皇后考

著者 :
  • 講談社
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (658ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062193948

作品紹介・あらすじ

毎日出版文化賞を受賞した『大正天皇』と司馬遼太郎賞を受賞した『昭和天皇』の著者が、新たなる地平を切り開いたのは【皇后】という視点であった。
悠久なる日本の歴史のなかで、皇后の果たした役目とは何だったのか。皇后の存在を初めて世に問う書物がここに誕生した。
歴代皇后のなかでも大正天皇の妃で、後の貞明皇后が激動の大正、昭和の時代にどのような影響を与えたのかを、豊富な資料と取材、そして「昭和天皇実録」から明らかにした、今一番読まなくてはいけない本である。
さて、その目次を紐解いてみると、
1 序──ある詔書をめぐって
2 神功皇后と神武天皇(1)
3 神功皇后と神武天皇(2)
4 皇后美子・神功皇后・日蓮宗(1)
5 皇后美子・神功皇后・日蓮宗(2)
6 皇太子妃節子の孤独(1)
7 皇太子妃節子の孤独(2)
8 団欒と大病と(1)
9 団欒と大病と(2)
10 大正天皇の発病
11 もうひとつの大礼
12 皇太子裕仁の訪欧と英国王室
13 九州へ(1)
14 九州へ(2)
15 関東大震災
16 大正の終焉
17 必ズ神罰アルベシ
18 元女官長の乱心
19 戦争と皇太后・皇后
20 戦争と皇太后・皇后
21 天皇の退位問題と皇太后
22 皇太后の急逝
23 よみがえる光明皇后

日本における「皇后」という新しい研究分野の堂々たる内容である。

感想・レビュー・書評

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  • 貞明皇后、大正天皇の皇后、に関する本。
    そもそも貞明皇后や大正天皇の書籍が限られる中、貴重な一冊といえる。
    貞明皇后については、ハンセン病の予防に関する活動、初の一夫一婦制の夫婦であったこと、また、秩父宮が会津松平家から、高松宮が徳川家から嫁がせたことなど、好感がもてる功績がある一方、本著を読むと、筧克彦に心頭し極端な神道思想にのめり込む等、違った側面も知ることができる。

    貞明天皇が残した和歌を含めて、膨大の情報から、当時の貞明皇后の思考、言動について克明に分析、評価している。
    貞明皇后が、自らを神功皇后や光明皇后になぞり、政治的な権力を得ようとしていた事実関係が赤裸々に記されている。
    特に昭和天皇との葛藤、そして貞明皇后が、秩父宮に肩を持っていたという背後には陸軍の動きも感じとれる。

  • 明治、大正、昭和(〜平成)の時代を皇后に焦点を当てて読み解く。
    全23章。戦争を経験した同世代の人には当たり前に共有されていたであろうできごと(噂も含め)が、子供や孫の世代である私には初めて知ることが多く、驚きの連続。歴史観が大きく変わる⁈そんな一冊です。

  • 先代の妄執にさんざん苦しめられたはずの皇后が代替わりするとともにまた同じイジメの構図を反復する因果の連鎖が切なくもおそろしい。やんごとなき地位ははかり知れないストレスと壮絶な後遺症を残すのだな……。

  • 大正の貞明皇后・節子の圧倒的な存在感!。貞明皇后がアマテラスや朝鮮征伐の神功皇后、逆に病人への優しさから光明皇后を意識し自らを重ねていたとは! 外国人からは西太后、ビクトリア女王にまで比せられた。一方、第2皇子の秩父宮を偏愛し、昭和天皇と対立し、摂政になる動きもあった。また大本教の出口ナオとの対抗心など、神がかり的な活躍は今では知られていないことが多い。仲哀と応神の間の空白時期69年が日本書紀の記載から天皇と理解された神功皇后が皇統から外す決定がなされたのが、大正15年。貞明を意識した決定だったようだ。ひ弱なイメージの明治(意外だが!)・大正・昭和の3代の天皇。それに比較し、逞しく、かつ慈母のイメージを持った皇后像を築いた歴史的な女性だった。明治以降、宮廷の似非伝統行事に力を入れざるを得ない天皇と皇后が明確に役割分担をしていたことが理解できた。大正天皇が女性の写真を集めていた・・・、梨本宮伊都子妃、また多くの女官への天皇の興味と接近などの暴露話も楽しかった。昭和天皇・皇后のカトリックへの接近し、戦中に宮廷で皇后がキリスト教講義(講師はクリスチャンの野口幽香)に傾倒していったことは驚愕。そして慈母のイメージを更に進めた美智子皇后まで。

  • なかなか刺激的な内容だった。大正天皇が妙に長生きしていたら昭和史は、もっと変わったものになっていただろう。大正天皇の皇后が、ここまで権力志向が強かったとは知らなかった。皇族内の争いはこれまでも、わずかに書かれていたところであるが、次期天皇が配偶者が理由で長子相続とはならないことも、十分あり得ることを予感させる。

  • 近代3皇后の伝記。ヤヴァ面白い。プリンセス好きの女の子にぜひお薦めしたいが、引用史料は文語体が多いので子供には難しいかも。
    中心となるのは貞明皇后の狂気に支配された昭和初期の皇室の話で、ミッチー・ブーム以降現代の話が少なかったのはちと残念。

  • この大部の著作の大半は、大正天皇の后であり後の皇太后節子の皇室内における隠然たる権勢について述べられている。節子は神功皇后と一体となることで、つねに好戦的であったのであり、それだからこそ昭和天皇も心を煩わされることになる。この母子の確執は、皇太子裕仁が英国の王室をモデルとして後宮を改革しようとしたときまで遡ることができる。そして現在の皇后である正田美智子の結婚に対しては、旧皇族出身の皇后の不満は大きかったのである。どうやら皇室内はいつの時代も穏やかではなさそうである。

  • ご参考までに。
    “初出「群像」二○一二年九月号〜二○一四年八月号
    (二○一二年一二月号をのぞく)
    なお、単行本化にあたり大幅に加筆・修正を加えました。”
    〜654頁より〜

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著者プロフィール

1962年生まれ。早稻田大学政治経済学部卒業,東京大学大学院博士課程中退。放送大学教授,明治学院大学名誉教授。専攻は日本政治思想史。98年『「民都」大阪対「帝都」東京──思想としての関西私鉄』(講談社選書メチエ)でサントリー学芸賞、2001年『大正天皇』(朝日選書)で毎日出版文化賞、08年『滝山コミューン一九七四』(講談社)で講談社ノンフィクション賞、『昭和天皇』(岩波新書)で司馬遼太郎賞を受賞。他の著書に『皇后考』(講談社学術文庫)、『平成の終焉』(岩波新書)などがある。

「2023年 『地形の思想史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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