殺人出産

著者 :
  • 講談社
3.27
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本棚登録 : 1378
レビュー : 224
  • Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062190466

作品紹介・あらすじ

「産み人」となり、10人産めば、1人殺してもいい──。そんな「殺人出産制度」が認められた世界では、「産み人」は命を作る尊い存在として崇められていた。育子の職場でも、またひとり「産み人」となり、人々の賞賛を浴びていた。素晴らしい行為をたたえながらも、どこか複雑な思いを抱く育子。それは、彼女が抱える、人には言えないある秘密のせいなのかもしれない……。

感想・レビュー・書評

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  • 先日、村田さんのエッセイを読んだ。クレイジ-ではなかったのでほっと胸をなでおろした。(思っていたよりもノーマルなエッセイ)。『殺人出産』で村田作品4冊目。村田作品を読むと重くって「もうこの作家さん読むのやめよう…」とか思うんだけど、なぜか次の本を手にしてしまう…。何やら不思議な力を持っている。


    表紙のデザインからして斬新で斜めにピンクの切り込みがあるようで、眺めながらついつい表紙を指や手で撫でてしまう。表紙からしてインパクトがある。ムダに爽やかな色使い。


    「殺人出産」「トリプル」「清潔な結婚」「余命」の4篇。


    本当に命がけなシステム。順調に産んでも10年以上はかかるし10人も産んだら母体がボロボロになる。やめといたほうがいいよ…→「殺人出産」は、動悸がして吐きそうになった。(でも嫌いじゃないところが不思議)。読んでいるうちに、なにが正しくって何が間違っているのか、境い目が曖昧すぎて自分が立っている地面がぐらぐらと揺れているような衝撃を感じた。やっぱり考えていることが違う。善と悪。合理的、理不尽さがごちゃごちゃになり、麻痺して何が何なのかわからなくなるこの感覚がこわい。ホラーよりもこわい。


    「トリプル」は一転してお笑いじゃないけど、お笑いっぽくって滑稽でした。真弓とママの会話がかなりおかしい。


    「清潔な結婚」は、あー、なんかわかる~と思ったし、愛と結婚が一体化していない結婚っていいなー…と思いつつ、やっぱりなんか違うよなぁ…という違和感。


    「余命」は短いけど、作品内での時間の流れを感じた。なぜか一番ほっとした。


    いまこの価値観で世界は回っているけど、その価値観は明日変わるかもしれない。100年後には消えてなくなっているのかもしれない。まったく違う物事が当たり前になっているのかもしれない。そのギャップに頭が混乱しそうに…。そう思うとすべてが泡のような存在みたいに思えてきた…。


    けど村田さんの作品の中でこれが一番好きかもしれないって感じた。「殺人出産」はちょっときついけどね…。うまく表現できないけど、恋愛と結婚、繁殖が一緒になっているのは当たり前のことなんだけど、結婚して25年くらい経つけど恋愛と結婚は別物だし、それに出産も同じ土俵に置いていいのか…愛ってなんだろう…と時々考えてしまうんだよね…。この本を読んでいると今普通にある倫理や常識がぼやけて見えなくなってしまう。すごいなぁ…と圧倒された。

  • 奇妙な設定の話4編。

    10人産むと1人殺していい「殺人出産」
    交際する単位が3人の「トリプル」
    性を生活から排除する「清潔な結婚」
    死ぬ時期を自分で選ぶ「余命」

    共感は出来ないけれど、興味深く、フィクションとして楽しみました。

    いつか世界はこうなるのか。
    草食系がもてはやされる昨今、考えられないことではないけれど、私は昔ながらの泥臭い世の中の方がいいなとしみじみ思いました。

  • 表題作と、他短篇3作を収録した作品。

    「産み人」となり、10人産めば1人殺してもいい、殺人出産制度が認められた世界。
    逆に正しい手続きをせずに殺人を犯してしまった人は捕らえられて、死ぬまで命を産み続けなければならない。
    たとえ男であっても人口子宮を取り付けられ、帝王切開により出産する事になる。

    恋愛の末に性行為があって命が生まれる…という考えはもはや過去のもの。
    子孫を残すためには人工授精が一般的で、産み人ともなると神の様に崇められる存在に。

    なんだか気持ちが悪いお話しでした。

    私自身は子供は授かりもので、自然の流れで…という考えなので、赤ちゃんを量産する世界はとてもじゃないけど受け入れられないと思いました。

    10人産んだ後に行われる殺人も、なんか不気味で怖かった。

    短篇の「トリプル」も、3人で交際する事が主流になりつつある世界を描いたもので、
    斬新な発想で面白くは読めました。

    「清潔な結婚」は家庭内で性行為を排除した夫婦の話しで、これはちょっと笑えた。

    「余命」はほんとに短い4ページのお話しで、これも生と死の概念が全く変わってしまった世界が描かれています。

    世にも奇妙な物語を観た様な気分です。

  • 「産み人」になって10人子どもを産んだら殺人を犯してもいい。殺人が正当化されてる時代。
    そんなの考えられないし、10人生み終えるまで殺意というのが続くのだろうか。
    普通の日常の中で行なわれる違和感。
    ホラーやサスペンスとも違う恐ろしさのある話だった。

    他の3つの話も、そんな不思議な事が正常になってる日常。
    インパクトがあり過ぎて忘れられない本になると思った。

  • 「100年前には殺人はまったく違う意味を持っていました。だから、100年後にはどうなっているかわからないと思います」
    (育子)

    タイトルが前々から気になっていた本。
    内容はすごいブラックなんだけど何故か引きこまれる4つの短編。

    [殺人出産]…人工子宮というものがあり男性も出産できる世界。10人子供を産んだら1人殺しても良いとされる。
    [トリプル]…3人で1組の恋人関係。男2人と女1人だったり、その逆もあり。また性別関係なく同性3人の組み合わせも。
    [清潔な結婚]…性別のない結婚生活。
    [余命]…“寿命”というものがなくなり自分の好きな時に好きな死に方をする。

    こんな事はないだろう…と思うが何年後には誰かが始めて最初は周りから否定されると思うが、更に何十年後かには当たり前に受け入れられているのかもしれない。怖い。

  • 2016/5/7

    普通、正しいってなんだろう?
    2人でカップルとして付き合うこと、性器だけで行うセックス、殺人は悪であること、寿命は自然にやってくること、これはいま現在のわたしたちだけにとっての普通なのかな。
    村田沙耶香作品を読んでると普通がわからなくなる。そして今わたしの思想が正しいのか不安になる。

  • 2019.08.21 読了
    『コンビニ人間』が面白かったので、同じ作者の作品を。分かるところもあったけれど、全体的には気持ち悪いと感じてしまった。正しいってなんだろう。その概念自体が覆される。

  • 昨今騒がれている「男女平等」について別の視点から描いた作品。なんて生易しいものではなく、別の視点どころか別の次元、違う惑星から捉えた作品。 男女という性別を超えて生と死も一緒に語ってしまう圧倒的なクレイジーさ。 芥川賞のコンビ人間は、まだ序の口で地球人間もそれなりのクレイジーだったけど、収録されている1つ目の殺人出産もなかなかの物。後半の3作品は、それに比べるとライトに感じるけれど、それはもう村田ワールドという異なる惑星に馴染んでしまったためかもしれない。
    まだまだ読みたい!と思う村田作品でした。

  • 人をひとり、合法的に殺すために子供を10人産む。
    10人産めば、ひとり好きな人間を殺せるという法ができた近未来では、人を殺すために産むことを決めた人間を「産み人」と敬い、「産み人」に指定されて殺された人間を「死に人」として尊ぶ。
    何が狂っていて、何が正しいのかも曖昧で不安定な世界を描いた表題作の他、三人で付き合い性交するのが当たり前になった世界を描いた『トリプル』、夫婦の間に一度たりとも性を持ち込まずに子供を生もうとする清潔な結婚生活を目指す男女を描いた『清潔な結婚』など、不思議な味わいの短編が収められている。

    どの短編も、薄気味が悪いと言えば悪い。
    でも、それだけではない、奇妙な魅力がある。
    正常と異常の境目はごくごく狭く、不確かなのだということを目の当たりにして、ぞっとするような、逆に安心するような、言葉に尽くしがたい魅力だ。

    大真面目な顔をしてホラを吹かれているような、淡々とおかしなことを語られているような、不思議な気持ちになった。

  • グロテスクなのに透明感があって、戸惑う。
    異常が正常とされる世界をガラス越しに見ているような感覚に陥る。
    本の中で価値観や倫理観を飛び越える体験ができます。

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著者プロフィール

村田沙耶香(むらた さやか)
1979年、千葉県印西市生まれ。二松學舍大学附属柏高等学校、玉川大学文学部芸術学科芸術文化コース卒業。
2003年『授乳』で第46回群像新人文学賞優秀賞を受賞しデビュー作となる。2009年『ギンイロノウタ』で第22回三島由紀夫賞候補及び、第31回野間文芸新人賞受賞。2010年『星が吸う水』で第23回三島由紀夫賞候補。2012年『タダイマトビラ』で第25回三島由紀夫賞候補。2013年、しろいろの街の、その骨の体温の』で第26回三島由紀夫賞受賞。2014年『殺人出産』で第14回センス・オブ・ジェンダー賞少子化対策特別賞受賞。2016年『コンビニ人間』で第155回芥川龍之介賞受賞。
2018年8月末、『地球星人』を刊行。

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