東京者がたり

著者 :
  • 講談社
3.14
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本棚登録 : 66
レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062197946

作品紹介・あらすじ

「東京はいかに私小説作家を形作ったのか」。
私小説作家として、その生き様と人柄が人気を博す西村賢太氏。デビュー作『どうで死ぬ身の一踊り』から、芥川賞受賞作『苦役列車』など、さまざまな作品群の中に描かれてきた東京。西村氏自身が東京江戸川区に生まれ、一五歳から東京を流浪してきたその生き様とともに、土地の思い出と出来事、そして現在への系譜を語る、まさにその創作の根源に迫る随筆集です。
巻末には、小説『新宿スペースインベーダー』などの作品もある、新宿生まれの新宿育ちの・玉袋筋太郎氏との対談も収録します。

感想・レビュー・書評

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  • 「私小説の背負う宿命を悪く無視し、不自然さと偶然のみをたたみかけた中途半端に陳腐な青春ムービー。」自らの著作を映画化した「苦役列車」の西村評である。短い言葉でまこと見事に本質を射抜いている。本書は著者自身が生き抜いた東京を舞台としたエッセイ。どの項も心境の変化と状況の変化が丹念に綴られている。小説で描ききれなかった部分がさりげなく補われており、小説との微妙なシンクロも魅力の一つ。随所に小さな発見があり、驚いたり感嘆したり。後楽園球場にはじまり、隅田川、蒲田、早稲田、・・・・・新宿二丁目の病院、そして、聖地芝公園で終結する。著者のこれからの人生を暗示するようで興味深い。真実のみが持つ迫力に、今回も心をすっくとと立ち直らせられた。

  •  「東京物語」ならぬ「東京者がたり」。「東京者」としての強い自負をもつ西村賢太が、これまでの半生で関わりのあった東京の町や場所を題材に綴った連作随筆だ。

     鶯谷や後楽園球場など、過去の小説や随筆にもしばしば登場した町・場所が、たくさん出てくる。
     「神楽坂の銭湯」という一編もあり、これは名短編「腋臭風呂」(『二度はゆけぬ町の地図』所収)の舞台となった、あの銭湯のことである。
     最終回で取り上げられているのが、「芝公園」。賢太の「師」藤澤淸造が昭和7年に凍死を遂げた現場であり、彼にとっては特別な場所なのだ。

     かと思えば、下北沢や白金台のように、賢太が嫌ってやまない地をわざわざ一回を割いて取り上げていたりする。
     『苦役列車』でも下北沢に集うサブカル人士が痛烈にディスられていたが、本書でも下北沢が「まったくもって、人も街も安雑貨だ」などとこきおろされている。このへん、いかにも賢太らしい。

     賢太ファンなら、そこそこ楽しめる本である。私は彼の私小説の中でも10代のころを扱った作品がとくに好きだが、本書にも10代のころの思い出が数多く登場するので、その点も好ましい。

     だが、随筆集として質が高いかといえば、微妙なところ。

     本書の類似作として、小田嶋隆の初期作品『山手線膝栗毛』(1993年)が挙げられるだろう。
     これは、やはり生粋の東京人であるオダジマが、山手線の駅を一駅ずつ取り上げ、その地にまつわる思い出などを綴った連作エッセイ。質の高いユーモア・エッセイ集であるとともに、東京論としても秀逸な一冊であった。

     『山手線膝栗毛』と比べてしまうと、この『東京者がたり』は、やはり私小説書きの余技という感じがしてしまう。

  • 小説とあまり変わらない読後感。章によってはその町の紹介が少ないところもある。

  • なるほど、北町貫多の影が見え隠れするエッセイ。
    僕にとっての東京ならば、取り上げるのは、田無、三鷹、吉祥寺、新宿、早稲田、池袋、町田、銀座、御徒町、渋谷、浅草あたり。でも、多摩地区に関しては、『そこを東京扱いするな。カッペめ』と面罵されそう。
    あとがきの対談で、田無や保谷を西東京市と名乗るのはいかがなものかというくだりがあったのだが、これに関しては同意。田舎から出てきた当時の僕にとっては、東京都下という私鉄沿線のゆるさが住み心地良かったのだ。

  • 914.6

  • 西村さんの小説はとても好きだけど、この本の最後の対談は不快(これを載せる意味あるかな)。これ以上田舎者が東京に入ってこないようにするために、東京は日本から独立するというのはどうでしょう。

  • ☆2つ

    西村賢太氏あいかわらづ本を出すペースわ速いと思う。もちろんいつもとても薄くてお手頃価格の本なのだけど今回のはちょっと高い。1600円もする。厚みはというといつもどおりに薄い。流石にもうあまり売れなくなったのかね。いったいに本はベストセラー程厚みの割に安い。ほとんど売れない本はバカ高い。これはそのままモノの道理で、たくさん売れるから安くできる、少ししか売れないから値段は高くするしかない、とまあこういうぐわいだ。なんでもこれは経済の原則だという。(なら、なんでiFoneはあんなに高いんだ!)理系のわたしはそんなことわ知らない。
    品川から新幹線に乗り降りする人たちに田舎もんとケチを付けている。まあわたしはその田舎者だから「ああそうですか、そりゃぁ悪うございましたね。でも品川の方が便利なんだからいいぢゃないですか」とサラリとしかしそれ以上は相手にしない。わたし個人的には、東京で生まれ育った奴らが日本一の田舎もんかもしれないぞぉー、と思っていますので。それにしても高円寺や吉祥寺や荻窪など中央線沿線をも田舎もんとバカにするとはなんともしがない東京モンである。

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著者プロフィール

1967(昭和42)年7月12日、東京都江戸川区生まれ。中卒。新潮文庫、及び角川文庫版『根津権現裏』『藤澤清造短篇集』、角川文庫版『田中英光傑作選 オリンポスの果実/さようなら他』、講談社文芸文庫版『狼の吐息/愛憎一念 藤澤清造 負の小説集』を編集、校訂、解題。著書に『どうで死ぬ身の一踊り』『暗渠の宿』『二度はゆけぬ町の地図』『瘡瘢旅行』『小銭をかぞえる』『随筆集 一私小説書きの弁』『人もいない春』『苦役列車』『寒灯・腐泥の果実』『西村賢太対話集』『一私小説書きの日乗』(既刊六冊)『棺に跨がる』『形影相弔・歪んだ忌日』『けがれなき酒のへど 西村賢太自選短篇集』『薄明鬼語 西村賢太対談集』『随筆集 一私小説書きの独語』『*(やまいだれ)の歌』『下手に居丈高』『無銭横町』『夢魔去りぬ』『藤澤清造追影』『風来鬼語 西村賢太対談集3』『蠕動で渉れ、汚泥の川を』『芝公園六角堂跡』『夜更けの川に落葉は流れて』『羅針盤は壊れても』などがある。

「2019年 『瓦礫の死角』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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