大きな鳥にさらわれないよう

著者 :
  • 講談社
3.56
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本棚登録 : 922
レビュー : 142
  • Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062199650

作品紹介・あらすじ

遠く遙かな未来、滅亡の危機に瀕した人類は、「母」のもと小さなグループに分かれて暮らしていた。異なるグループの人間が交雑したときに、、新しい遺伝子を持つ人間──いわば進化する可能性のある人間の誕生を願って。彼らは、進化を期待し、それによって種の存続を目指したのだった。
しかし、それは、本当に人類が選びとった世界だったのだろうか?
絶望的ながら、どこかなつかしく牧歌的な未来世界。かすかな光を希求する人間の行く末を暗示した川上弘美の「新しい神話」

感想・レビュー・書評

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  • それは地球の遠い未来の形なのか。それともここから人類の歴史が再び始まるのか…。
    とてつもない年月をかけた壮大な連作短編集。
    ファンタジーのようでいて、人類のリアルをシュールに描いたようでいて…この世界観はちょっと一言では表現できない。

    「おれたち生命体なんて、地球にとっては塵ほどのものでもない。でも時々は、生命体は地球をいらいらさせているらしい」
    この文章にはドキッとさせられた。
    世界レベルの自然災害や異常気象…ここ近年の地球はさぞかしイライラしていることだろう。
    そして人類の数が減ってどこがいけないのか、という問いも深い。

    短編の最後を読み終えて再び初めの短編を読み直すと感慨深い。
    この物語は俯瞰的にこの世の全ての生き物を見る神話だったんだ。
    そしてその瞬間、我々は神話の一部になった。

    この物語を読み終えた今、長い長い白昼夢から目覚めたような余韻が続く。
    川上さんの作品をもっと読みたくなった。

    • まっきーさん
      mofuさん、はじめまして、こんばんは。

      いつも いいね!をありがとうございます。
      それとリフォローしていただきありがとうございます...
      mofuさん、はじめまして、こんばんは。

      いつも いいね!をありがとうございます。
      それとリフォローしていただきありがとうございます。とてもうれしいです。

      mofuさんの本棚は素敵な本が多いので、いつも気になっていました。

      川上さんのこの作品、最後まで読んでまた冒頭に戻ると、鳥肌が立ったのを今でも覚えています。
      mofuさんの本の登録や感想とても楽しみです。これからどうぞよろしくお願いします。
      2018/04/15
    • mofuさん
      まっき~♪さん、はじめまして。
      こちらこそ、いいねをして頂きありがとうございます。
      フォローもして頂いて、とても嬉しいです(*^^*)
      ...
      まっき~♪さん、はじめまして。
      こちらこそ、いいねをして頂きありがとうございます。
      フォローもして頂いて、とても嬉しいです(*^^*)
      まっき~♪さんの本棚もとても素敵ですね。私の好みの本が沢山あってとても嬉しいです。

      川上さんのこの作品は、読んだ後もずっと余韻が続く、記憶に残る本になりました。

      今後ともよろしくお願いします。
      コメントをありがとうございました(^-^)
      2018/04/15
  • もしかすると数年ぶりに、寝る時間を忘れて読みふけってしまった。ゆるくつながる短編を並べていく形式が非常に成功している。どうにか作品世界の全体図を知りたいという思いでパズルのピースをはめるのに夢中になり、最後まではまらなかった第一章の位置が決まって物語が終わったときのカタルシスといったら!

    小説を読むときは映像が浮かぶほうなのだけれど、自然に思い浮かべていた映像をまんまとひっくり返される流れがあり、そのことにもとても興奮した。ヒトという、異質な存在を受け入れるようにできていないかもしれない種の一個体であることを、あのような形で提示されるとは。小説というフォーマットと、それを自在にあやつる川上弘美の力に感動した。

  • 久しぶりの川上さん。先が気になって座りっぱなしになってしまった。

    「変化」まで面白く「運命」からは息をのむ展開に…。難しい人工知能、遺伝子やクローンの話が続いてこういうの書けるんだ…と驚きました。ディストピアものでも殺伐としていないのはファンタジー色が強いからかな…。様々な種族が登場するけどヤコブとイアン、カイラとノアが登場する物語(「Remember」とか「漂泊」、「奇跡」、「愛」あたり)が好きです。

    ひとが生態系の頂点ではなくなった時の物語。339ページの(ここには、何でもあるけど、何にもないよ)というシーンが切ない。
    静かで残酷。

    人類も徐々に変化していって、そのうちこうなってもおかしくないかもと、最近の作家さんのSF作品を読みながらそう感じるのでした。どういうジャンルかわからないけど『ぼくの死体をよろしくたのむ』も、表紙の雰囲気が似ているので楽しみです。

    少し魔女魔女しいところもあって、「大きな母」は『イズァローン伝説』の大教母様のような、見た目はベイマックスを合わせたようなものを想像した。物語の中に「大きな母」は存在するけど、「大きな父」は存在しない。異形な愛や奇跡は存在するけど、静かな絶望が押し寄せてくる。その世界観に鳥肌が立った。

  • 人間は結局何も学ばずに絶滅するという話をAIやクローンの視点で明るく語るSF。数千年という時間軸で物語が展開してゆくのだが、語り手が数百年も生きる神のような存在だったりするので、数年程度の感覚に陥る。感覚というのは相対的なものだと変なところに納得してしまった。

  • 不思議な文体、世界観で読み手を惹きつける

  • 又吉は、第2図書係補佐でコインロッカーベイビーズについて、このように評している。
    「いつかはるか遠い未来の住人が、過去の世界も残滓として土の中から1冊の本を発見するならこの本がいいと思う。充分新世界の神話になり得るだろう。」
    私は、この言葉は、むしろ川上弘美さんの『大きな鳥にさらわれないよう』のためにあるように思える。
    超人的な視点で人類の営みを見つめる神としての母たちと、そして最後の人類である二人。母たちはAIゆえの合理性で人類全体の寿命を延ばすことに努めるが、人類の果てしない愚かさに抗うことはできなかった。最後まで人類を愛していたにも関わらず。予想に反して、本当の最後に文字通り新たな創造主が現れるのです。やはり人類の神たり得るのは、人間らしい人間のみなのかもしれません。我々の神がそうであるように。
    私が特に心打たれたのは、見守りが新たな人類を発見し、否応無く溢れる嫌悪感に耐えられず毒殺してしまうところ。他のレビューにも書いたが、悪人ははなから悪人として存在し得ない。誰しもが皆、悪人たり得るのです。そしてそれは差別も然り。その自覚があるかないかの差なのではないでしょうか。

  • きっとこの小説は、最初の一編「形見」が、最初はそれだけで完結するだったはずが、植物が枝葉を伸ばすように発展していったのだと思う。それがここまで壮大な世界観を持ち得たとは、、、まずそれに脱帽。
    人工知能とクローン技術が作り出す、生々しい玩具のような、神話世界。

  • この物語はありとあらゆる角度、分野から考察することが出来る。人間を作る工場はかつての人間ではいられなくなった人間の試行錯誤の結果なのである。それは現実世界においてまったく有り得ないことではない。現に試験管ベビーや体外受精など、少しずつではあるが人間離れした業が繰り出されているのである。人間が生き残るための便宜的な措置。それが人間そのものの定義を覆してしまうという何とも皮肉な物語がそこにはあった。また、人工知能についても言及している。人間に気づかれないための思考をする人工知能、人間に寄生する人工知能とはすごい発想だなと思った。話が戻るが、この物語において登場する言葉は現実世界においての意味合いと少しずつズレている。母は人間であるが人間ではない。それは見守りをするためのプログラムと言えよう。大きな母は母の中の母。母を作る中で時たま現れる異種であるが、それが人間に好かれるのである。また物語の中で数千年前の人類について語られる描写があったがそれは正しく現代の私たちの目先にあるカタストロフの時代に当たるのではないかと思った。人間のこれからの末について考えさせられる物語だった。

  • わたしはわたしと異質なものを受け入れられるのか。
    異質なものを受け入れ、平和に暮らすことは幸福なことなのか。
    愛と憎しみは、人間を滅亡させるものか、生み出すものか。
    いくつかの問いと答えが長い年月をかけて、たくさんの人々を廻り続ける物語。
    行きつ戻りつしながらも、先が気になってどんどん読み進めてしまう。楽しかった!

  • 滅びつつある人類の世界にポンと放り込まれて、なんだろうなんだろうと混乱しつつも、それでもその世界を受け入れ始めたところで、母のことや、得意な人間のことや、大きな母のことや、見守りのことなどの種明かしが始まる。

    手塚治虫の火の鳥ワールドを久しぶりに思い出せたのは良かった。

    でも、なんだろう重要ではないのだけど、人の名前、リエンとかニーシャとかノアとかマリアとか誰が誰だか分からなくなって、前のページの方を探すのだが、そういう人物がいることもあれば、そもそも存在していないこともあり、えっつこの子誰だっけと迷子状態にちょくちょくなるのは気が散ってよろしくなかったな。

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著者プロフィール

川上弘美(かわかみ・ひろみ)
一九五八年東京都生まれ。一九九四年「神様」でパスカル短篇文学新人賞を受賞しデビュー。一九九六年「蛇を踏む」で芥川賞、一九九九年『神様』で紫式部文学賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞、二〇〇〇年『溺レる』で伊藤整文学賞、女流文学賞、二〇〇一年『センセイの鞄』で谷崎潤一郎賞、二〇〇七年『真鶴』で芸術選奨文部科学大臣賞、二〇一五年『水声』で読売文学賞、二〇一六年『大きな鳥にさらわれないよう』で泉鏡花文学賞を受賞。二〇一九年紫綬褒章受章。

「2019年 『掌篇歳時記 秋冬』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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