蛇の道行

著者 :
  • 講談社
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062199261

作品紹介・あらすじ

昭和24年、上野。戦争未亡人ばかりを集めたバー・山猫軒に、ひっそりと暮らす若い女性と少年がいた。バーを切り盛りする青柳きわと、住み込みで働く立平だ。

立平は満州で生まれた。幼い頃に母を亡くし、無口な父とばあやと過ごす平穏な日々は、ある夏の日に突然終わりを告げた。敗戦で父も喪った立平は、父の恋人と一緒にまだ見ぬ祖国を目指す船に乗った――。

きわは日本で生き残った。戦地から負傷して戻った夫が看病の甲斐なく亡くなり、大きな屋敷に一人きりになったきわの元に、おかしな母子が転がり込んできた。母親は息子を置いて姿を消してしまう――。

なにがあっても、離れない。
家族は失った。けれど、隣にはお前がいる。

生き抜くため、絡み合う蛇のように彼らは時代を駆け抜けた。戦後復興期を舞台に、親のない少年と若き未亡人の名付け得ぬ関係を描いた加藤元の新たなる傑作!

感想・レビュー・書評

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  • 「蛇の道行」(加藤 元)を読んだ。
    ん?なんだこの人は!と思いながら読んでました。なにしろこの本を手に取るまで名前すら存じ上げなかったわけで。
    刑事こそ出てこないけれど森村誠一とか高村薫とか松本清張とかのテイストだよな。
    描きたかったのは『人間の業』か。
    いやー面白かった。

  • いつかは奪われる。家や家族や人生までも。自己を制しそれに抗い続け、最後にひとつだけ残された、もろくて弱々しい絆にしがみつく。それを正義と言うつもりはないが、時代と片付けたくもない。不幸な時代の若者たちが力強く生き抜いた世の中を、加藤元という良質なフィルターを通して垣間見ることが出来た。

  • 表紙の力強さに惹かれて手に取る。戦中・戦後の混乱期を生き抜くための悪。

  • 女は、蛇のように狡猾に生きた。
    弱い者を丸飲みにしてでも、戦後の混乱した時代を生き、
    この先もずっと生き延びるために。
    そして、絡み合う蛇のように、その生を共に生きる男も。

    久々の加藤元さん、惹き込まれて一気読みでした~♪

  • この時代の話が好きです。
    …しかし、凄まじい。

  • 片岡球子さんの絵の表紙に惹かれて手に取る。
    ほんの数ページ読むうちに
    いきなり濃い物語の中に放り込まれていた
     
    近松門左衛門さんの「曽根崎心中」が初演された時に
    当時の、庶民たちがこぞって芝居小屋につめかけた
    その時の気持ちが、こんな感じなのかなぁ
    と 思いながら…
     
     読み終わった後、もう一度表紙の「絵」を眺めて
    まさに、この物語を象徴する「絵」だなぁ
    と強く思った。

  • 敗戦後、未亡人だけで営むバー『山猫軒』に胡乱な客がやって来た。アイツはあぶない。

    立平とマダムの間に横たわるものの名前を何と呼ぶのか。愛。恋。友情。もっと濁っていてジットリとした湿り気と生臭さ。時にザラリと不快であるのに。また触れたくなる、そんなものの名前は。

    感情の動きを見せないふたりが瀬戸際で交わす所作のあちこちが、作り物めいていて、だからこそ華々しい。

  • 新聞の書評を読んで図書館にリクエストしていた本。

    良かったと言っていいのかどうか。
    不思議な本だったが、内容に引き込まれた。
    少年二人の関係が変化するのも面白かった。
    生き抜くために手段を選ばないトモ代には天罰が下って欲しいと思ったし、きわの苦労が報われるといいなと思いながら読んでいた。

  • 戦後、必死で生き延びて来た、女と、女と、男たちの物語。
    自分の欲望のまま人を利用し奪い捨てて生きて来た、「ひどい女」トモ代を心の中でこき下ろしながら読んでいく。分かりやすいひどい女を嫌悪し糾弾することで自分の安全を保って読む。なのに、途中からちらほらと見え隠れするとある疑惑。もしかすると…、いや、そんな…。
    そして、疑惑が露わになったとき、自分の中の「正義」が崩れる。裏と表がひっくり返ったその時に、行き場のないもやもやが押し寄せる。やりやがったな、加藤元。この不全感をどうしてくれよう!

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著者プロフィール

神奈川県生まれ、東京育ち。日本大学芸術学部文芸学科中退。日本推理作家協会会員。2009年、『山姫抄』(講談社)で第4回小説現代長編新人賞を受賞しデビュー。『泣きながら、呼んだ人』(小学館)が盛岡のさわや書店が主催する「さわベス」1位を獲得。2011年に刊行した『嫁の遺言』(講談社)が多くの書店員の熱い支持を受けベストセラーに。その他に『蛇の道行』(講談社)、『四月一日亭ものがたり』(ポプラ社)、『ひかげ旅館へいらっしゃい』(早川書房)、『ごめん。』(集英社)など。昨年刊行した『カスタード』(実業之日本社)は奇跡と癒しの物語として多くの読者を勇気づけ、本作はその続編にあたる。不器用だけど温かな人情あふれる物語には、幅広い世代にファンが多い。

「2022年 『ロータス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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