切り捨てSONY リストラ部屋は何を奪ったか

著者 :
  • 講談社
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感想 : 40
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  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062194594

作品紹介・あらすじ

リストラ部屋にも誇りはある! 都合6度、目標削減数8万人。ソニーのリストラ地獄の中で、リストラ部屋の人々はいかに生き抜いたか。講談社ノンフィクション賞受賞作『しんがり』の著者が追ったビジネス巨編!


かつて「リストラはしない」と宣言した会社があります。「自由闊達なる理想工場」を目指し、世界を席巻したソニーです。しかし、事業の中核たるエレクトロニクス事業は挫折し、米国型経営者の登場とともに1999年に本格化した大規模なリストラ計画が、その後6度も延々と繰り返されています。
発表された人員削減数は約8万人。早期退職を拒んだ面々は「キャリア開発室」という名のリストラ部屋に次々に収容されていきました。その数は延べ数千人にも達します。

なぜ、理想工場はこんな泥沼に陥ったのでしょうか? 経営者たちは何をしていたのでしょうか? リストラ部屋の人々はその中でどう生きたのでしょうか?

本書は、リストラ部屋の目線からその全貌を暴いていきます。
登場人物は一人を除いてすべて実名です。
リストラされて「公園居酒屋」で飲む社員、リストラ部屋にあえて志願したエンジニア、一生を賭けた理想工場にしがみつこうとする女性、「ヒト切り」と呼ばれる人事部員、自らリストラを実施した末に会社を辞めようとする役員――地方の社員から役員まで、リストラに関わり、あるいは巻き込まれた人々が、その苦しみと誇りと再生を堂々と語ります。

この本には、嘆くだけのソニー社員は登場しません。怒り迷いながら、自分のなかの不安を見つめ、野に咲くたんぽぽのように再起の場に散って、ソニーのDNAを植え付けようとする人々が多いのです。彼らの生き方を通じて、ソニーのリストラが何を切り捨て、何を奪えなかったのかが明らかになります。

著者は読売時代から「伝説の社会部記者」と謳われ、フリージャーナリストとして活動を開始した、あの清武英利。前作『しんがり 山一證券最後の12人』では講談社ノンフィクション賞を受賞しています。2年7カ月に及ぶ取材が、切り捨てソニーの表裏を描き出します!!!

感想・レビュー・書評

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  • 遅ればせながら。

    2015年4月刊行の本。
    SONYにおけるリストラの実態が、リアルに描かれています。

    リストラに追い込まれる社員の苦悩。
    リストラを宣告しなくてはいけない上長の苦悩。
    旗を振って、リストラを断行しなければいけない人事の苦悩。
    次は自分かと怯える社員の苦悩。
    これらの結果に苦悩し、SONYを後にする事業トップ。

    そんな中において、社長は高額報酬を得てその座に収まっていることが繰り返し表現されている。

    それぞれの社員の私生活から仕事の経歴まで、事細かにと描かれており、サラリーマンであるなら心重なる部分は少なくないんじゃないでしょうか。否が応でも引きこまれてしまいます。

    ”もし自分に起きたなら”

    そんなことを感じずには居られませんでした。堪えますね。
    読んでるだけで、胃がキュッと痛くなりました。

    この本では語られなかったこの顛末の本当のキッカケや出井さん以降、社長の目線で起きていたこと、後日談として公開される日は来るのでしょうか。
    魔法の特効薬は無いと思いますが、日本の良き時代を象徴するソニー、いずれ大復活を遂げて欲しいものです。

  • 出井、ストリンガー、平井の経営陣に対する批判が中心となった著書。出井や平井の著書と両面を読まないと誤解を招くリスクがあるが、現場の終わらないリストラの理不尽さを緻密な情報収集を元に述べた濃度は評価に値する。

  • みんな、ソニーが好きなんだなぁ、と。

  • 世界のソニー、日本の技術の素晴らしさを体現し、輝いたソニー。最近は、エンタメ事業で輝きを戻しつつあるソニー。そのソニー復活の裏で行われた凄まじい首切り。時の厳しい経済環境があるもトップが変わるとこうも変わるのかと驚くばかり。創業者の井吹氏や盛田氏の様な人物が居たらと思わずには、いられない。2020年、コロナで苦しみ、デジタル後進国に成り下がった日本、借金まみれの日本、そんな中でオリンピックを開催する日本。でもソニーで輝いたエンジニアの思いや開発力は、まだまだ続いていると思いたい。日本の復活を‼️

  • 『九十歳まで働く!』が元ソニーの方の著書。Amazonでソニー凋落系の本がいくつかリコメンドされた。Amazonレビューを読んで、これを選択。

  • ここ10年以上ずっと続いているリストラについて内面も含めてまとめた著書。

  • ソニーの人切り、凄まじかったんだなぁと実感。今の業績V字回復は人件費削減にカメラセンサーのヒットがあったからで、、、東芝の半導体と同じで、コモディティ化しているから、一本足打法は業績のブレが半端ない、、、いつまで続くかなぁ

  • ソニーリストラ全盛期にリストラを余儀なくされた者、またはリストラを志願した者の心情や状況を描いた一冊。

    初代社長井深、二代目社長盛田がソニーを成長させてきたが、当時のソニーは自由闊達な雰囲気であった。
    それは出る杭を活かす、面白いものを創るというエンジニアにとっては楽園のような環境であり、その環境の中でソニーは成長してきた。
    しかし出井、ハワード・ストリンガーに代替わりしていき状況は一変した。
    彼らは大規模なリストラを行う事によって利益を生み出そうとした。その結果今まで、技術的に優れていてもアウトプットが苦手な者・会社体制に反抗的な者等が処罰の対象となり、キャリアデザイン室と呼ばれるリストラ部屋に流されていった。さらに出井はリスクに対して慎重になり過ぎていたため、イノベーションが期待出来る製品を見送ってしまい国外企業を追いかける形となった。さらにストリンガーは役員を自分に賛同する者で固め、赤字経営の状態にも関わらず経費を無駄使いする程であった。

    しかし最近ではソニーは平井に代わり、復活している様にも思えるが、ハワードの弟をソニーに迎える等、役員は未だハワードの影響下にあるように思える。

    巨大な企業でもこの様な事態に陥る事は案外普通にあるんだなぁと。ではこの不安定な雇用の中でどう生きるかと言えば、組織の中で生存する事を目指すよりも、個人として生きてくためのポートフォリオを組む事が重要だと感じた。別の組織に移るにも、起業するにもその力の方が必要。

  • 山一證券の最後の姿を描いた「しんがり」の著者の清武英利氏がSONYのリストラの実情を元社員へのインタビューや取材をもとに書いた一冊。

    全編を通して思ったのが、井深大、盛田昭夫という2人が創業した当初のエンジニアが面白いものを作るという社風や魂というものがハワード氏がCEOになった時代からなくなったことや創業者時代からあったご意見番とでもいうべき顧問制度が廃止されたことなどがリストラを頻繁に繰り返す凋落に拍車をかけたのではないかと感じました。

    報道だけでは知ることのできない内情を当事者たちの取材から赤裸々に書かれているので、リアリティーを感じるとともに衝撃の連続でした。また、リストラを受け入れた方達の覚悟やその後についても書かれており、紆余曲折はありますがSONYというブランドを捨ててもその魂は生き続けているのだと感じました。

    高度経済成長期に躍進した企業の1つでもあるSONYのリストラからみる現状を本書で知ることで日本経済、社会のリアルなイマを確認できる一冊だと感じました。

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著者プロフィール

きよたけ・ひでとし/元読売新聞編集委員。2004年より巨人軍球団代表を務め、2011年に解任。現在はノンフィクション作家として活動する。2014年『しんがり 山一證券 最後の12人』(講談社文庫)で第36回講談社ノンフィクション賞を受賞。他の著書に『トッカイ 不良債権特別回収部』(講談社文庫)、『サラリーマン球団社長』『後列のひと 無名人の戦後史』(ともに文藝春秋)など。


「2023年 『どんがら トヨタエンジニアの反骨』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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