こぼれ落ちて季節は

Kindle版

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  • 講談社 (2014年9月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784062191425

みんなの感想まとめ

恋愛を多様な視点から描いたこの作品は、連作短編集として、若者たちの複雑な恋愛模様を鮮やかに表現しています。各話では二人の語り手が存在し、同じ出来事でも異なる感情や解釈が浮かび上がることで、恋愛の微妙さ...

感想・レビュー・書評

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  • 『あとは泣くだけ』に続き同じく加藤千恵さんのこちらの作品も続けて読了。私の大好きなタイプの群像劇で、最高に楽しめた。

    ◆あらすじと感想
    「友だちのふり」木崎愛 今川那美香
    大学のフリーペーパー制作サークル内での三角関係を描いたお話。愛が新野治弥に自分との関係性を聞けない気持ちはよくわかる。聞いてしまったらそこで関係性が終わるかもしれないという恐怖心。そんな恐怖心を抱かせている時点で、新野治弥が誠実でないこと、そこまでの関係性であることは愛自身も薄々気づいているんだろうけれど、好きの気持ちが勝ると、冷静に判断できないんだよね…。
    一方の那美香の気持ちも痛いほどわかる。治弥の欠点を知るほど距離の近づきだと錯覚してしまうくらい、彼に対しては確実に好意があり、キスもした関係。それなのに、彼は今、目の前にいる可愛くて愛想のいい後輩と、いい感じの雰囲気になっている。「他人のこと、好きになれないかもしれない」という言葉はなんだったのか?キスしておいて、友達なら平気って何やそれ!どうせ治弥の気分で捨てられて振り回されるならこの段階で終わってよかったんだという気持ちと、愛ちゃんと入れ替われるなら入れ替わりたいと思う嫉妬心。こんなふうに女性二人を翻弄する男が一番悪男だわ。

    「たぶん初恋」長谷岡旬 小埜静香
    高三のクラスメイトの旬と静香。静香は当時から大学4年になる今まで旬に対して片想い。一方旬はフリーペーパー制作サークルの後輩のあさひに片想い。これまたすれ違いの苦しい恋愛関係。静香があさひを肯定できない気持ちよくわかる。静香のように、女の子らしく振る舞うことに高いハードルを感じる女子もいるんだ、これでも頑張っているんだぞということを世の中の男性陣に伝えたい。ここでは旬が、歳下のあさひに夢中で静香の良さ、気持ちには気づかない残念な男って感じだったけれど、次の「逆さのハーミット」を読むと、ちょっと可哀想という同情も湧く。少しずつ登場人物同士が重なっていくこの手の群像劇大好き。

    「逆さのハーミット」古橋あさひ 古橋ゆき
    あさひとゆきは容姿も性格も正反対の二人姉妹。これを読むと、自分に女姉妹がいなくて本当に良かったと思う。生まれた時から容姿、学歴、運動能力、友達の多さ、学校での生活態度等、比較されるのはかなりのしんどさだと思う。ゆきはタロット占いを使ってあさひの行動をコントロールする。一見怖い妹と思うかもしれないけれど、嘘ついているわけでもないし、あさひからの要望だし、バチは当たらないよね。ゆきにも幸福の光が差しますように。

    「向こう側で彼女は笑う」工藤葵 瀬尾佳奈美
    高三の葵と、葵が通う塾の受付をしている33歳の佳奈美。葵は周囲の意見に合わせながら日々を生きる女子高生だが、性の話題だけはみんなについていくことができず、戸惑う。中学時代の同級生の古橋ゆきの陰口に混じりながらも、内心では我が道をゆく彼女を羨ましくも思っていた。一方佳奈美は、転職を繰り返す年下彼氏の大地との関係、身体の衰え、将来について悩む。二人の関係性がそこまで交わらないので他の章に比べてやや満足感が薄かったかな。

    「この人かもしれない」浦井梓 山崎修一
    梓は夫に不倫され、かつ相手の女性が妊娠したと言う悩みを友達の佳奈美にも打ち明けられずにいたなか、バーの店員である山崎さんには話すことができた。一方、梓の話を聞いた山崎は、自分が既婚者の女性と関係を持っていることに罪悪感を抱く。不倫された側と、不倫している側の二つの視点の物語。梓には何の罪もなく、ただただ理不尽で、辛い気持ちにも共感できるが、山崎の"嫉妬できる立場じゃない、独占できる立場なはずがない、と自分に必死に言い聞かせているのに、感情はコントロールできない。こんな年齢にもなって、恋愛に振り回されている自分を、激しく憎んでいる"という想いには悪いが共感してあげられない。不倫はする方も誘う方もどっちも悪い。

    「波の中で」今川那美香 木崎愛
    最初の章ので大学生だった二人が大人になり、那美香の結婚式で再開する。お互いがお互いを羨ましく思っていた二人。素敵な結婚相手と結ばれた那美香、仕事を頑張る愛の二人に好感が持てた。二人の成長、治弥や長谷岡旬、静香、あさひちゃんの"今"にも少しずつ触れられていて、群像劇がちゃんとここで完結する。最初の二人が最後の章に戻ってくるところも含めて、タイトルの『こぼれ落ちて季節は』の後には、"巡る"が続きそうだなと思った。


  • 恋愛をいろんな人の視点から物語る小説でした。

    あまり恋愛小説は好まない私ですが、比較的読みやすい内容です。

    本当に、自分の感覚でしか恋愛できないんだなーと感じました。当たり前だけど、自分の気持ちも大切にしようと、そんなふうに思わせてくれる優しい本でした。

  • カンバラクニエさんの表紙に惹かれ、手に取ってみた。どんな内容かはよく知らず、でも加藤千恵さんなら間違いないだろうと思って読み始めたら、予想以上にハマった。彼女の作品はいつもそうなのだけど…やめられなくなり一気読み。
    連作短編集なのだけれど、それぞれの話に二人の語り手が存在する。後輩/先輩、姉/妹、高校時代の同級生の男/女、などなど。背中合わせのストーリーは、同じ場面でも語り手を変えるとこんなにも状況の捉え方が異なるのかとぎょっとする。相手への嫉妬。報われない恋心。諦め。虚栄心。裏切り。…こう並べてみるとマイナスの感情ばかりだけど、決して後ろ向きな内容というわけではない。連作短編という形式で、それぞれの登場人物がゆるやかにつながりながら、自分の足元を見据えていく。
    淡々とした文章の加藤作品の読みやすさは相変わらずなのだけど、作品を発表するほどにビターさが増していきますね。その苦さがクセになっています。短編のタイトル「この人かもしれない」、これは「運命の人に出会えたわ」的な恋愛ものなのかと思ったら、全然違いました(汗)自分の年齢的にも、一番この話がほろ苦くて共感できた。男女の関係、一筋縄じゃいかない感じが好きです。
    全体的に、男のたよりなさというかダメっぷりが際立ちました。特に、計算高い女子を「天然」と勘違いし(養殖女子ですか?)翻弄される長谷岡君に「あ~あ」だよ。
    若さゆえの、理想破れての躓きなんかがリアルで、いい年した自分でさえ「うう…」と呻きたくなる。でも、加藤作品のそんなところが好きなんだよね。不毛な恋愛から、何を学び、どう歩んでいくか。「こぼれ落ちて季節は」というタイトルも、うまいなと思いました。

  •  6話からなる連作群像劇。1話ごとに2人の視点別に語られるという手法で、若者たちの恋愛事情を鮮やかに描き出した作品。

          * * * * *

     同じ出来事を共有していても、感じ方はそれぞれ異なること。
     自分の言動に込めた気持ちを相手が正確に理解するのは意外に難しいこと。
     そして人から見た自分と本当の自分には大きな違いがあること。
     そんな、当然でありながら忘れていがちな事実が、この手法によってひときわ浮き彫りにされていました。

     それぞれの一人称で綴られる、個人レベルでは決して小さくない出来事についての気持ち。共感してしまうところが多い作品でした。

  • 二人ずつの視点から進んでいく短編集。
    半日で一気読み。とても読みやすく、好きでした。

    大学メンバーより、大人メンバーのその後の方が気になってしまいましたが(笑)梓さんの旦那はどうなったのだろう…

    輝いていたあの頃も、あの頃に思い描いていた未来と違う今も、明るい未来を想像出来ない未来も、全部、今の積み重ねですね。
    全部全部愛しく思えたらいいなぁ。

  • こういう形式の小説は初めて。
    あるシーンについて登場人物2人のそれぞれの視点から描かれていて、次は繋がりのある人に次々に焦点がズレながら一周する。
    つながりを持った短編小説のようで長編小説。
    みんな他人に憧れを抱きながら逆に誰かから憧れられて、キラキラして見えるあの人にも見えないコンプレックスとか事情とかもがいてるところがあって、自分の身近でこの本を実話で描いてくれたら絶対に読みたい。
    他人から見たキラキラした部分を自分でも感じられたらいいのに。

  • ミニコメント
    大学生の男女の機微が描かれた恋愛小説集。誰にでも起こりうる身近なストーリー。

    桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/book/571071

  • ひとつの物語を別の人物の視点から2サイドで書いた短編集。どこかのまちかどで今も繰り返されているかもしれないお話を紡ぐのがやはりうまい作家である。最初と最後は語り手が同じふたりだが年月がたち、みんな大人になっている。各話の登場人物は順番につながっていく。1話の脇役が2話では語り手という風に。

  • いろんな視点から見たひとつの日常、少しずつ絡み合っていて面白かったです。みんな何かを思い、考え、何かを抱えながら生きてるという当たり前のことを改めて思い出させてくれました。
    大学生の背伸びした恋は昔を思い出して心の奥がキュッとなった。最後には月日が流れて大人になっていて、結局その時はいっぱいいっぱいでも時は流れるし、その時の思いはいつまでも続かない。その時キラキラしていた人やものが数年先もキラキラしているとは限らない。キラキラし続けるにはたゆまぬ努力が必要、などいろいろ考えさせられました。
    こぼれ落ちて季節はってタイトルもとてもしっくりくる。人生ままならないことは多い。それでも自分を信じて前向きにやってくしかないのかな。今の自分にはとても突き刺さります。ある意味いいタイミングで読めたのかもしれない。

    話が収拾つかなくなるのはわかるけど、さつきや陽輔、真貴あたりの視点も見てみたかったなぁw

  • フリーペーパーを作るサークルに所属しているメンバー、その友人や周りの人たちなどの連作短編。

    一篇のなかに二人の語り手がいて
    同じ場面が別の視点で繰り返されたり、
    語りだしの言葉が同じだったりと、構成が凝っていました。


    加藤さんの描く世界は、やはりどことなく切ない。
    切ないだけで終わらず、
    冷静に真理をついている気がします。


    特に『向こう側で彼女は笑う』が女性としては
    かなり共感できた。


    いくら仲が良くても、友人と自分を比べてしまうこともあるし
    言えないこともたくさんある。


    なんだかやるせないけど女子の人間関係ってそういうところがあるのも現実。


    最初の『友達のふり』と最後の『波の中で』は
    愛と那美香という同じ人物が語り手なんだけど、
    いい意味でも悪い意味でも、大人になったなーと感じた。

    月日の長い間を感じる構成になっていました。



    他の短編でも、その後がちらちらとわかったり
    物切れじゃなく、続いてる感じがよかった。

  • 軽い感じで一気に読んだ
    鼻の奥がツンとするような展開もあってせつない
    交錯する想い、うまくいかないことだらけ
    こういうことは、割とある

  • 学生の頃の爽やかで一生懸命だった、誰かを思う気持ち。軽やかに読めるピュアな小説を読みたい方にオススメ。

  • 佳奈美と梓の話が、何とも言えない読後感。
    年齢も相まってなかなかしんどい。

    同時進行で読んだ「消えていく日に」より
    こっちの方が好み。

  • 加藤千恵さんらしいオムニバス恋愛小説。

    ちょっと切なくて、かなり甘い。

  • かるーく読める、加藤千恵さんの短編連作?
    みんな片思い、それぞれが言えない気持ちを隠していて切ない

  • 短編で、視点が変わっていって、それぞれの主人公がどっかで繋がってる・・・ってのは好きやし、面白いけど・・・それからどうなったん!!!!?笑
    10歳年下を孕ませた旦那とは結局離婚できたんか?転職繰り返してる年下の彼氏とは結婚したんか?・・・って気になるーーーw

  • 連作短編6編
    恋愛のそれぞれのあり方を切り取って,鏡の裏表のように異なった二人の立ち位置から描く.短編ながら,人生の深みを感じる作品群だった.みんな迷っているんだなあ,と実感.

  • 1つのタイトルに対して2人の登場人物の目線で物語が進む。少しずつ話が繋がっていく短編集。コンプレックスも回りから見たら憧れだったり、視線が変われば見える世界は変わる。それならば自分を肯定できたら楽しく生きれるんじゃないかと思った本。

  • 面白かったです。ひとつのお話を2人の視点から描く連作短編集でした。恋愛って、人生って、ままならないなぁ。生きていく限り、変わらないことって無いよね、と思いました。那美香さんが幸せになって嬉しかったです。怖がらずにわたしも生きていこうと思いました。明日からの日々がまた楽しみになりました。わたしもがんばろ。

  • それぞれの思いを抱えて、
    見えない相手の気持ちを想像して
    想像したって正解はないのに
    想って想って。

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著者プロフィール

1983年、北海道生まれ。歌人・小説家。立教大学文学部日本文学科卒業。2001年、短歌集『ハッピーアイスクリーム』で高校生歌人としてデビュー。2009年、『ハニー ビター ハニー』で小説家としてデビュー。その他、詩やエッセイなど様々な分野で活躍。著書に『あかねさす――新古今恋物語』『真夜中の果物』『こぼれ落ちて季節は』『この街でわたしたちは』『消えていく日に』『そして旅にいる』『マッチング!』などがある。

「2023年 『この場所であなたの名前を呼んだ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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