- Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062197397
作品紹介・あらすじ
秀俊は13歳にして3人目の父親の本拠・備後国へ向かうべく京を発った。2人目の父親は天下人・豊臣秀吉だった。実の父親は秀吉の義兄にあたり、物心がつくころには養子に出された。こんどの父は小早川隆景。秀吉の信頼厚く、また毛利家内でも「両川」と呼ばれて本家を支える立場にある人物だ。対面を果たすと秀俊は隆景の眼鏡に適い、秀俊も隆景に好感を覚える。翌年、大きな事件が起こる。秀俊には義理の兄がいた。現関白の羽柴秀次。京にいるころは、実の兄のように慕っていた。その秀次に、謀反の疑いがかかったのだ。極秘で秀次に面会すると、義兄は自らの死を予言する。義兄と別れてから間もなくして、予言は的中する。秀俊の心に、秀吉の顔が敵として刻まれる。その年の暮れには、隆景の領国・筑前国ほかを相続し、秀俊は晴れて小早川家の総領となる。翌年、時代が大きく動きはじめる。和平交渉が続いていた朝鮮と決裂し、再出兵が決まる。年が明けるとその陣立てが発表され、なんと秀俊が日本の軍勢の総大将に任じられる。華々しい初陣。が、筑前で出陣の準備をしているさなかに、義父・隆景の訃報がもたらされる。初めて温めてきた親子の契りとの決別。思う存分泣いた秀俊は、一万の手勢に出立を命じる。秀秋と名を改めての初陣となった……。
感想・レビュー・書評
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小早川秀秋をえがいた時代小説。
秀吉の親戚というだけで、自分を何の役にも立たない存在と思っていた、秀俊少年。
多感な少年時代の、心の震えがこまやか。
義兄・秀次、新しい父・小早川隆景との交流も、心あたたまる。
秀秋の成長が、さわやか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
豊臣秀吉の養子から小早川隆景の養子となり、関ヶ原の戦いで重要な働きをした小早川秀秋について書いた本です。
どこか弱々しい従来の小早川秀秋は、全て勝者である徳川家が作り上げた虚構である、というのがコンセプトになっています。
関ヶ原の戦いに際して、北政所との会話がぐっときました。
家族とは血の濃さではなく、家族に対する想いの重さである、という言葉が、この本のタイトルにも表れている、自分は豊臣の血縁者ではなく、小早川家の人間である、という叫びにもつながる気がしました。
↓ ブログも書いています。
http://fuji2000.cocolog-nifty.com/blog/2016/05/post-4175.html -
小早川秀秋が、最後に光成側を裏切って、徳川の勝利が確定した。その秀秋の生涯を追ったお話。ちび秀秋がとにかく可愛かったなぁ。自分とかけ離れた人物なのに、共感できることも多かった。
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あの「裏切り者」小早川秀秋を主人公にした小説。珍しいよねえ。
関ヶ原の陰の主役と言ってもいい秀秋。東軍西軍膠着状態にあった中、西軍方の松尾山に陣取った秀秋が大谷吉継に突っ込んだその裏切りによって西軍の敗北が決定的となり、翌日には石田三成居城佐和山城を陥落せしめた秀秋。刑場においてその裏切りを三成に罵られた秀秋。関ヶ原後2年、わずか21歳で死んだ秀秋。徳川方からも石田方からもどっちからでも悪くしか描かれない秀秋。「真田丸」では悪者としては描かれないがともかく気が弱そう。でも「葵,三代」では感情がよく見えない一方、中立的な描かれ方だったかな。
そんな誰に聞いても好感持たれない秀秋さんですが、戦国初心者の身としてはもともと疑問があったんですよ。
例えば、何故こんなやつが秀吉にも見込まれて養子になったのか、その後名将小早川隆景の養子としてどんな生活を送ったのか(いや情けない奴が隆景の養子に成りえたのか?)、何故西軍を裏切ったのか?(一次つなぎとはいえ、三成から関白が保証されていたのに...)、そんなやつだったらその軍勢も弱いんじゃないの?(大谷吉継の軍勢蹴散らすほどだったんだ?)そして,何故21歳で死んだのか??
この小説は当然主人公ですからね、よく描かれています。才能あったからこそ秀吉に見込まれ、隆景にも見込まれ、そして三成側に与さない最大の理由としては、兄同然だった秀次の死が絡んでいると。
小説としてはとても面白かったです。
でもちょっと天才として描きすぎでしょう。
Wikipediaを見ると、アル中で肝硬変で死んだみたいに書かれているが、それもなんだかなあ。21歳で肝硬変になるアルコールの飲み方って普通は無いでしょう、と思うし。勿論アルコール関連の別な疾患は有りうるが。当時のことだからそれこそ急性膵炎でも起こせば死んだだろうし。
なので、真実は中間なんでしょう。
うーん、秀次にしろ秀秋にしろ、よく描かれては困る人たちによる隠された歴史がありそうで、真実がどうなのかわからないところに面白さがあるというか、でも釈然とはしないなあ。 -
小早川秀秋が主人公の話は初めて読んだけど、思ってる秀秋像と全く違って、面白かった。
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あまりに短い人生ゆえ、その真価は評価しがたい。が、心の獣の喩えは、この小説の芯になっていると。