安倍首相の「歴史観」を問う

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  • 講談社
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レビュー : 11
  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062196086

作品紹介・あらすじ

昭和20年8月14日の日本を上空から偵察した米軍は驚いたという。降伏が決定し、爆撃を控えたにもかかわらず、日本各地で炎が舞い上がっている。その理由は後から知ることになるが、軍部の命令により戦争史料が徹底的に焼却されていたのである。もちろん、敗戦後に問われる戦争指導の責任追及をかわすためである。
昭和史の実証的研究のため、残された史料を発掘し、延べ4000人の人々から直接聞き書きを行ってきた筆者にとり、近年目につく事実を歪曲・曲解し、自分たちの立場に都合の良いように歴史解釈を図る、いわゆる歴史修正主義の動きはゆゆしき事態である。これまで重ねられてきた歴史学者・研究者の成果と誇りを傷つける動きと言ってもいい。
そのなかで特に危惧しなければならないのが、歴史修正主義者たちが権力と一体化している風潮である。8月に発表される安倍首相の「談話」には、歴史研究から得られた教訓が活かされるのか。世界的に注目を集めるそのステイトメントを前に、昭和史研究の第一人者があえて首相の立ち位置に異を唱える。
また、従軍慰安婦問題で指弾された朝日新聞の、第三者委員会のメンバーとして同問題の報道を目の当たりにしてきた筆者が、報告書には盛り込めなかった慰安婦問題の本質を書き下ろす。「軍隊と性」「戦場と性」の問題にも深く言及する。

感想・レビュー・書評

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  • タイトルに安倍晋三の名前が入っているが、決して安倍晋三個人
    を批判している書ではない。昭和史を調べ、書き続けている著者
    が史実を捻じ曲げる歴史修正主義者に対して警告を発している。

    そこに安倍晋三も含まれるのだろうが、私はそもそも安倍晋三が
    確たる歴史観を持っているのかに疑問なんだよな。

    以前、安倍晋三の生い立ちを綴った作品の中で大学時代に彼を
    教えた教授が思想史の勉強なんてしていなかったと言っていた。
    そんな人が歴史書で独学するだろうか?

    愛読書はお友達・百田尚樹の小説だっけ?エンターテイメント小説
    が悪いとは言わないが、もうちょっとなんかないかなぁ。『永遠の0』
    なんて切り張り小説じゃないか。

    知識も教養もないから「靖国神社はアメリカのアーリントン墓地と一緒」
    なんて言って、アメリカを怒らせたりするんだろうな。靖国神社は宗教
    施設だけど、アーリントンは宗教施設じゃないってことも理解してない
    のかも。

    日本国憲法を「押し付け憲法」「占領憲法」という人がいる。勿論、政治
    家にもだ。だから、日本独自の憲法が必要だと説く。これに対し著者は
    言う。

    「占領期の吉田茂首相や昭和天皇は傀儡政権の役を果たし、政治的
    な戦争でアメリカ側に屈服した指導者ということになる。」

    GHQの占領下で作成された憲法でも、平和憲法ならいいではないかと
    しか思っていなかったので、著者のこの言葉にはっとした。麻生太郎に
    対して「お前のじいさん、傀儡じゃないか」って誰か言えるのかしらね。

    安倍政権が長くなるにつれ、得体の知れない息苦しさを感じているの
    だが、本書を読んでその正体が分かった気がした。

    太平洋戦争の軍事主導時代、国家は国民を正方形の枠に閉じ込めよう
    としたと本書は解く。その四辺は「弾圧立法の運用」「官民挙げての暴力」
    「国定教科書の軍事化」「情報発信の一元化」だと。

    今の時代と似てやしないか。そして、この正方形は徐々に狭くなって行く
    のだろう。日本のメディアはアメリカのトランプ政権のすったもんだばかり
    報道しているが、今国会で政府が成立させようとしている共謀罪につい
    て詳報しているメディアはどれだけあるだろう。

    「とにかく政治家がいなかった」とは軍事主導の時代を振り返っての木戸
    幸一の言葉だったが、政治家との肩書を持った人はいるが歴史に学び、
    教訓としている政治家は一体、どれほどいるのだろうか。

    都合のいい部分だけをチョイスして史実を捻じ曲げようとしてはいない
    だろうか。歴史に学ばない者は歴史に報復される。そんな言葉さえ知ら
    ぬから、国会で「八紘一宇」を口にする政治家が現れるのだろうか。

    講演の内容、雑誌に発表した文章、新聞連載のコラム等をまとめた作品
    なので、同じ内容の繰り返しはあるが昭和史に照らして現政権を考える
    には良書である。

    それでもやっぱり安倍晋三に歴史観があると思えないんだよな。保守系
    の論説の気に入ったところだけを繋ぎ合わせているように感じる。歴史書
    の数冊でも読んでいれば「云々」を「でんでん」と読まないと思うのよ。

  • 歴史を学ぶことは今を学ぶことであると、恩師は言った。常に歴史を振り返り学ぶことを怠ってはならんのです。戦後がずっと戦後であれば戦間期は来ないでしょ。それでいいじゃん。

  • 保坂氏は安倍首相を軍服を着た首相と定義する。安倍は軍人として日本を引っ張っていこうとしている。軍隊を持ち戦力を強くして他国と交渉する。日本の利益のためには軍事力が必要だと心から信じているようだ。
    弱腰外交だと思っている人からは頼もしい指導者と思われていることだろう。しかし、太平洋戦争を起こし日本を破壊に導いたのは軍人であることを忘れてはならない。

  • 展示期間終了後の配架場所は、開架図書(3階) 請求記号 312.1//H91

  • 戦時の軍事指導者たちがいかにひどかったか。わがままし放題でのさばり、あげく負けが決まると証拠隠滅で書類を焼却する。そういう時代に逆戻りをして欲しくない。

    歴史には学ばなければならない。

  • 歴史修正主義者の結論ありきの思考パターンを排し、史料を発掘し、延べ4000人の人々からの直接の聞き書きから、昭和史を実証的に解明している。
    戦中資料の焼却を命じた幹部、戦後要職について慰安婦の実態について口をつぐむ軍医等々、なるほどと思える史実を丁寧に拾い上げると、本当の昭和史が見えてくる。
    いたずらに右だ左だと極端に走る世相の中、こういう学者の仕事と功績がもっと評価され認知される必要を痛感する。

  • 2016年の2冊目です。

    2015年は、自分の思考のレンジのやや右側に位置付けられる本を先行して読んでいたので、バランスを取るために読んだ本です。
    バランスということでは左寄りというより位置づけになるところですが、正直、
    そんな感じは受けず、リベラルに近い感覚を持ちました。
    この保坂氏は、ものすごい数の人に自らが聞き取りをして、それを軸に自分の考え方を構築している。確か延べ6000人だったか7000人だったと思います。
    そこから見えてくる事実を拠り所にされています。そういう点で、”凄み”を感じさえします。今を生きている私たちはIT時代にあり、事実を自ら拾い集めることが、
    先ずありません。その必要はないとも考えている人も多いと思います。

    太平洋戦争。この呼び方についても、諸意見のあることを書かれています。私も、第二次世界大戦とか日中戦争とか大東亜戦争といった呼称は知っていましたが、今回、十五年戦争という呼び方、捉え方もある事を初めて知りました。一つ一つの事実にあたり、そこから偏りのない認識を紡ぎだすことは、膨大な時間と労力が必用だと思います。中庸な心を持って、目の前に、耳元に届くニュースや各種情報を客観的に捉えることを自らの姿勢としたいと思わされました。

  • 軍事主導体制を確立するには、国民に客観化しt亜事実を教えない、政府の発する情報のみしか伝えないことが前提となる。メディアはまさに国家g亜国民に対して宣伝、示達の役割だけを果たし、情報、知識を相対化することを拒否し、バランスある考え方を排斥するものえある。それだからこそ戦争g亜加納になり、国民は自らの国の戦いを聖戦と信じるようになる。

  • 「歴史修正主義の考えが、権力と合体してしまったことこそ、現代の危機的状況」


    この手の政治・政治思想やら歴史やらには、あえてというか、個人的には自分自身の実のある人生にあまり役立たないと思っているので読まないのですが、昨今の安保関連の動きをみるに、なんらか理解を深めておく必要があると思い、手に取ってみた。

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著者プロフィール

ノンフィクション作家。1939年北海道生まれ。同志社大学文学部卒業。「昭和史を語り継ぐ会」主宰。著書に『昭和陸軍の研究』『昭和の怪物 七つの謎』『あの戦争は何だったのか』『陰謀の日本近現代史』など。

「2021年 『太平洋戦争への道 1931-1941』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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