童話作家になる方法

著者 :
  • 講談社
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062200387

作品紹介・あらすじ

累計100万部を突破し今夏、3Dアニメ映画として公開決定した児童文学『ルドルフとイッパイアッテナ』の原作者が”童話を書く秘訣”を伝授!
「独創的物語を目指すなかれ」、「テーマは後、先にプロット」といった、物語とは何かを考えさせられるメッセージや、物語を思いつく方法、動物を上手く書く方法、新人賞に応募する人へのアドバイスなどの具体的なハウツーもユーモアにあふれる筆致で語られ、読み物としても楽しめます。「挿絵について」「児童書の読者について」など、児童書業界のさまざまな裏事情も紹介。
作家を目指す人、物語を書いてみたい人、童話のようなちょっと楽しい視点で毎日を過ごしてみたい人におすすめです。




「私にはそのときまだ、語るべき話、物語がまったくなかったのだ。ワープロの前にすわっても、書くことがなかったのである。

 児童文学にしても童話にしても、そのようなものを書こうと思ったこともなく、それどころか最後にその類のものを読んでから二十年以上たっているのだ。いったい何をどうやって書いたらよいのか、私は見当がつかなかった。

『えーっ! 書くことがあったから、新人賞に応募しようと思ったんじゃないの?』

と、そう言いたくなる人もいるだろう。そう言いたい気持ちはわかるが、じっさい、ほんとうに、私には、入賞して三十万円もらった場合に買うべきものはあったが、応募するための物語はなかったのだ。

 だが、肝心なことは、入賞して三十万円もらった場合に買うべきものがあったということであり、書くべき物語があるかどうかではない。三十万円は必要なのだ。それなら、物語は作ればいい!

 じゃあ、どうやって?」

──本文より。

感想・レビュー・書評

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  • ドローセルマイアーのあとがきが、再び現れ叱咤されることになる。斉藤洋になった方法であり、童話作家になるための普遍的なマニュアルではない。生々しい話が多く、斉藤洋世界との距離が近くなる。印税とか、たった一人の伝説がうまれたのは編集者とのやりとりだというのは一番好きなだけにがっくり、空中メリーゴーラウンドも、西遊記の原作がなぜ最後まで読まれないか、ないことからも小説の本質をえぐる。これがすごかった。プロットからテーマ、教養。斉藤洋さんという作家ができるまでのプロットから、ちからづよいデーマがうかんできた。大学図書館の案内腹立つ。

  • あたかも一般論かのような錯覚を与えるが只の独白

  • 65%は著者のファン向けの内容。純粋な創作手法については25%、10%が出版社・編集者の攻略法。第3章が創作手法について書かれている。アイディアを思いつく手法が、ジェームス・ヤングの『アイデアのつくり方』と同じだったので驚いた!ここでもか! やはり、自分自身もこの手法でシステマチックに取り組んでみる必要性を感じた。

    以下メモ

    ▼​思慮遠謀・準備万端でやりだしても、すぐに嫌になってやめてしまうこともあれば、軽い気持ちで始めたのに、何十年も続いて、ついには、書いた話が映画になってしまうこともある。あなたも、軽い気持ちで何かを始めてみたら良い。

    ​▼​新人の原稿を確実にする本にする方法は​、​1つ目は自費出版。​もうひとつは(講談社児童文学新人賞)や(ちゅうでん児童文学賞)に応募し入賞。

    ​▼​新人賞に応募すれば、児童文学者あるいはどう作家になれるチャンスが最も早く獲得できる。しかし「なるチャンスが獲得できる」と、「なれる」は全然違う。

    ​・​賞を取ったとしても、ごく少数しか作家として食べていくことはできない。

    ​・​出版されている児童書が原稿用紙にして何枚位なのか、それを算出すれば良い。出版社水分量があるはずで、およその掃除数から原稿用紙の枚数を計算すれば良い。原稿用紙に換算すると、約200枚だった。
    ​​
    ​・​児童書を買ってきて参考にし、自分が書く場合には、こういう事はやってはいけないだろうと思われる点をいくつもピックアップすることが必要。

    ​​★出版社に原稿を持ち込むのであれば、その出版社がどんな本を出しているか、あらかじめ調べておいた方が良い。出版社のカラーは、会社の規模が小さいと現れやすい。



    ​▼​語るべき話、物語が全くない。そのような時どうすれば良いか?

    ​・​誰も思いつかないような独創的な話を書こう、と言うような事は一切考えないようにする。

    ​・​物語の​骨子​を​「​外から輸入​」​してくることも手法としてあり​得る。​

    ​・教養小説の物語の​骨子​を応用する。少年が成長して教養をつけ、社会に役立つものになる。他の文学から猫が人間の言葉を使って自伝を描くと言うところを物語の骨子に流用する。

    これらの骨子をまとめると(根っこの少年が成長し、地を覚えるなどして共有をつけ、辞典を書いて、社会に役立つものになる。)と言う物語の輪郭がおぼろげながら見えてくる。しかしこれでは何かが足りない。

    ​・​文学は娯楽であり、面白くなければならない。最大公約数的に(面白く)なければ、賞は取れない。

    日本でこれまで人気があった物語は水戸黄門か忠臣蔵である。これをおもしろさの要素として追加する​。​ここまでの内容をまとめると、全体的な内容として、(猫の少年が地を覚えるなどして成長するとともに、教養を身に付け、辞典を描いて、忠臣蔵的行動をする。)

    ​・​ここまで構造ができれば後は肉付けをしていくだけである。

    ​・​作品の舞台選​びはよく知っている場所を作品の舞台にすると良い。それを頭の中で思い浮かべながら書いていけば、作品での矛盾は起こりにくい。


    ▼物語作りはテーマよりまずプロット。

    ​・​児童文学者や童話作家にとって、白熊の首が長いこと、それは泳ぐためであること、はとても重要なことだ。ウサギが出てくるのだったら、長い耳でかすかな風を感じながらクッキーを入れて欲しい。

    ​・​重要なこと。それは、動物の目の高さだ。例えば猫の主人公であれば猫の視点に近づける。実際に猫の視点から歩いてる人間の足や体がどう見えるか実際に試してみると良い。

    こういった努力と言う事でもない努力を惜しんで大体こんなもんだろうと見当をつけて、いい加減に書くの良くない。物語ると言うのは、​大嘘をつく​と言う面もあり、​ほんとっぽく見せるには、そういった検証が必要なのだ。

    ★物語にとって必要なのは何よりもプロット、​筋​、展開、つまりは、(お、お、お、、、、。わーっときたら、ドンガラがっしゃん!)なのである。文学や読書は娯楽なのである。

    ​▼​スジは借りてもテーマ​(「いじめ」や「伝えたいこと」など)​は借りるな。

    頭で作ったテーマなど所詮底が浅い。頭で作るのはプロットであり、テーマは自然に、いわば無意識的に入ってくる。物語を縦糸とプロットとすれば、横糸がテーマ。

    筋はあちこちから借りてくることができても、テーマはごく個人的に発生するものだから、どこかから借​​りてくる事はできない。


    ▼★どうしたら面白い話を思いつくか?

    日常生活でいろいろ空想したことがある人なら、児童文学者あるいは動画作家になるための第一次試験は既に突破している。

    主人公が決まっていて、その主人公が何かをするが思い付かない場合、どうするか?ひたすらその主人公のことを考えるのである。ペンギンであればペンギンのことを考える。ペンギンが何かをしているところでなくても良い。ペンギンを思い浮かべるのだ。

    するとどうなるだろう。最初は頭の中でペンギンはただ立っているだけである。前向きな時もあるし、後ろ向きの時もある。そのままペンギンを思い浮かべ続けると、頭の中のペンギンは右足をいっぽ前に出したりする。そして次に、それを空を見上げたりするかもしれない。

    空は青い。時々白い鳥が青空を横切っていく。その鳥はなんだろう?多分カモメだろう。ペンギンは飛び去るカモメを目で追っている。そして、カモメが地平線の向こうに消えていくと、ペンギンは先前に出した右足を引っ込めて、こんなふうにつぶやく。「あー、退屈だなぁ……。」

    ★ペンギンに何か冒険をさせようとか、子育てをさせようとか、恋愛をさせようとか、そんな事は考えなくていい。ただひたすらペンギンのことを思い浮かべていれば良いのだ。

    冒険をするか子育てをするか恋愛するか、そんな事はペンギンに任せておけば良いのだ。そのうちペンギンは、何か物語になるようなことをやりだす。

    そうすれば、思い浮かべられてそこに出てきているペンギンだって、立っているだけでは退屈になってくるから、ちょっと足を前に出してみたり、空を見上げてみたりする。へ退屈になってきているのだから、退屈だなぁと自然につぶやいたりもする。

    ★部屋の中にクリスマスツリーがある。その光景をずっとイメージし続ける。他の事は何も考えずにひたすら部屋の中のクリスマスツリーの事だけを考える。

    ★クリスマスツリーの側にドアがあったりする。窓もあるかもしれない。窓があって、ドアがあって、クリスマスツリーがある。その光景をずっとイメージし続ける。その部屋で無理に、何か事件を起こす必要は無い。ただクリスマスツリーと窓とドアのある部屋を思い浮かべていればいい。

    するとそのうちギリギリ……、と木の軋む音がして、ドアがそっと開く。それでドアの方を見てみると……。ほら、もう物語が始まりそうになっている。

    ★しかし、いくらペンギンのことを思い浮かべても、クリスマスツリーのことを思い浮かべても、何も起こらないこともある。それならそれで良い。30分ぐらいイメージして何も起こらなければ、その日はそれでおしまい。また明日。

    そして次の日も同じことをする。また30分ぐらいやってダメならその日もそこで中止する。

    ★★そうやって、毎日、ペンギンやクリスマスツリーを意識的にイメージしていると、ある時、突然、何の前触れもなしに、ペンギンがクリスマスに何かをする話を思いつくのだ。

    ★★作品を書くと言うのは夢を見るのととても似ている。昼間見たものや、考えていたことが、夢に出てくるのと同じように、意識して思い浮かべた事はちゃんと無意識の領域に沈んでいって、夢、あるいは作品になって意識の世界に帰ってくる。

    ★ある物語を作るにあたり主人公を動物にするとしよう。よく知らない動物は、4本の足の動かし方もよくわからないから、頭の中でなかなか動き出してくれない。図鑑や実写ものもビデオとかで、調べてからもう一度トライしてみるとうまくいく。

    通常本の印税と言うのは10%。児童文学や童話の書籍の印税について言うと、作家がもらえるのは大体本の本体価格の8%から4%である。

    原則として10%を作家と家家で分割する。外国の絵本の翻訳だと、印税は3%位である。

    児童書の場合、初版で3000部から10,000部くらいの部数を発行する。通常は5000部前後である。これで印税は480,000円である。

    原稿が上がってから本になるまで半年かかる。それから印税が支払われるのがさらに3ヶ月後になる。9ヶ月たたないと印税をもらえないのである。


    本当は直したくないのに編集に言われて編集者に言われて直しましょうかと言ってしまうタイプの人間ならば、他に職業を持つ兼業タイプの児童文学者あるいは道坂を目指すべきかもしれない。他のことで食べていけるのであれば、経済的理由で言論の自由、表現の自由を放棄しなくて済む。

    児童文学も童話も、それは表現である。そうである以上、常に誇り高く、表現の自由を守っていく意思と覚悟持つ必要がある。

    児童書の読者は老若男女のほとんどの全ての人である。幅広い層の読者を対象としなければならないところが難しさである。しかし、言い方を変えれば、1冊の本で幅広い層の読者を対象とすることができる。この点は有利である。

    できる力を持っているものでも、やる気になってくれなければ、どうしようもない。さらに言わせてもらえば、(やる気はあったが、事情が許さなかった)は、大抵の場合言い訳に過ぎない。

  • 童話、児童小説のベテランの自伝的なお話。〜なる方法的なタイトルで時代に合わせた形ですが、一度絶版になったものらしいので、興味津々です。絶版ってやっぱ読めなくなっちゃうのでね。こういう形で読めると嬉しい。イッパイアッテナが非常にインパクトに残っているわけですけど、著者の児童小説に対する思いなども伝わる、素敵なエピソード群。で、そこにはどれくらいの創作が入っているかわかりませんが、引き寄せますね。児童小説ってのは、児童から何歳まででも読めるわけで、読んでみたくなりますね。

  • 斉藤洋節が炸裂しつつ、作家になるためのアレコレがこれ本気か?冗談か?というドキッとするような辛辣なエピソードを交えて描いてあり大変面白かったです。
    多分、半分本気な感じだと思う。
    出版されてる本の裏話的なこともあり、既読は読み返したくなるし、未読なものは読んでみたくなりました。

  • 【図書館】著者のデビュー作が『ルドルフとイッパイアッテナ』なんですね。私は、その本を読んでいない。映画化されて、タイトルを知り映画館で予告だけは観たが、実際、映画は観ていない。その上、著者の作品は何も読んだことがないのだ。つまり、この本を手にしたのは、“童話作家” になる方法を知りたかったから。ただそれだけである。だけど、この本を読んでいるだけで、自分の子供時代を思い出して、楽しくなってきた!色々とメモを取りながら読了。図書館の本じゃなかったら付箋や書き込みだらけになっていた、と思う……。(笑)

  • カスが書いたカスのような本。灰谷某や谷川某の偽善は言うまでもないが、一方、このようにシャランとけち臭い俗を書いてしまう自称童話作家も如何なものか。死ぬまでにこの作家のケチくささを100人には伝えてしまうことだろう。

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著者プロフィール

1952年、東京都生まれ。中央大学大学院文学研究科修了。1986年、『ルドルフとイッパイアッテナ』で講談社児童文学新人賞受賞、同作でデビュー。1988年、『ルドルフともだちひとりだち』で野間児童文芸新人賞受賞。1991年、路傍の石幼少年文学賞受賞。2013年、『ルドルフとスノーホワイト』で野間児童文芸賞受賞。「どうわがいっぱい」シリーズの作品に、「もぐら」シリーズ、「ペンギン」シリーズなどがある。

「2022年 『がっこうのおばけずかん シールブック 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

斉藤洋の作品

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