まるまるの毬

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 409
レビュー : 97
  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062189903

作品紹介・あらすじ

お君ちゃん、今日の菓子はなんだい?

江戸は麹町の菓子舗「南星屋」。
繁盛の理由は、ここでしか買えない日本全国、名菓の数々。
若い時分に全国修業に出、主の治兵衛が自ら歩いて覚えた賜物である。
娘のお永、孫のお君と親子三代、千客万来。
でもこの一家、実はある秘密を抱えていて……。
思わず頬がおちる、読み味絶品の時代小説!

「たかが菓子だ。そんな大げさなものじゃねえさ」
武士から転身した変わり種
諸国の菓子に通ずる店の主・治兵衛

「お団子みたく、気持ちのまあるい女の子になりなさい」
菓子のことなら何でもござれ
驚異の記憶力を持つ出戻り娘・お永

「お菓子って、面白いわね、おじいちゃん」
ただいま花嫁修行中!
ご存じ、南星屋の”看板娘”・お君

感想・レビュー・書評

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  • 江戸では滅多に食べられない珍しい菓子を扱う行列のできる和菓子店、南星屋(なんぼしや)を舞台に繰り広げられる滋養豊富、風味絶佳な時代小説。
    タイトルは『まるまるのいが』と読みます。


    いやぁ~、面白かった!
    ひさびさの時代小説で初読み作家。
    読むまでは不安だったけど
    まったく問題ナシ!
    食べ物を描いた人情話だから
    食いしん坊体質の自分の好みにピッタリハマったのかな(笑)
    (表紙に釣られて良かった~笑)

    それにしても全国の和菓子が
    江戸にいながら買えるという設定が素敵過ぎます!
    今で言えばネットショッピングみたいなものだし、
    実際そんな夢のような店が当時の江戸にあったら
    今とは比べものにならないくらい
    繁盛したんじゃないかな。


    いつも明るく元気ハツラツな
    南星屋の看板娘、お君(おきみ)、16歳。

    お君の母親で出戻りの身だが、
    驚異の記憶力を持つお永(おえい)。

    南星屋の主(あるじ)で
    七福神の寿老人に似たお君の祖父の治兵衛(じへえ)。

    治兵衛の弟で不良オヤジ、
    相典寺(しょうてんじ)の大住職にして
    南星屋の名付け親の石海(こっかい)。

    カスドースの一件以来何かと南星屋に出入りし力になってくれる、
    平戸藩松浦家の家臣、河路金吾(かわじ・きんご)。

    この主要メンバーがみな、生き生きとして
    読めば容易に映像として浮かんでくるから、
    自分の周りにいる身近な友達や親戚のように思えて(笑)
    親近感が湧いてくるんですよね。

    だから話の先が気になるし、
    元気な顔が見たくて
    また会いたくなる。
    (NHKの連続ドラマなんて合いそう)


    中身に軽く触れると、

    門外不出の菓子「カスドース」の製法を盗み出した疑いをかけられ窮地に陥る治兵衛と南星屋を描いた
    『カスドース』、

    南星屋に弟子入りに来たのは
    武家の倅(せがれ)でまだ10歳の子供だった…
    『若みどり』、

    近頃、何をするにしても上の空のお永を見て、好きな人がいるに違いないと尾行する娘のお君と河路金吾だったが…
    『まるまるの毬』、

    治兵衛が菓子職人になるきっかけとなった弟・石海との椎の木の思い出を描いた
    『大鶉(おおうずら)』、

    河路金吾に河路家に嫁入りしてほしいと突然告白されたお君だったが…
    『梅枝(うめがえ)』、

    など全7編の連作短編となっています。


    武士の身分を捨て、16年もの間、国中を渡り歩き、
    その土地土地の菓子を研究し、菓子職人としての腕を磨いてきた治
    兵衛。
    南星屋が魅力的なのは
    味の良さと諸国の名菓の物珍しさだけではなしに、
    下々や貧しい武士にも口にできる
    安さと手軽さを身上としてるところも、素晴らしいのです。
    (儲けは殆どないギリギリの暮らしだけど…)

    そして毎話ごとにお菓子をモチーフにし、
    人情を絡めたストーリーが展開されていくのも実に巧みです。

    お永やお君の切ない恋の話も織り交ぜながら
    商売敵である柑子屋(こうじや)の主人、為右衛門(ためえもん)からの嫌がらせや、
    治兵衛がひた隠しにする「ある秘密」がなんなのかというちょっとした謎もあり、
    飽きさせない構成も上手い。


    武蔵熊谷の『五嘉棒(ごかぼう)』、
    伊予松山の『桜羊羹(さくらようかん)』、
    糖蜜をからめ砂糖を贅沢にまぶしたしっとり甘い
    『印籠(いんろう)カステラ』、
    夏の川に緑の楓が舞っているような目にも美しい寒天菓子の
    『錦玉羹(きんぎょくかん)』、
    白いかりんとうの『若みどり』、
    甘くて胡麻の風味が香ばしいカルタ札の形の干菓子
    『白砂松風』、
    黄色い饅頭を二つに割ると
    ゆずの香りのする月が姿を現す
    南星屋オリジナルの和菓子
    『南天月(なんてんづき)』
    などこの物語の真の主役とも言える、
    思わず舌なめずりしてしまうくらい美味しそうな和菓子の数々にも注目です。


    しかし、今作を読んで、
    あらためて思い知らされたのは
    和菓子という日本古来の食べ物のスゴさと奥深さ。

    四季の移り変わりをお菓子にたくし、
    日本人は、目で、舌で、
    味わい深い「芸術品」を作ってきました。

    和菓子のいいところは、
    花や鳥の声で季節を感じるのと同じように、
    お菓子でも四季折々の季節感を味わえ、人生に色を添えてくれること。

    かたちのない気持ちや季節を
    かたちのあるものに託して伝えようとする、
    日本人の心持ちって本当にスゴいですよね。

    この小説も同じく。
    和菓子に込められた人々の思いを
    隅々まで丹誠が込められた美しさで描いていて、
    ページをめくるたびに花が咲き、 お腹の底から幸せになってくる小説です。


    和の情緒や江戸時代の空気感に浸りたい人、
    和菓子に目がなくて時代小説が好きな人、
    時代小説は苦手だけど、和菓子なら任せて!って言える人にオススメです。

  • お江戸の小さな和菓子屋さんの話です。
    全国各地の菓子を作って出すという変わった店で、すぐに売り切れてしまうという。

    麹町にある「南星屋」は人気の店。
    主人の治兵衛が諸国を修行して歩いて覚えた菓子を2つ3つだけ選んで作るため、珍しい菓子が食べられるのだ 。
    この治兵衛、もとは武家の次男という出身だが、子供の頃からの菓子好きがこうじて、この道を選んだ。
    裏通りの小さな店を親子3代でやっています。

    娘のお永は出戻り、菓子に関しては驚異的な記憶力がある。
    孫のお君は、花嫁修業中の元気な看板娘。
    ちょくちょく訪ねてくる和菓子好きの高僧は、治兵衛の弟。
    献上の品を巡って大名との縁ができたり、問題が起きたり。
    お君が心通わせた相手と、まとまりそうになったのですが‥

    次々に出てくるお菓子がどれも美味しそうで、季節感を大事にしていること、当時の工夫や楽しみにしている様子、微笑ましくも羨ましい限り。
    武家の息子が菓子屋になれる、跡取りでなければある程度の融通がきくところもあったのですね。
    旅といっても難しい時代に、各地を回るほどの熱意があればこそ、かもしれませんが。

    治兵衛には実は出生の秘密があり、これが後々まで思わぬ不自由さにつながる、そういった時代の厳しさもあります。
    ほろ苦いものもありましたが、家族が思いやり支え合う、ほのぼのした読後感に和みました。

  • 江戸の町屋の菓子屋「南星(なんぼし)屋」を舞台にした時代小説。人の温かさ、家族のありがたさが心に沁みる。

    登場人物の個性がしっかりと書き分けられていて、物語の世界にスッと入って行かれた。店主治兵衛の出自の秘密、娘お永の別れた夫の出現、孫娘お君の縁談話など気になる事件が物語の中に上手く配置されていて、読んでいてまったく飽きない。

    話の中で大切な役割を果たしているのが治兵衛がつくる和菓子。これがとてもおいしそうで食べてみたくなる。描写が巧みで、その色合いや感触、味や匂いまでもが伝わってくるよう。菓子の蘊蓄も面白くためになった。

    五感が刺激される物語に満足!
    登場人物のその後が気になるし、この作家さんが描くお菓子をもっと味わってみたい。続編が出るといいな。

  • 少しでもおいしいと思ってもらえるお菓子をと、
    こつこつ商売している「南星屋」に次々とふりかかってくる困難。
    それでも家族皆、お互いを思い支えあって乗り越えていく。
    ほんわかと温かくやさしい気持ちになれるお話でした。
    こういうお話は大好きです。

    いつもまんまるい心でいられれば一番いいのにね。
    なかなか難しい…。

    和菓子食べたくなっちゃった~
    ぜひ続編を読みたいです!

  • 美味しそうな菓子に、人の温かい心がじんわりしみる良い話(*´-`)でも店主の治兵衛が将軍さまの血をひいているという事で、いろいろな災難が降りかかる(T-T)10歳の頃から武家を離れ、菓子職人として生きているのに、どこまでも血筋が追いかけてくるって辛いな(._.)食いしん坊で立派な寺の住職となった弟(石海)がいなかったら、治兵衛はどうなっていたことか…孫のお君の縁談は悲しい結果になってしまったけれど、菓子職人になるという新たな目標もでき、菓子屋「南星屋」独自の菓子も生まれ良い終わり方(^^)南天月ぜひ食べたい!近所にあったら、常連客になる事間違いなし♪

  • 麹町の南星屋は、店主治兵衛・娘のお永・孫娘のお君の3人が営む菓子店。
    その店は、店を構えるまでは全国を渡り歩いて修行した主の憶えた、諸国の名物菓子を日替わりで売る、一風変わった店だった。

    江戸の菓子店を舞台にした連作短編集。
    身分を捨てて菓子職人となった治兵衛が、出生の秘密に関わる困難にあい、苦しみながらも、お永、お君、そして固い絆で結ばれた「弟」で僧侶の石海らに背を押され、ついに自分だけの創作菓子を作り出す。


    とにかく、菓子の描写が楽しく、美味しそうだったので、和菓子が食べたくなった。
    時代もので、料理人が登場するものはいくつもあるけれど、菓子職人というのは初めて。
    しかも、サクセスストーリーではなく、言ってみれば齢六十をこえたひとりの職人が、長い回り道をして屈託から自由になり、職人としてひとつ階段を上るまで…という物語。
    職人としての苦労話はなく、嫌な人物もひとりくらいしか出てこない幸せな世界だったので、さらっと読めた。

    それにしても、治兵衛がここに至ったのがもっと早かったらなぁ。もっと南星屋の菓子は、市井の人々を楽しませただろうにね。

    この作者の本は初めて読んだ。軽いけれど、軽薄ではないし、後味も悪くなかった。
    また読んでみようかな。

  • 図書館より。
    ひさしぶりに好きなタイプの時代劇ものを読めて満足。
    お菓子、美味しそう。出てくる人たちも好印象。
    続編、ないのかな。
    文庫化したら手元に残したい一冊。

  • みをつくし料理帖を読んだ時も思ったけど、江戸時代の人達は旬の料理やお菓子を食べて、季節を感じるんだなぁ。

    昔は今みたいに保存が出来ないから当たり前なんだろうけど、とっても風流だなと思った。

    2017.10.2 読了

  • 最初は人物の関係図がごちゃごちゃになるー!
    なんておもっていたけれど。
    ものの数分で馴染んでいました(笑)

    お菓子にまつわるエピソードもよかったし、
    物語もよかった…!

  • 江戸時代の和菓子屋を営む一家のお話。
    出てくる人がみんな素敵で奥深い。
    華やかではない
    豪勢でもない
    庶民の人々に寄り添い続けた昔ながらの和菓子の奥深さを感じる1冊。
    装幀もまた素敵。

    講談社  2014年
    装幀:鈴木久美  装画:彦坂木版工房

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著者プロフィール

1964年、北海道中川郡池田町に生まれる。北海道帯広三条高等学校を経て、東京英語専門学校を卒業。 2005年、『金春屋ゴメス』が第17回日本ファンタジーノベル大賞 大賞を受賞しデビュー。2012年、『涅槃の雪』で第18回中山義秀文学賞を受賞。2015年、『まるまるの毬』で第36回吉川英治文学新人賞を受賞。

「2018年 『秋葉原先留交番ゆうれい付き』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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