吸血鬼

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  • 講談社 (2016年1月26日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (290ページ) / ISBN・EAN: 9784062199186

作品紹介・あらすじ

独立蜂起の火種が燻る十九世紀のポーランド。その田舎村に赴任する役人のゲスラーと妻・エルザ。この土地の領主は、かつて詩人としても知られたクワルスキだった。だが、赴任した村では、次々に村人が怪死していく――。西洋史・美術に対する深い洞察と濃密な文体、そして詩情溢れるイメージで浮かび上がる、蹂躙される「生」とその裏に蠢く人間の姿。芸術選奨新人賞、吉川英治文学新人賞受賞作家が放つ、新たなる代表作!


独立蜂起の火種が燻る十九世紀のポーランド。
その田舎村に赴任する新任役人のヘルマン・ゲスラーとその美しき妻・エルザ。この土地の領主は、かつて詩人としても知られたアダム・クワルスキだった。
赴任したばかりの村で次々に起こる、村人の怪死事件――。
その凶兆を祓うべく行われる陰惨な慣習。
蹂躙される小国とその裏に蠢く人間たち。
西洋史・西洋美術に対する深い洞察と濃密な文体、詩情溢れるイメージから浮かび上がる、蹂躙される「生」と人間というおぞましきものの姿。
芸術選奨新人賞、吉川英治文学新人賞受賞作家の新たなる代表作となる長編小説です。

みんなの感想まとめ

物語は、19世紀半ばのポーランドの田舎村を舞台に、役人ゲスラーとその妻エルザが直面する怪死事件を通じて、迷信や社会の暗い側面を描き出します。村人たちの古い習慣や吸血鬼にまつわる恐怖が、彼らの心に潜む葛...

感想・レビュー・書評

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  • 19世紀半ば、ポーランド南東部の田舎の村が舞台。
    古い迷信からくる教会と墓地の場面が印象的だった。
    異様だと思いながらも厳かというか口を挟めない雰囲気で、その光景が迫ってくる。自分もその場で見ているような感じがした。
    でも読み終えてみると、村のしきたりばかりが心に残っているわけじゃなく、蜂起するしないの時代がどんなものか味わえたのがよかった。

  • ジャケ買い、タイトル買いでしたが、思っていたのと全く違った。吸血鬼=ヴァンパイアのホラーでは無く、人の心に潜む葛藤やら妬みといっあモノを吸血鬼(ウピール)と言われていた時代(19世紀ポーランド)の物語。凄く綺麗な情景描写、圧倒的な文体で織りなす心理描写。私には高尚すぎて、ちょっと読みづらかった⋯⋯。

  • 19世紀半ば、オーストリア支配下のポーランド(ルテニア)の貧しい村に派遣されてきた役人のヘルマン・ゲスラーと、親子ほど年の離れた若妻・エルザ。一帯の領主は詩人でもある貴族のアダム・クワルスキで、農家出身の妻ウツィアが実務を取り仕切っている。ゲスラーは着任早々、10年ほど前に迷信深いこの地で吸血鬼騒動があり、疑わしい死者の首を切断する儀式があったことを知らされる。請け負ったのはヨソモノのヤレクという老人。やがて村人の中から、少年、妊婦、若い女性と次々不審な突然死が相次ぎ、動揺する村人に対処するためヘスラーがとった処置は…。

    まず序盤は時代や場所がわからず戸惑います(中欧はとくに複雑だし)。そういう部分の説明を省いちゃうのが佐藤亜紀の小説から翻訳ものぽい印象を受ける理由のひとつかも。タイトルのイメージから、つい詩人で貴族のクワルスキが吸血鬼で村の若い娘の生き血を夜な夜な啜り…みたいな話かと想像しちゃったけど、そういう耽美系のお話ではありませんでした。

    前半は、前任者よりずっと役人としてまともなゲスラーと、心優しい天使のようなエルザがやってきたことで、貧しい村人が少し救われ、使用人たちも彼らを慕い、有能なマチェクは仕事にやりがいを見出し、このまま順調にいけばと願ってしまう。しかし相次ぐ村人の不審死、迷信深い村人は、ウピールと呼ばれる吸血鬼の存在を信じており、無神論者のゲスラーといえども、彼らの信頼を得るために、前任者と同じ手段を講じざるを得ない。さらにエルザの妊娠、クワルスキの甥ヤンと医者バルトキエヴィッツが関わっている革命運動などにより事体は複雑化。

    先にも書いたように、ザ・吸血鬼、なものは登場せず、どちらかというとゲスラー自身が、現実主義者であるにも関わらず夢や幻覚に苦しめられることになるだけだ。ここで言われる吸血鬼は、どちらかというと農奴から搾取する封建領主の比喩的な意味が大きいのかもしれない。ゆえに作品全体に不穏な空気が漂っているけれど、これはホラーではなく人間が作り出す社会のイビツさの話だったのだと思う。読み応えがありました。

  • タイトルからゴシックホラー系かと思ったら、歴史小説だった。文章がわりと独特なので、そのリズムに慣れるのに少し時間がかかったが、終わってみれば登場人物たちの心情に同調できないギリギリの距離感を保って物語の行く末を見守るのに、ちょうどいい文体であった。閉鎖的でしがない土俗の中で交錯するそれぞれの思いが、地味ながら確かに息づく熾火のようで、またそれらを作り上げている登場人物たちにすごい人がいないというのがよい。しかし頭の中に映像として印象に残るのは、やはり晩禱の最中に棺を開けていくシーンだろう。

  • 2016年Twitter文学賞国内1位だったので、佐藤氏がどういう人かまったく知らないまま読み始めると、意外にも19世紀ポーランド、ゲスラー氏にクワルスキ氏だった。女性作家にしては、類型的な女性エルザがつまらない。
    ポーランドの寒村の方言が何を喋っているのかわからないほどなのが面白い。ガイブンの翻訳だったら翻訳者ずいぶん捻ったな、と思うところだ。世の東西を問わず、ということか日本の江戸時代の農民像のよう。
    「外国による不当な?支配」「支配層と非支配層」「多発する死と迷信」「ムラ社会の閉塞」「吸血鬼(肝心の)」という複雑な設定が、読者の(というか私の)の感動スイッチを押さないままぼやっと収束してしまったのですっきりしない。設定倒れでなければ私の読解力。

  • タイトルと土俗的な薄暗い世界に惑わされて、恐る恐る読んでいた。読み終わってようやく、そういうことか…と。着地点がわかった上で、もう一度読んだら、今度は何が読み取れるのだろう。

  • ホラーではなかった!!

    正しくは歴史小説になるんでしょうね。最後にタイトルの意味が分かるのだけど、確かにとものすっごく納得した。

    急進派気取りで何もしてくれない夢想家の領主よりも、自分たちの風習に理解を示してくれる支配者の方がましというのは理解できるな。

    最初のおどろおどろしいシーンに胸をときめかせていたんだけど、最後でよい意味でのどんでん返し。

    だから佐藤さんの作品が好きだわ。

  • 1/31入手。近隣の書店に無く注文。小説現代で連載していた事は記憶にあったので出版を待ちわびていた。考えてみたら佐藤亜紀さんのゴシックホラーは初ではないですか?

  • 19世紀ポーランドを舞台にした歴史小説。
    前半はホラー小説のようなタッチで進むが、後半は雰囲気ががらりと変わる。読み終えた後で見ると、『吸血鬼』というタイトルは非常に意味深。
    後半、『死体の首を切る』という因習と、ミサのシーンが交互に描写される辺りには圧倒された。

  • 佐藤亜紀小説研究ノートによると、「小説現代」(講談社)に連載がされていたそうです。
    http://minotauros.g.hatena.ne.jp/

    講談社
    未掲載

  • 十九世紀の、ポーランドの小さな村・ジェキの役人として赴任してきたゲスラー。かつて詩人として名を博したクワルスキが領主として治めるその村で次々に起こる不審な死。村人たちの不安を取り除くためにゲスラーが提案する慣習は、ただの迷信なのかそれとも……? 陰鬱な雰囲気の小説です。
    タイトルがあからさまにこれなので、ああそういうことなの、と思って読んだけれど。実はそうじゃないのかも。続く不審死といい怪しい影といい、いかに「いそう」な雰囲気はこれでもかというほどに漂っているのですが。この時代のこのような村では、これくらいの死は珍しいものではなかったのかもしれないし。因習や迷信に囚われていることもありがちな気がして。「吸血鬼」というのは一種のたとえでしかなく、だけど怪物である「吸血鬼」と同様に恐れられている存在でもあったのでしょうか。いや、むしろそれよりも切実に恐ろしいのかもしれません。
    ホラーだと思い込んで読んだら期待外れですが。ホラー好きにもこの雰囲気はかなり好みでした。暗くてじめじめした印象だけれど、美しさも充分に感じられます。

  • 3.62/264
    内容(「BOOK」データベースより)
    『独立蜂起の火種が燻る、十九世紀ポーランド。その田舎村に赴任する新任役人のヘルマン・ゲスラーとその美しき妻・エルザ。赴任したばかりの村で次々に起こる、村人の怪死とその凶兆を祓うべく行われる陰惨な因習。怪異の霧に蠢くものとは―。』


    『吸血鬼』
    著者:佐藤 亜紀(さとう あき)
    出版社 ‏: ‎講談社
    単行本 ‏: ‎290ページ

  • 19世紀ポーランドの話。美しい田舎町に新任役人として赴任してきたヘルマン・ゲスラーとその妻を取り巻く周囲の物語。美しい田舎風景、村人の悲惨な生活、田舎ならではの風変わりな風習、それらを良い方向へ導こうとするゲスラーと、かつて詩人であった領主との隔たり。独立蜂起に揺れる村、生活の格差から生まれる領主と農民の思想の違い、様々な人の思惑が混沌となり物語は進んでいく。「吸血鬼」と題されているがホラーではない。実際の吸血鬼も出てこない。人間の持つ闇を示唆しているのであろうか?佐藤亜紀氏の小説は物語の背景や登場人物の紹介などを敢えて書き込まないのに読み進めるうちに自然とその物語の全体像の中に連れ込まれる。この小説も面白かった。

  • 2016-1-27

  • タイトルは吸血鬼という私の好物、カバーもダークでトワイライトシリーズのような雰囲気だったので、すっかり耽美系の吸血鬼ものかと期待して読み始めた。舞台は1846年あたりの現ポーランド、当時はオーストラリア帝国統治下のガリツィア。地主のクワルスキ(Kowalskiというベタなポーランド名、そういえばうちの近所のポーランド系社長のスーパーマーケットがコワルスキーって名前だった)とその土地に送られてきた新任の帝国役人のヘルマン・ゲスラー。ヘルマン・ゲスラーというとウィリアム・テルに出てくる有名なハプスブルク家に仕えたオーストリア人悪代官(架空の人物)。こいつのせいでスイスの独立運動が盛り上がって、結局独立するという筋。この名前が出てきた時点でちょっと出来過ぎな筋が心に浮かんでしまう。ともかく、最初に地元の民マチェクの父親が出てきて語る場面(p41)で、父親が素晴らしい新潟弁を話すので、慌てて作者のプロフィールを調べてみたら、なんと栃尾出身。そこから時折語られる地元民会話シーンがイントネーションも結構正しく脳内再生していると自負してますが(ほんまか)。非常に興味深いストーリーですが、読めども読めども所謂吸血鬼はでてこない。で、後半p205、バルトキエヴィッツ曰く「姿形は泉の精」だが、体内に異物を飼う「下等な動物的器官を備え」、「人間は寄生虫のようにその胎に取り付」いて、10ヶ月ほど「ちゅうちゅうその体液を吸って肥え太る。」と、人間を血を吸う蚤に例えるので、これがタイトルなのだなと、そうするとカバーは妊婦に見えてくる。もちろんウピールの伝説を信じている人々によってイベントが起きはしますが、実際に人外のものが出てくることはない。私としてはゴシックで耽美なアンライスや菊池系の吸血鬼の話が読みたかったんだが、真面目に面白い小説ではありました。所謂モンスターの出てくる伝奇小説よりも、こういう人間の本性がダダ漏れになるタイプの小説のほうが背筋が凍り、後味悪いです。

  • 佐藤亜紀先生の著作は以前「ミノタウロス」を手に取り、難解すぎて70ページ程しか読めなかったという経験があるのですが、あらすじを読んで興味を持ったので再挑戦も兼ねてこちらの作品を読みました。
    佐藤先生の作品はどれも題材に対する知識と教養が備わっていないと楽しむのが難しく、これも多分その類の内容だと思います。

    なにせ世界史はちんぷんかんぷんですので、あまり込み入った感想は書けませんが、私のような乏しい知識でも大変面白かったです。
    セリフが「」で閉じられていなかったり、場面転換の区切りをあえて仕切っていないので最初のうちはなかなか内容が頭に入ってこなくて、「もしかしてずっとこの調子で最後まで続くのだろうか」と思いながら読んでいましたが、中盤から終盤に掛けてのドラマティックな展開は思わず主人公に感情移入してしまうほどでした。それにとてもテンポの良い文体なので読んでいて引っかかる部分がなく、すらすらと読めて、帯の皆川先生の評文になるほどそういうことかと合点が行きました。
    全部で300ページにも満たない物語ですが、濃密な19世紀の東欧の空気が感じられるようで臨場感にあふれ、まるで疑似体験をしているかのようにページを捲る手が止まりませんでした。読み終わってみればシンプルに「面白い」といえる作品です。

  • ホラーなのかと思って読んでたが、違ってた。

  • ●ふむ、ゴシックホラーかな? いや、政治の話か。……やっぱりホラーかな?? 定番のストーリーでは、こんなキャラの結末はアレな感じだけどどうかなあ。
    …などと思いながら読みました。面白かったです。予想なら当たりました。様式美?

    ●舞台は19世紀のポーランド。
    とある辺鄙な村に配属されたオーストリアの官吏ゲスラーとその若妻エルザは、かつて詩壇の寵児ともてはやされた文人にして当地では絶大な権力を持つ大地主のクワルスキと相対しながらも、暗鬱な因習に冒された村民と心を通わせ、賢い若者のマチェクや女中のヨラ達と共に土地の問題を解決しようと粉骨砕身するが、謎の死が冬を迎えた村を襲う……!←まあそんなにうそじゃない。

    ●ポチョムキンで戦艦を思い出したり、クラクフ蜂起とか言う単語が脳裏をよぎったりしたので、ひっっっさしぶりに世界史用語集などを取り出してみましたが特には役には立ちませんでしたとさ。
    どなたか書いてらっしゃいましたが、あの訛りはやはり(ご出身地の)新潟弁なんですねー。西日本人にゃあんなん文脈からでないと直に意味が取れんわーい。

    ●実写化エルザはアリシア・ヴィキャンデルでいいです。そこはかとなく薄幸そうだから。ゲスラーはケヴィン・スペイシーとか? 違うか。中年男性で小太りで説得力のあるルックスの俳優求む。
    しかし若クワルスキは天下のイケメンピアニストことリスト様でまちがいありますまい! だめですかね。ね? 

  • 19世紀半、ポーランドの辺境な村に
    親子ほど歳の離れた妻・エルザを伴って赴任した中年のお役人・ゲスラー。
    エルザはかつては詩人で
    現在は大地主のアダム・クワルスキに会えると喜んでいいるがここは古い風習が残る貧しい村………。

    吸血鬼っていうタイトルでホラーだと思ったら!?
    吸血鬼とはそうゆう意味なのね?
    ホラーじゃなく闇って感じの1冊。
    日本人なのに19世紀のポーランドの片田舎の風景を描けるこの力量に驚きw(*゚o゚*)w
    とても日本人が書いた小説とは思えない
    翻訳小説を読んでる感じ。それで★4

  • 科学、法、宗教、利権、迷信、因習、文学、才能。
    あなたは何を信じるのか、という問いを突き付けられている気がした。

    それぞれがそれぞれの「正義」を掲げ、それぞれの信念に従って何とか生きて行こうとしている。しかし物語の中に銃が取り出され、そしてそれはどうしようもなく撃たれてしまう。
    まるで、抗い難い流れに飲まれてしまうように。もしくはそこに生きる人々の正義や信念を、嘲笑うように。

    宗教を持たず、科学と法を拠所にする役人と、
    文学に酔い痴れ、宗教を笠に着て利権を守ろうとする領主と、
    迷信と因習に囚われ、呪いによって難を逃れようとする農民と、
    その三者の対比が鮮明で、暗示的であり、
    一方、死体の首を斬る呪いを行う薄気味の悪い流れ者と、
    心根の知れない空恐ろしい村医者という、彼らの役割も意図的であると思った。

    「この時代に、この国で書かれた」ということが極めて重要な意味を持つ文学作品が、世界にはいくつかあると思う。
    この小説は、間違いなくその一つだろう。

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著者プロフィール

1962年、新潟に生まれる。1991年『バルタザールの遍歴』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞。2002年『天使』で芸術選奨新人賞を、2007年刊行『ミノタウロス』は吉川英治文学新人賞を受賞した。著書に『鏡の影』『モンティニーの狼男爵』『雲雀』『激しく、速やかな死』『醜聞の作法』『金の仔牛』『吸血鬼』などがある。

「2022年 『吸血鬼』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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