まるまるの毬

著者 :
  • 講談社
3.87
  • (43)
  • (119)
  • (62)
  • (5)
  • (0)
本棚登録 : 460
レビュー : 103
  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062189903

作品紹介・あらすじ

お君ちゃん、今日の菓子はなんだい?

江戸は麹町の菓子舗「南星屋」。
繁盛の理由は、ここでしか買えない日本全国、名菓の数々。
若い時分に全国修業に出、主の治兵衛が自ら歩いて覚えた賜物である。
娘のお永、孫のお君と親子三代、千客万来。
でもこの一家、実はある秘密を抱えていて……。
思わず頬がおちる、読み味絶品の時代小説!

「たかが菓子だ。そんな大げさなものじゃねえさ」
武士から転身した変わり種
諸国の菓子に通ずる店の主・治兵衛

「お団子みたく、気持ちのまあるい女の子になりなさい」
菓子のことなら何でもござれ
驚異の記憶力を持つ出戻り娘・お永

「お菓子って、面白いわね、おじいちゃん」
ただいま花嫁修行中!
ご存じ、南星屋の”看板娘”・お君

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 江戸では滅多に食べられない珍しい菓子を扱う行列のできる和菓子店、南星屋(なんぼしや)を舞台に繰り広げられる滋養豊富、風味絶佳な時代小説。
    タイトルは『まるまるのいが』と読みます。


    いやぁ~、面白かった!
    ひさびさの時代小説で初読み作家。
    読むまでは不安だったけど
    まったく問題ナシ!
    食べ物を描いた人情話だから
    食いしん坊体質の自分の好みにピッタリハマったのかな(笑)
    (表紙に釣られて良かった~笑)

    それにしても全国の和菓子が
    江戸にいながら買えるという設定が素敵過ぎます!
    今で言えばネットショッピングみたいなものだし、
    実際そんな夢のような店が当時の江戸にあったら
    今とは比べものにならないくらい
    繁盛したんじゃないかな。


    いつも明るく元気ハツラツな
    南星屋の看板娘、お君(おきみ)、16歳。

    お君の母親で出戻りの身だが、
    驚異の記憶力を持つお永(おえい)。

    南星屋の主(あるじ)で
    七福神の寿老人に似たお君の祖父の治兵衛(じへえ)。

    治兵衛の弟で不良オヤジ、
    相典寺(しょうてんじ)の大住職にして
    南星屋の名付け親の石海(こっかい)。

    カスドースの一件以来何かと南星屋に出入りし力になってくれる、
    平戸藩松浦家の家臣、河路金吾(かわじ・きんご)。

    この主要メンバーがみな、生き生きとして
    読めば容易に映像として浮かんでくるから、
    自分の周りにいる身近な友達や親戚のように思えて(笑)
    親近感が湧いてくるんですよね。

    だから話の先が気になるし、
    元気な顔が見たくて
    また会いたくなる。
    (NHKの連続ドラマなんて合いそう)


    中身に軽く触れると、

    門外不出の菓子「カスドース」の製法を盗み出した疑いをかけられ窮地に陥る治兵衛と南星屋を描いた
    『カスドース』、

    南星屋に弟子入りに来たのは
    武家の倅(せがれ)でまだ10歳の子供だった…
    『若みどり』、

    近頃、何をするにしても上の空のお永を見て、好きな人がいるに違いないと尾行する娘のお君と河路金吾だったが…
    『まるまるの毬』、

    治兵衛が菓子職人になるきっかけとなった弟・石海との椎の木の思い出を描いた
    『大鶉(おおうずら)』、

    河路金吾に河路家に嫁入りしてほしいと突然告白されたお君だったが…
    『梅枝(うめがえ)』、

    など全7編の連作短編となっています。


    武士の身分を捨て、16年もの間、国中を渡り歩き、
    その土地土地の菓子を研究し、菓子職人としての腕を磨いてきた治
    兵衛。
    南星屋が魅力的なのは
    味の良さと諸国の名菓の物珍しさだけではなしに、
    下々や貧しい武士にも口にできる
    安さと手軽さを身上としてるところも、素晴らしいのです。
    (儲けは殆どないギリギリの暮らしだけど…)

    そして毎話ごとにお菓子をモチーフにし、
    人情を絡めたストーリーが展開されていくのも実に巧みです。

    お永やお君の切ない恋の話も織り交ぜながら
    商売敵である柑子屋(こうじや)の主人、為右衛門(ためえもん)からの嫌がらせや、
    治兵衛がひた隠しにする「ある秘密」がなんなのかというちょっとした謎もあり、
    飽きさせない構成も上手い。


    武蔵熊谷の『五嘉棒(ごかぼう)』、
    伊予松山の『桜羊羹(さくらようかん)』、
    糖蜜をからめ砂糖を贅沢にまぶしたしっとり甘い
    『印籠(いんろう)カステラ』、
    夏の川に緑の楓が舞っているような目にも美しい寒天菓子の
    『錦玉羹(きんぎょくかん)』、
    白いかりんとうの『若みどり』、
    甘くて胡麻の風味が香ばしいカルタ札の形の干菓子
    『白砂松風』、
    黄色い饅頭を二つに割ると
    ゆずの香りのする月が姿を現す
    南星屋オリジナルの和菓子
    『南天月(なんてんづき)』
    などこの物語の真の主役とも言える、
    思わず舌なめずりしてしまうくらい美味しそうな和菓子の数々にも注目です。


    しかし、今作を読んで、
    あらためて思い知らされたのは
    和菓子という日本古来の食べ物のスゴさと奥深さ。

    四季の移り変わりをお菓子にたくし、
    日本人は、目で、舌で、
    味わい深い「芸術品」を作ってきました。

    和菓子のいいところは、
    花や鳥の声で季節を感じるのと同じように、
    お菓子でも四季折々の季節感を味わえ、人生に色を添えてくれること。

    かたちのない気持ちや季節を
    かたちのあるものに託して伝えようとする、
    日本人の心持ちって本当にスゴいですよね。

    この小説も同じく。
    和菓子に込められた人々の思いを
    隅々まで丹誠が込められた美しさで描いていて、
    ページをめくるたびに花が咲き、 お腹の底から幸せになってくる小説です。


    和の情緒や江戸時代の空気感に浸りたい人、
    和菓子に目がなくて時代小説が好きな人、
    時代小説は苦手だけど、和菓子なら任せて!って言える人にオススメです。

  • お江戸の小さな和菓子屋さんの話です。
    全国各地の菓子を作って出すという変わった店で、すぐに売り切れてしまうという。

    麹町にある「南星屋」は人気の店。
    主人の治兵衛が諸国を修行して歩いて覚えた菓子を2つ3つだけ選んで作るため、珍しい菓子が食べられるのだ 。
    この治兵衛、もとは武家の次男という出身だが、子供の頃からの菓子好きがこうじて、この道を選んだ。
    裏通りの小さな店を親子3代でやっています。

    娘のお永は出戻り、菓子に関しては驚異的な記憶力がある。
    孫のお君は、花嫁修業中の元気な看板娘。
    ちょくちょく訪ねてくる和菓子好きの高僧は、治兵衛の弟。
    献上の品を巡って大名との縁ができたり、問題が起きたり。
    お君が心通わせた相手と、まとまりそうになったのですが‥

    次々に出てくるお菓子がどれも美味しそうで、季節感を大事にしていること、当時の工夫や楽しみにしている様子、微笑ましくも羨ましい限り。
    武家の息子が菓子屋になれる、跡取りでなければある程度の融通がきくところもあったのですね。
    旅といっても難しい時代に、各地を回るほどの熱意があればこそ、かもしれませんが。

    治兵衛には実は出生の秘密があり、これが後々まで思わぬ不自由さにつながる、そういった時代の厳しさもあります。
    ほろ苦いものもありましたが、家族が思いやり支え合う、ほのぼのした読後感に和みました。

  • 江戸の町屋の菓子屋「南星(なんぼし)屋」を舞台にした時代小説。人の温かさ、家族のありがたさが心に沁みる。

    登場人物の個性がしっかりと書き分けられていて、物語の世界にスッと入って行かれた。店主治兵衛の出自の秘密、娘お永の別れた夫の出現、孫娘お君の縁談話など気になる事件が物語の中に上手く配置されていて、読んでいてまったく飽きない。

    話の中で大切な役割を果たしているのが治兵衛がつくる和菓子。これがとてもおいしそうで食べてみたくなる。描写が巧みで、その色合いや感触、味や匂いまでもが伝わってくるよう。菓子の蘊蓄も面白くためになった。

    五感が刺激される物語に満足!
    登場人物のその後が気になるし、この作家さんが描くお菓子をもっと味わってみたい。続編が出るといいな。

  • 少しでもおいしいと思ってもらえるお菓子をと、
    こつこつ商売している「南星屋」に次々とふりかかってくる困難。
    それでも家族皆、お互いを思い支えあって乗り越えていく。
    ほんわかと温かくやさしい気持ちになれるお話でした。
    こういうお話は大好きです。

    いつもまんまるい心でいられれば一番いいのにね。
    なかなか難しい…。

    和菓子食べたくなっちゃった~
    ぜひ続編を読みたいです!

  • 美味しそうな菓子に、人の温かい心がじんわりしみる良い話(*´-`)でも店主の治兵衛が将軍さまの血をひいているという事で、いろいろな災難が降りかかる(T-T)10歳の頃から武家を離れ、菓子職人として生きているのに、どこまでも血筋が追いかけてくるって辛いな(._.)食いしん坊で立派な寺の住職となった弟(石海)がいなかったら、治兵衛はどうなっていたことか…孫のお君の縁談は悲しい結果になってしまったけれど、菓子職人になるという新たな目標もでき、菓子屋「南星屋」独自の菓子も生まれ良い終わり方(^^)南天月ぜひ食べたい!近所にあったら、常連客になる事間違いなし♪

  • 麹町の南星屋は、店主治兵衛・娘のお永・孫娘のお君の3人が営む菓子店。
    その店は、店を構えるまでは全国を渡り歩いて修行した主の憶えた、諸国の名物菓子を日替わりで売る、一風変わった店だった。

    江戸の菓子店を舞台にした連作短編集。
    身分を捨てて菓子職人となった治兵衛が、出生の秘密に関わる困難にあい、苦しみながらも、お永、お君、そして固い絆で結ばれた「弟」で僧侶の石海らに背を押され、ついに自分だけの創作菓子を作り出す。


    とにかく、菓子の描写が楽しく、美味しそうだったので、和菓子が食べたくなった。
    時代もので、料理人が登場するものはいくつもあるけれど、菓子職人というのは初めて。
    しかも、サクセスストーリーではなく、言ってみれば齢六十をこえたひとりの職人が、長い回り道をして屈託から自由になり、職人としてひとつ階段を上るまで…という物語。
    職人としての苦労話はなく、嫌な人物もひとりくらいしか出てこない幸せな世界だったので、さらっと読めた。

    それにしても、治兵衛がここに至ったのがもっと早かったらなぁ。もっと南星屋の菓子は、市井の人々を楽しませただろうにね。

    この作者の本は初めて読んだ。軽いけれど、軽薄ではないし、後味も悪くなかった。
    また読んでみようかな。

  • 図書館より。
    ひさしぶりに好きなタイプの時代劇ものを読めて満足。
    お菓子、美味しそう。出てくる人たちも好印象。
    続編、ないのかな。
    文庫化したら手元に残したい一冊。

  • 和菓子たべたい…
    あつーいお茶をすすりながら。

    お菓子の描写も、お話も、ふんわり柔らか。
    きっとこんな日常がどこかであったんだろうなと、思えるような。
    思い合う心を持って生きたいものです。

  • 先に「亥子ころころ」、を読んでしまいました。美味しそうなお菓子と、気持ちよい人達。こういう作品は大好きです。お君には可哀相な最後だったけど、本当に心の綺麗な子なので救われました。柑子屋絶対許すまじ。もう一度「亥子~」を読みたくなりました。甘いものと、時代物がお好きな方、人情味溢れる優しい話が好きな方にぜひとも♪

  • この作者の本を読むのは始めて。
    文字が小さい。
    字が小さいので、なかなか読むのが大変だった。
    読んでいて、楽しかった。
    孫娘のお君が楽しい。

  • みをつくし料理帖を読んだ時も思ったけど、江戸時代の人達は旬の料理やお菓子を食べて、季節を感じるんだなぁ。

    昔は今みたいに保存が出来ないから当たり前なんだろうけど、とっても風流だなと思った。

    2017.10.2 読了

  • 最初は人物の関係図がごちゃごちゃになるー!
    なんておもっていたけれど。
    ものの数分で馴染んでいました(笑)

    お菓子にまつわるエピソードもよかったし、
    物語もよかった…!

  • 江戸時代の和菓子屋を営む一家のお話。
    出てくる人がみんな素敵で奥深い。
    華やかではない
    豪勢でもない
    庶民の人々に寄り添い続けた昔ながらの和菓子の奥深さを感じる1冊。
    装幀もまた素敵。

    講談社  2014年
    装幀:鈴木久美  装画:彦坂木版工房

  • 麹町にある南星屋という和菓子やさんの話。
    武家を出て腕一本で菓子職人になった治兵衛は、日本全国を旅してそこで見聞きした菓子を菓子帳につけて、そこからここでしか買えない菓子を作って売っている。いわば、伝道師だ。自分が覚えたものを、自分だけ味わって満足せずに持ち帰るということは、それだけ責任も伴うし、大それたこと。
    でもそれを、どうだこんな菓子があるのだぞ、と誇示するのではなく、謙虚にさらっと提供するから素敵だ。そして、そのお菓子ひとつひとつに今の自分の気持ちを乗せているからおもしろい。
    お団子は「まるまる」。
    丸くて白い団子のような、まあるい気持ちでいてほしい。
    その父の思いに答えようと、己の毬を表に出せず外ではなく内に纏い、理想の娘を演じ続けてきた娘。そんな娘に、敢えて毬を外にくっけたとげとげの毬餅をつくらせるお父さんがいじらしい。
    暑さが和らいだ夜に、空でも見ながらもしゃもしゃ団子が食べたくなる本。

  • 【最終レビュー】

    予約著書・約、3ヶ月待ち。図書館貸出。

    最近、立て続けに長崎が舞台になる『映画館鑑賞作品』が並ぶ中で、この著書のサブメインとなる場所が

    [長崎・平戸]=平戸藩の人達

    が出てくることで、時代背景もグッと身近に感じられては、物語もより引き立っていた印象です。

    オランダとの関係が唯一あったからこそ、この当時に作られていた

    [(和)菓子の辞書的文書]が

    実際に作られていたというのも頷ける所がありました。

    土台は、ワケアリで転身した和菓子職人一家を巡る

    『人間ドラマ』

    しんみりこもった数々の

    『技あり・創意工夫で凝りに凝った「風味豊かな、和菓子の雰囲気に存分に包まれた世界」』

    を絡ませつつ、気負いなく、自然体で、緩やかに丁寧に、一人一人の人物像の『心理描写』

    +[暦の由来]・[昔ながら伝わってくる『独特の「隠語」になぞらえた「言葉」の数々』]

    といった感じで

    『江戸時代の庶民生活の「ありったけの姿」そのもの』

    を、和菓子を題材に描くことで、この当時の「歴史観」というのを感じてもらえたらという

    〈西條さんからのメッセージ〉

    が伝わってくるかのように、自身はそう感じつつ、最後まで読み進めていきました。

    [カステラ、桜羊羹、練りきり、かりんとう、新粉餅、蒸し菓子、鶉餅、生姜糖、山椒餅…]

  • 菓子屋の主人 治兵衛が色んな問題に巻き込まれるお話。
    娘のお永と孫娘のお君と実の弟 石海とトラブルを乗り越えるんだけど、四人の家族思いな言動に涙涙…
    旦那に浮気されて捨てられたお永、娘に「団子みたいに気持ちもまあるく、優しい女の子になりなさい」って言っていたお話がとても印象的。
    お転婆なお君が花嫁修業に励んでいたのに、大きな力が動いて破談になって 手紙を燃やすシーンは涙なしでは読めず…
    でも遠くに行かず、ずっとおじいちゃんとお母さんと三人で菓子屋営むのが お君にとっても幸せだったのかも、と思ったり。
    お父さんとは結局最後まで和解してないけど、お父さんのお願いで来てた左官の男の人と恋に落ちるのかな?と期待を持たせる終わり方。

    裕福でない人も買えるように 工夫して作る和菓子。食べたいなあ。

  • 登場人物がみんないい人で、おいしそうなお菓子が
    たくさん出てきて、ほんわり温かい気持ちになれる。
    食わせ物感満載の五郎さんがおきにいり(笑)
    不意に襲ってきた試練も、家族の絆が乗り越えさせて
    くれる。
    胸に灯を点してくれるようなお話。

  • 今日のお菓子は何?麹町にある小さな菓子舗・南星屋は、主の治兵衛、娘のお永、孫のお君で切り盛りし、庶民が口にできるような売値で商っていた。治兵衛が諸国漫遊して学んだ各地の銘菓を、その日の条件で2品だけ提供している。庶民が砂糖を食べられるようになったのは、江戸も随分下がった頃、お菓子は日常にある小さな幸せだった。治兵衛とその弟で大刹の住職である石海には、何やら曰くのある過去が匂わされ、お永の別れた亭主が現れ、孫娘のお君には縁談が持ち上がるのだった。お団子のように、まあるくまあるく心穏やかに。

  • 和菓子が食べたくなります! それに和菓子の名前って季節感があっていいですね。 町人に手が届くお代で、という「南星屋」主人 治兵衛の心意気が嬉しいです。こんなお店が近くにあったら絶対行ってしまうと思います。お君の縁談は残念でしたが、それを乗り越えて「南星屋」を一緒に盛り立てていける人にきっと出会えると思ってます。

  • 図書館で平置きされていて、おいしそうな太鼓まんじゅうの絵にふらふらと手に取ってしまいました。
    中身はやはりおいしそうな和菓子屋さんのお話。
    和菓子や南星屋は一風変わった和菓子やで開店はお昼過ぎ、売るお菓子は毎日日替わりで2種類くらい。
    売り切れたときが閉店。
    店主、その娘、その娘(店主の孫)と3代の3人で作業分担して店を切り盛りしています。
    店主は全国各地で修行を積み、その土地の名物を習得して自分の店を開店しました。
    ひとつのお菓子を取り上げ、そのお菓子にまつわる話を短編に仕上げていますが、話はずっと続いていきます。
    店主に隠された出生の秘密・・・
    その事実がいろいろな波紋を広げていきます。
    いつの世も理不尽なことはあるものです。


  • 江戸の町にある小さな菓子屋を巡る人情時代劇。
    江戸麹町にある「南星屋」は間口一間ほどのささやかな菓子屋。若い頃から日本全国を巡り歩いて菓子修行を続けて来た治兵衛と娘のお永、孫娘のお君の三人で店を営んでいる。店の看板となる菓子はない。毎日変わる品書きと、材料を工夫して貧しい庶民でも買いやすい値段、江戸では滅多に食べられない珍しい菓子を目当てに並ぶ客のおかげで毎日が売り切れ御免の繁盛店だ。
    カスドース、若みどり、大鶉、橘月…菓子の名前、作り方、それにまつわるエピソードが甘い香りとともに涙と笑いを誘う。
    実はこの治兵衛、五百石の旗本の次男。しかも実母は叔母で、さるお方の御落胤。それが何故菓子屋になって裏長屋住まいなのか?
    複雑な武家の事情や出てくる菓子が珍しい上にかなりハラハラさせられる事件が度々持ち上がる。父、娘、孫娘、三人それぞれの性格と互いを思う気持ちや、今は大きな寺の住職となった治兵衛の義理の弟の人物像が面白い。涙と笑いで心が温かくなる連作短編集。

  • 武士から転身した変わり種、諸国の菓子に通ずる店の主・治兵衛。菓子のことなら何でもござれ、驚異の記憶力を持つ出戻り娘・お永。ただいま花嫁修業中!ご存じ、南星屋の“看板娘”・お君。親子三代で営む菓子舗「南星屋」。繁盛の理由は、ここでしか買えない日本全国、銘菓の数々。でもこの一家、実はある秘密を抱えていて…。思わず頬がおちる、読み味絶品の時代小説!

  • 安定感があって落ち着いて読めた。
    和菓子食べたくなる!
    お君の縁談は残念だったけど。
    行列ができるのはちょいとどうなのか分からないけども。

  • 時代物小説はあまり読むことがなく、宮部みゆきさんの「幻色江戸ごよみ」以来だと思う。
    和菓子屋が舞台とあって、あんドーナツを思い出して図書館からレンタル。

    お菓子が絡む(それも和菓子)ので勝手にのほほんとした和やかな物語なのかと思っていたが、和やかは和やかだけれど町人の苦労や主人公の治兵衛の出生の秘密など時代が時代だからこそある苦労、でも現代にも通じる親子の絆や愛、人情などが見えるとてもいい作品だった。
    やはりこういう時代ものはこうやって少しずつ読んでいって時代背景を理解した方が覚えやすいのだろうか。
    どうにも先に時代背景がわかっていないと楽しめないのでは?と考えて読むことを遠回しにしていた。

    他の作品も読んでみたい。

  • 「丸くて白い団子のような、まあるい気持ちでいてほしい。」父の願った理想の娘を演じ続けたお永は、己の毬を外ではなく内に纏うしかなかった。その毬は己だけを苛んだ。
    まあるい気持ちでいたいけど人はどこか歪なもの。
    外面だけをまるくして自分に毬が刺さるようなら、綺麗なまん丸でなくても、少しは毬を見せても、多少歪でいてもいいのかもしれない。寧ろ歪なままの姿を受け入れてくれる人がいる方がいいのでしょう。

  • 江戸の下町に小さな店をかまえる菓子屋・南星屋。
    店を象徴するような和菓子はなく、主の治兵衛がその昔、日本全国を修行した際に見たその土地の名物の菓子を出す。
    期間限定・数量限定。値段も庶民価格なので、そこそこ賑わう店なのだが…。

    収録作品:カスドース 若みどり まるまるの毬 大鶉 梅枝 松の風 南天月

  • 毒の弱い……でもほろ苦い作品。
    出てくる和菓子がどれもおいしそうでした。

  • お江戸を舞台に、小さな和菓子店「南星屋」を営んでいる家族を描いた、連作短編集。

    この物語に出てくる和菓子のように繊細な印象の、人情派の読本でした。
    人を見る目の優しさに、和紙のイメージにも似たやわらかいイメージが広がって、またたく間にこの本を大好きになりました。

    後でデビュー作の『金春屋ゴメス』の豪快さに触れ、西條さんのレンジの広さを感じたことでも、心が躍りました。これからも、あたらしい日本情緒が通ったこの著者の作品を、絶対追おうと決意。

  • 庶民価格で全国各地の銘菓が色々食べられる。こんなお店があったら通っちゃいそう。

    「若みどり」の翆ノ介のその後も知りたいし、お君にも幸せになって欲しい。シリーズ化するかな?

    ドラマ化しても楽しいかも。

  • さらさら読めて面白い。日本全国のお菓子を味わえるお菓子屋さんて、良いなあ。

全103件中 1 - 30件を表示

著者プロフィール

1964年北海道生まれ。2005年『金春屋ゴメス』で第17回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。12年に『涅槃の雪』で第18回中山義秀文学賞を受賞、15年には『まるまるの毬』で第36回吉川英治文学新人賞を受賞した。他著に「善人長屋」シリーズ、『九十九藤』『無暁の鈴』『睦月童』などがある。

「2019年 『亥子ころころ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

まるまるの毬のその他の作品

西條奈加の作品

まるまるの毬を本棚に登録しているひと

ツイートする