Aではない君と

著者 :
  • 講談社
3.99
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本棚登録 : 1120
レビュー : 200
  • Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062195584

作品紹介・あらすじ

殺人者は極刑に処すべきだ。親は子の罪の責任を負うべきだ。周囲は変調に気づくべきだ。
自分の子供が人を殺してしまってもそう言えるのだろうか。

読み進めるのが怖い。だけど読まずにはいられない。
デビューから10年間、少年事件を描き続けてきた薬丸岳があなたの代わりに悩み、苦しみ、書いた。
この小説が、答えだ。

感想・レビュー・書評

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  • 人間とは身勝手なものだ。
    一人の人間を追いつめるだけ追いつめて、終わりのない地獄のような日々に引きずりこむ。
    大切なものの命を無理矢理奪わせ、それを動画に撮り、脅しのネタにする。
    けれど、やられた側が我慢しきれなくなって逆襲をしたら、それは許せないという。
    自己弁護のために嘘を言っていると決めつけ、死人に口なしをいいことにでたらめを言っていると決めつける。
    証拠となる映像が出てきたら、今度はそれでも殺したことが許せないという。
    殺されなければならないほど、悪い人間じゃないという。
    自分の息子が何故殺されることになったのか、その原因となったいじめや悪行は他言するなと約束させる。
    つまり、犯人となった少年は、理由もなく殺人を犯した犯罪者として一生を生きていけと言っているのだ。
    なんて身勝手な親なのだろう。
    いじめることもやめず、命を奪うこともためらわず、毎日厭きることなくいじめを続けた息子を育てた責任はどこにいったのだ。
    反省の言葉もなく、ただ恨みだけを押しつけてくることに、被害者の父親に対して嫌悪感を感じた。

    少年が生きている世界はとてつもなく狭い。
    その中で繰り返されるいじめは、被害者にとっては永遠に続く悪夢のようなものだ。
    確かに殺されてしまった少年にだって言い分はあるだろう。
    父親を嫌いながらも、一方では父親に愛されることを望んでいた被害者と加害者にわかれた二人の少年たち。
    同じような境遇に共感しあい、互いの距離を縮めていった二人。
    だが、父親と楽しい時間を過ごしていることをしった片方は、やがていじめの首謀者となる。
    徐々にいじめはエスカレートしていく。
    裏切られたという怒りで。
    父親に結局は愛されているのだという妬みで。
    だが、父親だって完璧な人間ではない。
    大人ではあっても、人として足りないこともたくさんある。
    どんなに愛していたとしても、大切に思う気持ちがあったとしても、それを上手く伝えられる人間ばかりじゃない。
    不器用さからうまく表現できないことだってあるのだ。
    どうしたらこの悲劇をさけることができたのか。
    果たして、親の責任はどこまであるのか。
    少年法だけでは解決できないことが、きっと多すぎるのだ。
    どんなに個人情報を隠そうとしても、ネットの世界ではすぐに犯人だけでなく被害者の個人情報も晒される。
    父親に嫌われたくないと思う気持ちが切なかった。
    罪に問われることよりも、父親に見捨てられたくないと思う気持ちが哀しかった。
    何をどうしたら一番良かったのだろうか。
    相変わらず、薬丸さんの書く物語には考えさせられる。

  • 薬丸岳さん、真骨頂。

    中盤から後半にかけての畳みかけるような展開に、
    ページをめくる手が止まらず、
    読了後は暫しぐったり。

    私には子供がいません。
    だから、子を持つ親の真の思いを推し量ることは、難しいのかもしれません。
    それでもこの本の、被害者と加害者とを簡単に線引きできない、
    それぞれの親の苦しみは理解できました。

    この前の作品『アノニマス・コール』を読んだとき、
    薬丸さんの魂を揺さぶられるような話を、また読みたいと思いました。
    でも、そうは思ったものの本当に苦しかった。

    少年が自分より弱い者に、もっと小さくて弱い命を奪わせる…。
    翼の宝物のペロちゃん…。
    正直、読み飛ばしたくなるほどキツかったです。

    人間であっても動物であっても
    ”命”の大切さや重さは変わらないはず…。

    そして、こころを殺すことと、からだを殺すことの、
    どこに違いがあるんだろう…。

    ”罪とは償いきれるのか”
    ”赦すとはどういうことなのか”
    また考えました。
    答えは出ないとわかっているんですが。。。

    • 杜のうさこさん
      azu-azumyさん、こんばんは~♪

      いつも花丸をありがとうございます!

      薬丸岳さん、デビュー作から全部読んでるんですが、
      ...
      azu-azumyさん、こんばんは~♪

      いつも花丸をありがとうございます!

      薬丸岳さん、デビュー作から全部読んでるんですが、
      これもまたグサっときました。
      内容は辛く苦しいものばかりなのに、
      なんか付いて行きたくなる作家さんなんですよね。

      余談ですが…(ここに書いていいのかな?)時々ブログにお邪魔してます♪

      先日の”メイドさん特製クリスマスツリー”
      思わず吹き出してしまって(笑)

      いいね!を押したんですが、
      登録しなきゃダメなんですね~。

      また遊びに行かせてくださいね♪
      2015/11/08
    • ortieortieさん
      こんにちは。
      最近、図書館で本選びがマンネリになってしまい、杜のうさこさんの本棚拝見して参考にさせて頂いていました!ほっこり系が多いなぁと...
      こんにちは。
      最近、図書館で本選びがマンネリになってしまい、杜のうさこさんの本棚拝見して参考にさせて頂いていました!ほっこり系が多いなぁと思っているうさこさんの本棚で、少し意外な気がしたのと真摯なレビューに興味を持って読んでみました。それから薬丸岳さん、見事にはまってしまっています 笑
      これからも本棚参考にさせて下さい。
      素敵なレビュー楽しみにしています。
      2017/02/09
    • 杜のうさこさん
      ortieortieさん、こんばんは。おひさしぶりですね~♪

      コメントありがとうございます!
      こんな本棚と、拙いレビューを気に入って...
      ortieortieさん、こんばんは。おひさしぶりですね~♪

      コメントありがとうございます!
      こんな本棚と、拙いレビューを気に入って下さって嬉しいです!

      >薬丸岳さん、見事にはまってしまっています。
      わかります。私もデビュー作ではまりまして(笑)
      早速、遊びに行かせていただきますね♪
      2017/02/10
  • 小説だから 書けることがある

    少年犯罪を描き続けておられる
    薬丸岳さん

    加害者としての少年
    被害者としての少年
    その少年の親たち
    その少年にまつわる縁者たち

    事件が発生したがゆえの
    調査官
    検察官
    弁護人
    裁判官

    読む人が
    それぞれ どの立場から
    読むのかによって
    さまざまな読み方に
    になっていく

    薬丸岳さんの
    小説を読むたびに
    思うことである

  •  少年犯罪の話。友人を殺してしまった息子の父親からの目線で物語は語られていく。離婚して母親のもとで暮らしていた中学生の息子から電話があった。仕事の打ち上げでその電話に出ることをせず、後になってその電話を掛けた後に友人を殺したことが判明した。電話で何を伝えたかったのか。電話に出れば殺すことにはならなかったのではないか。事件を犯した息子以上に父親の苦悩が伝わってくる。
     なぜ、そのようなことが起こったのか。口を閉ざし、真相を語らない息子であったが、次第にいじめに遭っていたことを明かしていく。しかし、殺したことを反省できないでいた。やがて時が経ち、少年院を出所した少年は心から罪を反省することができるのだろうか。
     薬丸岳の小説は心の中を抉り取るようだ。自分の子どもが同じような事件に関わらないことを願って止まない。

    • chie0305さん
      おすすめ、ありがとうございます。「望み」は「Aではない君と」より高評価なんですね。泣いちゃうかな…。是非、読んでみます。
      おすすめ、ありがとうございます。「望み」は「Aではない君と」より高評価なんですね。泣いちゃうかな…。是非、読んでみます。
      2017/02/06
    • chie0305さん
      子供は二人いて、上が中3です。荒れて大変な時期がありました…。今、天童荒太さんの「家族狩り」を読み始めたところです。萎える分厚さですが、内容...
      子供は二人いて、上が中3です。荒れて大変な時期がありました…。今、天童荒太さんの「家族狩り」を読み始めたところです。萎える分厚さですが、内容もかなり…(少年少女の犯罪がテーマのようです)
      「望み」読めたら感想書きますね。では!
      2017/02/06
  • とても重たい内容だったけど、
    色んな事を考えさせられ、
    後味の悪さは感じなかった。

    被害者の立場になると
    どんな事であろうと許せない気持ちは消えないだろう。

    でも、
    加害者の立場になれば・・

    自分の子供が事件を起こしてしまったら・・

    この父親のように
    子供と、事件と、
    向き合うことが出来るだろうか。

    何が愛なのか、何が正しいのか
    本当に考えさせられる本だった。

  • 少年犯罪を主フィールドとしている著者ならではの作品。
    息子が殺人容疑で逮捕されるという、衝撃的な導入部から、たちまち物語世界に取り込まれた。
    著者の類稀な筆力で、同年代の子を持つ読み手なら、なお一層胸に迫る思いだろう。
    収監されたのちも、なかなか心の扉を開かない少年が、いじめの被害を打ち明け、父親に問いかける。「ぼくはあいつに心を殺されたんだ。・・・心を殺すのは許されるのにどうしてからだを殺しちゃいけないの?」
    重い問いかけに父親は答えられなかった。
    やがて、一緒に暮らすことになった息子に、逡巡の果て、被害者の親の思いを忖度し、「からだを殺す方が悪い」と答える。
    少年少女たち、子を持つ親たち、より多くの人に読んでもらいたい作品。

  • ずっと読みたいと思っていた本。

    14歳の少年が起こした殺人事件。
    重い、重い、重い、重い、重-い!
    胸がしめつかられる…
    でも、途中でやめることはできず…
    一気読みでした。

  • 子どもを一人前になるまで育てるのって、本当に難しい。
    育てている途中でたくさんの壁にぶつかる。そして不安が次々と押し寄せる。
    何をやっても、どんな選択をしても、これで正しいのだろうかと繰り返し問い続ける。いや、問い続ける暇もないほど、子どもを育てる毎日に追われているのかもしれない。
    学校でいじめに遭っていないか、逆に誰かをいじめていないか、何かの事件に巻き込まれるんじゃないか、事故に遭うんじゃないか。毎晩、元気な顔を見てようやく一日分の安心を手に入れる。
    けれど。元気な顔の裏に、何かが隠されているとしても、多分親は気付かない。
    ある日、突然、14歳の自分の子どもが友人を殺したとして逮捕されたら…私ならどうするだろう。
    まずは「うちの子に限って」と否定するだろう。けれど、それが事実だと本人から告げられたら、どうする。どうしたらいい。どんなことをしてでも子どもを守ろうとするだろう。あらゆる手を使って少しでも罪が軽くなるように、と駆けずり回るだろう。そこに、被害者への悼みの気持ちはあるだろうか。未成年者の事件が起こるたび、親が引きずり出される。カメラの前で謝罪させられる。そして一身に避難を受ける。そんな子供に育てた親の責任だ、と。確かにそうだろう。未成年なのだし、親の保護下にあるのだし。けれど、親にだって子どもの全てが見えているわけじゃない。見えていないという事さえ気づかないで毎日暮らしている。とくに離れて暮らしているならなおさら。
    離婚によって別れて暮らしていた息子が突然「容疑者」として逮捕された父親の苦悩。分かっていなかった自分を責め、分かろうとしなかった自分を責め、最後のSOSを受け取れなかった自分を責め。けれど、そこで立ち止まらず必死で戦おうとした吉永は「A」となった息子のかすかに残る未来をつなぎとめた。
    けれど、と物語の後ろに問いも見える。つなぎとめられるのは「生きているから」。ある日突然命を奪われた子はどうなる。子どもの未来を奪われた父親はどうなる。
    事件を犯した側の物語として進んでいくけれど、やり直すことさえできない被害者の親の無念もにじむ。どちらの立場に立っても辛い。親として読むには辛い。自分の子育てが正解だったかどうか、いつ答えはでるのだろう。

  • 重いテーマ。
    中学生の息子が殺人犯となったら、
    その時親はどう対峙するのか。

    加害者にも被害者にもなりうるということが恐ろしかった。

    母親が残念だったのと
    結果被害者となった少年の父親も、
    どうかと思うなと思ってしまう。

    子どもを信じることは大切だけど、
    子どものありのままを理解しようとすることが必要で
    親が頭の中で作った理想の子どもを信じることは
    彼らをを苦しめることになるのだ。

    子どもたちの「
    本当」を知っているのか、
    信じているのか、
    深く深く考えさせられた。

    翼の人生のこの先を思うと
    ずっしりと重しがのしかかってくるようだ。

  • ある日突然勤務中の吉永の元に刑事がやって来た。
    離婚した妻の元で暮らす14歳の息子・翼について色々と聞かれたが、
    会う機会も減っていて殆ど何もわからない…。
    その後、同級生の死体遺棄容疑で逮捕されたというー。
    自分の子が〝少年A〟になったー。


    翼が仲の良かった同級生の優斗を殺害。
    罪は認めるものの、弁護士にも父親である吉永にも何一つ語ろうとしない。
    唯々狼狽えたり、自分の責任じゃないと考える吉永が腹立たしかったり、
    真実を知りたくても叶わず、憔悴ぶりに胸が痛かったりした。
    翼と、何より被害者の親とどう向き合えばいいのか吉永は苦悩する。

    吉永は何も話さない翼と二人だけで面会時間も制限なく話せるように、
    少年法十条に保護者自らが弁護士に代わって話をする「付添人」となる。
    両親を苦しめたくなくて、何も語らなかった翼。
    子供の事を顧みなかった事を深く深く反省する両親。
    付添人となった吉永に少しずつ語り始めた事件の真相。
    〝心を殺したのは許されるのに
     どうしてからだを殺しちゃいけないの?〟
    この言葉が、翼の心を全て表していた。
    吉永の内面の葛藤や翼への向き合い方。
    そういうものが、息詰まる様なタッチで描かれていた。

    仲良しだった、翼と優斗。
    14歳の思春期ならでは、行動や気持ちも丁寧に描かれていた。
    どう歯車が狂って殺人にまで至ってしまったのか。
    何処かの時点で何とかならなかったのか、
    事件が防げたのではないかと、思わずにはいられなかった。

    「物事の良し悪しとは別に子供がどうしてそんなことをしたのかを考えるのが親だ」
    吉永の父のこの言葉には、とても深く感動しました。
    ラストに、事件の真相には驚きましたが、
    翼が心の底から命の大切さを感じる事が出来て良かった。
    完璧な親も子供もいない。
    一生をかけて考えていかなければいけない…。
    重い内容ですが、少年犯罪の裁かれ方も知る事が出来たし、
    色んな事を考えさせられました。
    そして、胸が熱くなり涙がこぼれました。

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著者プロフィール

薬丸 岳(やくまる がく)
1969年生まれ、兵庫県明石市出身。1988年、駒澤大学高等学校を卒業。高野和明の『13階段』の影響で小説家を目指し、2005年『天使のナイフ』が生まれる。同作で第51回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。日本推理作家協会現会員。
2016年『Aではない君と』で第37回吉川英治文学新人賞、2017年「黄昏」で第70回日本推理作家協会賞(短編部門)をそれぞれ受賞。その他の代表作として「刑事・夏目信人シリーズ」があり、2018年2月にシリーズ最新作『刑事の怒り』が刊行されている。

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