不機嫌な姫とブルックナー団

著者 :
  • 講談社
3.12
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本棚登録 : 195
感想 : 32
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  • Amazon.co.jp ・本 (170ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062201872

作品紹介・あらすじ

天才作曲家にして非モテの元祖・ブルックナーを偏愛するオタク3人組との出会いが、夢を諦めた文系女子の運命を変える?
ままならない人生に心ふさぐ人々へ、エールを送る異才の書下ろし快作!
小川洋子氏、穂村弘氏推薦。

図書館の非正規職員として働くゆたきは、男性マニアが集うブルックナーのコンサート会場で、「ブルックナー団」を名乗る男たちに声をかけられる。いかにもイケてないオタク風の3人組だが、その一人、タケがサイトに載せた「ブルックナー伝」を読んだゆたきは、その不器用すぎる人生と意外な面白さに引き込まれていく・・・。天才作曲家ながら「非モテの元祖」というべき奇人変人だったブルックナーの生涯は、周囲からの無理解と迫害に満ちていた。そんなブルックナーに自分たちの不遇を重ねるブルックナー団の面々とつきあううちに、ゆたきの中で諦めていた翻訳家への夢が甦ってきて……。

感想・レビュー・書評

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  • 一見住む世界が違うような4人がブルックナーを通じて理解し合う物語。ブルックナー好きだけどオタクがいるなんて知らなかった。しかもださいなんて!でも大音量で聞きたくなるのはわかる~。確かにマイナーだけどそこがいいんだよ~。主人公”姫”が明日に希望を持って終わるラストがいい。

  • 決してブルックナーファンではないが、ブルックナーの交響曲を聞いてみようという気になった。

  • なんだか表紙の絵がラノベみたいだし、タイトルにブルックナーと入ってなければ読まなかったと思う。初めて読む作家。
    アラサーの公共図書館に勤める非正規司書の主人公と、もといじめられっ子の三人の男性ブルックナーオタクの、一応物語ということになると思うが、正直言って物語というほどのものはない。どちらかと言えば間に挟まれるブルックナー伝の方が物語らしい。小説としては出来がいいというわけじゃない。
    しかし、(ユキの「ぽ」だけは気持ち悪くて許せないが)結構好きだなと思ってしまったのはサマーフィールドとかエーベルシュタインとか架空の作家の出しかたが上手い、ヴァーグナー、ヴィーンなど、ちゃんとドイツ語の発音で書いている、音楽の知識もしっかりしてる、ということだけではなく、主人公の文学の好みで人となりがわかるところが本好きの心をくすぐるからだ。
    バーネットやカニグスバーグから始まって、尾崎翠、野溝七生子、安房直子、ブロンテ姉妹にオースティン。大人になってから森茉莉、幸田文、武田百合子。稲垣足穂に賢治に中勘助、ヘッセ、ヒメネス、ブラッドベリ!わかる、わかる!(フランチェスカ・リア・ブロックだけは読んだことないので、これから読んでみよう)
    ブルックナーをダサいと思ったことはなかったけど、なんだか重くて壮大で、でも前衛的ではなくて、マーラーの方が魅力的に思えて、同じ大作聴くならマーラーと思っていたのだが、ブルックナーもきちんと聴きたくなった。
    しかし、ここまで卑小な人間に描く必要はなかった気もする。少女に求婚し続けたのはクレイジーだとしても、オルガンと作曲の能力は当時から認められていたのではないか。

  • 編纂されたものはいくつか読んでるけど、ご自身が描かれてるのはこういう感じなんだな…
    ライト?な感じ…なんていうんだろうか…

  • 折々に挟まれるオタク達の行動や言葉遣いに対する鋭さが興味深かったですね。クラシックには疎いので専門的な部分はサッパリなのですがブルックナーの小心さと図々しさが同居した様子は巷間に流布する芸術家像とは違っていておもしろかったです。

  • ブルックナー好きという共通点から、主人公と、ブルックナーオタクの男子3名が交流していく小説。
    自分にクラシックの知識が皆目ないので、音楽の描写であまり実際の音をイメージできない。それでも知識のある人はこういう視点から楽しんでいるのかという発見は新鮮。
    主人公は非正規雇用の司書という設定で、仕事に関する場面も少し出てくる。クレーム処理や、若い女性につきまとう老人の対応(p63)、貸出率重視の予算配分(p111)といったあたりが妙に生々しい。実際に図書館勤務の友人が勧めてくれたので、リアリティはあるのだろう。

    「駄目な人には同じ駄目な人の必死が胸にくるのだ。タケの下手なあがきはひとごとじゃないってこと。(p156)

  • ブルックナー聴いてみよう!
    小説読んでいると、かわいそうになってきた。
    希望が持てるような
    最後で良かった。

  •  音楽ネタの小説ということで、前の「羊~」に続いて読んでみた。が、ノリもネタもついていけなかった・・。少々感度が鈍って来た模様。また別の作品をあたりたい。

  • 十九世紀の天才作曲家にして非モテの元祖であるブルックナーを偏愛するオタク三人組と図書館で働くゆたきがコンサートでの出会いから重ねる交流。全体の半分程を占める、資料を元にしたタケ作「ブルックナー伝」が文章は多少流れたものの興味深い。完全な演奏を後世に託す忍耐が格好良い。現代パートももう少し見たかった。

  • 図書館の本 読了

    内容(「BOOK」データベースより)
    図書館の非正規職員として働くゆたきは、コンサート会場で「ブルックナー団」を名乗るオタク3人組に声をかけられる。その一人、タケがサイトに書き継ぐ「ブルックナー伝(未完)」を読んだゆたきは、意外な面白さに引き込まれていく。19世紀ウィーンを代表する作曲家ながら「非モテの元祖」というべき変人ブルックナーの生涯は、周囲からの無理解と迫害に満ちていた。そんな彼に自分たちの不遇を重ねる3人組とつきあううちに、ゆたきの中で諦めていた夢が甦ってきて…。今も昔もうまく生きられない男女を可笑しくも温かく描く、異才の新境地書下ろし小説!

    想像していたものと違いました。そっかブルックナーについて語るのね。その発想はなかった。
    で、なぜ姫?普通にブルックナーについてのエピソードと翻訳に気持ちを再度向けるゆたきでよくない???
    この作家さん次読むかなぁ、どうしようかな。

  • クラシックは好きだけど、ブルックナーはほとんど聞いたことがない。長くて、掴みどころがなくて、とっつきにくい印象。そんなブルックナーを偏愛する3人のオタクと一人の女性との関りを通じて、生きにくい人たちを描いた物語。
    始まりからオタク感全開でクスクス。いけてないブルックナーも相当イタイ。だけど、読み進めるにつれて、ブルックナーもオタクたちも妙に親近感をもってくるから不思議(笑)
    かっこよくなくてもいい、魂を込めてダサければ。。かな?久々にブルックナー聞いてみたくなった。

  • 社会人のかなり拗らせたクラオタ3人と、彼らの語りに巻き込まれる非正規司書の姫。特にストーリーやキャラに魅力があるわけではなく、ノンフィクションぽいブルックナー伝と、クラオタの有様をさっくり楽しむ作品。160ページくらいなのですぐ読める。

  • ブルックナーオタクの3人組みのブルックナー団と図書館のアルバイトのゆたきがコンサートで知り合ってブルックナーの蘊蓄を披露するというだけの話で,それだけって言えばそれだけなんだけれど,ネットに載せているブルックナーに関する「ブルックナー伝」が面白かった.

  • ブルックナー好きの方からのお勧めがあって購入しました。はっきり言ってブルックナーが好きな人しか購入しないだろうと思いましたね。しかもブルヲタしかこの本を高評価しないでしょう。
    二元中継で話を進めるのはよくある手法だけど、現代も当時の話もラストはあまり盛り上がらず、小説としては頂けない結果になっているのが悔やまれる。これはブルックナーの話だから敢えてどっち付かずの形にしたのか、それとも作者の文調がこのようなものなのかは計り知れないが、次作ではもう少し文学らしい形に仕上げて欲しいものです。

  • 見事にブルオタの話だった。タイトルに興味をもって読んでみたけど…。曲よりもブルックナー本人を普及させようとしてるの?なんなの?ブルックナーにまつわる事件でも起こるのかと思ったら全然違った。

  • イジメの項は少し考えさせられる。

    アントンの見た目から資産家達の娘のお眼鏡に
    敵わないだけでセクハラ扱いされる。
    それが本当でない事が分かってても
    辞めさせられるなど、、、


    やられた方にも隙があったのではないかと

    それを言われると言い出せない。
    それよりも被害者の誇りが問題

    学内悪質暴力 組織的人権侵害などと
    言葉を変えてもいいというのは納得。

    だからこそ
    ハンスリックは批評家として
    余計な力が掛からないように見ようと努力していた。
    最後の指揮シーンについても
    私には分からなかったと。

    しかしブルックナーを批評する人は
    ハンスリックを利用して批評する
    そんな人には愛がない。
    人の威を借りてるだけで
    自分に本当は意見なんてない。
    だからこそ論争、炎上になる。

    そのようなただの批判者にはなっては
    いけないということも心に留めておこう。

  • どうしてこの本を読みたいと思ったのか、いつもの通り忘れてしまったのですが、図書館で予約してあったものです。

    話の中盤まで、心のどこかで「この後何かあるんだろうな」って思ってました。

    うーん、ブルックナー団の誰かが、周りと違うからっていじめられる辛さ、みたいなのを語ってて、いじめって言い方がよくないとか、そういう主張は「うんうん、確かに」と思えたんだけど、全体としては「私は何を読んだんだろう……」となっちゃう感じでした。

  • 星は4つでもいいかも!と思ったんです。
    最後の一文が素晴らしくて。
    でも全体通してブルックナーさんにやきもきしたので、やっぱり3つwww

    やはり芸術家というのは時代に愛されなければ辛いよなぁと思いました。とくにブルックナー伝第4章。

    でも最後のブルックナーの言葉でなんかおぉ!むて思ったというか。
    この人は本当に頭の良いひとだったんだなぁと思いました。

    面白かったです。

  • 作者はこの小説をどういう意図で書いたのだろうか。
    ブルックナーという芸術家を知らしめたいのか、ままならない人生にも何かが生まれる瞬間があるということなのか。

    というか、2ちゃんねるってまだ息してるんだとか思った。
    なお私は現実であの辺の言葉吐く奴は死ねばいいと思ってます。

    なんかよくわからないけれど、とりあえずそんなに卑屈にならんでいいんだよって言いたくなる本でした。

  • Twitterの講談社アカウントのRTで見て図書館で予約し読了。

    想像していたよりはずっとライトだったので少し残念だったけれど、自分の中にある劣等感や、承認欲求みたいなものをじくじくと刺激されるという意味では少しヘビーだと思う。

    特にブルックナー伝(未完)第四章は読んでて非常に辛く、もうあと少しだというのに本を投げ飛ばしたくなった。
    事実を元に書かれているのだろうと思うけれど、本当にこんなことがあったのかと思うと、特別ブルックナーのファンでもないし、弟子でもないけれど「もっと怒って毅然とした態度をとって下さいよブルックナーさん!!」と言ってやりたくなる。
    私ならば指揮棒を投げつけ、譜面台を破壊し、喚き散らしているに違いない……(自分の曲を演奏してもらっている、ということはわかっていても)
    時代的にそういうものだったといえば仕方ないけれど、演奏していた人たちの音楽に対するプライドのなさ(ある意味それがプライドの現れなのかもしれないけれど)、誠実さ、誠意のなさに憤然とした。
    作中作とは言えなかなか腹立たしいものがある。

    ブルックナーを通じて知り合った彼らが今後どうなっていくのか。
    明らかにされていないところが、良いようでいてもどかしくもある。
    もう少しなにか匂わせるものを残しくれても良かったような気もする。
    ただ人生は本当の終わりが来ない限り、音楽のようにここまで、Finとはならないし、何かが成功してもそこで終わり、ということは無いので、これからも続いていく以上描ききらない方がやっぱりいいのかも知れない。

    エピローグ、ブルックナーのラストのセリフに痺れる。

    また本筋には関係ないし、展開上仕方ないけれど、同じブルックナーが好きな人同士とはいえ、オタク風の男性3人に声をかけられ、年齢が同じぐらいとはいえそんなホイホイとあとを付いていくものなのかなぁと、代々木さんの危機感のなさを心配てしまった。

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著者プロフィール

高原英理(たかはら・えいり):1959年生。小説家・文芸評論家。立教大学文学部卒業、東京工業大学大学院社会理工学研究科博士後期課程修了。博士(学術)。85年、第1回幻想文学新人賞を受賞。96年、第39回群像新人文学賞評論部門優秀作を受賞。編纂書に『リテラリーゴシック・イン・ジャパン 文学的ゴシック作品選』『ファイン/ キュート 素敵かわいい作品選』、著書に『 ゴシックスピリット』『少女領域』『高原英理恐怖譚集成』『エイリア綺譚集』『観念結晶大系』『日々のきのこ』ほか多数。

「2022年 『ゴシックハート』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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