哲学な日々 考えさせない時代に抗して

著者 :
  • 講談社
3.72
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本棚登録 : 451
レビュー : 44
  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062198172

作品紹介・あらすじ

日本を代表する哲学者であり、東京大学での講義でも高い人気を誇る著者は、若い頃から坐禅を続けてきました。坐禅には、「本来無一物」(ほんらいむいちもつ)という考え方があります。丸裸の自分に立ち返ることができれば、そこに十分な力が現われてくる。坐禅をして、着ぶくれた余計なものを脱いでいく――この本を支えているのは、そうした引き算の思想です。

前半は、著者の普段着の姿や考えが綴られた50のエッセイを収録しました。
哲学の授業で何を学べばいいのかから始まり、東大生に坐禅を教えるのはなぜか、そして哲学者の日常に起こるさまざまなことが描かれます。
読んでいて思わず口をついて出てしまうのが、「へぇ」とか「うふふ」とか「なるほど」ということば。気楽に読み進めるエッセイですが、そうやって読みすすめるうちに自然と頭のこわばりが解けていきます。
坐禅してみたいと思う人も注目! 坐り方や呼吸のレッスンもあります。

後半は、論理的な文章を書くためにはどうすればいいのか、異なる物語を生きる他者を理解するとはどういったことかなどに触れた10本の小品から構成されます。来し方をたどるとともに、言葉で考えていく実際の様子を伝える「「哲学者になりたいかも」などと考えている高校生のために」、また驚きから始まる哲学の原風景を語った「バラは暗闇でも赤いか?」は、哲学ではどのように思考が重ねられていくのかが見えてきます。

自分のこと、社会のこと、国のこと、世界のこと……、考えなくてはいけないのに、考えようとすると、どう考えたらいいかわからなくなって、前に進めなくなってしまう。考えあぐねてしまう。――こんな時代だからこそ、哲学者は、しかつめらしい言葉を使わずにこの本を書きました。人生で一番大切なものは何か、どうして自殺をしてはいけないのか、など、むずかしいけど、実は私たちが気になって仕方ない問いからも逃げずに、向かい合います。
ここに「ああすればこうなる」式のマニュアルや成功の技術はありません。でも、この本を読み終えたとき、知らぬ間に身につけてしまった鎧から解放され、本来無一物ゆえの力が宿るのです。

感想・レビュー・書評

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  • いつもの昼休み書店めぐり中に、東京堂の平積みのなかにみかけて購入。

    40年以上も家族のごはんを作り続けてきた田舎のお母さんが作るおみおつけは、同じ材料を使ってもかんたんに真似できない味がします。

    本書にならべられた日本語も、同じように、とてもシンプルで、ダシがきいて、おいしく、身体にしみわたることばに満ちた味がします。

    ごちそうさまでした。

  • 哲学者のエッセイ。
    哲学初心者向け、イコール私向け。
    哲学は「メタ」なのだという話に、あーーなるほど!と納得した。
    連載のネタなかったのかな…という回もところどころあったが、全体的には面白かった。

  • 哲学がいかに生活に密接した学問かがよく分かるエッセイ
    自画自賛あり自虐ありでクスッと笑える。

    でも、「文学」と「国語」は分けた方がいいとか、
    国語から道徳教育や情操教育といった側面を排除するとか
    実用的な語学としての国語を理想としていたり、
    読ませる文章とはどういった文章なのかなど、
    教育者としての内容はとても納得できるし勉強になった

    私的には「東京大学妄想系I類があればよかったのに」と妄想している箇所がツボだった。

  • 電子書籍で読んだ。
    野矢茂樹氏の本は何冊か読んでいる。
    今までは論理学や無限をテーマとした本ばかりだったが、本書は著者の人柄が滲み出るであろうエッセイとのことで、寝る前に気楽に少しずつ読んだ。
    読み進めていくと、なるほど哲学者はこういうことを考えているのかという発見がある。また、こういう風に考えているのかという発見もある。
    考えるというのはモヤモヤした状況に耐えることだ。モヤモヤを引き受けることだ。
    モヤモヤが少しずつ晴れていく感覚。晴れた先に自分だけの地平が見えてくる感覚。
    これはおそらく快楽に近い。
    自分だけの快楽を追っているのが哲学者なのかもしれない。

  •  
     はじめに。サイトの内容紹介が長くて驚きました。想いが込められています。でも,想いを込める理由もわかります。

     先日,節約のために図書館で借りたはずが,購入を決意してしまった本があるという記事を書きました。その本が本書です。

     野矢先生はウィトゲンシュタインを中心とした哲学がご専門,論理学の本などもご執筆されています。わかりやすい,読ませる文章をお書きになられる先生です。

     その野矢先生が綴った日々のエッセイ(50回分)と,雑誌に寄稿したエッセイが本書には収録されています。内容の紹介はもはやサイトをご確認いただけたら十分かと思います。

     甥っ子が中学生になるまであと4年。4年後にもう1冊購入することになりそうです。

  • 特に以下の一文が刺さった。
    共に喜べる人になりたい。

    ===
    ほめるものはほめられるものよりも優位に立つ。だからほめられたいと思う気持ちは、自分より優位のものを求めることにつながる。
    子供は大人たちを出し抜き、追い越していかなければならないのに、ほめられようとして上目づかいになり、ほめてくれる人に自ら進んで隷属しようとする。
    ほめて育てようとする人たちは、おそらく無自覚のうちに、そうして子供を支配しようとしている。

    では、どうすればいいのか。ほめるのではなく、共に喜ぶこと。何かがうまくできたなら、一緒に喜んで、子供が感じている喜びを増幅する。そうして、その子が自分の内側から感じる喜びを引き出してあげるのだ。

  • 肩の力を抜いて,日常系エッセイを楽しく読んでいると,いつのまにか哲学の思考を体験しちゃっている。

    これは,本書が野矢さんのこれまでの経験・それについて何を・どんな風に考えたのかが綴られたエッセイ集だから。
    哲学的な思考の方法について,野矢さんが解説を語るのではなく,「ちょっと僕がやってみるから,あなたも読みながら一緒にやってみてよ」というスタンス。
    つまり,本書を読むことで野矢さんと哲学的な思考を体験できる,というわけです。
    見開き1ページで1テーマなので,短編集みたいで読みやすい。
    ”哲学する”とかは置いておいて,ただエッセイとして読んでも,野矢さんの優しい言葉がじんわり沁みて癒される。
    西日本新聞に掲載されたエッセイを集めた本だけあって,取り上げられる話題はいろいろだけれど,私は教育系の話題が印象に残っている。

  • 先生のファン向け、哲学者でもっと面白い人は沢山居るよ

  • 心に響くフレーズ
    ① 褒めて育てるという方針は、基本的に間違っている。褒められて育った子は、褒められるために頑張ることしかできない。では、どうすればいいのか。それは、褒めるのではなく、共に喜ぶことだ。
    ② 接続詞を明確に使うこと。それが、論理的に書くために決定的に重要となる。
    ③ 解けそうもない難問をアポリアという。
    ④ 教師も学生もなく、自由闊達に議論しあうこと、それが哲学の楽しさでもある。

  • 哲学

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著者プロフィール

1954年生まれ。現在、立正大学教授。専攻は哲学。

「2020年 『語りえぬものを語る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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