抵抗の拠点から 朝日新聞「慰安婦報道」の核心

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062193436

作品紹介・あらすじ

■朝日バッシング=歴史修正主義と全面対決する。

緊急出版! 
慰安婦報道の「戦犯」と呼ばれた植村隆、市川速水、若宮啓文、本多勝一ら朝日関係者に徹底取材。報道の現場から問題の全真相をルポルタージュし、バッシングの背後にうごめく歴史修正主義をえぐり出す。
闘うジャーナリストが、右派の跳梁に抗する画期的な一冊!

■異様な「朝日バッシング」当事者たちの赤裸々な証言!

「反動の時代。ひとことでいえば、そういうことだろうね」――本多勝一(元・編集委員)
「僕はやっぱり虐げられた側というか、人権を侵害されている人たちの側から発信したいというのがあった」――植村隆(「従軍慰安婦」報道の火付け役と言われた元・記者)
「朝日が膝を屈したと僕は考えていない。魂を売ってしまったとかいうことでは決してない」――若宮啓文(元・主筆)
「最初は自分が左翼かと思って戦後補償問題をやりはじめたんだけど、やってみたら右翼だと思いました。日本がアジアのリーダーとして、立派な国であってほしいと思った」――市川速水(前・東京本社報道局長)
「だから朝日が変わるということは、戦前の歴史を考えると、とても大きな意味を持つ可能性がある」外岡秀俊(元・東京本社編集局長)

感想・レビュー・書評

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  • 朝日新聞の慰安婦報道誤報への行き過ぎた非難に対し、記者へのインタビューで報道の内幕を示し、慰安婦報道に絡むさまざまな目を意識させる本。
    誤報非難問題の概要、誤報発表当時の論説、朝日新聞の編集者へのインタビューで構成。

    感情的に敵意を向ける人の様子が浮かんでくる一方で、この問題を取り扱うことの難しさを感じました。
    それにしても非難する人は、問題の意識が慰安婦や戦争に行かず、誤りを指摘するばかりになるのはなぜなんだろうと思う。
    背景の大きな問題を考えるでなく、それを指摘した者の失敗をくじくだけなのは、安泰な場に留まっているだけで無責任に感じなくもない。
    こちら側の意見も聞いてみたいものだと思う。

    慰安婦を考えることはある意味挑戦で、吉田清治氏の証言報道は早すぎたのかと思うけれども、現在でも議論が深まっている気がしない。
    慰安婦の問題を正視する前に、壁がいくつもふさがっている印象。

  • ジャーナリズム精神の根幹として事実に愚直に向き合う姿勢が問われている。そこで怯んだり誤魔化したり忖度するようでは、問題の核心から遠ざかっていく。言葉は時に刃の如く他者を傷つけてしまう。しかし事実は決して反故にしてはいけない。強者はそこに正義や倫理を持ち出して都合の良い歴史を作ろうとする。そこで弱者は理不尽さを噛み締めながら虐げられる。私たちは報道における過ちを許すという寛容を失わず、知る権利を保持しよう。そして都合の悪い過去から学び得よう。

  • 先に末尾にある慰安婦報道の年表を読んでからスタートしたら分かりやすかった。
    政治の劣化、マスコミの劣化とそれらに踊らされ続ける国民。当時の空気感を知らない自分が普通にこの本を読むと当時のバッシングがいかに的外れなものだったかって事実に驚くけど、もしかしたら今の時事問題にも同じような的外れ批判が蔓延ってるかもしれないよな、と自戒。
    青木さんの文章はクールで読みやすい。
    どんなニュースも報道も、考えて読む、って大事。

  • 作者は他の作品でもそうだが、今回は「真偽」がテーマの一つということもあって、当時の状況を知る人たちやそれを俯瞰して見れる人などに聞きづらいことも含めて細かく聞いているので、とても深みのある内容だと思った。

    また最後に慰安婦関連の報道が年表になっているところ、その中でも問題になったとされる記事の引用が載っているところが、自分のようによくわかっていない者にとって、全体の流れを見渡す助けになった。

    それにしても戦後50年くらいたってやっと表立って報じられだしたんだなぁ、と考えるとついこの前のような気がして、言葉にしづらい暗い気持ちに包まれた。

  • 政治の劣化も激しいが、マスコミの劣化も激しい。

  • 日本軍「慰安婦」問題に関する「吉田証言」記事、および原発事故に関する「吉田調書」報道をとらえた、メディア総がかりの朝日新聞バッシングに対し懸念を抱くまっとうなセンスの持ち主ならば、青木理氏のごくごく真っ当なメディア批判に、解毒剤をあたえられたようにほっとするだろう。まことに「メディアの総転向」と呼ぶしかない、異常な状況である。
    前半の青木氏の冷静かつ明快なメディア批判に対し、本書の後半では、攻撃の矢面に立たされている植村隆氏をはじめ、朝日内部の人たちへのインタビューが掲載されているが、こちらはとてもすっきり、とはいかない。若宮啓文や市川速水は、「リベラルと言われていてこれか」と思う程度の歴史認識・政治認識しか示していないし、「権力に膝を屈したわけではない」と繰り返し述べているが、青木氏も指摘するように、本気だとしたら状況分析が甘すぎる。ましてやこの後、朝日新聞が設置した「第三者委員会」は顔ぶれからして、最初から権力者に腹を見せて取り入るための茶番だったとしか思えないからだ。本書発行のタイミングが合わなかったのだろうが、ほんとうはぜひ第三者委員会の顛末まで見届けてからの取材、分析が欲しいところだった。
    もう一点、メディアを巻き込んだ政権の朝日攻撃において、「女性国際戦犯法廷」NHK番組改編問題に関する朝日の報道とその後の顛末は、避けて通れない一幕であったはずだ。インタビューの中で触れられてはいるが、青木氏の分析において踏まえられていないのが残念。
    いずれにしても、「リベラル派」であった朝日の瓦解は、「メディア総転向」の引き金を引く歴史的事件として、「戦前史」に残る出来事となるだろう。より長期的、包括的な視点からの分析が必ず必要となるはずだ。
    最後に、タイトルの「抵抗の拠点」とはどこを指しているのだろう。本書からそれを見出すことは、私には難しかった。悲しく残念なことであるが。

  • 2015年2月5日、図書館予約。3月28日借り出し。この国から知性、良識というものが、一体いつから失われたのかという危惧、もっと言えば危機感がある中で、この書が発売されたことは、まだ大丈夫と胸をなでおろす思いを感じつつ読み終えた。ナショナリズムとも言えないレベルの「知」の劣化は、いま人気の予備校教師が、東大を含む一流校志望者の知的水準の低下を指摘しているところで、ネット等で匿名をいいことに日常の不満を発散している連中は、おそらくはこうした書物を手に取ることはないだろう。瀧川幸辰も美濃部達吉に対し「国賊」等々の罵詈雑言を弄した日本人が、その後どういう目にあったかという「歴史認識」もないままに世俗的な欲望と嫉妬心だけを増殖しているようでは、世界はもちろん日本国内でも俗っぽい成功も手に入らないことに気づかないのか、諦めているのか…

  • 有田芳生推薦。

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著者プロフィール

1966年長野県生まれ。ジャーナリスト、ノンフィクション作家。慶應義塾大学卒業後、共同通信に入社。社会部、外信部、ソウル特派員などを経て、2006年に退社しフリーに。テレビ・ラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『日本の公安警察』(講談社現代新書)、『絞首刑』(講談社文庫)、『トラオ―徳田虎雄 不随の病院王―』(小学館文庫)、『増補版 国策捜査―暴走する特捜検察と餌食にされた人たち』(角川文庫)、『誘蛾灯―鳥取連続不審死事件―』『抵抗の拠点から 朝日新聞「慰安婦報道」の核心』(講談社)、『青木理の抵抗の視線』(トランスビュー)などがある。

「2015年 『ルポ 国家権力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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