ヨイ豊

著者 :
  • 講談社
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感想 : 46
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  • Amazon.co.jp ・本 (370ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062197762

感想・レビュー・書評

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  • 浮世絵は嫌いじゃないけど、作者とか有名どころの写楽や広重ぐらいしか知らなかったが、図書館の返却棚にあるのに目が付き手を伸ばしてみた。
    ヨイ豊とはいかなるものか?読み進めて最終章でようやくその言葉が出たときには泣けた。歌舞伎役者もそうだけど、先代が偉業を成したほどにその名前を襲名するプレッシャーは計り知れない。ましてや自分の弟弟子に才ある存在があればなおの事。八十八とのやり取りが面白くてハラハラして、そして切なくて、そんな二人が明治維新の動乱のを経て、時代が変わり、流行が変わり、それでも錦絵にこだわりぬいた生き様の果てが”ヨイ豊”である。豊原国周の名前も出てきたのでググってみた。ああ、この絵、この人だったんだ!って。
    近代日本では浮世絵は蔑まれ、国外で高い評価を受けるとか日本のレベルの低さは日本の歴史そのものが原因なのかなぁと思う次第である。こういうのを読んでいると、ほんと今のCGって時代の申し子ではあるが”面白みに欠ける”だと思う。

  • 華やかな浮世絵の世界。
    そこに身を置く絵師には人知れず苦労がある。
    才能と努力、人格、名跡、評判。
    江戸から明治に移ろう世の中、嫉妬に狂いながらも人間らしく懸命に生きた姿には感じるものがあった。

  • 天賦の才には恵まれなくても、ひたすら三代歌川豊国を敬い、そして江戸絵を慕う清太郎の終生を描く。実直さを評価され、師匠に引き立てられるも兄弟子からやっかみを買う。さりとて弟弟子である八十八の才能には及ばず、自身が抱く妬みと期待に苛まれる。そんな絵師の物語は、どこか釈然としないまま展開する長編に、正直焦れる。蔦屋さん、ここではシビアな中にも情のある商人としてご登場だ。浮世絵とは絵師、彫師、摺師たち合作の職人芸であるが、しょせん大衆向け大量摺りの雑駁画に過ぎぬのか。ときに西洋にかぶれ、幕府の築いた文化を蔑んだばかりに、日本固有の多くのワザとモノとを失う。もうひとつ、ココロも。いやあ、惜しい。

  • 「ボストン美術館所蔵 俺たちの国芳 わたしの国貞」展を見た直後、タイムリーに読了。

    物語は、歌川広重、歌川国芳、三代豊国が亡くなった後から明治にかけての豊国一門の話。
    豊国の名前を継ぐ事の重さに苦しみ、弟子の才能を目の当たりにして妬ましく思うとともにその先を楽しみに思う清太郎。

    前半は物語があまり進まなかったけど、最後は良かった。
    挿絵に浮世絵が入っていると、もっと良かったな。
    江戸が終わり、機械化の波に押されて職人の技術が消えていくのが悲しかった。

  • 江戸から明治へ、時代の変遷に伴う価値観や産業の変化の中で消えゆく浮世絵。まさにグローバリゼーション化の真っ只中にいる現在、身をつまされます。こっちの方が先日読んだ直木賞受賞作よりも、楽しめました。

  • 本作の舞台となるのは幕末から明治初期の江戸。黒船の来航以降西洋から押し寄せる文明開化の波の中、徳川の世と同様に終わりを迎えつつある浮世絵、そして歌川の名を守ろうとする絵師・清太郎と八十八をめぐる物語である。

    時代物を読み慣れている人であれば気にならないのかもしれないけど、前半はほとんど物語が動かず、読み進めるのが若干しんどかった(似たような名前が立て続けに出てきて混乱したこともある)。後半に入り、時代の変化に登場人物たちが翻弄され始めるあたりからはなかなか面白く読めた。今昔問わず、欧米のものこそ価値があると見做し、受け継がれてきた大切なものを簡単に失ってしまう日本人に対する痛切な皮肉としても読める物語だと思った。

    読む前は意味不明だった「ヨイ豊」のタイトルについて、物語終盤でその意味が明かされる。なるほどなあといった感じで、読み終えるとこれしかないと思えてくる。

  • 守っていくものと、新しいものを作り出していくものたち。
    変化していくことがいいことなのかどうか。
    絵に生涯をかけた愚直な男たちの物語。
    「浮世絵」についても、海外から評価されたことにより、我々もその価値を認めることになるのだから…

  • 2017.9 時代の変わり目と技術の進化に飲み込まれて、少し物悲しい小説でした。

著者プロフィール

東京生まれ。フリーランスライターの傍ら小説執筆を開始、2005年「い草の花」で九州さが大衆文学賞を受賞。08年には『一朝の夢』で松本清張賞を受賞し、単行本デビューする。以後、時代小説の旗手として多くの読者の支持を得る。15年刊行の『ヨイ豊』で直木賞候補となり注目を集める。近著に『葵の月』『五弁の秋花』『北斎まんだら』など。

「2023年 『三年長屋』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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