星砂物語

  • 講談社
3.13
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (170ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062192187

作品紹介・あらすじ

1945年、1958年、2011年の3つの物語をつなぐ、沖縄の小島で起きたある出来事。ありがちな甘い人間ドラマとも読めるパート1から、ものの見事に跳躍する物語の力と予想外の結末! あの日あの島の洞窟で本当は何が起きたのか? 13年後に発見された3体の遺骨はいったい誰のものなのか? そして、受け継がれる命脈ともいえる存在が目の前に現れる・・・。過去と現在をつなぐ戦後70年に登場した戦争小説の傑作!

感想・レビュー・書評

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  • 太平洋戦争終結の4カ月前、沖縄の八重山群島の一つでの出来事。暴力を否定する脱走兵と日系アメリカ人少女の物語。戦争の狂気が彼らに忍び寄る。能天気なボクでも平和を祈りたくなる。著者の初めての日本語作品なのだそうだ。もちろん英語訳も自身で行ったらしい。とっても清潔な文章だ。

  • ファンタジーな設定から現実に、その流れはとても良い。突然の日記の終わり、そして、日記の発見。最後に謎解きがある。この部分が加わることで、作品が深くなったか? 長男の存在の意味。 後半、もう少し書き込んでほしいように思う。

  • 太平洋戦争が終結する4か月前、沖縄の西表島の近くにある鳩間島で起きていたこと。

    日本人の父と日系アメリカ人の母との間に生まれ、幼少期をアメリカで過ごした洋海。

    母と兄はアメリカに残り、父と帰国して、父は仕事の都合で長崎へ、頼った叔母は空襲で亡くなり、今はたった1人で流れ着いた鳩間島で暮らしている。

    牛乳瓶に海の星の砂を集める日々を日課にして過ごしていると、海岸の洞窟に暮らす脱走兵の日本人の岩淵さんと、同じく脱走兵のアメリカ人のボブに出会った。

    岩淵さんとボブに、海で獲った魚をわけてあげたり、岩淵さんのおじさんの家から物を届けて、洞窟で暮らす彼らと洋海の交流。

    足を怪我した岩淵さんの兄が加わり、このまま終戦を迎えるまで密かに生活できたら、どんなによかったか。

    洞窟で見つかった3人の遺体。
    そこに置いてあった洋海の日記。

    戦争が人をおかしくする。
    殺さなければ臆病者。逃げれば非国民。

    ネタバレ。ボブはマラリアと赤痢を患い、洋海が訪ねて行った日に、脱走兵の2人を軽蔑し殺意を抱いていた岩淵さんの兄が松葉づえで頭を殴ったことで、亡くなっていた。
    岩淵さんの兄が、松葉づえで困惑する岩淵さんを刺し、洋海はもっていた竹槍で兄を殺した。

    岩淵さんは1週間後に亡くなり、洋海は3人の遺体を残し、洋海は終戦を迎え、長崎にいる父を看取り、京都に移り住んだ。

    それから鳩間島にいた頃の日記を書いて、再び鳩間島に戻り、洞窟に眠る3人の傍に日記を置いてきた。

    生き残った16歳だった洋海。長い年月を経て、誰にも知られることのなかった洞窟でのことが知られる。

    長くなっちゃったー。

    戦争と沖縄のセットの話はつらいよね。
    でもこんな悲しい話がたくさん現実に起きていたと思うと、私たちは決してそれを受け止めていかないといけないね。

  • 沖縄が好きなので手に取った一冊。
    とても読みやすかったけれど、何か少し物足りなさを感じた。
    でも、やはり戦争なんてろくなものではないなと思った。ボブが、人を殺めた人は性格が変わる。例え戦争が終わり、その人が無事に邦へ帰れても、“以前のその人”は帰れないという部分がとても印象に残った。あと、なぜボブは偽名を使ったのか気になった。あと岩淵さんの兄さえいなかったら、ボブの病死は避けられないとしても、岩淵さんは助かったのになあと思った。こういう人は戦争があろうとなかろうと、相手の立場になって深く物事を考えられない人だと思った。

  • 戦争の話しだった。
    争う事の無意味さを考えさせられる。

  • 装丁が美しい。

    去年だったか一昨年だったか、映画を先に観た。
    著者の監督作品だったのね。

    日本語で書かれた文章は少しつたなく
    イラブチャー(という名前)を日本兵が知っているのかとか
    この時代のシマのおばちゃんはこんな上品な言葉を使うのかとか
    八重山周辺でも空襲はあったはずだがその影響は(米軍の本島上陸直後の設定)とか
    そんなことが気になった。

    静かな物語の中で戦争を描く、という試みはありだと思うが
    私の知っている沖縄では、ない。

    映画のほうが違和感が少なかった。

  • 映画化されるらしい。
    ちょっとした謎解きがある。

  • 時代背景は悲惨なのに
    おとぎ話のような・・・
    現実感が乏しい
    お話としてはウン

  • 著者はハーバード大学で修士号取得の秀才で、映画「戦場のメリークリスマス」の助監督を務めた方だそうだ。

    太平洋戦争時代の鳩間島(石垣島の近く)を舞台にした物語。いかなる状況でも人は互いを信じあえる…というようなことが言いたいのかな。日本語で書かれたんだと思うんだけど、やはりどこか当たり前の感覚(言わずもがなの認識)が違う文化背景がある人が書いたのだろうなあと思える。

    映像が頭の中に浮かぶ。
    ちょっと哀しい物語でした。

  • 星の砂 に想起される通りお伽噺のような印象もある。
    暗い洞窟の中は唯一夢想の生き延びることの出来る場所だったのかもしれない。

    ただどうしても異国の雰囲気を感じ取ってしまうんだよなあ…。

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著者プロフィール

作家、翻訳家、演出家、映画監督。東京工業大学名誉教授。1944 年、ニューヨーク生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校 (UCLA) を卒業後、65 年ハーバード大学大学院に入学。ロシア地域研究所で修士号を取得。ワルシャワ大学とパリ大学に留学後、67 年に初来日。長編小説や戯曲、短編集、随筆集など多くの著作を出版、上演している。76 年オーストラリア国籍取得。『英語で読む銀河鉄道の夜』(ちくま文庫)など宮沢賢治作品の英訳のほか、映画『戦場のメリークリスマス』で大島渚の助監督を務めたことでも有名。

「2023年 『『風の又三郎』を英語で読む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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