- Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062199513
作品紹介・あらすじ
メキシコの空港での姉妹の再会を異様な迫力で描いた、没後十余年を経て再注目の作家による「火事」(ルシア・ベルリン)、一家に起きた不気味な出来事を描く「家族」(ブレット・ロット)。アリの巣を体内に持つ女という思い切り変な設定でありつつはかなげな余韻が美しい「アリの巣」(アリッサ・ナッティング)、30代女子会の話と思いきや、意外な展開が胸をつく表題作「楽しい夜」(ジェームズ・ソルター)。飛行機で大スターの隣に乗り合わせてもらった電話番号の紙切れ…チャーミングでせつない「ロイ・スパイヴィ」(ミランダ・ジュライ)など、選りすぐりの11編です。
【収録作品】
「ノース・オブ」マリー=ヘレン・ベルティーノ
「火事」ルシア・ベルリン
「ロイ・スパイヴィ」ミランダ・ジュライ
「赤いリボン」ジョージ・ソーンダーズ
「アリの巣」アリッサ・ナッティング
「亡骸スモーカー」アリッサ・ナッティング
「家族」ブレット・ロット
「楽しい夜」ジェームズ・ソルター
「テオ」デイヴ・エガーズ
「三角形」エレン・クレイジャズ
「安全航海」ラモーナ・オースベル
感想・レビュー・書評
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不思議で少しゾットする短編集だった。アリの巣、亡骸スモーカー、三角形が印象的。
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1番好きなのは「楽しい夜」
1番心に残ったのは「三角形」
でもどれもほんとに好きだった。
斜めの世界を歩いてるみたい。
歪んでたり、欠けてたり、過剰にあったり。
そんな世界観で笑えて泣けてズドンとくる。
自分がどこで生きてるのかわからなくなるようだった。
海外文学初めて読んだけど、日本と雰囲気が全然違っておもしろい。
夜に読んでたからほんとに「楽しい夜」だった。 -
好みだった作品は、
ルシア・ベルリン「火事」
ミランダ・ジュライ「ロイ・スパイヴィ」
アリッサ・ナッティング「亡骸スモーカー」
特に「亡骸スモーカー」は、たった7ページしかないのに五感に訴えてくるような美しいラブストーリー。初めてキスした彼の息の香りを「まるでライラックの雨の香りのシャンプーみたい」と表現しているところは、よく分からないのに実際にその香りがしてくるから不思議。
岸本佐知子訳にハズレなし。 -
ちょっと変わった作品集。面白いっちゃあ面白いけどあんまり理解できないものが多かった。
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若干目も当てられない私小説が混じっていてきつかった。「ノース・オブ」、「アリの巣」、「亡骸スモーカー」の三作品が好きかな。
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ルシア・ベルリンの話がもっと読みたかったのだけど翻訳されてるものが少ししかなくてここに辿り着く。翻訳者が編む短編集って珍しいよね。そして翻訳者が同じだと小説の手触りがすごくよく似てる、同じ人が書いたみたいだ。まあ翻訳者の好みの小説が集まってるからそうなるのか。
そして蛇の道はヘビなので、また新しく読みたい小説家を何人も知れてよかった。
ロイ・スパイヴィ読んだらヴィゴ・モーテンセンと友達になる夢見ました、ふふふ。 -
独特な狂気性の高い作品が多く楽しめた。アリの巣。亡骸スモーカーが特に良かった。
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初読
ボブ・ディランを実家の感謝祭に連れて帰る
「ノース・オブ(マリー=ヘレン・ベルティーノ)」
癌の妹サリーに会うために着いたメキシコ・シティの空港での火事
「火事(ルシア・ベルリン)」
有名俳優と飛行機で隣り合う
「ロイ・スパイヴィ(ミランダ・ジュライ)」
犬達の厄災の犠牲となった女の子の
「赤いリボン(ジョージ・ソーンダーズ)」
骨の中に蟻を寄生させる美しい女の
「アリの巣(アリッサ・ナッティング)」
死者の髪を吸って記憶を味わう男の
「亡骸スモーカー(アリッサ・ナッティング)」
夫婦喧嘩をしていたら成長した子供達がクーラーボックスで生活している
「家族(ブレット・ロット)」
NYの夜、3人の女達のお喋り
「楽しい夜(ジェームズ・ソルター)」
神話のような、山が人間だった
「テオ(デイヴ・エガーズ)」
気まずくなった恋人へのナチスのワッペンのお土産
「三角形(エレン・クレイジャズ)」
祖母たちの彼方の世界への船旅
「安全航海(ラモーナ・オースベル)」
優れた小説は普遍的であるのか、
現在のコロナ禍など想像出来ようもないのに、
今の心境に沿うような作品がいくつもあった。
ロイ・スパイヴィ、家族、楽しい夜、三角形
が小説として特に好きだな、と思ったけど
ラスト(である事が重要なのかもしれない)の
安全航海の余韻、残り香のような儚さの。も、印象的だ。
訳者あとがきで改めて思うのは、どの作者もたいして和訳されていない事!
改めて岸本佐知子という目利きの行商人が選んだ魚たちを味わえる
事に感謝な群像紙の素晴らしい企画。
「家族」のブレッド・ロットはボールドウィンに師事、
名もない市井の人々の生活の細部を丁寧にすくい上げるようなリアリズムで書く作家で、この作品は変化球。
とあり、俄然他の作品も読みたい。
「楽しい夜」のジェームス・ソルターは50年キャリアにして
長編短編合わせて10作足らずの寡作、ぎりぎりまで削ぎ落としたストイックな文体と鋭い人間描写でこちらは
ソルターのエキスが凝縮された一編との事。 -
どの話もちょっとズレていて、そのズレが狂気や絶望や希望やなにやらを手に取って見せてくれるようなところがある。小さな物語のいろどりと多様さを愉しんだ。
ルシア・ベルリンの「火事」を目当てに手に取ったのだが(あの姉妹の小説は永久に読んでいたい気持ちになる)、ほかにも『変愛小説集』で読んだジェームズ・ソルター(表題作)が心に残った。みんな大好きミランダ・ジュライは上手だなと思う、だけどああいうオチのつけ方は好きじゃない... ああいうことを考えるのは自分の人生に対して不誠実だと思う。