ガマ 遺品たちが物語る沖縄戦

著者 :
  • 講談社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062189620

作品紹介・あらすじ

沖縄本島に無数あるガマ(壕)。戦後、何十年もの間、その洞窟に入って遺骨を掘り続ける人たちがいます。「沖縄の戦争は、まだ終わってはいない」と、戦禍を風化させない一心で、彼らはスタッフや費用の困難に向き合いながら、その作業を続けています。

そこから出土するものは、遺骨や銃器といった戦争に直接関係するものばかりではありません。学用品や日用品が、たくさん掘り出されています。それは、ガマのなかでアメリカ兵から身を隠して暮らし、ガマに爆弾や毒ガスを投げ込まれて息絶えた人々の存在を、生々しくいまに伝える痕跡なのです。

そのなかから、「すずり」「目覚まし時計」「アルバム」をめぐる現在と過去の物語を描きます。モノたちから浮かび上がってくるのは、運命的に助けられた命や最期の瞬間まで人間であろうとした命、そして、戦後何十年経ったあとで大切な家族の死に方に対面する人々の思いです。

ノンフィクションの手法で徹底取材したリアリティを、物語=フィクションのかたちで描きあげます。

感想・レビュー・書評

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  • 「終戦から70年がたっても、沖縄のガマからは、遺骨といっしょに生活の品々がほり出されます。それらは戦争当時の状況を語ってくれます。」

  • ふむ

  • 沖縄戦の悲劇を、子どもにも読みやすくわかりやすく、物語に仕立ててある。
    誰かが意地で始めてやめられなくなった戦いは、
    こうして無辜の人々を犠牲とし、無数の悲劇を作っていったのだ。
    沖縄では戸籍も焼けてしまったから、生きた証さえなくなってしまった人たちがいるという。
    ガマに残る遺品たちは、彼らが生きた証を伝えてくれている。

    今日ちょうど、80人以上が集団自決したチビチリガマが荒らされたというひどいニュースが出ていた。
    なんともあきれる話である。

  • 2015年の今年は戦後70年。なので、NHKスペシャルは戦後70年に
    ちなんだ内容の放送が多い。先日は沖縄戦を特集していた。

    番組の冒頭、沖縄戦を戦った元アメリカ兵へのインタビューが流れ
    た。彼は言う。

    「パニックだった。機関銃を撃ちまくった。翌朝に見た遺体は市民
    ばかりだった」。そして、声を詰まらせた。

    アメリカ軍の本土上陸までの時間稼ぎの為に捨て石にされた沖縄。
    多くの市民が巻き添えになり命を落とした。

    沖縄本島に上陸するアメリカ軍から逃れる為に、多くの市民はガマ
    と呼ばれる自然に出来た洞窟に身を潜めた。戦後、そのガマから
    遺骨や遺品が発見されている。

    本書はガマから発掘された遺品と、アメリカ兵が戦利品として祖国へ
    持ち帰った略奪品を巡る物語だ。だが、純粋なノンフィクションでは
    ない。3つの物語それぞれにモデルとなった人物はいるが、事実を
    ベースにしたフィクションである。

    それでも、哀しく切ない。

    国民小学校を首席で卒業した少年が、母からプレゼントされた硯が
    戦後、既に老齢となった持ち主の元に戻る「哲也の硯」。

    「新太の目覚まし時計」は音楽教師を夢見ながら、鉄血勤皇隊に徴用
    され、ガマで亡くなったであろう少年兵の遺骨発掘の物語。

    最終章「夏子のアルバム」は戦利品としてある家族の写真アルバムを
    持ち帰った元アメリカ兵が老境に差しかかかってから「持ち主に返し
    たい」と沖縄慰霊の日に沖縄を訪れる。

    ガマでの生活や戦闘の様子は、経験者の証言や残された資料から
    繋ぎ合わせたものだろう。多少の脚色はあるのだろうが、本筋は
    実際に起こったから大きくは外れていないのだろう。

    特に「夏子のアルバム」に登場する元アメリカ兵が、アルバムを返却
    しようと思い立ったきっかけが辛い。それまで彼にとっては沖縄戦を
    戦って生還したことは勲章だった。それが、老齢になってから自分の
    過ちを気付かされるのだもの。きついわ。

    本書は児童書の類にはいるのだろうな。漢字にはほとんど振り仮名が
    ふってある。小学校高学年から中学生向けか。子供たちは勿論だが、
    戦争を知らない世代の大人たちにも読んで欲しい。特に、私と同じよう
    な本土の人間には。

    海外での遺骨収集については時折ニュースになる。しかし、沖縄でも
    ボランティアやNPOが今でも地中からの魂の叫びを拾い集める作業
    をしている。

    戦後70年が経つ。だが、戦争はまだ終わっていない。そして、今日、
    6月21日は沖縄本島での日本軍最後の拠点・摩文仁の軍司令部が
    アメリカ軍に占拠された日だ。

  • 沖縄は日本で唯一戦場になったということを忘れてはいけない・・そう改めて感じさせる一冊
    難しい漢字はルビがふってあるので子どもでも読める

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著者プロフィール

1966(昭和41)年、東京生れ。早稲田大学第一文学部卒。ニューヨークの日系誌記者を経て、ノンフィクション作家に。戦争、犯罪事件から芸能まで取材対象は幅広く、児童書の執筆も手がけている。『ガマ 遺品たちが物語る沖縄戦』(講談社)は、厚生労働省社会保障審議会の推薦により「児童福祉文化財」に指定される。著書に『妻と飛んだ特攻兵 8・19満州、最後の特攻』(角川文庫)、『消された一家』(新潮文庫)他多数。

「2018年 『ベニヤ舟の特攻兵 8・6広島、陸軍秘密部隊レの救援作戦』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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