猿の見る夢

著者 :
  • 講談社
3.44
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本棚登録 : 991
感想 : 149
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  • Amazon.co.jp ・本 (458ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062202015

作品紹介・あらすじ

これまでで一番愛おしい男を描いた――桐野夏生

自分はかなりのクラスに属する人間だ。
大手一流銀行の出身、出向先では常務の席も見えてきた。実家には二百坪のお屋敷があり、十年来の愛人もいる。
そんな俺の人生の歪(ひず)みは、社長のセクハラ問題と、あの女の出現から始まった――。

還暦、定年、老後――終わらない男”の姿を、現代社会を活写し続ける著者が衝撃的に描き切る!

週刊現代読者の圧倒的支持を得た人気連載が、ついに書籍化!

感想・レビュー・書評

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  • エリートで育ちも良く、仕事も家庭もプライベートもそこそこ上手く運んでる60前のおじさんの話。
    ただこのおじさんの中身がしょーもない、自己中なばかなおやじ。
    その場しのぎで逃げてきただけなのに、自分は上手くやってきたと勘違いして、その皺寄せで物事がうまく運ばなくなるとすぐに周りの女のせい。
    また名前が薄井さんって(笑)薄っぺらさが強調される。
    ここまでクズなおじさんいるのかなって言うクズっぷりを楽しませて貰いました。
    ラストはいつも桐野風。

  • 2020.10.17.読了
    待望の文庫化。
    ダメおじさんのダメっぷりを描いた作品。
    長峰という正体不明の夢見占い師を絡めて、主人公薄井正明が奮闘する。正明は自己中で無責任、スケベで大人げない。ある意味プラス思考の男だが、最後は。。。
     
    だいたいこんな結末だろうなと思いながらよんでいた。どうということもない内容だが何故か先が読みたくてどんどんページをめくってしまう。時計をみたら真夜中だ!

    サスペンスでもない。感動モノでもない。
    ただのおじさんの話。

    さすがの桐野夏生作品。肩の力の入らない気楽な息抜き気分でオススメの作品。

  • 最高に『愛おしい』とな、あは。
    腐りまくったゲスを書かせたら天下一品の腕を久しぶりに堪能した。面白すぎて、読むのをちびちびと。

    東京の某一流私立大を出て、都下に実家を持ち、財閥系金融から横滑りし、女は「抱かれてなんぼ」という目でしか見ないおっさん・・いるいる。
    芥川直木賞で格付けする作品の蹴っ飛ばしたい日ごろの気分も爽快に。

    こういったジャンルって何だろう、無論眉を顰める、舌打ちをして「馬鹿が』というおっさんおばはんは多数いるだろうけれど・・お気の毒に。これこそユーモアの世界だね。
    ラストの「田中御殿」が消え去って✨
    真に白日夢というか…章ごとの見出しが全て動物というだけに、鳥獣戯画の世界だね。

  • 想像以上に面白く、読み始めたら止まらなかった。桐野夏生というより林真理子の下世話な小説を読んでいるような気持ち。
    主人公が本当に清々しいほどのクズで、強欲で好色で自分勝手なおじさん。出てくる女性もみんなクセがあり誰にも感情移入できない笑 
    最近こういうタイプの小説を読んでいなかったので楽しめた。面白かった!

  • 銀行からの出向先で次期社長を夢見る60間近の男性が、様々なトラブルに見舞われていく。

    会社内のセクハラ、長年の愛人、実家の相続を巡る確執など、次から次へと下世話な問題が発生する。加えて、夢で未来を見るという老女を妻が家に連れてきたことから、ますますややこしくなってくる。
    右往左往する主人公を筆頭に、周囲の人たちも常識はずれな面が強調されていて、よくこれだけの面々を揃えたなというほど。

    何より、主人公がことごとく情けない。
    女性と見れば尻尾を振り、お金にも地位にもしがみつき、本人はすべて計算ずくのつもりが浅はかで失敗を重ね、でも反省もなく傷つかないから懲りない。
    現実に側にいたら嫌悪感しかないが、そこは作者の懐の深さで、「これまでで一番いとおしい男」としてすべてを母性愛でくるんで、笑い飛ばしながらさばさばと描いている。
    だから、最初はダメダメ振りにうんざりしていたけれど、徐々に作者の俯瞰する目線と同化して、しょうもない奴の結末を見届けてあげよう、という余裕が出てくるから不思議。
    ある程度の年を重ね、魅力のない主人公を楽しむゆとりのある人向き。

  • 主人公のおじさんが、ご都合主義で、自分勝手で。

    自分にいいように物事を解釈するもんだから、この人は絶対に鬱病なんかとは無縁だわね、ある意味最強なのかも…と思いながら読みました。

    セパ両リーグって言い方、初めて聞いて笑ってしまった。

    言葉に出さないけれど、おじさんの脳内で考えたことが文章となり、おじさんの思考回路がくっきりみえて読んでいてとても面白かった。
    小説ならではですよね。

    でてくる女性の書き方がまた上手で!
    女性の仕草一つが色っぽく艶かしかったり、逆におばさんぽかったり。
    桐野夏生はおじさん目線がどうしてわかるんでしょうか(笑)
    作家ってすごいなーと改めて思いました。

    ドラマ化したら面白そう。
    佐藤浩一なんかでみてみたいなぁ。

  • 女性たちへの応援歌、かなぁ。主人公の男は結局、したたかでしなやかな女たちの手のひらでキャッチボールされていたのだなぁ。でもちょっとかわいく、憎めないちょいワルなオヤジは、魅力的です。

  • 自惚れの強い男が、妄想と欲に駆られ、のらりくらりとその場しのぎを繰り返し、堕ちていく物語。
    誰だって冷静に、客観的に見れば、"占い師の予言"に行き着くのに、人間くさく、馬鹿でどうしようもない「愛おしい男」。
    愛人の懲りなさや亡母の遺産を巡る妻や妹の争いも、「ありそう」だから共感を呼ぶのだろう。

  • 面白かった!
    男のだめっぷりがなんだか憎めず、テンポのよさにあっという間に完読。

  • 私は桐野ファンだが、しょうもない男のしょうもない話。でもその語られる過程は面白いと言えば面白い。主人公の薄井は、名前のとおり薄っぺらい還暦近い男。小心者のくせに狡く、出世欲・性欲、まだまだやる気マンマンで引く。こういう人を書かせたら本当にうまいなぁ。物語は謎の占い師を絡ませて、薄井は転落していく。占い師の存在といい、結局何の話だったのかと?ようわからん本だった。

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著者プロフィール

1951年金沢市生まれ。1993年『顔に降りかかる雨』で「江戸川乱歩賞」、98年『OUT』で「日本推理作家協会賞」、99年『柔らかな頬』で「直木賞」、03年『グロテスク』で「泉鏡花文学賞」、04年『残虐記』で「柴田錬三郎賞」、05年『魂萌え!』で「婦人公論文芸賞」、08年『東京島』で「谷崎潤一郎賞」、09年『女神記』で「紫式部文学賞」、10年・11年『ナニカアル』で、「島清恋愛文学賞」「読売文学賞」をW受賞する。15年「紫綬褒章」を受章、21年「早稲田大学坪内逍遥大賞」を受賞。23年『燕は戻ってこない』で、「毎日芸術賞」「吉川英治文学賞」の2賞を受賞する。日本ペンクラブ会長を務める。

桐野夏生の作品

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