罪の声

著者 :
  • 講談社
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レビュー : 551
  • Amazon.co.jp ・本 (418ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062199834

感想・レビュー・書評

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  •  グリコ・森永事件をモチーフに、未解決事件の真相に迫っていくストーリー。主人公の京都に住むテーラー曽根俊也は、体の悪い母親からアルバムを取ってきてと頼まれる。父の遺品の中から、黒革のノートを見つけ、ギンガ、萬堂の文字を見つける。そしてもうひとつ残されたテープに自身の子供時代の声。それが、事件の恐喝に使われた録音テープそのものだったと気がつき、真相を調べようと決意する。一方で、大手新聞社の阿久津は、30年以上経ったギンガ、萬堂事件の記事を担当することに。新しい手がかりがない中で、ネタを求めイギリスに飛び、さらに取材を続けていく。
     曽根、阿久津を中心とした2つの物語の線が少しずつ近づいてくと同時に、それぞれが異なる方向から真実に近づいていく。警察を恨む曽根一家の復讐と、元警察官が関係すると思われる中、警察が追いかけるギンガ事件の真相。家族愛と暴力団、地獄からの脱出という個々の事情も複雑に絡み合い、一つの線となっていく。既存のグリコ森永事件のモチーフならば、レディージョーカーが個人的にも、また相当の人がこれ以上ない作品と思っていると思うが、海外仕手筋とイギリス、双頭のキツネ目という新たな視点とともに、物語にグッと入り込んでいける久しぶりの良作。

  • 真実にたどり着くのか?と思うくらい、遠い道のりが、だんだんと形を成していく様子が、とても緻密に描かれていて、感心しました。実際の事件がモチーフになっていて、それは未解決なのですが、そこにもきっと真実が存在するんだよなぁという当たり前を突きつけられた感じがします。どんな理由にしても、世間を恐怖に陥れた罪は大きい。それでも、そこに関わった人たちの、背景にあるものに、複雑な思いを抱かざるを得ませんでした。

    微かでも明日は今日よりもいい日になるかもしれないという気持ちになれるのは、本当に幸せなことだと思います。絶望からの希望が、感じられる作品でした。

  • ネットで話題だったので、購入。
    この小説のモデルになっているグリコ・森永事件は、自分が生まれる前の事件ですが、これが真実だと思うくらいリアル感がありました。テレビでよく見る未解決事件で抜けている謎が解決したかのようにそれだけ綿密な取材を行ったように感じました。
    元新聞記者ということで、いつのまにか物語に引き込まれ、あっという間に読めました。すっきりと解決というわけではありませんが、救いのあるラストではないかと思いました。
    重厚感は結構あり、臨場感もあって、フィクションではありますが、多くの人にこういう事件があったんだと読んでいただきたいなと思いました。

  • グリコ森永事件をリアルタイムで知らないため, 事件の大まかな概要しか知らなかったこともあって, よりフィクションとノンフィクションの境目が分からず, 全てノンフィクションに思える程だった。ボリュームもあって, 読み応えたっぷりなのだけど, 先が気になりすぎてページを捲る手が全く止まらなかった。
    1つの事件の裏には, 被害者側と加害者側にすっぱりと線引きできない曖昧で残酷な境遇を辿る人たちが多くいることを改めて知った。その割に, この大きな未解決事件の犯人たちの動機が厨二病すぎて心がえぐられる。こんなもののために生命を落とした人や, 一生を棒に振ってしまわざるを得ない人生を歩む人のことを思うと心穏やかにはいられない。それなのに全てを読み終えて本を閉じたとき, マイナスの気持ちが溢れなかったのは, 一歩間違えたら完全な悪者になるところ, 記者の仕事という大義名分よりもあの事件に取り残された人々のために動いた阿久津の人柄と, 親に背負わされた負の過去と向き合うことを決めて, 大きすぎる一歩を踏み出した俊也と聡一郎のおかげだ。

  • 作者の綿密な調査に裏付けされたストーリーはリアリティに溢れており、これは実話なのではないかと本当に思ってしまう力作。犯罪に子供を巻き込む事の罪の重さについて考えさせられる。

  • 読み応えのあった1冊。
    あまりにも対照的な子供達の生き方に、
    逆にリアリティを感じる。

    被害に合われた方も大変な思いをされた背景もあると思う。
    でも、加害者・被害者とあるならば、
    事件に翻弄された子供達も同じように被害者なのだと。
    本当にこんな人生を歩む子供がいるのかもしれないと。

    「母に会いたいです」
    この一言に今までの人生の重さが集約されていて
    自然と泣けてしまった。

    読み終わって初めて装画がなんともリアリティーをもってせまってくる。

    2016年 講談社
    装画:中村 弥 「幼い記憶」

  • 圧倒的筆力に感服。久々の重厚な読後感

  • 映画化もされる大ヒット作なのだが、個人的にはあまりノッて読むことができなかった。その理由はだいたい、以下の3点。

    ① 舞台が転換した際に、没入するまでに時間がかかる
    ② クライマックスの説明が長すぎる
    ③ 阿久津のキャラクターが不安定

    なんというか、ものすごく連続ドラマの台本っぽい作品だな〜と思ったのだが、それって自分だけかしら。。。

  • 【大人が傷つけた子どもが、大人になることによる一方的な責任の押し付けが、許せない】

    苦しくて、言葉に詰まる。
    怒りで、じっと目を閉じてしまう感覚。

    警察を見返してやろう、家族にいい思いをさせてメンツを保とう…そんな思いで子どもを巻き込み罪を犯した人々の、問えない罪の大きさは計り知れない。
    主人公でテーラーの俊也は自分を被害者であり加害者だとするが、曽根家として伝えねばとするが、それはあまりに強い行為だと思う。
    子どもが意味もわからず吹き込んだテープが犯罪に使われたとして、それが加害者であることなどあってはならない。聡一郎も、望も。
    ああいやだ。伯父も聡一郎や望の父である生島も、母も、いやだ。
    何が「奮い立っただ」と思う。留学させてやるからといって起こした事件の結果が、男たちに狙われ隠れながら、勉強したいと泣く娘の姿か。
    許せない。悲しくて、苦しくて、怒りが湧き出る。

    また、「テープの子」として、世間から「見つけられること」は彼らにとって前進だったのか、それは物事の側面の取りようなのだろうし、今後彼らがどう物語るかによるのだとも思う。ただ今のわたしには、今後の彼ら家族が心配でならない。聡一郎や岡山の育ての家族も、俊也やその家族も、「匿名」で居続けられないように思う。聡一郎は三谷さん夫婦に、俊也は家族と堀田さんに、話すことでリスクを低く、気持ちの共有はできたのではないか。
    自ら望み、「前進」だと信じていても、報道にさらされて、ネットが動く今の世界で、どうこれから生きていけるのだろうか。心配でならない。

    違う視点でいえば
    俊也かが抱える「後ろめたさ」も、気になる。
    俊也と聡一郎は、生きる「テープの子」として同じのようで、その半生は全く違う。そしてそれに俊也は自覚的だ。彼が自分を「加害者」的側面もあると認識する以上、その「後ろめたさ」が残り続ける。それが聡一郎の病院などの面倒を見ることなのかもしれないが。そこにも歪みが生じるように思える。

    与えられる命題が複数かつ複雑で
    何から整理したらいいのか。
    ここでは全て言及できないだろうし
    あとでふと思い出すことがきっとあるのだろうと思うが。

    侮辱をはらみつつ、あまりに感情的に伝えるなら
    こんなに子どもたちを苦しめておいて、当の本人たちが死んでんじゃねぇよ馬鹿野郎。

  • 昭和の未解決事件、グリコ・森永事件から着想したフィクション。

    本を閉じた直後は、その骨太さと長さに圧倒され、ついに読み終えたという達成感があった。
    とても面白かったが、残念な部分もいくつかある。

    ある日、曽根俊也は、グリコ森永事件に使われた声が幼い頃の自分の声だったことを知る。また、大日新聞の記者・阿久津は未解決事件を扱う年末企画に抜擢され、グリコ森永事件を追うことになる。

    それぞれが事件を調べ始めるのだが、2人があちこちで人に会うので誰と何を話したのか私が覚えられなくなってしまうのが困った。また、人物が登場する前の景色の描写が多いので今誰が何をしているのか分からず、話の着地点も読めず、とても読みづらく感じていた。今思うと、実際の取材や調査もこのように徒労に終わるかもしれない不安や当て所なさを抱えて進めるのだと思えば、リアルに描いているとも言えるわけだけど。
    私はグリコ森永事件の題材は興味があったので、スラスラ読めないもどかしさを感じながらもゆっくり読み進めた。しかし、事件の謎が解けていく後半は描写にも素晴らしく迫力があり、そこからはあっという間に読み終わってしまった。無駄かと思われた調査や情報が後半に1つに収束していく様はゾクッとして、退屈に感じられた前半をもう一度読み直したほどだ。

    テープの子らの人生はそれぞれ違っているが、1つ間違いないのは、子供を犯罪に巻き込むことはこれほど罪深いことなのかということだ。本人に犯罪の意識はなくとも、もっと言えば記憶すらなくとも、犯罪に加担するということは、時間がたっても消えない傷を残すことだ。そして、その子らの配偶者や子供にも禍根を残す。
    また、この犯罪を企て、協力した側にも、親を失った心の傷があった。左翼活動や警察の動きなど当時の世相がよく伝わってきて、そういう理不尽な理由で家族を奪われたり迫害された子が実際いたのだろうなあと想像するとなんとも悲しい。

    新聞記者の「俺らの仕事は因数分解や…」ってセリフはとても印象に残った。新聞社での会話がやけにリアルだなあと思っていたが、作者は新聞社勤めの経験があるようで納得。

    事件の展開部分はあまりに淡々と描かれるので、あれ、私、ノンフィクション読んでるんだっけ?と勘違いしそうになったが、これは犯罪に巻き込まれた子供たちの物語と、その罪を描く物語。罪の声というタイトルもぴったり。

    小栗旬と星野源で映像化されるみたいで、そちらも楽しみにしている。

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著者プロフィール

塩田武士(しおた たけし)
1979年兵庫県生まれ。関西学院大学社会学部卒。新聞社勤務中の2010年『盤上のアルファ』で第5回小説現代長編新人賞を受賞し、デビュー。2016年『罪の声』にて、第7回山田風太郎賞受賞、「週刊文春」ミステリーベスト10 2016国内部門で第1位となる。2019年『歪んだ波紋』で第40回吉川英治文学新人賞を受賞。他の著書に、『女神のタクト』『ともにがんばりましょう』『崩壊』『盤上に散る』『雪の香り』『氷の仮面』『拳に聞け!』『騙し絵の牙』がある。『罪の声』の映画化が2020年公開決定し、小栗旬・星野源の共演が決まっている。

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罪の声 Audible版 罪の声 塩田武士
罪の声 (講談社文庫) Kindle版 罪の声 (講談社文庫) 塩田武士
罪の声 (講談社文庫) 文庫 罪の声 (講談社文庫) 塩田武士

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