「生命力」の行方――変わりゆく世界と分人主義

著者 :
  • 講談社
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レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (402ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062190633

作品紹介・あらすじ

今、何が起こっているのか? 私たちはこれからどこへ向かうのか?
複雑化する現代社会で「生きづらさ」を抱える人々に、新しい人間観「分人主義」を提示して大きな反響を集めた作家・平野啓一郎。本書は著者が、同時代の政治経済社会から文学・アート・エンタテインメントまで、多様な現実の事象と向き合って生まれた思考の軌跡としての評論・エッセイ、および各ジャンルの第一人者との対話をあわせて収録する、7年ぶりのエッセイ&対談集です。いわば平野自身による「分人主義」実践篇として、様々な場面で、様々な視点で、様々な智者と共に「今」を考え、未来へのヒントを提供する、待望の一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 途中難しくてわからない箇所もあったが、平野啓一郎さんがぎゅっと詰まった一冊だと思った。横尾忠則さんとだけ、長電話をするというのもわかる気がした。

  • 作者の文学、アート、音楽、ファッションといった様々な分野への造詣の深さには感服せざるを得ない。自分と同い年くらいなのに圧倒的な知識の差を感じ、恥ずかしくなる。

  • 社会からアート、エンターテイメント、そして文学まで、多様性における生命力(強い影響力を持つこと)が何処に向かうのかをエッセイと対談で考察、通低するのは個人の多様性である分人です。本丸の文学についてはやや難解ではあるものの他の分野での著者の博覧強記ぶりには驚かされる。先日参加した人工知能のイベントでは暦本教授と対談もされていたので、次は人工知能関連のエッセイにも期待したいところです。

  • 過去に発表されたエッセイと対談集。
    アートやエンターテイメント、文学についてのエッセイが中心だが、元ネタが分からないので理解も中途半端。
    けれど、新たなアーティストを知ったのでそれだけでも得した気分。
    対談は、森達也氏とのものが特に面白かった。
    ノルウェーで起きたテロ事件の話(P122)はとても考えさせられた。

  • 平野啓一郎のエッセイ集
    社会論、思想論からエンターテインメント論まで、理論の納得感と博覧強記ぶりに感動しました。
    以下、印象的だったところ
    ・教養は話題のデータベース。話題たりうるトピックが色々ある中でも、それを話題にすることでコミュニケーションが一段上等になるものが、教養だった(p.18)
    ・殺人事件には赦す本来の主体がいない(p.47)
    ・機能分化された社会では職業選択を自由化することが効率的。職業選択は義務でもある。自分のアイデンティティーに相応しい職業を選べと。自分とは何かを問うて人生の目的を考える必要が生じる(p.55)
    ・神秘主義・オカルティズムにおける病気治し。万人が否定しない価値、健康と幸福(p.59)
    ・松坂の60億円は"外貨"(p.84)
    ・原発と偽ソフィー問題。原発問題に関しては、ハイデッガーと逆のことを言わなければならない。すなわち、人は千年後、万年後にも生きているかのように考えなければならない(p.137)
    ・全体意志と一般意思。前者は特殊意志の集合(p.147)
    ・キャプ翼のロベルト本郷(p.158)
    ・PAシステムはヒトラーの演説のためにナチスが開発したとされるが、ロックコンサートはそれを言わば民主化した(p.185)
    ・人間は、穏やかなコミュニケーションの中では「人当たりのいい自分」をプレゼンしようとするが、危機的な状況に陥ってイライラさせられると、本音を言おうとする(p.293)

    面白かったです。

  • 平野氏が小説第三期(決壊、ドーン、かたちだけの愛、空腹を満たしなさい)にかけて、雑誌や新聞に発表した時事問題を扱った作品論やエッセイ、そして対談をまとめたもの。
    彼の唱える「文人主義」については、もちろん何度も触れられているが、印象に残った発言は、①普段、あまり人としゃべらず(友人との連絡も)メールですませる作家が、横尾忠則さんとは電話で何時間も話し合ったりする仲だということ。②阪神大震災の時は(京都との距離も近すぎたせいもあり)現地に赴こうとしなかったが、東北には数週間後に入ったこと。③ドストエフスキーの今日的意味の考察。死刑への絶対的な否定④サロメの翻訳⑤三島由紀夫論など。

  • 平野啓一郎さんの、知識の広さや、感性の多様さがわかる本。他の著書やコラムなどで読んだ内容もありましたが、様々な切り口の対談などは、とても読みやすく面白かった。まだ読んでない平野作品を読みたくなった。

  • 各著名人との対談・メディアへの掲載文章のまとめ

    資本の誕生
    ・生産 →物質の消費(大量生産・大量消費)
    ・欲望の連鎖
    ・感情の暴走
    (承認/つながりを過剰に意識させられる。
     また、人口が多くなり、第三次産業ーサービス業が中 心になった。そのため、精神的なストレスや疲れが多 くなり、怒りや不満のはけ口を求め続ける。)

    ⇒「癒しとは、自己責任、甘え、善悪の価値観、資本主義」

    ・許しは可能か?
     刑罰ー厳罰化 罪を犯した者は刑によって裁きを受け        るべき。
    犯罪白書では犯罪率は年々減少傾向にある。 メディアのセンセーショナルな報道や論調。犯罪者に関しては、加害者=普通の人ではないという固執した伝え方。

    ※すべての加害者に関してステレオタイプが当てはまるのかどうか。ごく普通の人が犯罪を犯す場合もあり、様々な背景や心身的状況を考慮しなければ報道内容も一方向しか見えてこない。

    再犯率をいかに減らし、日常生活を過ごせるプロセスを作っていく更生の意味が形骸化ー保護司の減少と刑務所の高齢化など
    許す/許さない 葛藤ー被害者にとっては一生涯背負う重い思い。

    著者p47ー「殺人事件に関して、赦しの問題が一番難しいのは、赦す本来の主体がもうすでにいないということだと思うんです」

  • 世の中をこういうふうに批評し、それが急所を突いているかもしれないと思わせる文章に出会った感じ。落ち着いてる。小説は未だだが読んでみたい。若くして逝った父親のことを書いたところは何度か読み返した。

  • 芥川賞を史上最年少で受賞したあの平野啓一郎のエッセイと聞いて手にとってみたが、期待はずれ。なるほどと思う考察もあったが、素人に毛が生えた程度。

    雑誌に発表したものなのでまとまりがないのは致し方ないとしても、自作の宣伝のために文章を書いている感じがしてならない。インタビューも豊富な文学的知識を披露するが、社会を分析するにいささか思考が甘い。

    この人はあまり人間観察ができない人なのだろうか。
    文語体で話題をさらったあの名作からすでに二十年近く経つも、平常文でのエッセイはあまり練られていない。骨子となる「分人主義」なるものについても、個々人が分けられない個性ではなく、多様な顔をもつ、という単純な指摘のみで終わっている。

    横尾忠則に対する雑感はおもしろかったが、意外と自堕落なことを書き付けている。かなりのネットオタクらしくて、足で稼いで情報を得ていないなと感じた。本で調べたらわかることを組み合わせているのみで、あまり感性のある方ではない。

    最後は飽きたので読み飛ばした。対談の相手ももっとまともな人を選んでほしい。

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著者プロフィール

平野 啓一郎(ひらの けいいちろう)
1975年、愛知県蒲郡市生まれ。生後すぐ父を亡くし、母の実家のた福岡県北九州市八幡西区で育つ。福岡県立東筑高等学校、京都大学法学部卒業。在学中の1998年、『日蝕』を『新潮』に投稿し、新人としては異例の一挙掲載のうえ「三島由紀夫の再来」と呼ばれる華々しいデビューを飾った。翌1999年、『日蝕』で第120回芥川賞を当時最年少の23歳で受賞。
2009年『決壊』で平成20年度芸術選奨文部科学大臣新人賞、2009年『ドーン』で第19回Bunkamuraドゥマゴ文学賞、2017年『マチネの終わりに』で第2回渡辺淳一文学賞、2019年『ある男』で第70回読売文学賞(小説部門)をそれぞれ受賞。2014年には芸術文化勲章シュヴァリエを受章した。『マチネの終わりに』は福山雅治と石田ゆり子主演で映画化が決まり、2019年秋に全国で公開予定となっている。

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