半減期を祝って

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 56
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (114ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062200875

作品紹介・あらすじ

「ニューヨーク、ニューヨーク」
「ニューヨークのことなら、なんでもわたしにきいて」これが別れた妻の生前の口癖。息子の口から語られる意外な話に、男は別れてからの妻の生き方に思いを馳せる。

「オートバイ、あるいは夢の手触り」
百年近く昔、南太平洋にあるフランスの植民地から本国に、ひとりの白人女性が一台のオートバイを注文した─。
フランスの海外県からやってきた女子留学生が語る、彼女の曾祖母の奇妙な物語。

「半減期を祝って」
みなさま、おなじみのセシウム137は無事、半減期を迎えました。祝いましょう! 「愛国少年(少女)団」(ASD)が闊歩し、トウホクが差別されるあり得べき30年後のニホン。

感想・レビュー・書評

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  • 文章は読みやすいし、テイストも嫌いじゃない。絶筆だと言う表題作は、「ASD」の件をもう少し抑えめにした方が良いような気がするが、その余裕はもうなかったのだろうか。

  • 津島祐子を読むのは初めて。
    短い文を連ねる文体と独特の読点の打ち方で、そこはかとなく叙情的な雰囲気を醸す文章だなという印象。
    ちなみに、そうした文章の特徴は太宰の作品にも通じるところがあるような…?と思ったのは私の色眼鏡かしら。
    しかし、穏やかな叙情的な文章を書く人なのかと思いきや、社会風刺のような表題の短編で締め括られたのにや驚いた。

  • ニューヨークに言ったことが無いのにニューヨークのことを良く知っているおんな、知らない男との結婚よりオートバイを選んだ曾祖母さん、30年後にセシウムの半減期を迎えた軍事独裁国家になっている日本を想像、3編とも変な話。

  • ニューヨークを語る元妻のトヨ子の生前の話を
    ファミレスで息子の薫とする男。

    学生の曾祖母が乗ったというオートバイから、
    景子が昔付き合っていた妻子持ちの男も、伯父もオートバイに乗っていたと思い出す記憶。

    トウホクで起きた災害と事故から30年経って
    すっかり変わり果てたニホン。

    著者がちょうどだいたい1年前に亡くなっているとは。
    トヨ子の話は読みやすかった。
    半減期はちょっと暗くて、気が、滅入る。

    戦争が終わって、もう何も起こらないとは
    限らないわけね。

  • 半減期?と最初すぐにピンとこなかった。それだけもうすでに忘れ去られてきて、原発事故などまるでなかったことのように風化してる。原発事故から30年後の物語はそうは、ならないことの祈りのようにも感じた。まだ何も解明されてない放射能の影響が、差別という形で現れないで欲しいという著書の願い

  • 短い短編集、3つ。
    標題の作品が、印象的。セシウムの半減期の近未来小説。
    ああ、そういう事を考えたのか。怖くなる。

  • 短編3作が収録されている。著者の作品を読むのは初めてだけれど、悪くない。って調べたら太宰の娘なのか。表題作を発表してすぐ亡くなったので、これが遺作ということになる。シングルマザーがやたらと出てくるのは出自に理由があるのか。ただ群像の30年後を想像するというテーマのもと書かれた表題作は正直あまり出来が良くないというか、最近話題の『カエルの楽園』があるけれどもあれの反対版、極度に右傾化した日本が描かれていて、さすがにここまでは、と思ってしまう。しかし筆者にはそれくらい切実に現在が映っていたということか。

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著者プロフィール

津島 佑子(つしま・ゆうこ) 1947年、東京都生まれ。白百合女子大学卒業。78年「寵児」で第17回女流文学賞、83年「黙市」で第10回川端康成文学賞、87年『夜の光に追われて』で第38回読売文学賞、98年『火の山―山猿記』で第34回谷崎潤一郎賞、第51回野間文芸賞、2005年『ナラ・レポート』で第55回芸術選奨文部科学大臣賞、第15回紫式部文学賞、12年『黄金の夢の歌』で第53回毎日芸術賞を受賞。2016年2月18日、逝去。

「2018年 『笑いオオカミ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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