- Amazon.co.jp ・本 (170ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062199001
感想・レビュー・書評
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第154回芥川賞受賞作。これで154回の候補作は全て読みました(やっと…)あとでまとめにまとめます。
本谷氏としては4度目の候補での受賞なので、割と時間のかかった方だと思います。
感想としては、うーん、随分作風が変わったなあというのが第一印象。今までの本谷作品といえばエキセントリックな登場人物が出てきて物語を引っ掻き回すというのがお得意の構成だったと思うのですが、短編集『嵐のピクニック』を経てそういった奇異な登場人物に頼らずとも物語=譚を成立させられるようになったのかなと思いました(いくつかまだ読んでない作品もありますが)。
という訳で、うーん、イマイチ本谷作品を読んだな!という感じはしなくて、全く別の人の作品を読んでるような印象さえ受けました。これで受賞というのは、どうなんでしょう。今後はこういった作風にシフトしていくのでしょうか?同時収録されていた短編も登場人物よりも物語の妙に重きが置かれている感じだったので、本谷さんの書きたい方向性が変わっていっているのかもしれません。
内容としては、読んでいてなんとなくぞっとするような、不思議な感触の作品でした。散りばめられたエピソードも、なんだか実に嫌な感じです。生理的不安感を煽ってくるような、そんな描写がうまいなあと思いました。
ただじゃあ読後に何か残ったかと言われると…うーん、微妙かなあ。自分が結婚していないっていうのも、あまりこの作品に共感できない大きな要因の一つかもしれない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
芥川賞受賞作。結婚して夫婦の顔が似てくるってこういうこと?維持できなくなるの?怖い。
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読みやすくて面白かったです。表題作は芥川賞を受賞。夫婦は長年連れ添うと顔が似てくるという説をモチーフにしていますが、自己と他者の境界や、他人を理解することは可能か、といった命題を扱っていると思います。異類婚姻譚とは、民話や昔話の研究でよく使われる言葉で、命を助けられた動物などが人(多くは女)の姿で助けた男の前に現れて生活をともにする話です。この作品で妻が専業主婦なのも、妻は人ではないと思わせるためかと(読んでいくうち受ける印象が変わってきますが)。結婚とは、まさに異類婚姻譚なのかもしれません。
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夫婦が顔が似てきてしまい、自分の顔がどんなだったか、夫の顔が歪んできてどの位置に鼻や目があったかわからなくなる話。
一見、世にも奇妙な話のようだが、たしかにそうかもしれん。
自分は経験がない及び感じた事がないので、友人カップルの事を思い起こすと、付き合っている相手にどんどんと嗜好や趣味が似てきて、毎回、彼が変わると驚く。派手好きな彼のときはカラフルな装い、モノトーンな彼の時は白黒の装い、また、心持ちや好きな歌まで変わる。侵食されている。彼側を知らないので、彼も侵食されてるのかもしれない。
この小説もお互いを食べあい「蛇ボール」という
言葉に置き換え「侵食」を表現している。
一見、SF小説のようで、これは、よくある話を題材にしていて、とてもユニーク。
最後は、アッサリしてるけど、それがいい。綺麗だから。
去年の芥川賞、「火花」より、好きだ。 -
群青11月号にて。
結婚してた時、何気ない仕草や口振りや考え方が、あ、今旦那と同じようだったなとふと感じた時、めちゃめちゃ怖かったのを覚えてる。その感覚を思いっきりブラックにめちゃめちゃニヒルにちょっと山椒を振り掛けた感じ。
私は自分が曖昧なのをしってて、だから他人にすぐ染まる事もわかってて、でもそれを怖いと感じる。いっそあなた色に染まりたいと歓喜出来たらいいのに。
無理だった。
でもきっと染まらない結婚も私は出来ない。
だから無理。
つまり再婚無理。
やだ残念。 -
記録。