その愛の程度

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062195119

作品紹介・あらすじ

愛を証明せよ。
人類最大級の難問に豊永守彦35歳が対峙する。

職場の親睦会を兼ねたバーベキュー。
娘の菜月が溺れるのを見て、とっさに川に飛び込んだ豊永の腕の中にいたのは、娘ではなく別の女の子だった。
「お父さんは菜月をたすけてくれなかったもん」
その日から、血のつながりのない娘は口をきいてくれなくなり、七歳上の妻との関係もぎくしゃくし始めてしまい……

期待の新鋭が描く、新しい家族と愛の形。

感想・レビュー・書評

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  • <易>
    誰でもそうだと思いますが本はぶっ通しで最後まで読めるモノではありません。トイレに行きたくなるし別の用事を思い出したりして一旦しおりを挟んでと云う事がままあります。で小野寺の作品はその次に読書再開した時に一瞬で物語の中へ戻って行けるのです。まあ中断した時間が短いか長いかという事情はありますが戻って行きづらい作品は確かにあります。その一番の原因は登場人物が多い事だと個人的には思いますがストーリーがシンプルで解り易いのです。小野寺作品は。これは小説本として強力な武器です。僕と違って善玉コレステロールが多いのですw。小野寺史宣ってそういう作品を書く作家です。

  • 子連れの女性と結婚したあるサラリーマンの愛の形。

    ・暗転の七月
    ・退転の八月
    ・横転の九月
    ・空転の十月
    ・好転の十一月
    ・急転の十二月

    昔バイトしていた喫茶店の年上の店長・成恵と再会し、結婚した豊永守彦。

    成恵の連れ子・菜月や成恵が店長を務める喫茶店の店員とともに川遊びに来ていたが、菜月と一緒に遊んでいた留衣の二人が川で溺れそうになる。

    菜月を助けに行ったはずが留衣を助けてしまい、その後、菜月との関係が悪化し、成恵との関係も溝が深まるばかり。

    サッパリした性格の成恵は新たなパートナーとの人生を模索し、守彦も前向きに女性と向き合うが、思うようにいかない。

    正直者であるが不器用すぎるということもない性格の守彦が、自分に丁度いい愛の形を見つけていく。


    なかなか微妙な心情を描いた作品。

    愛はこうだ!と断定しない作者の表現が好き。

  • 妻の職場の親睦会で、川遊びをしていた子供2人が溺れた。慌てて助けた子供は自分の子供とは別の方の子供だった。幸い2人とも無事だったものの、そこから歯車が狂っていく。とんでもなく自己中心的な妻。やたらと思わせぶりな助けた子供の母親。そして何事にもドライすぎる豊永。イライラ、モヤモヤしながら読んだが、全体的には思ったより爽やかなのは、常にポジティブで天然キャラの小池のおかげか…「愛の程度」について、ついに学んだかに思われる豊永の今後の幸せを願う。

  • 「暗転の七月」
    助けてくれたのは。
    突然の出来事で気が動転していたとしても、一番に駆けつけて欲しかったのは父親だったろうな。

    「退転の八月」
    一度離れて暮らす。
    ここまで徹底されてしまうと対処しきれないが、距離を置くことによって何か変わるのだろうか。

    「横転の九月」
    決まっていたこと。
    本当に何もないからこそ素直に全て話すのだろうが、いくらなんでも自分勝手すぎる理由だよな。

    「空転の十月」
    帰宅したらいない。
    誰だって歳頃の男の子が親のいない間に連れ出したと知ったら、真っ先に疑ってしまうだろうな。

    「好転の十一月」
    幸せは人それぞれ。
    はっきりと言うには躊躇する話題だが、皮肉を言った結果がこうなるとは誰も予想できないだろ。

    「急転の十二月」
    終わりを告げる為。
    始まっていなかったのかもしれないが、何か行動していれば全く違う未来があったかもしれない。

  • 豊永くんいい人なのに残念すぎる。
    留衣ちゃんが読んでたヘヴィな本が気になった。

  • 結婚とか恋愛がなんなのか少しわかった。
    ・女を守りたい→何から?
    ・顔が好き→?
    ・化粧→なんですんの?
    ・そもそも好きとは?
    普段から考えてたこういった疑問にこっちはこんな感じでした、って内容で参考になった。

    ひとの言葉の裏読むばっかりで、普遍的な価値が絶対みたいな人間が、白けた人間関係を捉え直ししてて楽しかった。

  • 結婚、離婚、そして愛。なかなかヘヴィなものを扱っているはずなのに、淡々としていて柔らかく、暗くも苦くもない。まさにチーズケーキのような話。チョコケーキやモンブランではなく。
    でも、いろんな形の「愛」がテーマだから、後味は濃厚。淡々とした中に、すっと鋭いものを刺し込んでくる。それが小野寺さんの小説の好きなところ。

  •  豊永守彦 35 歳。穏やかで人当たりがよくまじめ。不器用だけれど誠実そうなので周囲からの好感度が高い男性です。

     ただし、感情をストレートに表現するのが苦手で一歩引いて振る舞うため、好意を寄せてくれていた女性から見切りをつけられることが少なくありません。
     積極的にアプローチされて結婚した、バツイチ・子持ち・年上の妻からは離婚を切り出され、続いて接近してきたバツイチ・子持ちの女性も結局は守彦から離れていってしまいます。

     それではダメだとわかってはいるのですが、改めることができません。人間とは学ばないものなのです。

     対照的なタイプとして登場するのが会社の後輩の小池くんでした。彼がめでたく結婚するのが象徴的でもありました。

     救いはラスト。その性格が顧客や上司からの信頼を集め、若くして人事課長昇進の内示が下ります。

     守彦の人間としてのスタンスは、仕事相手と恋愛相手で評価が異なるということが興味深いところです。
     守彦は一生このままなんだろうなと思いました。

  • いやあ、期待以上に面白く一気読み

  • ぶきっちょだなあ

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著者プロフィール

一九六八年千葉県生まれ。二〇〇八年『ROCKER』で第三回ポプラ社小説大賞優秀賞を受賞し同作で単行本デビュー。著書に「みつばの郵便屋さん」シリーズ、『ひと』『ミニシアターの六人』『レジデンス』『タクジョ!』『銀座に住むのはまだ早い』『君に光射す』などがある。

「2023年 『片見里荒川コネクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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