紫匂う

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 172
感想 : 29
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  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062188913

作品紹介・あらすじ

人妻の恋は罪でしょうか?

心極流の達人ながら、凡庸な勤めに留まる蔵太。
二人の子供とともに穏やかに暮らす、その妻・澪。
すれちがいの暮らしを送る澪の前に、一度だけ契りをかわした男・笙平があらわれる。
側用人にまで出世したかつての想い人との再会に、澪の心は揺れる。
今、ここで、心のままに生きられたなら――。

紫のにほへる妹を憎くあらば 人妻ゆゑに吾恋ひめやも

直木賞作家が描く、人妻の恋。
日本人の心が紡ぐ、美しく、哀しき恋。
時代小説の新たな代表作。
全国17紙に掲載された大人気連載、ついに単行本化!

感想・レビュー・書評

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  • 蔵太が持っていく。結局。良かったよ。

  • 「腑抜け侍かーー」

  • よい読後感でした。

  • 序盤は(なんだ不倫話か、、幼い子がいるのに澪は考えの浅い女だな、、)と鼻白みつつ読んでいたが、さにあらずであった。いろんな要素があって大人のヒューマンドラマだったし、最大の見せ場であるところの、夫婦連携で悪を倒す秘伝の一刀の場面は良かったね。目線で察することができるような間柄であることがドラマティックに描かれていた。いい夫婦だ。
    笙平と香の母子もある意味似てるよなあ。自分の保身が大事すぎて、ひとの幸せのためにという目線が欠けた生き方しかできない、ある意味誰のなかにもある弱さを抱えているダメ人間。今後笙平は出世はするかもしれないが、一生心は満たされず、ひとを責めて生きる業のタイプ。蔵太ほどの人としての器があれば、志津ともほんとうの夫婦になれたかもしれないのにね。おなじ時間が流れたはずの、対極のふた組。
    自分の大事なひとが望むなら、その生き方がよくなるように支えたい、という赤鬼くんのような献身の行動話は大好きだし理想とするところなので、萩蔵太という男はとてもかっこよかった。澪、蔵太、笙平、香、芳光院、源三郎、黒瀬、志津、宮内、七郎兵衛、山の者の弥三、、
    キャラが立ってる登場人物ばかりなので、妄想で実写キャストを考えたくなる。大人にオススメな1冊。

  • 2019.7.25

  • 夫子どもがいる女性が、抗えない思いに突き動かされ過去の幼馴染に…という不道徳が臭う時代小説。正統派と理解していた葉室さんがそんな女性をどう描き切るの? 途中から夫の神髄や妻への抑えた、でも確固たる想いに比重が移り、こんな夫はカッコいい!やはり日本人は喋らずとも密かに想い、想われるのが好きなんだなあ。特に男性目線かな。穿っている私は男性作家らしさを愉しみました。宮木あや子さんならどう描くかな?2人の男性にこんなに想われて、作品中私ウキウキでも、子どもが大事だな。

  • 昨年12月、作家・葉室麟が亡くなった。
    66歳であった。
    葉室麟は遅咲きの作家で、デビューしたのは、2005年、54歳の時である。
    わずか12年という作家生活だったわけだ。
    しかしその著作は、50冊を超えるほどの量産であった。
    まるで残された時間が、わずかであることを知っていたかのような多作ぶりである。
    そしてそれらの小説で書き続けたのは、人間がもつ尊厳や真心といった精神の美しい輝きであった。
    それはこの小説でも描かれていることである。

    主な登場人物は、3人。
    黒島藩六万石の郡方を務める萩蔵太とその妻・澪、そして江戸藩邸側用人の葛西笙平。
    萩蔵太は心極流の剣の達人だが、普段は仕事一途なだけの地味で目立たない男であった。
    その夫に18歳で嫁いで12年になる澪は、二人の子供を授かり、平穏な生活を送ってはいたが、夫にいささかの物足りなさを感じることがあった。
    そんな折、幼馴染であり初恋の人である葛西笙平が、家老の意に染まぬことを行ったという理由で、国許に送り返されることになり、その旅の途中で逃げ出してしまう。
    その葛西笙平が、澪の前に突然現れる。
    彼を匿うことになった澪と笙平ふたりの逃避行が始まる。
    それを見捨てておけなくなった蔵太が後を追い、ふたりに力を貸す、というのが物語のおおまかなストーリーである。

    3人の交錯する思い、そして騒動の顛末はどうなるのか、その面白さに一気に読み終わってしまった。
    それはこれまで読んできた葉室麟の、いずれの小説とも変わらぬ面白さであった。

    ところで和歌や俳句に傾倒したこともあるという葉室麟の小説には、しばしば和歌や俳句の引用がなされることがあるが、この小説でもいくつかの和歌が登場してくる。
    そのなかのひとつ、「紫草のにほへる妹を憎くあらば人妻ゆゑに吾恋めやも」が、小説の最後に効果的に使われている。
    これがこの小説の題名として使われているわけだが、その心境に至った夫婦ふたりの慎み深い機微を表して、印象深い結末になっている。
    「精神の美しい輝き」が、ここでも見ることができる。

  •  ひとのなすことはせせこましく、あまりにも小さい。けれど、小さいがゆえにせつなくもあり、いとおしくもある。

     これは、主人公 ― 澪とその夫 ― 蔵太の二人が山奥の炭焼き小屋で満天の星空を見上げながらの会話の場面から抜粋ですが、この作品の主題の一つであるような気がします。

    (内容紹介)
    人妻の恋は罪でしょうか?
     心極流の達人ながら、凡庸な勤めに留まる蔵太。二人の子供とともに穏やかに暮らす、その妻・澪。すれちがいの暮らしを送る澪の前に、一度だけ契りをかわした男・笙平があらわれる。
     側用人にまで出世したかつての想い人との再会に、澪の心は揺れる。今、ここで、心のままに生きられたなら――。

    紫のにほへる妹を憎くあらば 人妻ゆゑに吾恋ひめやも

     直木賞作家が描く、人妻の恋。日本人の心が紡ぐ、美しく、哀しき恋。

  •  澪の行動に対して、夫の蔵太が出来過ぎていて、現実離れし過ぎていて、全然共感出来ませんでした。
     こんな素敵な旦那様が実際にいたらいいなとは思いましたが・・・。

  • L

    デジャブー感満載なのだが、この手の話、葉室作品でなかっただろうか?
    いや、あるはず!ってくらい既視感否めず。
    澪。結婚12年で2人の子を設け、なに不自由なく暮らしていたのに、結婚前に契った男を助けようと奔走。まー本の半分までこのバカな女の行動が続く。本当に読むのをやめようかと思うくらいの浅はか。が、後半は夫の本来の姿に今更ながらに気づいて夫を見直す…ってやっぱり似たようなのあっただろ?ってくらい、これが葉室ハワールドなのか。
    夫の心持ちもこれまた美しすぎるくらいの既視感。そんでもって子供達が出来過ぎでたまらない。たまらなく嫌(笑)

    • shin-tanさん
      「千鳥舞う」あたりにありそうでは?
      「千鳥舞う」あたりにありそうでは?
      2016/11/24
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著者プロフィール

1951年、北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2005年、「乾山晩愁」で歴史文学賞を受賞しデビュー。07年『銀漢の賦』で松本清張賞を受賞し絶賛を浴びる。09年『いのちなりけり』と『秋月記』で、10年『花や散るらん』で、11年『恋しぐれ』で、それぞれ直木賞候補となり、12年『蜩ノ記』で直木賞を受賞。著書は他に『実朝の首』『橘花抄』『川あかり』『散り椿』『さわらびの譜』『風花帖』『峠しぐれ』『春雷』『蒼天見ゆ』『天翔ける』『青嵐の坂』など。2017年12月、惜しまれつつ逝去。

「2023年 『神剣 人斬り彦斎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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