝井リョウの本を手にとる時に期待している目を背けたくなるような人の嫌な心理がこれでもかというほど出てくる。特に「スペードの3」の美知代の学級委員としての立ち位置や、「ハートの2」のアキが愛季にばったり会ってしまったところ。もうやめて!と思うくらいきつい。

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著者プロフィール

1989年岐阜県生まれ。2009年『桐島、部活やめるってよ』で、「小説すばる新人賞」を受賞し、デビュー。11年『チア男子!!』で、高校生が選ぶ「天竜文学賞」を受賞。13年『何者』で「直木賞」、14年『世界地図の下書き』で「坪田譲治文学賞」を受賞する。その他著書に、『どうしても生きてる』『死にがいを求めて生きているの』『スター』『正欲』等がある。

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