道徳の時間

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (370ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062196673

作品紹介・あらすじ

【第61回江戸川乱歩賞受賞作】問題。悪い人は誰でしょう?――ビデオジャーナリストの伏見が住む鳴川市で、連続イタズラ事件が発生。現場には『生物の時間を始めます』『体育の時間を始めます』といったメッセージが置かれていた。そして、地元の名家出身の陶芸家が死亡する。そこにも、『道徳の時間を始めます。殺したのはだれ?』という落書きが。イタズラ事件と陶芸家の殺人が同一犯という疑いが深まる。同じ頃、休業していた伏見のもとに仕事の依頼がある。かつて鳴川市で起きた殺人事件のドキュメンタリー映画のカメラを任せたいという。十三年前、小学校の講堂で行われた教育界の重鎮・正木の講演の最中、教え子だった青年が客席から立ち上がり、小学生を含む300人の前で正木を刺殺。動機も背景も完全に黙秘したまま裁判で無期懲役となった。青年は判決に至る過程で一言、『これは道徳の問題なのです』とだけ語っていた。証言者の撮影を続けるうちに、過去と現在の事件との奇妙なリンクに絡め取られていくが、「ジャーナリズム」と「モラル」の狭間で、伏見はそれぞれの事件の真相に迫っていく。

感想・レビュー・書評

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  • ⭐あらすじ
    鳴川市で連続的ないたずらが発生した。
    イタズラは徐々にエスカレートしていき
    事件へと発展した。
    事件が起きた付近には
    「生物の時間を始めます。」
    「体育の時間を始めます。」
    と書かれていた。

    イタズラ事件が続いたのち、南房が自宅で死んでいるの
    が発見された。
    付近には「道徳の時間を始めます。殺したのはだれ?」
    と書かれていた。

    時をおなじくして、ジャーナリスト 伏見のところへ
    ドキュメンタリー映画のカメラマンをして欲しいとの
    依頼があった。
    映画の内容は十三年前 小学校講堂で衆人環境中に
    向が教育会 正木を殺害した事件だった。
    向の証言は「これは道徳の問題なのです。」のみ
    でそれ以外は完全黙秘を貫いていた。

    連続イタズラ事件との関連性を疑わずにはいられない伏見だったが。
    十三年前の事件と連続イタズラ事件は関連性があるのか。
    ふたつの事件ででてくる「道徳」とはいったいなんなのか。
    --------------------------

    ⭐感想
    過去の事件と何か関連性があるのかなと思いながら読んでおりましたが、特にそれといった描写はなく。
    なぜ、2つの事件が関連性をもっているのではないかという描写を序盤に入れたのか考えても分かりませんでした。
    気のせいかも知れませんが、中盤から後半にかけてどんどん薄くなっているような気がしました。
    個人的にあまり好みではない物語でした。

    読書期間 2023年11月20日~22日

  • 道徳と法律は似て非なるものなので、この道徳という言葉の不穏さは作家の性質と、語感などから明らかですね。倫理という言葉もなかなかに物騒ですが、どちらかというと個人的な倫理観というものに根差した話な気がしました。結構読者を置いて突っ走っていく感じの話なので、動機なんてあって無いようなものであることも含めて、この作者っぽいとも思いました。最初から片鱗あります。

  • 江戸川乱歩賞受賞。
    本作にてデビュー。

    『爆弾』を読んでとても面白かったので、デビュー作を読んでみる。

    仕事への気概を失くしたくたびれた中年男性、社会の底辺と呼ぶような場所で生きてきた者、限られたコミュニティに属する人々の集団心理、社会へ突きつけるメッセージ...すでにデビュー作から今に至る片鱗が随所に。(なんて評せる立場ではありませんが。2作目なので。笑)

    次々と提示される謎に引き込まれて読んだ。
    残念というか、ちょっと想像と違ったのは、あらすじにあった「○○の時間です」のメッセージに、もっと核心に迫る意味があるのかと思ったこと。
    インパクトの強い「道徳」という言葉と、犯人の動機とが、今ひとつ噛み合わない気がしてスカッと終われなかったこと。
    (でも、そんな小説が世に出たら、私も読むだろうなあ。)
    どうも「演劇」が目立ってしまって、突然出てきた(ように感じる)「小説」にピンとこなかった。作中で「犬を喰らう話」を再現するとか、もっと動機を思わせる流れがあれば..
    きょうだいのエピソードももう少しあれば..

    などと、あれこれ注文が浮かんでしまうのは、それだけ謎が魅力的だったということで。

    しかしタイトルがいいな。
    小学校で当たり前に習う「道徳」。
    一人一人を大切にする教えだと思っていたけれど、もしかしたら「あなた」p336 や「私」から一番遠い場所にある言葉なのかもしれないと、ふと怖くなった。



    いちまろの感想・レビュー『爆弾』 #ブクログ
    https://booklog.jp/users/ichimarobooks/archives/1/4065273471

  • 小学校で衆人環視のもと行われた殺人事件、さらに町内で起こる連続イタズラ事件と偏屈な陶芸家の変死事件、と謎の提示は魅力的なタイトルと合わせ非常に上手い。
    どんどん新事実が明かされていく中盤までは真相が気になってページをめくったが、中盤過ぎても事件の輪郭がいまいちはっきりせず、主人公伏見とドキュメンタリー監督越智冬菜の衝突や伏見の回りくどい自分語りがウェイトを占めてきて、やや停滞していく
    (個人的にはドキュメンタリー映画は、監督の意向によって誘導や編集がされるのは当たり前だと思っているので、伏見の越智に対する怒りはあまりピンとこなかった)
    まぁ結局伏見もうだうだ言いつつ個人的に事件を調べ真相にたどり着くのだが、そこに至る経緯も乱暴な上に、肝心の真相が両方の事件ともに拍子抜けするものだったのには驚いた。
    フィクションなので、リアリティ云々は私はどうでもいいのだが、「道徳の時間(問題)」という言葉と全く関係なかったのには脱力した。

    ただ、文章や構成の難はあるものの、やはり謎の魅力は素晴らしく、真相を知りたいという欲求で最後までページをめくってしまったことは事実であり、その点は評価しないといけないだろう。
    あらすじを読んで興味を持たれた方について、積極的に勧めはしないものの、読んでも損はしない作品だと思う

  • 第61回江戸川乱歩賞受賞作。
    名家の陶芸家が死亡し、自殺と思われたが、そこに残されていた落書き。
    「道徳の時間を始めます。殺したのはだれ?」
    そこに、町内で起こるいたずら事件、そして13年前に教育者が講演中に衆人環視の中で青年に刺殺された事件が絡んできて、ぐいぐいと物語に引き込まれた。一日で読んでしまった。
    繰り返される「道徳」というワードですが、結局その道徳が事件にどう関係していたのか…読解力が足りなくていまいち読み取ることができませんでした。そのせいで、なんだかぼんやりとした印象しか残らなかったのが残念だった。
    しかし、デビュー作でここまで一気読みさせるパワーはすごいと思った。
    巻末に、選考の作家先生方のコメントが載っているのですが、評価が真っ二つに分かれてて面白い。(M-1で全然面白くないと思ったコンビが王者になった時の私みたいなこと今野敏さんが言ってて笑った。)
    出版に当たり「デリケートな人権上の問題」を含んでいたので、かなり修正が入ったらしい。本編よりもそこに闇深さを感じて震えた。修正前はどんな感じだったのか、気になる。

  • 「道徳の時間です」という言葉があまりにも不穏に感じるのは、誰もが道徳という響きに疚しさを抱えているからのような気もする。

    最初からとても続きが気になって集中して読んだけど、動機と現在の事件がどうにも納得できない。
    そんな理由で絶望も、そんな理由で殺人も。

    「道徳」も結局は誰かに作られた「ルール」なのかもしれない。

  • あらすじ自体は面白いんだけど、なんだか読みにくく感じて、入りこめなかった。

  • 提示される謎や、それが解き明かされていく過程において、話の構成はよくできていると思う。
    最後まで興味を惹き付け続ける筆致ではあった。
    がしかし、明らかになった真実に説得力と納得感は皆無。無理矢理に点を繋げて線のように見せかけているというか、奇抜な線を書こうとしていろんな色で点を書き連ねてみた、という感じ。どう考えても各人の行動のメリットとデメリットが釣り合っていない。
    何よりも主人公の正義感と憤りが独りよがり過ぎてまったく共感できない。「みんなくん」の理論もなんだか意味不明だった。とても残念です。

  • 「13年前の教育評論家殺害事件」が冤罪か否かドキュメンタリー映画を撮りながら検証していきます。
    また、主人公の住む街で「連続した悪質なイタズラ事件」と「陶芸家不審死事件」が発生。「道徳の〜」という過去と現在の事件に共通するフレーズも出て来て混迷していきます。
    謎の提示が巧くて興味を引かれますし、真相に近づいていく過程がスリリングで面白いです。
    しかし、教育評論家殺害事件の裁判で被告人が黙秘を続けていた理由、越智冬菜が映画を撮る理由、陶芸家の不審死、過去と現代の事件の結び付き、全て脱力を禁じ得ない真相でガッカリです。

  • 実は選評が面白い、真面目に読むと裏切られます

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著者プロフィール

1981年青森県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒業。現在、大阪府大阪市在住。2015年、『道徳の時間』で、第61回江戸川乱歩賞を受賞し、デビュー。18年『白い衝動』で第20回大藪春彦賞受賞、同年『ライオン・ブルー』で第31回山本周五郎賞候補、19年『雛口依子の最低な落下とやけくそキャノンボール』で第72回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)候補、20年『スワン』で第41回吉川英治文学新人賞受賞、同作は第73回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)も受賞し、第162回直木賞候補ともなった。21年『おれたちの歌をうたえ』で第165回直木賞候補。他に『ロスト』『蜃気楼の犬』『マトリョーシカ・ブラッド』などがある。

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