ぼくは科学の力で世界を変えることに決めた

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感想 : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062198004

作品紹介・あらすじ

治療が難しいガンの早期発見法を開発した15歳
いじめ、うつ症状、恩人の死……多くの困難を乗り越え、前に進み続ける科学少年の物語

(本文より)
高校1年の中間地点を過ぎてすぐのある日、ぼくは「単層カーボンナノチューブ」と呼ばれる物質に関する論文を生物の授業にこっそり持ち込んでいた。単層カーボンナノチューブというのは炭素でできた微細な細長い管のことで、その厚みは原子1個分、直径は人間の髪の毛の5万分の1だ。その非常に小さなサイズにもかかわらず、カーボンナノチューブには驚くべき特性がある。言わばそれは、材料科学におけるスーパーヒーローなのだ。
 生物の先生は、ぼくの注意力散漫を目ざとく感じる不思議な第六感を持っていた。目が頭の後ろにあるだけじゃなくて頭の横にもあるらしかった。
 ぼくが論文を机の下に隠して読んでいたときの授業のテーマは、抗体と呼ばれる興味深い分子のことだった。抗体はとても有益な分子で、特定のタンパク質にだけ反応し、免疫系によってウィルスや細菌を撃退するのに使われる。
 ぼくが突然ひらめいたのは、その授業の最中だった。実際に読んでいるもの(カーボンナノチューブ)と、授業で学んでいるはずのこと(抗体)を組み合わせたらどうなる!?
 ナノチューブと抗体を混ぜ合わせれば(スパゲティにミートボールを混ぜるみたいな感じ)、一種類のタンパク質――この場合はメソテリン――にしか反応しないネットワークが手にできる。メンテリンが抗体に反応すると、免疫複合体と呼ばれる大きな分子が形成される。この巨大な分子が形成されると、隣接するナノチューブが孤立分散されるので、ネットワークが拡大する。ちょうど、束ねられたワイヤをほぐして、一本一本分散させるようなものだ。これが生じると、隣接するナノチューブ同士の結びつきが減るので、電子の経路も少なくなり、電気抵抗が増す! こうしてナノチューブの電気特性が変化するわけだが、その変化なら、ぼくにも測定できる!
 僕の頭の中で、すべてのパズルのピースがはまっていって・・・・・・そして・・・・・・粉砕されたのだった! ブレイクスルーの最中に、生物の先生がぼくの机めがけて突進してきたのである。その顔は怒りにゆがんでいた。ああ、またしても。(本文より抜粋)

感想・レビュー・書評

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  • インテル国際学生科学技術フェアの最高賞であるゴードン・ムーア賞を受賞した少年の実話に基づいた物語。
    主人公ジャックの頭の良さや努力し続ける忍耐力に感心するとともに、実験の出来る地下室など彼の挑戦を支える両親の姿が素晴らしいと思いました。

  • 羨ましさもあるが、その並外れたところに違和感を感じたのも確かだった。
    恐ろしさすら感じる精神年齢の高さと思った。

    ここまで情熱をもって取り組むことを、誰しもができるとは思えない。
    だがその一方で、同じようにコンテストに参加している子どもたちはいる。

    私にもう一度学生時代は来ないだろうが、これから来る子どものこと考えると、
    いろいろと考え、思わされる本だなと感じました。

    (以下抜粋)
    ○日曜の午前中というのは、たいていの子どもたちにとって、
     テレビでアニメを観て過ごす時間だ。
     でも、ぼくが目を覚ますと、ルークは部屋の隅で、
     マッドサイエンティストみたいに、コソコソ何かいじっていた。(P.12)
    ○その晩、両親が帰宅してから、ぼくらは起きたことを正直に告白した。
     兄もぼくも、怒られて謹慎処分にされるだろうと覚悟していたのだけど、
     父と母は驚きながらも、面白がっているように見えた。
     そしてぼくらに、もっと慎重に事を行い、
     家を爆破するようなことだけはしてくれるなと、頼んできたのである。
     父は次の言葉で話を締めくくった。
     「よその人には、絶対に何が起きたのかバラしちゃだめだぞ、永久にね」(P.29)
    ○「たとえ学校で何かあったとしても、これだけは覚えておきなさい。
     自信を無くすのは簡単だけど、
     大事なのは、ほんとの自分の姿を見失わないようにすることだ。
     君が断固として拒絶すれば、だれにも君に触れることはできないんだよ」(P.69-70)
    ○ぼくは意識的に、失敗をチャンスだと考えるようにし、
     ひとつひとつの間違いに、膵臓がんの早期検出法の発明に近づくヒントが
     含まていると自分に言い聞かせるようにした。(P.168)
    ○プレゼンを成功させるのは、仕掛けやトリックなどではなく、
     二、三の基本的なコツであると、僕は学んでいた。
     しっかり視線を合わせること。
     歯を見せて、にっこり笑うこと。
     姿勢をよくすること。
     そして何より、心からの情熱に勝るものはない。(P.187)

  • この本は科学好きの少年ジャック・アンドレイカが幼少の頃からどのような体験を経て、ISEFのゴードン・ムーア賞をとるに至ったか、そのプロセスが書かれた本だ。科学のことを好きになる本だと思う。しかし、オバマ大統領、アップルのティム・クックから祝福されるととはすごい少年だ。この少年は膵臓がんを検出する抗体をカーボンナノチューブに混ぜ込み、メンテリンというたんぱく質を特異的抗体として利用している。失敗は成功の母、世界のブレークスルーを挑戦する子に支援しようとしている、患者のことは忘れないようにしている。他人への思いやりも忘れてはいない。この天才少年には見習うべきところが多くある。

  • ただの天才のいい子ちゃん自伝ではなかった。
    いじめられたり、妬まれたり、性的マイノリティであったり、身近な人をなくしていたり、乗り越えたい兄の存在や学問の苦しみなどが描かれており、「そうだった10代ってこんな風に困難だった」と思えるカ所と、頭よすぎてすごすぎ!な部分とがあって、元気づけられました。
    未来ってこうやって切り開いていくのか、と。

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著者プロフィール

ジャック・アンドレイカ Jack Andraka
1997年、アメリカ・メリーランド州生まれ。科学好きな少年に育つ。2012年、高校生のときに膵臓・卵巣・肺がんを早期発見するための安価な検査法を発明し、インテル国際学生科学技術フェア(ISEF)のゴードン・E・ムーア賞を受賞。その後もスミソニアン・アメリカン・インジェニュイティー・ユース・アチーブメント賞(2012年)、シーメンス・ウィー・キャン・チェンジ・ザ・ワールド・チャレンジ最優秀賞(2014年)、ジェファーソン賞(同)などを相次いで受賞する。現在は世界中を回り、手がけている研究、LGBTやSTEM(科学・技術・工学・数学)教育改革に対する考えなどを伝え続けている。彼の話は、モーガン・スパーロック監督の『ユー・ドーント・ノウ・ジャック』をはじめとするドキュメンタリーや、数多くのラジオ番組、新聞記事、雑誌記事で取り上げられた。ホームページは、www.jackandraka.com。

「2015年 『ぼくは科学の力で世界を変えることに決めた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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