ABC! 曙第二中学校放送部

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 260
感想 : 35
  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062193221

作品紹介・あらすじ

『よるの美容院』で、第52回講談社児童文学新人賞を受賞し、第2作目『紙コップのオリオン』でも注目を浴びた著者の3作目。
 主人公・みさとはアナウンス経験のない、放送部員。しかも2人しかいない零細クラブだ。能天気な顧問と厳しい担任のせいで、毎週火曜日の昼の放送を行うこと、しかも部員を増やさなければならない状況に陥る。
 クラスメイトからの嫌がらせが原因で、孤高の美少女転校生・葉月とのかかわりを持つことになったみさとは、思い切って葉月を放送部に誘う。
 さらには気になるクラスメイト・新納まで、入部してくれて…。
 葉月のアドバイスにより本格的な活動が始まり、大会エントリーを目指して各々の思いを形にしていこうとする。
 みさと自らもバスケ部を途中でやめた過去あり、前の学校で放送部員だったのにマイクの前で一言も発さない葉月にも、隠していたできごとがあった。
 温かな描写と、キャラクターたちが美しく輝く、心優しい青春小説!

感想・レビュー・書評

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  • 2017年度読書感想文中学校の部の課題図書

    中学校で放送部というのはとても珍しいのではないだろうか。
    廃部寸前の弱小部で、コンクール目指して奮闘する部員たち。でもそこに至るまでは紆余曲折。
    中学時代って、ホントに色々めんどくさいんだよなぁ…とあの時代にトリップして読んだ。
    それくらい、作家の目線がリアルだった。

  • いや、これは名作なんじゃないかな。

    あまりに予定調和的なラストとか、あまりに一面的な敵役とか、ひょっとしたらそういう不満を持つ人がいるかもしれないけど、いいのである。中学生向けの本なんだから。

    で、エンタテイメントとして秀逸。
    特にキャラが立っているし、そういったキャラの特徴を物語の最前半でちゃんと提示するのがすごい。
    ストーリーも奇をてらわないけどありきたりでもなく、一切のたるみを見せずに最後まで続く。

    うん、やっぱ名作だ。

  • 放送部を題材にしたのはうまいと思った。
    なぜなら、放送部という1つの器のなかに、マイクの前で原稿を読み上げる人(アナウンサー)のほかに、機器操作をする人(ミキサー)や、全体を見て指示をだす人(ディレクター)などの多様な持ち場があって、個性を割りあてやすいから。
    またスポーツ系と違い、女子と男子のどちらが担当しても不自然じゃないのも強みだ。

    それにしても、この本の展開は“王道”だと思った。
    大会出場に向けてバラバラだった個性が次第に結びつく展開はまさにそう。個性が多様ないまの中学生が感情移入しやすいように、それぞれのキャラクターが細部まで作りこまれている。
    ほかに同級生からの同調圧力とそれの裏返しの巧妙な嫌がらせや、自分の主義主張を生徒に押しつけてそれが正しいと思いこんでいる先生との闘いや、そして異性への淡い思いなど、今の中学生が好きそうなアイテムがコンパクトに盛り込まれている。

    でもあえて言わせてもらえれば、こういう最大公約数的な落ち着くべき地点に落ち着くような“万人受けしそうな”作品は、私はあまり好きではない。
    この本の完成度を低く評価するつもりはない。だが私は最近読んだ「リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ」からも、この本と似たような感じを受けた。
    https://booklog.jp/item/1/4062210800
    まるで今の中学生が“忖度”や“空気を読む”というような現代的な風潮に取り巻かれつつも、そのせまい枠内のみで葛藤や軋轢を克服することで、もう自己満足を得てしまうのでは、と“深読み”してしまう。

    「中学生」「放送室」と聞いて私が思い出すのは、私が中学生のときに放映された3年B組金八先生の「卒業式前の暴力」だ。
    加藤優の物語を今の中学生も一度じっくり見てほしい。コンプライアンスとかに押し込められたせまい常識なんか百万光年かなたへ蹴り飛ばすかのようにいろいろな感想が胸から湧き上がること必定。そういう意味でこの本よりも多種多様な感想文が加藤優からは生み出されるのではないかと思っている。

    昨今の中学生向け小説のパターンが1つの定型に落ち着こうとするかのような傾向に活を入れるという意味で、誰も書かないまたは書いていない視点からレビューを書いてみた。

  • 放送部を扱ったところ、マイナー部活の大変さ、がんばる描写は良かった。
    死ね死ね言っておいて正当化するところは嫌い。超絶美少女が相手を「ブス」と罵れば効果抜群っていうのも現実的じゃないと思う。

  • 中学の放送部を舞台にした、これはもうド直球の青春成長物語。
    最初から最後まで、どろどろはなくて等身大の、どこにでもいる女の子の物語。そこが良いのだと思う。ドラマティックすぎず、明るさは失わず、悩みつつも仲間とともに答えを見つける。
    わたしはもうひねくれた大人なので、ここまでストレートなものを見せられると、ううむ…国語の教科書か、国語のテストの例文のようだ…などと思ったりしてしまうのです。
    だけど、これがとても丁寧に書かれた物語であることもわかるんですよ。このへん、うまく言えないけど、そう、見たことのあるキャラが多いのが安心感でもあり物足らなくもあるの…。バスケ部のいじめっこタイプの派手な女の子、とか生徒指導の嫌な先生とか、まあ敵キャラです。このへんがなー、もう少し理解できそうな良いところを見たかったというか。ああでも現実はむしろ、嫌なやつは嫌なやつなので、リアルではあるのか…。

    美少女転校生の口の悪さとか、野球部の三田村くんの変わり者ぶりとか、そういうちょっとヒネってある設定は好き。奥行きというか。弟くんが出てくるあたりも良い。

    で、最後の詩が、これも直球なんだけど、おお、ってなるくらいまぶしくて、なるほどここへすべてのメッセージが込められてるんだなあ、と思った。ここは本当にクライマックスで、さすがのひねくれた大人の心にもぐっと来た。

    とにかく、ザ・王道青春ストーリーなので、たしかに既視感はあり、そうだなあ、題材が違えど他に同じ起承転結の物語は存在していると思われるんですけども。
    でもなんか、すごくそれをきっちりとブレずに書き上げている。文章はシンプルだけど、ほんと読みやすくて上手い、お手本のようです。

    言ってしまえばやっぱり感想文コンクールの課題図書らしさはすごくある。ほんとに優等生なの。シンボルとしてのメタセコイアの配置とかも。まとまりすぎてるくらいに。

    でも意外にね、こういう安心して子どもに読ませられる作品って少ない。健全、っていうと薄っぺらくなるんだけど、よい意味で。
    ちゃんと最後まで楽しく読めるし、良かった。

    世界にむかって歩き出す、というテーマはね、ほんときらきらしてまぶしいなあ。

    (個人的にはわたしも放送部だったので、みんなでやるものづくりの楽しさ、みたいな要素ももう少し欲しかったのかもしれん。映像研とか桐島部活とかの。どっちかというとオタク寄りの。そういう物語のほうが、わたしにはぶっ刺さる。けどまあそれは好みの問題です…)

  • 中学、高校と放送経験者です。アナウンスで県大会も2連覇しました。経験者としては、大会に出るための原稿練習の描写表現をもっとして欲しかったなと思います。放送はあまり馴染みがない大会であるため、周りに大変さが理解されないことが多いです。この本は、せっかく放送部のお話なので、放送部の内部をアピールして欲しかったなと思います。ただ、中学生の人間関係の表現は素晴らしいと思います。リアルです。

  • 本読んでうれしくなってピアノに向かって曲を作りたくなったのは久しぶりかも。ラストで、女の子が互いに手をぱちんと打ちならす、きれいな終わり方。余韻を楽しみたくなる。
    「しずかな魔女」もそうだったけれど、ここでも放送部のコンクールに向けて、自分たちでドラマをつくり、ニュースの原稿を作成しと、物語の中で物語を語る構成になっている。そのドラマやニュースの中身が、登場人物の抱えている様々な問題と響きあって、深く心を打つ。
    最後の放送で流すことになっている、オリジナルな曲の歌詞も何だかよい。
    こういう物語のリアリティーって、登場人物が抱えている問題の解決の度合いによって決まってくる部分も大きいと思う。あまりきれいさっぱり解決しきってしまえば、欲望の代替的満足としてはすっきりするけれど、リアリティーは低くなり、逆に問題が全く解決できなければ、リアルではあるけれど、物語としてのカタルシスはなくなってしまう。

    このお話では、仲間の中の人間関係は、主人公たちの成長とともにうまいところに着地していくんだけれど、外には和解しえない「敵」がいて、その強敵ぶりがお話のリアリティを高めている。そのあたりも、「しずかな魔女」と似ていて、現実の問題に対して、妄想の中ではなくきちんと立ち向かっていく強さを要求してくるところが、僕には好感を持てた。

    これを読書感想文の課題図書として選ぶセンスはなかなか。いろいろな切り口でひっかかってきそう。

  • 二人きりで始まった放送部が、熱血教師とお昼の放送をしたことから、少しずつ校内で知られていく存在に。学園部活もの。以前から注目していた市川朔久子さんの新作。素直な青春ものではなく、ある程度影がさす状態なのが楽しく読める。

  • 自ら考え実行する。
    理想的な中学生の姿なのに、その姿が自分たちの思う形と少しでも違うと認めようとしない。
    押さえつけて型にはめようとする。
    大っ嫌い、そんな先生。
    一生懸命やってる人に対して、そんなことしても仕方ないとか、頑張ってる姿を鼻で笑うとか、最悪。
    そういうのをブスという言葉で表現する。
    でも、キツイ表現を使うと、それがそのまま自分へのダメージとして返ってきちゃうのよね。

    放送委員と放送部の両方がある学校ってどれぐらいあるんだろう。

  • 本庄みさと。曙第二中学校の放送部。三年アナウンス担当の副部長。
    古馬和人は同じく三年、機材担当の部長。先輩たちが卒業して、放送部はたった2人の弱小部となってしまった。みさとは本当はアナウンスは苦手だけど、古馬が機材と原稿作りを担当するので仕方がない。放送委員会が活動を始めるまでの間、お昼の放送をすることになって緊張するみさと。

    そんな時、みさとと同じクラスに真野葉月(まのはづき)が転入してきた。誰もが振り向くほどの美人な葉月だが、クラスで誰とも仲良くなろうとせず、孤高の存在となった。
    そして古馬が言うには、葉月は放送部経験者だと言う。それも、大会のアナウンス部門で賞を取るほどの実力者だと。

    みさとのクラスの女子で亜美とその仲間は、かつてバスケ部で一緒に汗を流していたのだが、ある事がきっかけでみさとはバスケ部をやめた。そして、笑顔で、いじめにならないギリギリの所で毒を投げてくる亜美の事が苦手だ。
    葉月も、亜美たちのことが嫌いだ。
    席の近いみさとと少し話をするようになり、防音室で、葉月が思いっきり心の中に溜め込んだ言葉を吐き出せるようにしてあげたりした。
    そして、みさとは葉月を放送部に誘った。

    放送部の顧問の須貝先生は、放送の知識はないけど明るく、軽く、放送部の活動を応援してくれる。生徒指導の古権沢(こごさわ)先生は部員数の少ない放送部を目の敵のようにし、いろんな事を言ってくる。

    みさと・古馬・葉月に加えて、身体を壊して野球部を休部している新納と一年生の珠子が加わった。そしてはじめて、大会に出る事になり、5人はその準備をはじめる。

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著者プロフィール

福岡県生まれ。『よるの美容院』で第52回講談社児童文学新人賞受賞。同作でデビュー。『紙コップのオリオン』は厚生労働省児童福祉文化財選出、『ABC! 曙第二中学校放送部』は第49回日本児童文学者協会新人賞受賞、第62回青少年読書感想文全国コンクール課題図書選出、『小やぎのかんむり』は第66回小学館児童出版文化賞を受賞する。ほかに『おしごとのおはなし美容師 かのこと小鳥の美容院』などがある(以上講談社)。

「2018年 『よりみち3人修学旅行』 で使われていた紹介文から引用しています。」

市川朔久子の作品

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