明日は、いずこの空の下

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 611
感想 : 88
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  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062190886

作品紹介・あらすじ

高校生の頃から、これまでに訪れた様々な国々での出来事をつづりながら、
「あの頃の私」が「いまの私」になっていくまでを書いてみようと思います。(メッセージより)


小説現代2013年1月号(2012年12月22日発売)から約2年間連載されたエッセイを書籍化! 受賞記念特別寄稿2編をあわせた、22編を収録。
 
「国際アンデルセン賞」は1956年に創設された児童文学の本の分野で最も歴史と権威のある国際的な賞です。2年に一度、子どもの本の世界に最も貢献した作家1名と画家1名に送られます。選考水準の高さから、児童文学のノーベル賞と称されています。作家賞の受賞は1994年のまど・みちおさん以来の快挙です!

感想・レビュー・書評

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  • 『守り人』シリーズ、『鹿の王』などのファンタジー作家で文化人類学者でもある上橋菜穂子さんの旅エッセイ。
    旅といっても、高校の研修旅行で訪れたイギリスの思い出から、フィールドワークで訪れたオーストラリアまで、目的は様々だ。

    上橋さんの著書『物語ること、生きること』では、上橋作品の芯ともいうべき考え方が提示されていて読みごたえがあったが、本作は上橋作品のエピソードの原石を見るようで楽しい。

    『守り人』シリーズの一つ『天と地の守り人』で、女用心棒バルサが、以前に護衛を頼まれた新ヨゴ国皇子チャグムと再び旅をするエピソードの中で、自分の乗る馬に名前を付けたチャグムに対し、「名前なんかつけたら、わかれるとき、つらくなるだろ。」とバルサがいうシーンがある。いくつもの修羅場をくぐってきたバルサの孤独を表す印象深いシーンだが、本書の中で、クリスマスに食べるための鯉に名前を付けてしまい、子供たちに大泣きされてお父さんがドナウ川に放しに行くのが風物詩となっているブダペストのエピソードがあって、あ、これがあのシーンに生かされているのか、とうれしくなった。それにしても、ドナウ川は鯉でいっぱいにならないのかな、と余計な心配をしてしまう。

    その他に印象に残ったのは「月の光に照らされて」というエピソード。フィールドワーク先のオーストラリアで雨の夜にトイレに行ったら、圧倒的な暗闇に飲み込まれてしまったという恐怖体験を述べたエピソードだが、私も旅行先のアメリカユタ州で同じような体験をして、自分が知っている夜の闇は本当の闇ではなかったのだ、と改めて感じたことを思い出した。

    上橋さんのファンタジーには、圧倒的なリアリティと、そこはかとない哀しみを感じる。
    「いま、ここにあるものの奥に、人は様々なものを見ている。見たこともない人の暮らしを想うことができる。」「『現実』とは、きっと、こういう想いを含んだものなのだ。そして、ファンタジーは、そういうすべてを塊で掬い上げることができる大きな器なのだ」。

    上橋作品の魅力の根源を知ることのできる一冊である。

  • 図書館より。
    やっぱり上質な物語を紡げる人は、エッセイも上手いな~。
    最近縁があって、エッセイを読む事が多いんだが、読んでると何故か心がほっこりします。
    表紙のイラストも、素敵!
    文庫化したら、購入希望。

  • 旅を綴ったエッセイ集。
    なのですが、紀行文としてさほど異国情緒あふれるわけでもなく
    旅エッセイと聞いてイメージするほど、面白おかしいハプニングがあるわけでもありません。

    旅に出て、ふと広い空を眺めて、風に吹かれて雲の流れを見たり、違う言葉や匂いの中でぼんやりしたりするような空気感です。
    懐かしくでも色鮮やかな思い出のひとつひとつを取り出してきたような。

    エッセイとして面白いかと問われると、どうかな?と思いますが
    文化人類学の教授であり稀代の児童文学ファンタジーの担い手である上橋菜穂子さんが、
    こういう経験からバルサやエリンを生み出し、物語の世界を広げていったんだなぁという片鱗を感じられました。

  • 文化人類学者で作家の上橋菜穂子氏のエッセー。十七歳の夏にイギリスに研修旅行に行ったのを皮切りに、世界の国々に出かけた経験のエッセー。語り口調が時に口語調になり、読んでいて楽しかった。

  • 上橋菜穂子さんのファンには楽しい内容。外国で出会った人や物、出来事が綴られています。

  • 上橋菜穂子さんのエッセイ。

    「住む国、場所によって時間の流れって違う」に共感。ほんとにそう。でもゆっくりすぎると何もしてなさに自己嫌悪しちゃうし、早過ぎるとアップアップしちゃう。
    バランスが大切だよね。きっと。

  • やっぱり上橋さんは好きだなぁ。生まれ変わるなら、文化人類学者になりたい、といつも思う。また旅がしたくななった。世界の半分も知らない、というエッセイに少し目が開いた。沢山の国に行ったけど、まだまだ見てない。スコットランド、ウェールズ、イラン、行きたい。

  • やはり上橋菜穂子さんのエッセイは面白い!!ひとつひとつのエピソードが好奇心と発見と優しさに溢れ、世界をすぐ近くに感じました。
    ああ、もっとたくさんの作品を受容し、たくさんの人に出会い、もっともっといろんな世界を見てみたいなあ。

  • 上橋さんの著作を読んでいたときはもっと物静かな印象だったけど、こんなにバイタリティー溢れる人なんだ~、と驚いた。

  • 世界の半分を知らずに生きているってその通りだなあ、とぼんやり。
    海外に行ったことがない分、ちょっといってみたいな、と思わされました。
    あと、フレンチトーストとか食べ物がおいしそうに思えてくる。

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著者プロフィール

作家、川村学園女子大学特任教授。1989年『精霊の木』でデビュー。著書に野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞した『精霊の守り人』をはじめとする「守り人」シリーズ、野間児童文芸賞を受賞した『狐笛のかなた』、「獣の奏者」シリーズなどがある。海外での評価も高く、2009年に英語版『精霊の守り人』で米国バチェルダー賞を受賞。14年には「小さなノーベル賞」ともいわれる国際アンデルセン賞〈作家賞〉を受賞。2015年『鹿の王』で本屋大賞、第四回日本医療小説大賞を受賞。

「2020年 『鹿の王 4』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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