闇に香る嘘

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 1104
レビュー : 206
  • Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062190947

作品紹介・あらすじ

村上和久は孫に腎臓を移植しようとするが、検査の結果、適さないことが分かる。和久は兄の竜彦に移植を頼むが、検査さえも頑なに拒絶する兄の態度に違和感を覚える。中国残留孤児の兄が永住帰国をした際、既に失明していた和久は兄の顔を確認していない。

27年間、兄だと信じていた男は偽者なのではないか――。
全盲の和久が、兄の正体に迫るべく真相を追う。

選考委員の有栖川有栖氏が「絶対評価でA」と絶賛し、選考会では満場一致で受賞が決定。
第60回を迎える記念の年にふさわしい、江戸川乱歩賞受賞作!

感想・レビュー・書評

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  • 第60回江戸川乱歩賞受賞作品。
    選考委員の絶賛を浴びたと言うこともあり大いに期待して読む。
    うーむ、正直いってそんなに絶賛するほどの作品なのだろうか。
    いやね、面白く読めましたよ。
    特に後半なんて明日に障ると思いつつ寝る間を惜しんで読んじゃったもの。

    40代で失明した盲目の男性が主人公。
    戦後、満州から引き揚げてきたのだがその際に兄と生き別れになっている。
    その兄が残留孤児として帰国し20年以上もの月日がたっていた。
    ところがあることをきっかけにその兄が本物の兄かどうか不審に思うようになった。
    真実を知るために動き出した彼には様々な困難が待ち受け時には自分の命さえ危機にさらされてしまう。
    果たして兄は、あの兄なのか・・・。

    全盲の人がどんな生活をしているのかこの本を読むと良く分かる。
    描写がリアルで(果たして本当にリアルか分からないが)、読んでいる私まで暗闇に包まれたような重苦しい閉塞感が襲ってくる。
    さらに中国残留孤児の現状がこんなに厳しいものとは思いもしなかった。
    テレビで残留孤児たちの肉親捜しが行われていたのは遠い昔の記憶でしかなかったが、今なお当事者たちは様々は問題を抱えているのだ。
    それにしても政府の対応もひどい。

    こういった社会的背景の描写は緻密な取材に基づいているのだろう。
    ただ、肝心の人物描写がいかんせん浅い。
    この辺りが良くなったら物語に深みが出るのにと思うと非常に惜しい。
    最後の大団円のオチもちょっとね。
    さほどミステリーを読まない私がこんなこと言うのもなんですが。

    でもデビュー作でこれだけ読ませるのは手放しですごい。
    今後に期待したいと思います。

  • どういう時人は嘘をつくのだろう。自分のため?誰かのため?許されない嘘、優しい嘘、悲しい嘘…。人を疑うことは簡単で信じることは難しい。全盲の和久なら尚更だろう。そんな和久を襲う数々の事件。
    中国残留孤児の兄への偽者疑惑、送られてくる謎の俳句、本物の兄を名乗る男の出現、抜かれた自宅の電話線、腎臓移植を待つ孫娘の失踪。和久は闇の中から真実を追う。結末でわかる嘘。それを知った時和久の心は…。
    人間の絆とは何かを考えさせられた、江戸川乱歩賞受賞作品。

  • これは参った!
    なんかサスペンスというよりも中国残留孤児の話だけが
    したかったんちゃうんって思っていたら
    最後のどんでん返しでうやむやが全部つながるという!!
    これぞ小説!

  • 帯文で興味を持って購入。
    27年間兄だと信じていた人物は何者なのかという謎を全盲の弟が追う、という設定。
    全編に漂う閉塞感、不安感はさすがの筆力で、読みながら「見えない」感覚をずっと味わっていた。こんなに不安で閉じ込められた感じがするものなのかと。
    残留孤児の問題もそうだが、満州からの引き揚げの話はとても重かった。私の父も引き揚げ者なのだ。かつて一度だけ話をしてくれたが、とても苦しそうだった。
    ちょうど敗戦記念日の今日この作品を読んだことになにかしらの意味があるようにも思う。
    疑念や疑惑が次々に生まれては反転し、いったいどういうことなのかという興味に引っ張られて一気に読んでしまった。たった一行ですべてが変わる、と選評にもあるが確かにそうだった。伏線も見事に回収されていて、途中で浮かぶ違和感がきちんと解決されていて気持ちがいい。ラストはじんわりとあたたかいものが胸を満たす。
    大変読み応えのある作品だった。

  • ちょっと無理がないか?? と思ったけれど主人公が盲人ということで世界が手さぐり。何もかもが疑心にまみれているところがリアルだった。
    終わり方がご都合主義だったけれど中国残留日本人孤児と言う扱いづらいテーマを絡んで最後まで考えせられつつドキドキハラハラした。

  • 途中、中国残留の歴史のややこしさに中だるみさしたものの、終盤次々に伏線の回収がなされ、予想外の展開に最後の最後まで楽しめた。視覚障害者の主人公と言う設定が、感謝や思いやりまで見えなくなっていたとは、と心情面での変化も気持ちよかった。

  • 長い時間をかけて読了。

    視覚障がいを持っている主人公が、兄への疑惑からその謎を解こうと奔走する

    全盲の世界を細かく描写していて、日常の不自由が細部まで伝わってくる。また、見えないことによる本人の思い違いも盛り込まれていて、その要素が本作をより魅力的にしているように感じた。
    終わり方も大団円で、読み終わりもスッキリしているので、小説を読んだという感触でした。

    ただ、綺麗に纏まっている分、謎解きに伴うハラハラ、ドキドキは物足りなくて、のめり込むという感覚はなかったかな。
    手に汗握る!!ような展開が個人的には欲しかった!!

  • 久し振りに続きが気になり早々に読了。
    中国残留孤児の事は小さな頃にテレビで政見放送のようなのを見てうろ覚えで知っていましたが、よりリアルに当時の状況の一面が分かった気がする。

    最後のオチが分かった後の展開が色々と『それは無理でしょ!?』ってなったがまぁ楽しめたと思います。

  • <あらすじ>
    村上和久は孫に腎臓を移植しようとするが、検査の結果、不適合だと分かる。和久は兄の竜彦に移植を頼むが、検査さえも頑なに拒絶する兄の態度に違和感を覚える。中国残留孤児の兄が永住帰国をした際、既に失明していた和久は兄の顔を確認していない。27年間、兄だと信じていた男は偽物なのではないか――。全盲の和久が、兄の正体に迫るべく真相を追う。有栖川有栖氏が「絶対評価でA」と絶賛した第60回江戸川乱歩賞受賞作!
    血縁を疑ったが、自分が他人だったとは・・・・・・。
    途中、すこし長く感じたところもあったが、
    かなり面白かった。

  • 92:60代後半の全盲の男性が主人公。というだけで感情移入のハードルは高いのに、視力を失ったときの自暴自棄な振舞い(によって傷つけられた妻と娘)を知ると、中途失明の辛さに思いをはせる以上に心理的な距離を感じてしまって、そういう意味でもチャレンジングな作品でした。
    ですが、これらの過去が巡り巡って主人公が活躍する動機になるんだからすごい。
    また、「お酒で精神安定剤を飲むことで記憶が混濁する」という記述があり、記憶が混濁する人物を主人公に据えてのミステリはアンフェアじゃね? とも思っていたのですが、これが見事なフェイク(というかトリックというか)で、もうホント色々騙されました。
    主人公には最後まで心情的に寄り添えなかったけど、ミステリ部分と全盲の人物の「視点」という斬新さには完全にしてやられました。

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著者プロフィール

1981年京都府生まれ。2014年に『闇に香る嘘』で第60回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。同作は「週刊文春ミステリーベスト10 2014年」国内部門2位、「このミステリーがすごい! 2015年版」国内編3位と高い評価を受ける。同年に発表した短編「死は朝、羽ばたく」が第68回日本推理作家協会賞短編部門候補に、『生還者』が第69回日本推理作家協会賞の長編及び連作短編集部門の候補となった。他の作品に『難民調査官』『サイレント・マイノリティ 難民調査官』の「難民調査官」シリーズ、『真実の檻』『失踪者』『告白の余白』『緑の窓口 樹木トラブル解決します』『サハラの薔薇』『黙過』がある。

「2018年 『失踪者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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