寂しい丘で狩りをする

著者 :
  • 講談社
3.11
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本棚登録 : 195
感想 : 28
  • Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062188562

作品紹介・あらすじ

あの男が追いかけてくる。どこまでも――。心の闇を抱えた男と女の追跡劇を、息もつけない展開で描く戦慄のクライム・サスペンス!
映画のフィルムエディターとして働く野添敦子は、かつて自分をレイプして逮捕された凶悪犯・押本史夫の復讐に脅える。敦子に依頼されて押本を尾行する女性探偵・桑村みどりもまた、交際相手である久我の暴力に苦しんでいた。刑期を終えて出所した押本は敦子の行方を探し回り、久我は密かに転居したみどりを執拗に追う。追い詰められた女たちが最後に選んだ道は――。忌まわしい記憶と暴力を越えて、彼女たちは自らの人生を取り戻すことができるのか?

感想・レビュー・書評

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  • 犯罪小説。何度も賞を取っている作家さんですが、初めて読んだのがこれです。

    かつて性犯罪の被害に遭った女性と、恋人だった男の暴力とストーカー行為に悩む女探偵、それぞれの加害男性。その4人が軸になっており、追うものと追われるものの心情を交えながら話が展開していきます。
    胸糞悪くなるほど卑劣な男性陣に対し、被害に向き合い証言台に立ったり、現状を打破すべく行動する女性陣が凛々しいですが、私はそれほど好みな作品ではありませんでした。

    作中の、古い映画フィルムの話などは、それが良いとする方も多いのでしょうが、私には興味がないので斜め読みに。
    固有名詞がやけに出てくることもなんだか気になってしまいました。あんなに実在の社名や商品名が出てくる必要はあるのかと…。
    思わず、東野圭吾の「超税金対策殺人事件」を思い出してしまいました。勿論、そんな意図はないでしょうが。

    追う側、刑期を終え出所後に復讐を企てる男の粘着質さに眉を寄せ、何とか報われる結末を、と願いながら一気に読了です。

  • 2人の女性が軸となる物語である。
    1人はフィルム・エディターである敦子。かつてレイプ被害に遭い、逮捕された犯人・押本が出所して自分に復讐しようとしていることを知り、その影に怯える。
    1人は探偵であるみどり。敦子の依頼を受け、押本の尾行を引き受ける。だが、みどり自身もまた、元恋人・久我からの執拗なストーカー行為に悩まされていた。
    不幸にして凶悪な人格に目を付けられてしまった女性たちが迎える結末とは。

    理屈抜きの執着、粘り着く視線、しつこい尾行。
    追う者はまた別のときには追われる者となり、最後には誰が目的を達するのか、なかなか見えてこない。

    本筋の事件に絡めて、挿入される映画や写真芸術の話が興味深い。
    特に敦子が関わる古い日本映画のエピソード。
    かつて映画フィルムは消耗品だった。映画の黎明期に使用されたフィルムはベースがニトロセルロースで、時間と共に発火点が下がり、40℃でも自然発火するようになる。このために多くのフィルムが失われている。1950年代半ばになって、発火はしないトリアセテート・フィルムが登場したが、こちらは高温多湿下で加水分解して酢酸を生じ、縮みや退色で劣化し、映写機に掛けられなくなる。
    溝口健二や山中貞雄の作品には、こうして失われたものが数多い。

    そんな知識をちりばめつつ、裁判記録や探偵調査報告書を織り込みつつ、物語は交錯しながら進む。
    首都圏の地名とともに、逃走劇・追跡劇を疑似体験するスリルもある。
    男たちがこれでもかというほど碌でなしで邪悪なことにうんざりするのだが、対して、女たちは凛と背筋が伸び、美しい。そこが救いではある。だが特段の落ち度がなくたまたま出会ったというだけでこんな悪党につきまとわれた場合に、自分で戦うしか仕方がないのか、と暗澹たる気分にもさせられる。
    読ませる吸引力はある物語だが、最終的に訪れるのはいささか偶然に頼った「甘い」結末である感を受ける。
    登場人物の1人がつぶやくひと言、「人生は一瞬の花火にすぎない」に倣えば、この物語もまた、一瞬の花火なのだろう。瞼の裏に残る残像は、輪郭が不鮮明で、儚さを覚える。

  • うーん。ストーカーの怖さが際立ってました。ドキドキしました。
    ハラハラが最後まで続きました。

  • 現代の社会において、ストーカー犯罪の標的になることがどれほど危険で恐ろしいことなのかを実感させられる。
    社会は頼りにならず、自分で必死になって身を守るしかない。
    私刑による解決をどう捉えるか、倫理的な問いかけとしての意義はある小説と思う。

    辻原登の小説は他に読んだことがないのだけれど、20年以上前(1990年)に芥が賞を受賞した人なんだね。
    ということはもともと純文学系の作家なのか、こういう犯罪小説のサスペンスを描くのには慣れていない印象を受けた。
    描写のトーンが一定しなかったり、人称がころころと入れ替わったりで、どうにも安定しない。
    山中貞雄など映画ネタが豊富に登場するのは個人的には興味深いんだけど、あんまり小説のテーマと関係ないよね。

    加害者の男たちの執念深い計画性を描く一方、加害者が映写技師で、被害者が映画編集者で、発掘された貴重な映画フィルムにより二人が結びつくというあまりにご都合主義的な偶然性(しかもそのご都合主義があまり作劇に活かされない)が配されるあたりのアンバランスもいまいち据わりが悪い。

  • 文学

  • 全然、ハラハラもドキドキもしやしない。
    結局、ポンコツな女探偵の独り善がりな話だった。
    無駄な部分も多くて苦痛。

  • 古い映画の再生を仕事にしている野添敦子は,押本史夫に襲われた過去がある.女探偵の桑本みどりは精力的に仕事をこなしているが,敦子が出所した押本に再度襲われる可能性があることを知り,敦子を支援する.押本が出所してから様々な知識を駆使して敦子の居場所を突き止める過程は,読んでいて楽しめた.敦子の仕事の映画の話も良い.みどりに付きまとう久我や桂弁護士の脇役も話を盛り上げている.みどりが押本を襲うことで事件は終結に向かうが,登場人物がそれぞれ個性的で面白かった.

  • 160907図

  • 2016/8/17購入
    2016/11/6読了

  • ストーカーと化した男が、女性を執拗に追い詰めていく。
    標的となった女性はにげる場所を失い、遂には自らが....

    現実の世界でも、ストーカーに狙われたら、効果的な対処手段を取ることは非常に難しいことは証明されていると思う。
    そして、残念ながらその被害にあう人は後を絶たない。

    本書の中心に描かれている女性は二人。
    そのどちらもが、非常に不幸なきっかけから狙われるようになる。その狙うやり口、襲う姿、逃げる姿はかなり詳細であり、不愉快な気分になるほど。
    しかし、それらの内容を繋ぐエピソードが、いかにも都合の良い偶然。その偶然の微妙な通路を通って話が続いていくので、「偶然も三度続くと....」作者の都合の良い意図を感じてしまう。
    そして、不愉快な物語の回収、終章に向かっても、その都合は如何なく発揮される。

    ストーカーが絡む物語は、中途半端に終了してしまうと、おそらく非常に後味の悪い話になると思う。
    その点では、強引に問題を解決するのもやむを得ないかもしれないが、作者の強引さも印象に残ってしまった感がある。

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著者プロフィール

辻原登

一九四五年(昭和二〇)和歌山県生まれ。九〇年『村の名前』で第一〇三回芥川賞受賞。九九年『翔べ麒麟』で第五〇回読売文学賞、二〇〇〇年『遊動亭円木』で第三六回谷崎潤一郎賞、〇五年『枯葉の中の青い炎』で第三一回川端康成文学賞、〇六年『花はさくら木』で第三三回大佛次郎賞を受賞。その他の作品に『ジャスミン』『発熱』『夢からの手紙』『円朝芝居噺 夫婦幽霊』などがある。

「2020年 『卍どもえ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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