- 本 ・本
- / ISBN・EAN: 9784062189668
感想・レビュー・書評
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「千夜一夜物語」のフォーマットに、現代人の病理を突く寓話を幾重にも散りばめた小説。非常に緻密な構成だが、内容はかなり難解で、一読しただけでは容易に理解できない。ノートをとりながら読んだ方がいいだろう。個人的にはラストが気に入らない。
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文句なし。素晴らしすぎてぞくぞくした。冒頭は婚約者を殺し、ブランドものにポルシェにペットのフェレットというアイテムを身に着けている玲緒奈視点で始まる。婚約者を連続で殺し、豪華な生活・・・、これはあの事件以来いくつかドラマにもなったりしたあのかたを思い浮かべる、こういう非常にロウな入りなんですが、玲緒奈が男の死に際に物語をせがむところから帯にある通り本当に抜けられなくなる。自分が何を読んでいるのかすら不確かになり、どこかで読み間違えてないか不安になる。けれど抜け出せない。そして、ここまですごい物語たちだから辻褄とか別に期待してなくて(放り出してももらってもかまわないと思って)、けれど最後ただ話に引っ張るだけのアイテム的なイベントとして見ていた冒頭部までがきれいにつながる。ジョルジュ・ペレックの「人生使用法」とドノソの「夜のみだらな鳥」を彷彿とさせる、本当に終わらないまま終わった物語だった。
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話の核がよく分からなかった。
男が女に物語を聞かせ気持ちを動かしたいところまではわかるが…。
著者の他の作品も少し読んで理解したいと思いました。
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実際にあった結婚詐欺、保険金殺人事件が下敷きのように始まるんだけど、物語の中の物語にはまたさらなる物語があって…という風にどんどん続いていく。まるで自分が存在するということは、自分の物語を生きていくことで、尚且つその物語を聞いてくれる他者が不可欠だ、ということの大切さを説いているように読めた。でも最後に現実(?)に戻ってくるのが作者の力量?とも感じた。
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付き合った男からさんざん搾り取り、やがては命までも奪っていく女。「夜の間じゅう、私が気持ちよくなれるようなお話をしなさい」と、死なそうとしている男に命じる。その内容により、男はつかの間の延命を許される。
最初は普通のサスペンスなのだが、途中から物語の様相が変わっていく。ある男のするお話の中で、登場人物が誰かに話をする。そしてそのお話の中でまた別の人物に……と、マトリョーシカのように何層にも物語が重なり、次第にその境界線が曖昧になっていくのだ。
そして最後、結末が冒頭部分にループする。かくして、この物語の「夜」は終わらない……。 -
2023年2月16日読了
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読み始めは通俗的なサスペンスかと思ったのですが、違いました。500ページを超える長編、空き時間にちょっとずつ読んでしまったので、訳が分からなくなってしまいました。時間のあるときに一気に読んでしまえば、もっと理解が深まったかもしれません。
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命を奪われないためには、価値のある話をしなければならない…。自分を殺そうとする女のために、男たちは必死に物語を紡いでいく。
猟奇的なミステリーかと思いきや、男たちよって語られる不思議な物語がさらに新たなストーリーを生み出し、すぶずぶと奥底へと引きずり込まれていく。行き着いたと思った先にまた新たな物語があり、浮上したと思うとまだ続きがある。
いくつもの独立した短編もしくは中編は、続きはどうなるというところで放り出される。が、徐々に物語同士がリンクして境が曖昧になり、最後は現実とともにひとつにまとまっていく。
作者の仕掛けた複雑な迷宮に翻弄され、迷子になるような感覚の楽しめる読書だった。 -
文学
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