吸血鬼

著者 :
  • 講談社
3.59
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本棚登録 : 229
レビュー : 34
  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062199186

作品紹介・あらすじ

独立蜂起の火種が燻る十九世紀のポーランド。
その田舎村に赴任する新任役人のヘルマン・ゲスラーとその美しき妻・エルザ。この土地の領主は、かつて詩人としても知られたアダム・クワルスキだった。
赴任したばかりの村で次々に起こる、村人の怪死事件――。
その凶兆を祓うべく行われる陰惨な慣習。
蹂躙される小国とその裏に蠢く人間たち。
西洋史・西洋美術に対する深い洞察と濃密な文体、詩情溢れるイメージから浮かび上がる、蹂躙される「生」と人間というおぞましきものの姿。
芸術選奨新人賞、吉川英治文学新人賞受賞作家の新たなる代表作となる長編小説です。

感想・レビュー・書評

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  • 2016年Twitter文学賞国内1位だったので、佐藤氏がどういう人かまったく知らないまま読み始めると、意外にも19世紀ポーランド、ゲスラー氏にクワルスキ氏だった。女性作家にしては、類型的な女性エルザがつまらない。
    ポーランドの寒村の方言が何を喋っているのかわからないほどなのが面白い。ガイブンの翻訳だったら翻訳者ずいぶん捻ったな、と思うところだ。世の東西を問わず、ということか日本の江戸時代の農民像のよう。
    「外国による不当な?支配」「支配層と非支配層」「多発する死と迷信」「ムラ社会の閉塞」「吸血鬼(肝心の)」という複雑な設定が、読者の(というか私の)の感動スイッチを押さないままぼやっと収束してしまったのですっきりしない。設定倒れでなければ私の読解力。

  • ホラーではなかった!!

    正しくは歴史小説になるんでしょうね。最後にタイトルの意味が分かるのだけど、確かにとものすっごく納得した。

    急進派気取りで何もしてくれない夢想家の領主よりも、自分たちの風習に理解を示してくれる支配者の方がましというのは理解できるな。

    最初のおどろおどろしいシーンに胸をときめかせていたんだけど、最後でよい意味でのどんでん返し。

    だから佐藤さんの作品が好きだわ。

  • 1/31入手。近隣の書店に無く注文。小説現代で連載していた事は記憶にあったので出版を待ちわびていた。考えてみたら佐藤亜紀さんのゴシックホラーは初ではないですか?

  • 19世紀ポーランドを舞台にした歴史小説。
    前半はホラー小説のようなタッチで進むが、後半は雰囲気ががらりと変わる。読み終えた後で見ると、『吸血鬼』というタイトルは非常に意味深。
    後半、『死体の首を切る』という因習と、ミサのシーンが交互に描写される辺りには圧倒された。

  • 佐藤亜紀小説研究ノートによると、「小説現代」(講談社)に連載がされていたそうです。
    http://minotauros.g.hatena.ne.jp/

    講談社
    未掲載

  • 2016-1-27

  • タイトルは吸血鬼という私の好物、カバーもダークでトワイライトシリーズのような雰囲気だったので、すっかり耽美系の吸血鬼ものかと期待して読み始めた。舞台は1846年あたりの現ポーランド、当時はオーストラリア帝国統治下のガリツィア。地主のクワルスキ(Kowalskiというベタなポーランド名、そういえばうちの近所のポーランド系社長のスーパーマーケットがコワルスキーって名前だった)とその土地に送られてきた新任の帝国役人のヘルマン・ゲスラー。ヘルマン・ゲスラーというとウィリアム・テルに出てくる有名なハプスブルク家に仕えたオーストリア人悪代官(架空の人物)。こいつのせいでスイスの独立運動が盛り上がって、結局独立するという筋。この名前が出てきた時点でちょっと出来過ぎな筋が心に浮かんでしまう。ともかく、最初に地元の民マチェクの父親が出てきて語る場面(p41)で、父親が素晴らしい新潟弁を話すので、慌てて作者のプロフィールを調べてみたら、なんと栃尾出身。そこから時折語られる地元民会話シーンがイントネーションも結構正しく脳内再生していると自負してますが(ほんまか)。非常に興味深いストーリーですが、読めども読めども所謂吸血鬼はでてこない。で、後半p205、バルトキエヴィッツ曰く「姿形は泉の精」だが、体内に異物を飼う「下等な動物的器官を備え」、「人間は寄生虫のようにその胎に取り付」いて、10ヶ月ほど「ちゅうちゅうその体液を吸って肥え太る。」と、人間を血を吸う蚤に例えるので、これがタイトルなのだなと、そうするとカバーは妊婦に見えてくる。もちろんウピールの伝説を信じている人々によってイベントが起きはしますが、実際に人外のものが出てくることはない。私としてはゴシックで耽美なアンライスや菊池系の吸血鬼の話が読みたかったんだが、真面目に面白い小説ではありました。所謂モンスターの出てくる伝奇小説よりも、こういう人間の本性がダダ漏れになるタイプの小説のほうが背筋が凍り、後味悪いです。

  • 佐藤亜紀先生の著作は以前「ミノタウロス」を手に取り、難解すぎて70ページ程しか読めなかったという経験があるのですが、あらすじを読んで興味を持ったので再挑戦も兼ねてこちらの作品を読みました。
    佐藤先生の作品はどれも題材に対する知識と教養が備わっていないと楽しむのが難しく、これも多分その類の内容だと思います。

    なにせ世界史はちんぷんかんぷんですので、あまり込み入った感想は書けませんが、私のような乏しい知識でも大変面白かったです。
    セリフが「」で閉じられていなかったり、場面転換の区切りをあえて仕切っていないので最初のうちはなかなか内容が頭に入ってこなくて、「もしかしてずっとこの調子で最後まで続くのだろうか」と思いながら読んでいましたが、中盤から終盤に掛けてのドラマティックな展開は思わず主人公に感情移入してしまうほどでした。それにとてもテンポの良い文体なので読んでいて引っかかる部分がなく、すらすらと読めて、帯の皆川先生の評文になるほどそういうことかと合点が行きました。
    全部で300ページにも満たない物語ですが、濃密な19世紀の東欧の空気が感じられるようで臨場感にあふれ、まるで疑似体験をしているかのようにページを捲る手が止まりませんでした。読み終わってみればシンプルに「面白い」といえる作品です。

  • ホラーなのかと思って読んでたが、違ってた。

  • ●ふむ、ゴシックホラーかな? いや、政治の話か。……やっぱりホラーかな?? 定番のストーリーでは、こんなキャラの結末はアレな感じだけどどうかなあ。
    …などと思いながら読みました。面白かったです。予想なら当たりました。様式美?

    ●舞台は19世紀のポーランド。
    とある辺鄙な村に配属されたオーストリアの官吏ゲスラーとその若妻エルザは、かつて詩壇の寵児ともてはやされた文人にして当地では絶大な権力を持つ大地主のクワルスキと相対しながらも、暗鬱な因習に冒された村民と心を通わせ、賢い若者のマチェクや女中のヨラ達と共に土地の問題を解決しようと粉骨砕身するが、謎の死が冬を迎えた村を襲う……!←まあそんなにうそじゃない。

    ●ポチョムキンで戦艦を思い出したり、クラクフ蜂起とか言う単語が脳裏をよぎったりしたので、ひっっっさしぶりに世界史用語集などを取り出してみましたが特には役には立ちませんでしたとさ。
    どなたか書いてらっしゃいましたが、あの訛りはやはり(ご出身地の)新潟弁なんですねー。西日本人にゃあんなん文脈からでないと直に意味が取れんわーい。

    ●実写化エルザはアリシア・ヴィキャンデルでいいです。そこはかとなく薄幸そうだから。ゲスラーはケヴィン・スペイシーとか? 違うか。中年男性で小太りで説得力のあるルックスの俳優求む。
    しかし若クワルスキは天下のイケメンピアニストことリスト様でまちがいありますまい! だめですかね。ね? 

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著者プロフィール

1962年、新潟に生まれる。1991年『バルタザールの遍歴』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞。2002年『天使』で芸術選奨新人賞を、2007年刊行『ミノタウロス』は吉川英治文学新人賞を受賞した。著書に『鏡の影』『モンティニーの狼男爵』『雲雀』『激しく、速やかな死』『醜聞の作法』『金の仔牛』『吸血鬼』などがある。

「2017年 『スウィングしなけりゃ意味がない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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