- Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062195362
作品紹介・あらすじ
立浪和義、片岡篤史、野村弘樹・橋本清・岩崎充弘の投の3本柱……。1987年、甲子園を春夏連覇したPL学園は、「史上最強」と称されていた。チームの正捕手を務めた伊藤敬司もまた、中心メンバーとして優勝へ大きく貢献した。
伊藤はPL学園を卒業後、青山学院大学を経てJR東海野球部へ入部。プロという夢は果たせなかったものの、野球部を引退後は、大企業のサラリーマンとして第二の人生をスタートさせた。
しかし、順風満帆と思えた人生は、理不尽な病によって一変した。難病・ALSを宣告されたのだ。
身体は日々動かなくなっていき、やがては声も失った。
昨日できたことが今日できない恐怖、介護なしでは生きられない情けなさ、残していく家族への不安……。
そんな思いを抱えながら、それでも伊藤は毎日を懸命に生きている。
伊藤にとって、PL時代の春夏連覇はどんな意味を持っているのか。男は今、何を思い難病と戦っているのか。
過ぎ去りし青春と友情の日々と、彼を励まし続ける仲間たちの物語。
感想・レビュー・書評
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PL学園で甲子園を春夏連覇し、人生の絶頂を謳歌したとも思われた主人公の壮絶な運命と生き様。
本の内容そのものよりも、まずはその事実に圧倒された。
口絵の著者とPL学園の仲間の写真のインパクトがまた強烈。表紙を開いた直後に口絵でしばし立ち止まり、読みながらも何度も口絵に戻った。
素晴らしい一冊なのだが、口絵を超えることができないように感じた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
PL学園最強世代と言われる春夏連覇を達成した立浪・野村・片岡・橋本の4人のプロ野球選手を輩出した学年。そのレギュラーキャッチャーだった伊藤氏は卒業してから難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症し現在も闘病中です。野球選手として活躍し社会人でも充実していた人生が一変して、常に死を意識しながらの闘病生活を送ることになります。PL学園時代の野球部の話から、社会人としての日々、そして自分の体の変調を自覚してからの病気の進行と体の衰弱の様子。介護する家族の気持ちと、家族との伊藤氏自身との思いなど非常に考えさせられる内容の本でした。以下抜粋です「闘病生活は、どんなに綺麗事を並べられても、また、どんなに周囲の人に良くしてもらっても、感謝は大いにするが、心が本当に快晴になることはまずない」、介護をしてくれる家族に対して「自分のために誰かが大変な思いをしているということを、分かりすぎてしまうと、今度は自分が生きにくくなってしまう。それゆえ、わからないようにしている。しかし、それをずるいと責めるのは酷だ」、一人娘さんへ「かわいがってあげられなくてごめんね。そして、大好きなママまで獲ってしまってごめんね。それでもパパは、いつもあなたのことを思っています。」など。取材当時は会話もできず、文字盤を使っての意思疎通でここまで克明に伊藤氏の心境を追った著者の矢崎氏の取材力と筆力に脱帽です。ALSでなくとも介護はいろんな形で多くの人に関わる問題ですから、多くの人に読んでもらいたいと感じました。