- Amazon.co.jp ・本 (114ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062200875
作品紹介・あらすじ
「ニューヨーク、ニューヨーク」
「ニューヨークのことなら、なんでもわたしにきいて」これが別れた妻の生前の口癖。息子の口から語られる意外な話に、男は別れてからの妻の生き方に思いを馳せる。
「オートバイ、あるいは夢の手触り」
百年近く昔、南太平洋にあるフランスの植民地から本国に、ひとりの白人女性が一台のオートバイを注文した─。
フランスの海外県からやってきた女子留学生が語る、彼女の曾祖母の奇妙な物語。
「半減期を祝って」
みなさま、おなじみのセシウム137は無事、半減期を迎えました。祝いましょう! 「愛国少年(少女)団」(ASD)が闊歩し、トウホクが差別されるあり得べき30年後のニホン。
感想・レビュー・書評
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文章は読みやすいし、テイストも嫌いじゃない。絶筆だと言う表題作は、「ASD」の件をもう少し抑えめにした方が良いような気がするが、その余裕はもうなかったのだろうか。
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津島祐子を読むのは初めて。
短い文を連ねる文体と独特の読点の打ち方で、そこはかとなく叙情的な雰囲気を醸す文章だなという印象。
ちなみに、そうした文章の特徴は太宰の作品にも通じるところがあるような…?と思ったのは私の色眼鏡かしら。
しかし、穏やかな叙情的な文章を書く人なのかと思いきや、社会風刺のような表題の短編で締め括られたのにや驚いた。 -
半減期?と最初すぐにピンとこなかった。それだけもうすでに忘れ去られてきて、原発事故などまるでなかったことのように風化してる。原発事故から30年後の物語はそうは、ならないことの祈りのようにも感じた。まだ何も解明されてない放射能の影響が、差別という形で現れないで欲しいという著書の願い
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短い短編集、3つ。
標題の作品が、印象的。セシウムの半減期の近未来小説。
ああ、そういう事を考えたのか。怖くなる。 -
短編3作が収録されている。著者の作品を読むのは初めてだけれど、悪くない。って調べたら太宰の娘なのか。表題作を発表してすぐ亡くなったので、これが遺作ということになる。シングルマザーがやたらと出てくるのは出自に理由があるのか。ただ群像の30年後を想像するというテーマのもと書かれた表題作は正直あまり出来が良くないというか、最近話題の『カエルの楽園』があるけれどもあれの反対版、極度に右傾化した日本が描かれていて、さすがにここまでは、と思ってしまう。しかし筆者にはそれくらい切実に現在が映っていたということか。