道徳の時間

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 280
レビュー : 61
  • Amazon.co.jp ・本 (370ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062196673

作品紹介・あらすじ

【第61回江戸川乱歩賞受賞作】問題。悪い人は誰でしょう?――ビデオジャーナリストの伏見が住む鳴川市で、連続イタズラ事件が発生。現場には『生物の時間を始めます』『体育の時間を始めます』といったメッセージが置かれていた。そして、地元の名家出身の陶芸家が死亡する。そこにも、『道徳の時間を始めます。殺したのはだれ?』という落書きが。イタズラ事件と陶芸家の殺人が同一犯という疑いが深まる。同じ頃、休業していた伏見のもとに仕事の依頼がある。かつて鳴川市で起きた殺人事件のドキュメンタリー映画のカメラを任せたいという。十三年前、小学校の講堂で行われた教育界の重鎮・正木の講演の最中、教え子だった青年が客席から立ち上がり、小学生を含む300人の前で正木を刺殺。動機も背景も完全に黙秘したまま裁判で無期懲役となった。青年は判決に至る過程で一言、『これは道徳の問題なのです』とだけ語っていた。証言者の撮影を続けるうちに、過去と現在の事件との奇妙なリンクに絡め取られていくが、「ジャーナリズム」と「モラル」の狭間で、伏見はそれぞれの事件の真相に迫っていく。

感想・レビュー・書評

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  • 「道徳の時間です」という言葉があまりにも不穏に感じるのは、誰もが道徳という響きに疚しさを抱えているからのような気もする。

    最初からとても続きが気になって集中して読んだけど、動機と現在の事件がどうにも納得できない。
    そんな理由で絶望も、そんな理由で殺人も。

    「道徳」も結局は誰かに作られた「ルール」なのかもしれない。

  • 「13年前の教育評論家殺害事件」が冤罪か否かドキュメンタリー映画を撮りながら検証していきます。
    また、主人公の住む街で「連続した悪質なイタズラ事件」と「陶芸家不審死事件」が発生。「道徳の〜」という過去と現在の事件に共通するフレーズも出て来て混迷していきます。
    謎の提示が巧くて興味を引かれますし、真相に近づいていく過程がスリリングで面白いです。
    しかし、教育評論家殺害事件の裁判で被告人が黙秘を続けていた理由、越智冬菜が映画を撮る理由、陶芸家の不審死、過去と現代の事件の結び付き、全て脱力を禁じ得ない真相でガッカリです。

  • 実は選評が面白い、真面目に読むと裏切られます

  • 江戸川乱歩賞受賞作。過去に小学校で起こったひとつの殺人事件の真相を、ドキュメンタリーとして追いかけるミステリ。さらにその事件を彷彿とさせるようにして起こる数々の悪質な事件と現場に残されたメッセージ。「道徳」という言葉が実に不気味な印象です。
    次々新しい事件が起こったりするわけではないけれど、謎は魅力的で引きつけられました。冤罪を疑って行われる事件の考証もミステリ好きには面白くて。動機はちょっとあっけにとられてしまいましたが(そんなんありっ!?)。これが誰のための物語だったのかを思えば、たいした問題じゃないかな。

  • 第61回江戸川乱歩賞受賞作
    不可解なメッセージが添えられた度を越したイタズラ事件。殺人まで起こった連続事件と、13年前の殺人事件。残されたメッセージの意味は?犯人の目的は?と気になってぐいぐいと読みふけっていく、が…うーん。なんかちょっとよくわからない。結局、何がしたかったんだ、みんな。

  • ビデオジャーナリストの主人公が住む市で、連続イタズラ事件が発生。現場には『生物の時間を始めます』『体育の時間を始めます』といったメッセージが置かれていた。そして、地元の名家出身の陶芸家が死亡する。書き出しは面白いので
    期待して読んだ。冤罪も一つのテーマになっていて、犯人なのか?意図にはめられた被害者なのか?というのもおもしろかったけれど、如何せん動機が…。あんな動機で人を殺したりしないでしょって思ってしまった。会話文も誰のセリフなのかがわかりにくいところがあった。

  • 小学校で催されていた講演会、多くの人が見つめる中、一人の男が講演者を刺殺。犯人は「これは道徳の時間なのです」
    と語った以外は黙秘、無期懲役が確定する。
    十三年後、同じ町で連続イタズラ事件が発生。「生物の時間です」「体育の時間です」そして自殺と思われた遺体の近くに「道徳の時間です。殺したのは誰?」というメッセージ。
    面白そうだと読む前はかなり期待していました。しかし読み進めても臨場感や緊張感がまったく感じられないんですね。メリハリのない構成で、淡々と進んでいく感じです。
    主人公は十三年前の事件のドキュメンタリーを撮影しますが、監督の意図は後半で意味を持つにしろ、主人公から何か引き出そうという熱が感じられないのも、物語に魅力を感じなかった原因かと思います。
    事件に関しては言葉に込められた意味や現代との繋がりをどう書かれるのか期待しましたが、見事に裏切られました。
    現実にはともかく小説ならありえなくないと思いますが、例えるなら野球で投手が絶対打たれないボールと称して打者を狙ってぶつけ、「どうだ、打てまい」と言われても納得いかないでしょう? 読者の上をいくのではなく、ハナから勝負を避けた印象です。
    越智冬菜が最後の最後で存在感を発揮しますが、彼女については多くの人が想像すると思うんですね。でも写真が提示されるからありえないと。それを整形の一言で引っくり返す。これもひどいと思いました。

  • うん、全然面白くなかった!!
    重要な登場人物の正体はすぐに想像できるし、犯罪や行動の主たる原因を幼少期のひどい体験に結び付けていく描き方は好きになれないし。
    それからペット愛好家にとっては非常に不快な表現が何度も出てくる。
    こりゃ星1だな、と思ってふと気づいた。この不快な表現自体がまさに道徳的観点というものに向けられた作者の意図なのかも。
    それで少しだけぞっとしたので星プラス1。

  • 中ダレもせず最後まで面白かった。他の作品も読んでみようと思う。それにしても解説で「銀行なんて大嫌いイヤイヤだって僕ちんのいうこと聞いてくれなくて辞めちゃったんだもーんだから銀行悪役の読み物いっぱい書いてやるんだー」さんが酷評したと書いてあり、それだけでもう、絶対面白いことは間違いなかったのだが。

  • 悪口ばっかり聞かされると逆に見たくなる映画みたいに、この作品の入り口は、江戸川乱歩賞をとったときのあまりの酷評っぷりだった。

    いわく、
    ・文章が鼻について読みづらい
    ・この動機はいかがなものか
    ・主要人物の背景がおよそ看過できない

    まあ、発表前に書き直したみたいなのでどこまでそれが残ったのかはわからないけど。でも、何百作品の中から選ばれて、しかもこれから先同業者になるかもわからない人に対してここまで言えるのかなあと、ついサラリーマン的な心配しちゃうあたりわたしは芸術家にはなれない…

    この人の作品は他にスワンしか読んでないので全体評価はできないけど、それでも独白が多いところ、登場人物が多いわりにあまり心情にまで踏み込まないところ(スワンに至ってはメインの片割れに関して、意図的なのか、ひたすら心情描写が薄い)は似てる気がしてる。大量殺人に至る事情は逆にまあ、ありきたりと言えなくはない、かな。もちろん自然だけど。

    ただ、そう考えると道徳の時間の動機はインパクトはあったと思うなあ。最近意図して殺人の絡む小説の動機に注目してるけど、まあ、サラリーマンもの以外かつ計画殺人になったとき、子殺しとレイプ、そしてサイコパスがどんだけ多いか。まあ、私の読書傾向でそうなのかもしれないけど。

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著者プロフィール

呉 勝浩(ご かつひろ)
1981年青森県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒業。2015年、『道徳の時間』で第61回江戸川乱歩賞を受賞。2018年『白い衝動』で第20回大藪春彦賞を受賞し、吉川英治新人文学賞候補にもなった。

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