マルトク 特別協力者 警視庁公安部外事二課 ソトニ

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062197496

作品紹介・あらすじ

戦後70年の節目に、諜報ミステリーの新星が放つ渾身作。東京で元警察庁長官が狙撃される。一方、ニューヨークでは、日本総領事館に亡命を求めやってきた北朝鮮外交官が暗殺される。一連の事件の背後には、終戦時、日本に見捨てられ、彼の地に取り残された母子の、壮絶な運命が垣間見える――。
戦後日本の官僚組織に打ち捨てられた人々の苦悩。そして北朝鮮の「体制崩壊後」を睨み、利権を狙う政財官。国民の命をかえりみない無情な奴らに、はぐれ者の元公安スパイハンターが挑む。
あの戦争の悲劇を思い、今後の日朝関係をも暗示する、必読の書。

感想・レビュー・書評

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  • 私にとって、この作品はこれまで読んできた中ではかなり異色だ。
    嫌いというわけではないのだが、現代日本を舞台にした、それも公安が中心の政治・外交ネタが入ってくる話は、硬くて難しいイメージがあって何となく手の出しづらい部類だった。
    下手をすれば、献本という形でなければ一生出会うことのなかった本かもしれない。
    だが、読んでみて、なぜこれまでこの人の作品を知らなかったのかと後悔せずにはいられなかった。
    電車の中で読み終え、早速帰りに本屋で前作を探したくらいだ(残念ながら見つからなかったが)。

    この話は、かつて組織上層部にかみつき、海外に飛ばされた公安部の元エース・筒見慶太郎が主役だ。
    彼の元に、某国の外交官が亡命を求めて来るのだが、その男は「祖国を開放するため、"亡霊"を助けてくれ」という言葉を残し、命を落とす。
    筒見は日本に帰国し、公安部外事二課(ソトニ)と取引しながら、官房副長官が銃撃された事件や「英雄」の帰還、某国から持ち出された一個の石、それらをつなぐ「終戦時の暗黒の歴史」の真相を紐解いていく――――

    正直、終戦時の暗黒の歴史は、辛いという言葉も申し訳ないほど凄惨なものだ。
    だが、それこそが、このフィクションの中で何よりも明確なノンフィクションである気もする。
    現実は小説より奇なり、ではないが、まず間違いなく、この作品で語られた「過去」はあったのだろう。
    知ったからと言ってすぐに声をあげられるほど行動的でも勇敢でもないが、「知らなかった、ということを知る」ということは、とても大事なことだと思うのだ。
    そこから、思索も検証も始まるのだから。

  • むむむ…コレも非常に本格的な外事警察ものではあるのだが、いかんせん伏線が見えなさ過ぎてストーリーが入ってこず、ディテールの雰囲気を味わうだけになっている。それでも良いと言えば良いのだが…

  • 2016 3.4

  • 「国民の敵は、日本政府の中にいる。」

    ◆あらすじ
    外国スパイから「凶神」と恐れられた公安警察の元エース。組織を追われた男のもとに、かつての特別協力者が現れた。(bookデータベースより)

    「マルトク」:公安当局が情報提供者として使う外国諜報員らを表す隠語。

    ◆感想
    心理描写がメインの刑事ものは読んだことあるけど、こちらは事件を追うのがメインの刑事ものに感じた。
    刑事もの苦手なので中盤までは淡々と感じてしまったけど、終盤あたりからの話の勢いと筒見さんの頼りがいが物凄かったです。筒見さん格好良すぎ!(*´∇`*)

    ◆メモ
    献本で戴きましたー。

  • 献本企画でいただいた一冊。
    内閣の官房副長官の狙撃事件から北朝鮮のスパイと元公安の刑事との攻防戦を描いた物語。
    著者の作品ははじめて読みましたが、この作品だけでも楽しめるとも感じました

    重厚なストーリーとスピーディーで息を飲む展開の連続で一気に読みました。
    尾行シーンや潜入シーンは緊迫するものがあり、スリルを味わえ没入感は半端ないものでした。
    そして、著者が政治部の記者であるだけにリアリティーもありました。

    また登場人物にも個性があり、映像化しても非常に良い作品になると感じました。
    滅多に読むことのないジャンルですが、非常にいい機会になりました。

  • 前作より全てにおいてスケールアップしている。複雑だけど雑味がないので読みやすかった。
    戦争に負けて北朝鮮に残された日本人は本当にいるのかな、、、

  • こんなことがありえるわけがない。
    小説でも映画でもないのだから。

    そう言いたくなるような事件が昨今は多い。

    この小説に取り上げられている事件もまたそうである。
    これは体裁はフィクションであるのだから
    そうに決まってる。そう言いたいが…。

    日々飛び込んでくるニュースの裏に、この小説で
    扱われているような暗部がすべてあるとしたら
    私達を守ってくれるものは一体何なのか。

    国家なのか。個人なのか。はたまた金銭なのか。

    公安の狂犬と言われる主人公は、どんな権力にも
    屈しない。理不尽な権力や暴力への怒りに燃えて
    最後まで低く激しく吼える。

    舞台になる都市の情景や、人物の描写。
    まるで自分が事件を再構成しているような臨場感も
    いいのだけれど、最後まで手を緩めないで事件を追う
    目線がこのシリーズの最大の魅力だと、私は思う。

    今起きている出来事が一番劇的である…ということは
    言い古されているけれど、現代に起きる毎日の事件は
    すべて我々は目撃者であり、当事者であるということ
    を突きつけてくる物語に出会った気がするのだ。

    具体的なあらすじをなぜ書かないのか。
    それは、この本の中に起きている事実を
    私というフィルタを通さずに、あなたに
    新鮮に体験して頂きたいからである。

    お読みになれば、ああ、あの事件が背景にあるのか
    と、報道されたニュースを想起される方が
    大勢おられると思う。

    危険な場所も通る。
    会うべきでない人物の顔も見る。
    追い詰められもする。

    だが…この本を手にして、平穏な日常という見知った
    場所から、その曲がり角の向こうへ行かないなど
    あまりにも小心である。

    読者諸氏の無事の帰還をお祈り申し上げ、献本でこの
    本に出会わせて頂いたことに感謝を。

    遅いレビューになったが、二読三読して身にしみて
    書かせて頂いた。次作も楽しみに読ませて頂く。

  • (2015.10.19読了)(2015.10.14入手)
    日本と北朝鮮のスパイ合戦といったところでしょうか。北朝鮮の権力闘争に、日本政府が絡んで、現在の北朝鮮の権力を握っている人たちを追放して、日本の欲しい天然資源を手に入れようとしているようなのですが。
    小説なので、本当にこのようなことがありうるのかどうかは、北朝鮮についての知識がないので、わかりません。現実味が薄い気がするのは、自分の無知の所為なのでしょうか。
    昭和20年に終わった戦争の際に、北朝鮮から脱出できなかった日本人が28万人いるというふうに書かれています。もし本当だとすると、そのようなことは知りませんでした。
    北朝鮮にいる日本人は、戦後、戦争中に朝鮮半島から日本に連れてこられた人たちと結婚した日本人女性が朝鮮半島に帰る夫についていった人たちだけだと思っていました。
    この本は、その北朝鮮に残された日本人にまつわる物語です。読んでいても読み終わってからも、日本人なのか、北朝鮮工作員なのか、何をしようとしているのか、よくわかりませんでした。スパイがらみのはなしというのは、そういうものなのかもしれません。
    いろいろ騒いだけど、結局大物は生き残って、何だったんだろうと思います。すべてはもみ消されて、それでいいのだろうか。外交とはそういうことなのだといいたいのでしょう。
    筒見は、自由に動き回っているけど、結局何ができたの。
    警視庁もいろいろ捜査はしているけど、指揮系統はどうなっているの。
    登場人物が実に多い物語ですね。もっと少なくして、単純にしてほしいものだと思います。

    筒見慶太郎 ニューヨーク日本国総領事館 警備対策官
    草場武彦 ニューヨーク総領事
    飯島久雄 外務政務審議官、元ニューヨーク総領事
    辰巳仁 飯島久雄の秘書
    張哲(吉田一彦) 北朝鮮、武器商人、北朝鮮工作員
    白元弘 北朝鮮国連代表部次席大使(日本に亡命を求めたが死亡)
    河野昇 内閣官房副長官 6月14日銃撃 警視庁公安部長、警察庁長官
    能島光一郎 総理
    能島歌織 総理夫人、音大卒、ジャズ歌手、小説家、藤崎かおり?
    島本彩音 警視庁公安部巡査部長
    島本祐樹 島本彩音の弟
    島本直幸 民宿『岩船荘』経営、新潟県村上市、島本彩音の父親
    朝倉富士夫 警視庁公安部外事二課警部補
    吉良龍之介 管理官、三十六歳
    虎松健介 元内閣情報調査室国際第一部北朝鮮班長
    「自ら希望して北朝鮮入りを果たした」(24頁)
    虎松竜馬 健介の子供
    フジサキミヨコ(藤崎美代子)
    藤崎涼子 藤崎美代子の孫
    田中益男 内閣情報調査室国際第一部上席情報専門官
    片桐千夏 画家、片桐治夫の娘
    片桐治夫 北朝鮮生まれ、ラーメン屋(東京)、焼肉屋(大阪)
    片桐浩二 片桐治夫の弟、片桐建設経営者
    朴尚美 『焼肉・大同江』経営者
    朴正植 朴尚美の息子、
    朴正龍 朴尚美の孫、
    南部式自動拳銃・大型乙
    河野昇と白元弘に撃ち込まれたのは、八ミリ南部弾

    ●モナザイト(95頁)
    モナザイトは日本統治時代の朝鮮半島で産出された。レアアースであるセシウムや、ウラン233の原料となる放射性物質トリウムを豊富に含んでいる。
    ●戦勝記念日(117頁)
    1953年7月27日は朝鮮戦争の休戦協定が締結された日だ。北朝鮮はこの日をアメリカ帝国主義に勝利した「祖国解放戦勝記念日」と独自の解釈をして、毎年、軍事パレードを行い、祝賀ムードに包まれる。
    ●資源外交(167頁)
    「日本の対北朝鮮外交は植民地支配への贖罪とか、安全保障上のリスク軽減という文脈で考える時代は終わったのです。これからは資源外交です。いま動かねば東アジアの地下資源は中国に独占されます」
    ●けじめ(182頁)
    「ハルモニと治夫さんは、フジサキミヨコさんを北朝鮮から助け出そうとしていたんや……」
    ●終戦(185頁)
    本土では空襲も終わり平和の訪れやったかもしれんけど、朝鮮の在留日本人にとっては悪夢の始まりやった。三十八度線より北に住んでいた日本人二十八万人は閉じ込められ、地獄に突き落とされたんや。
    ●誤植?(197頁7行目)
    片岡治夫追及班の視察拠点⇒片桐治夫追及班の視察拠点
    ●背乗り(200頁)
    「背乗り」とは他人の戸籍を乗っ取り、その人物に成りすます行為を意味する。北朝鮮やロシアの非公然機関員が諜報活動のために使う手法だ。
    ●残留日本人(219頁)
    日本政府は戦後、北朝鮮に取り残された日本人を助けようともしませんでした。いまも重視されるのは拉致被害者ばかりで、七十年も現地に残留した自国民の救出は後回しになっています。
    ●死亡宣告(220頁)
    戦後の混乱の中で置き去りにされた者たちは、戦時死亡宣告によって死亡扱いされるという、二重の仕打ちを受けたのだ。その結果、北朝鮮に残留した日本人のほとんどは戦時死亡宣告を受けた。

    ☆関連図書
    「ソウルと平壌」萩原遼著、文春文庫、1998.10.10
    「謎の独裁者・金正日」佐々淳行著、文春文庫、1999.02.10
    「北朝鮮大脱出 地獄からの生還」宮崎俊輔著、新潮OH!文庫、2000.10.10
    (2015年10月30日・記)
    内容紹介(amazon)
    戦後70年の節目に、諜報ミステリーの新星が放つ渾身作。東京で元警察庁長官が狙撃される。一方、ニューヨークでは、日本総領事館に亡命を求めやってきた北朝鮮外交官が暗殺される。一連の事件の背後には、終戦時、日本に見捨てられ、彼の地に取り残された母子の、壮絶な運命が垣間見える――。
    戦後日本の官僚組織に打ち捨てられた人々の苦悩。そして北朝鮮の「体制崩壊後」を睨み、利権を狙う政財官。国民の命をかえりみない無情な奴らに、はぐれ者の元公安スパイハンターが挑む。
    あの戦争の悲劇を思い、今後の日朝関係をも暗示する、必読の書。

  • 衝撃作『背乗り』の"ソトニ"シリーズ第2弾!
    特別協力者【マルトク】:公安組織が獲得し、情報提供者として運用する外国の諜報員や犯罪組織の構成員のこと。

    組織に巣食う”敵”に気付づき、公安警察を追われたエース・筒見慶太郎。
    NYの総領事館で警備対策官を務める筒見の元に、北朝鮮外交官が亡命を求めてやってくる。

    「頼む、祖国を開放するため、日本にいる"亡霊"を守ってくれ――」

    北朝鮮の"体制崩壊後"を運命づける<コードネーム:亡霊>とは誰なのか。そして亡霊を狙う暗殺者たちが背負った、哀しすぎる終戦時の"暗黒の歴史"とは。

    「国民の命を犠牲に、利権を漁るヤツらは俺が叩き潰す」

    いま、ニュースを騒がせる『あの事件』を先取り!? 
    ここに書かれた諜報戦は、あなたの目の前でも起きている!

  • 従業員を健康保険と厚生年金保険に加入させるとき、事業主は「被保険者資格取得届」に記入して年金事務所に申請する。住民票などの添付は求められていないので、事業主が本人確認をしていなければ偽名での申請はとおる

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著者プロフィール

1969年生まれ。神奈川県茅ヶ崎市出身。
慶應義塾大学法学部卒業後、1991年にTBS入社。社会部、ニューヨーク特派員、政治部などを経て、ニュース番組「Nスタ」キャスターなどを務めながら、国際諜報戦や外交問題に関する取材を続けている。公安警察や検察を取材したノンフィクション作品として、2009年『ドキュメント秘匿捜査 警視庁公安部スパイハンターの344日』、2010年『時効捜査 警察庁長官狙撃事件の深層』(ともに講談社)がある。2014年には諜報ミステリー『背乗り 警視庁公安部外事二課』で初の小説を発表。

「2017年 『警視庁公安部外事二課 ソトニ イリーガル 非公然工作員』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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