罪の声

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  • Amazon.co.jp ・本 (418ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062199834

感想・レビュー・書評

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  • 『ペンは剣より強し』
    ジャーナリズムがジャーナリズム然として機能していた頃の格言。
    マスコミという言葉には現在ネガティブなイメージしか湧かない。前出の格言にある様な「頼もしさ」等、今の彼らからは微塵も感じられない。

    だから冒頭、主人公の一人であるジャーナリストに下世話な印象しか持てず(実際最初はそこらの下世話なマスコミの一人なのだ)、もう一人の主人公の仇役としか思えなかった。

    ただ事件を掘り下げていく過程で彼は事件の真相とともに報道本来の姿を徐々に捉えてゆく…。

    過去の亡霊達が非常に気味悪く、大半を曇天の様な気持ちで読み進めていたが、結びには一条の光が差し込み清々しいとも言える終幕だった。


    実際の未解決事件をベースにしたフィクションでは大御所エルロイの『ブラックダリア』を読んだことがあるが、個人的にはそれに充分比肩すると思う。 むしろプロットの細やかさでは今作に軍配が上がる。

    最後に脱線するが
    現在のジャーナリズムの体たらくの半分は受信者の私達にも責任があると思っている。



  • 読みたいと思ってから実際に手に取るまで時間がかかったので、読み始める時はあまり気分が乗っていなかった。
    実際に読んでみると、とても良く出来ている内容で、事件の真実はこれか…と、思わず錯覚してしまうほど。
    グリコ森永事件をググりつつ読み、そういえば、当時勤めていた会社で森永のお菓子の詰め合わせを救済のために売っていた記憶もあるけど、違ったかな?
    実際に関わった人は必ずいるわけだから、その人たちの感想も聴いてみたい。

  • 子どもを事件に巻き込めば、その分、社会から「希望」が奪われる。この事件の罪とは、ある一家の子どもの人生を粉々にしたことだ。

    この作品で突き刺さった一言。

    塩田武士さんの作品『罪の声』は、昭和の大事件「グリコ森永事件」を題材にしたものです。
    単純な企業脅迫による金目当ての事件だと思われていたこの事件の本当の目的と、それが起こるまでの背景。犯人とその周りの人達の受けた屈辱と思い。そんな真実を知ることができました。
    途中までは、この未曾有の未解決事件の真相が、フィクションとは言え解き明かされることに関心が高まり興奮し読み進めました。思いもよらない目的におどろかされました。ただ様々な人を通して事件の真相が明らかになってくる後半、この物語の終着点は「事件の真実が分かることでは無く、この事件で人生を狂わされた人達が背負うもの、30年以上経った中で、可能な限りそれを取り払ってあげること」なんだと気付かされました。

    特に、未来がある子どもたちを巻き込んだことはこの事件の当事者たちに大きな責任があり、取り返しのつかない過ちです。
    二度とこのような事件が起きないよう、そして子どもたちがありのままに生きられることを願います。

  • グリコ・森永事件をモチーフにした、できるだけリアルに描写された小説でした。
    脅迫メッセージに自分の声が使われたテーラーと、文化部の冴えない記者のふたりの男性のが、少しずつ真実に迫って行きます。
    既に時効を迎えた事件の「真相を明らかにする」ことよりも、「この先の未来を照らす」ために調査を続けるふたりの姿勢は尊敬ものでした。

    ただ、文章が少し読みにくく感じたところがあったり、ストーリー展開がもう少しスムーズでもいいかな、と思うところがあったりしました。
    ミステリとして読むのではなく、ヒューマンドラマのひとつとして読むと良いかもしれません。

  • グリコ・森永事件がモデルになっている作品。自宅から事件で使用されたテープと関連のノートを発見し、自分と事件との関わりを調べ始める俊也と、文化部の記者でありながらひょんなことから事件を調べ始める阿久津。二人は徐々に事件の全貌を明らかにしていく。実際の事件のことはほとんど知らないが、まるでノンフィクションのようだった。子どもは、生まれてくる環境を選べない。加害者の関係者だったことで、将来を奪われた子ども、毒入りの菓子を手に取るかもしれなかった子ども。どちらも、だれかのかけがえのないものであり、憤りを感じずにはいられない。一方、犯人たちの衝動性や、時代背景による勢いみたいなものも、自分にはないもので、なんとはなしに、羨ましさみたいなものもあった。

  • 迷宮入りのまま時効を迎えたグリコ森永事件をモデルに、実際の出来事をなぞりながら犯人を暴いていくフィクション。

    誘拐、脅迫に加え、毒入り菓子をばらまきマスコミに挑戦状を送りつけるなど、昭和の劇場型犯罪の代表格とされるこの事件は、手がかりが多数ありながらも未解決に終わっている。キツネ目の男の似顔絵は当時繰り返し報道され、今でも記憶に残っているほどだ。
    読後、実際の事件が気になって調べたところ、犯人については諸説あり、本作にも出てきた仕手筋や暴力団、警察関係者、元左翼、同和関係など様々。また、警察の失態が取りざたされ、責任を問われた警察官の自殺も起きていた。

    そんな中、作者は子どもの声の録音が脅迫に使われたことに着目し、その子が大人になった今どうしているかをメインに据えている。
    事件に関する部分は極力史実どおりに再現したというだけあって、綿密な取材に裏打ちされた丁寧な描きかただ。そのため前半は説明的で、少し退屈。真相が解明されていく終盤は、人間味を帯びたドラマが一気に盛り上がり、引き込まれる。

    横山秀夫を思わせる落ち着いた文章だと思っていたら、彼同様に新聞社に勤務していたと知り、納得した。
    同じテーマを扱った高村薫の『レディ・ジョーカー』、以前読んだけれど覚えていないので、これを機会に再読したい。

  • とてつもなく複雑なジグソーパズルを
    一か月間かけて、ようやく完成させることができた、
    そんな濃厚な読後感を持ちました

    史実をベースに
    その一つ一つの出来事を丹念に物語の中に織り込み
    想像上の人物がかくもあるやと思われるぐらい
    リアルに描かれていく
    事件に巻き込まれた子供たちの30年後の人物たちが
    物語を担っていくのにも引き込まれてしまいます

    そこに新聞記者としての記者魂
    犯罪に巻き込まれてしまった家族の怖れや葛藤
    犯罪被害者への手立てや援助 
    さまざまな人間の苦悩
    それでも 見つけ出す希望
    読んでいる途中に何度も
    自分の中の感情を激しく揺さぶられました

    ページを繰る手がとめられない
    という表現がまさにぴったりの
    重厚な一冊でした

  • 「グリコ・森永事件」の事はなんとなく覚えてるくらいで、実際の事は何も知らなかった。
    読み終わってから、少し事件をネットで調べてみたら、ほぼ内容的には一緒で、子供の声の脅迫のテープから作者は話を膨らませていったのかなと勝手な解釈。

    途中まではいろんな人の聞き込みがあって、誰が誰やら内容がうまく頭に入らない時もあったけど(少しずつ日数かけて読んでたので)、新しい事実が出始めてからはどんどん読み進められた。

    途中、新聞記者が岡山のラーメン屋さんに訴えかけるシーンは目に見えるようで、凄くグッときました。後半はもう圧倒されて読みました。

  • 初読み作家。
    「グリコ・森永事件」をモデルとした作品。
    事件から31年経ち、新聞社の企画として事件の取材に当たる新聞記者の阿久津。身代金受渡しに使われた子供の声が、自分のものだと知ってしまった曽根。違う出発点からの目的、そしてスタートだったが、事件を追うほどに線が繋がっていく・・・
    次々と本当の事件の真実が明らかになっていくようで、どこまでが実話でどこからがフィクションなのかが分からなくなる。加害者側の親族という切り口も、複雑な感情を丁寧に描かれていて面白かった。
    実際のテープの子供はどうしているのだろうかと考えると、何も知らない方が幸せなのかなとも思ってしまう。

  • 加害者にも家族がいて、人生を狂わされてしまう。
    でも、苦悩の形も状況も様々。
    虚しい個人のエゴから始まっていく犯罪。
    阿久津はまだ良い人?だったが、社会に知らせる責任があるからと言ってずけずけと人の人生に土足で踏み込むマスコミ。

    やっと読み切れた。しんどくなったけれど、心にもやもやが残るのはきっと作品が良かった証。

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著者プロフィール

塩田武士(しおた たけし)
1979年兵庫県生まれ。関西学院大学社会学部卒。新聞社勤務中の2010年『盤上のアルファ』で第5回小説現代長編新人賞を受賞し、デビュー。2016年『罪の声』にて、第7回山田風太郎賞受賞、「週刊文春」ミステリーベスト10 2016国内部門で第1位となる。2019年『歪んだ波紋』で第40回吉川英治文学新人賞を受賞。他の著書に、『女神のタクト』『ともにがんばりましょう』『崩壊』『盤上に散る』『雪の香り』『氷の仮面』『拳に聞け!』『騙し絵の牙』がある。『罪の声』の映画化が2020年公開決定し、小栗旬・星野源の共演が決まっている。

罪の声のその他の作品

罪の声 Audible版 罪の声 塩田武士
罪の声 (講談社文庫) Kindle版 罪の声 (講談社文庫) 塩田武士
罪の声 (講談社文庫) 文庫 罪の声 (講談社文庫) 塩田武士

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