- Amazon.co.jp ・本 (364ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062188777
作品紹介・あらすじ
すこぶる爽快、おもわず落涙
コイする青春〈禅〉ノベル
住職の兄(29歳)、高校生の妹(17歳)、そして、泣きぼくろの美女(??歳)
家のお寺で、三人の〈生きるための物語〉が始まった
新しい才能によるどこか懐かしい成長小説
お釈迦様の教えはさまよえる美女を救えるのか
三十路間近な瑞空寺住職・日比野隆道和尚は、父母を失った高校三年生のゆかりにとってたった一人の家族であり、歳の離れた“兄ちゃん”だ。そんな兄妹の暮らす寺にある日、綺麗な黒髪と泣きぼくろが印象的な美女・小早川千尋がやってくる。着の身着のまま寺に駆け込み「夫のもとから逃げてきた」と訴える千尋を、隆道は寺の手伝いをしてもらう条件で居候させることにする。ゆかりはこの兄の提案に大反対するが、三人の共同生活は否応なく始まってゆく。
感想・レビュー・書評
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親鸞についてやその宗教については、いくらか小説や「歎異抄」などを読んである程度は理解していたつもりだったが、禅宗については殆ど知らなかったことに気がついた。禅宗の教えは「心から、心に伝える」のだという。それはまるで恋心を伝えるようなものじゃないか。
物語は幾つか伏線を張ってミステリー形式も踏襲して進んでゆく。しかし、確信犯的にいくつか提示された謎の解明を示さなかった。大きな謎と、どうしても知りたいゆかりの進路希望は分からなかった。まるで、そのこと自体が完結しない縁の輪のように。
最近ガンジーの「獄中からの手紙」を読んだ。非暴力運動は無抵抗主義ではない。遥かに積極的な運動であり、まさに「愛する」ということなのである。ガンジーの宗派は自らの強い意思で悟りを開く小乗仏教に違いない。だとすると、この禅宗の教えとは通じる処があるだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
前2作は講談社BOXから出ている靖子さんですが、今回はガチ文芸誌・小説現代連載作。
進路、家族、謎の美女、過去の後悔などなど、色々詰め込みすぎなきらいもありますが、お寺という舞台と話の根底に流れている仏教思想や亡くなったお父さんの言葉が、それらの要素を優しく包み込んでいました。
靖子さんの他の作品にも言えることですが、ライトな語り口の根底には、この世界や命の受け止め方といった大きいテーマが潜んでいて、そこのバランス感覚が絶妙。
ラストのちょっとした謎解きも楽しめました。