セント・イージス号の武勲

著者 :
  • 講談社
3.08
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  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062196802

作品紹介・あらすじ

戦渦を駆ける少年は出会う――。戦局を動かすのは、謎の少女か、海に潜む異形のモノか。
日本SF大賞作家が放つ歴史海洋冒険小説。トラファルガー海戦×ボーイ・ミーツ・ガール!

歴史のうねりに奇想のうねりが重なって、神話のように美しく惨たる海戦が顕現した!                                                   ――皆川博子氏

日本SF大賞受賞、「SFが読みたい!2011年版」第1位に輝いた『華竜の宮』の著者が、
ナポレオン戦争における最大級の戦い、トラファルガー海戦を舞台に、縦横無尽の想像力を炸裂させる!

19世紀初頭。英海軍に徴集された天涯孤独の少年トビーは、交戦中に遭難し、見たことのない船に救出される。
そこで働くのは、主に十代二十代の子供や若者たち。セント・イージス号――世界に先駆けた新技術を搭載する、極秘任務を帯びた軍艦だった。
謎の少女ファーダと出会い、トビーの世界は大海原へ、そして激化する戦闘へと開かれていく。

感想・レビュー・書評

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  • コペンハーゲンの海戦で交戦中、海に落ちたトビー。
    救助してくれたセント・イージス号は、普通の軍艦とは違っていて……。

    若者が多く、自らの意思で学ぶことを重んじ、年齢や性別、立場を超えて、人として尊重される。
    子どもや女性は正式な人員扱いされなかったイギリス海軍において、風通しのよさが心地よかった。

    蒸気機関を船にどう活用していくのか、という技術開発の歴史も、興味深い。

    〈大海蛇〉ココにまつわる部分は、ややファンタジー感。
    蒸気機関という科学技術との対比が、時代が移り変わる境目に感じた。

  • 蒸気を原動力として動く軍艦が、トラフォルガー海戦の時代にあった。そしてナポレオン
    と闘うイギリスの海軍にその少年は拾われ、(たぶん?)架空の生物を吹く笛の音で操る少女と出会った。

    上田さんなりのSF!?
    なのでしょうが、生物学もヨーロッパ史も自信が無いので何とも言えないけれど私はこの本の中で確かに彼ら彼女らに出会った。

    戦争。いつの時代にもイタいけれど、そこで愛する人、信頼すべき人をみつけながらも失ってゆく人の姿が波間に見える。そして(たぶん?)架空の絶滅種だったあの生物たちも…。

    失うモノ、代わりに手にしてゆくモノが沢山ある、人間の歴史を私はこの本で知った。

  • <魚舟・獣舟>の上田さんが、海上の話を書き、オビは皆川博子女史…とくれば読まないわけにはいかないでしょ!!
    上田さんの海上の描写の気持ちよさは、本当にすごいんだもの。

    さて。
    19世紀のトラファルガー海戦が舞台の話…で歴史小説だと思ったら大間違い。科学技術の未来について読者に問うという、しっかりSF小説でした。
    「もうだめだよー、こういうの弱いんだよ!泣いちゃうよ!」というわけで、ラストは涙々。

    本当にあったトラファルガー海戦や当時のイギリスを歴史小説としてもしっかり書き込みながら、架空の実験船や海洋生物の存在を取り入れ、そして「潮風や海上の気持ちよさと海の恐ろしさを描いたら、やっぱり超一級!」な上田さんの、新しい形のSF…という感じで、ますますファンになりました。
    すっごく良かった!おもしろかった!!

  • 歴史物と思って読み始め、途中でファンタジーと気づいた。
    私自身はトラファルガー海戦前後の知識に欠けていて、史実と創造の境目を楽しむ事が出来なかったので、そのあたりに詳しい人はもっと楽しめる物語なのかもしれない。

  • 27:上田さんの海洋もの、しかも皆川博子さんの推薦つきとくれば外れないはずがなく、やっぱりジワジワと好きなやつでした。
    産業革命期のイギリス海軍、蒸気機関、帆船、少年と海の民の少女。史実とファンタジーが巧みに織り混ぜられ、戦争の影を纏いながらも誰かの幸福を信じて新しい技術開発に携わる情熱が静かに、力強く描かれます。好きすぎた。
    「華竜の宮」での潜水艦のピンの打ち合いも良かったけど、今作の砲撃戦もリアルですごく好き。船はロマンじゃよ……。その一方で19世紀の船上生活とか悲惨すぎて。リアルを考えるとげんなりするけど、主人公トビーの冷静な情熱が清々しくて救われる感じ。
    歴史クラスタさんもぜひ読んでほしいな。

  • これもまた架空戦記というのだろうか。実際の歴史に含まれたファンタジー要素。ちょっと…マンネリ化かな…

  • トラファルガーの海戦を描きたかったということなのかわからないが、作者にしては珍しく?史実と虚構を絡めているのだが、海獣や海洋民の存在の必然性に疑問。狙いがうまく実現できていない気がする。

  • 序盤はオリバーツイスト、中盤は海底二万マイル、そして最後は東宝の海底軍艦のようだった。蒸気機関黎明期と謎の船とトラファルガー海戦そして巨大怪獣と、多くの要素を詰め込み、更には敵味方入り乱れた群像劇なので、カタログのように散漫な印象だ。どれもがとても面白い素材なのに勿体ないなぁ。

  • そんなに長い話ではないのに視点がけっこう変わるので、結局誰にも感情移入できずに終わった。技術に憧れるトビーや、艦長とセントイージス号の乗組員たちの絆、ココとファーダの絆、時代の転換など、掘り下げればもっと面白くなりそうな要素もあったので、残念。

  • 3.5

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著者プロフィール

兵庫県生まれ。2003年『火星ダーク・バラード』で第4回小松左京賞を受賞し、デビュー。11年『華竜の宮』で第32回日本SF大賞を受賞。18年『破滅の王』で第159回直木賞の候補となる。SF以外のジャンルも執筆し、幅広い創作活動を行っている。『魚舟・獣舟』『リリエンタールの末裔』『深紅の碑文』『薫香のカナピウム』『夢みる葦笛』『ヘーゼルの密書』『播磨国妖綺譚』など著書多数。

「2022年 『リラと戦禍の風』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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