地検のS

  • 講談社
3.35
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  • Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062202930

作品紹介・あらすじ

あの男は一体何者なんだ――?

湊川地検で起きるすべての事の裏には、必ずひとりの男の存在があった――湊川地検総務課長・伊勢。
検事でもない総務のトップがなぜ……。

「絶対悪」が見えにくい現代において、「検察の正義」とな何なのか。元新聞記者の新進作家が挑む、連作地検小説。

感想・レビュー・書評

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  • 連作短編集。5編。
    新聞記者、検察事務官、弁護士、検事、そして地検総務課職員らが主人公として物語は進むが、中心となるのは湊川地検の総務課長・伊勢。彼はSと呼ばれ、次席検事の懐刀としても名を知られている人物であった。伊勢の言動が主人公に大きな影響力を持ち、問題を解決していく。
    地検の事務方を中心においたというのは、かなり異色ではあったが、非常に面白かった。心理的なプレッシャーがうまく描かれていた。続編に期待。

  • 湊川地検の総務部長 伊勢雅行の行動を中心にした物語が5つ.どれも最後の段階で伊勢の行動が的確であったことが証明される筋書きだが,最後の「証拠紛失」が楽しめた.検事の出世欲のはざまで,理不尽な命令に奔走させられる事務官 三好正一が,紛失したメモの所在の調査を依頼される.その過程でやめ検 小野隆太郎から伊勢の経歴を聞かされ,犯人を確定できた正一.人はそれぞれ過去を背負って生きているのだという通奏低音が聞こえる.

  • 初読みの作家さん。

    地検のSこと伊勢雅行は湊川検察の総務課長。
    彼が暗躍する地検が舞台の連作短編集。

    勢いがあるようでないようで、
    途中置いてけぼりにされそうになった。

    けれど、こういう舞台、こういう設定は好きなので、
    次があるなら読みたいと思った。

    「血」のような話がとても好み。

    そして 湊川市は架空の都市ですが、
    たぶんモデルは神戸だなぁと思いながら読んだ。
    人口150万の政令指定都市。
    海があり山があり、地検は地下鉄の駅近く、
    市の東部には酒蔵、居留地あり、
    市中心部から車で北に上がると
    別荘地、スキー場あり。
    県北部には有名な温泉。

    立地も交通網も思い当たるところばかり、
    なんといっても湊川という地名がそのまんま。

  • 湊川地検で案件が行き詰まると暗躍する人物、総務課長・伊勢。事務職にもかかわらず警察、議員にもパイプを持つ怪しさ。さてはスパイか?と思わせるが…。4つの短編で案件は丸く(?)収まったかと思わせておいて最後の5篇目で隠された謎が解き明かされる。5篇目の中心人物、三好の心理描写にヤキモキ。おもしろかった!!

  • 8月-8。3.0点。
    地検のある総務課長の連作短編。
    検事や事務官らと絡みながら、進んでいく。
    過去が明らかになったとき、そういうことか、と納得。

    サラッと読めるが、ラストの短編の結末が尻すぼみ。残念。

  • 謎めいた地検の総務部長・伊勢を中心に据えた連作ミステリ。検事ではなくただの事務方のはずなのに、意外なほどの裁量を持ち恐れられる伊勢。正義をただす検察が舞台のはずなのだけれど、いろいろと政治的なしがらみもやはりあってなかなかにきな臭い印象。そんな中で暗躍する伊勢の姿はどことなしに不気味ですらあるのだけれど。彼が何のために存在するのかという謎は重々しく印象的でした。
    お気に入りは「シロとクロ」。明らかに悪人であると思われる依頼人を弁護し、無罪を勝ち取れそうだという弁護士の苦悩。こういう場合に弁護士は悪者扱いされがちですが、仕事だもの仕方ないよね。正義とは何なのか、悪とは何なのか、という問題を非常に考えさせられる一作でした。

  • Sと呼ばれている湊川地検の総務課長、伊勢。地検のトップでもないのに皆から一目置かれている。5話の連作短編。記者や検察事務官、弁護士などの視線をとおして展開していく。検察の正義とは何か、罪人は悪人なのかなど。面白い内容だったけど、もっと法廷での場面が欲しかった。

  • 架空のA庁・湊川地方検察庁を舞台に、次席検事の懐刀であり、「S」と呼ばれ恐れられている総務課長・伊勢雅行の暗躍を描く5つの連作短編。

    5つの物語はそれぞれ、湊川司法記者クラブの新聞記者、検察事務官、新米弁護士、検事、総務課事務官の目線で描かれる。それぞれの動機で今の仕事を選びながら、日々の仕事に流され自らの正義を失いかける彼らが、事件を通じて伊勢と関わり、ただ法律を四角四面に遂行するだけではない、人としての正しさとは何かを自らに問いかけていくストーリー。

    それと同時に、地検内部の派閥争いや人事をめぐるドロドロとした人間模様も描かれる。
    事件を描くというよりは、伊勢を通じて成長していく者たちの姿を描くという意味で異色の検察小説。

    最終話では伊勢の秘密も明かされ、いよいよ続編に向けて興味が増していく。
    シリーズ第2弾も必読!

  • 法律ってのは何だ?
    法律は人のためにある道具じゃねえのか
    法律を真っ当に扱うってのがどういう道理なのか、自分の頭、経験、コトバで導き出せよ。
    一話目の平田の言葉がこの小説全体を貫いている。
    だがしかし、細かなとこまでしっかり読み切れてないので、最後の三好の正義、三好の正直は何なのか分からない。俺もSだとの言葉をどちらに捉えるか?もう一度読み返す気力は無い。ネタバレを探してみよう。

    ドラマで右京さんが頬をブルブルとブルドックのように震わせて宣う正義に嫌悪感を覚える私は、この作家の感覚は好きだ。
    世の中のカラクリ、力の無い末端の市民だけが法律に則ってガッツリ裁かれる現実。
    しきりと囁かれる上級国民達、この国を支配してる輩。この世の無情を感じてしまう。

  • 表題のSの謎を絡めて展開して行く連作短編集。法治国家日本の下支えである地検の総務課長シロヌシすなわちS。歴代次席検事の懐刀だ。各短編、何れも筆者の経験が深くモノを言う内容、展開でぼんやり読んでいると置いてけぼりを食らい、何か所も読み返した。

    5編目で白髪の謎も含め、湊川地検の主で居続ける理由が読めるのだが横山作品と異なるのは読み手に思惟を委ねているところ。そこは好みが解れるかも。

    Sは正義・親身・真相にも通じ、スパイにも敷衍して行く。登場する人物も多彩~やめ検、小野弁護士の口を通じて色々な情報が漏れ出てくるのが面白い。

    Sが目するのはバッジ。政治資金規正法違反の国会議員立件。
    本上と鳥海の派閥争いで語られる場面を読んでいるとどいつもこいつも人間的魅力ありゃしない・・だが、これか法の現場なのかなとおも思ったりする。

    高橋さん御持ちよりで頬ばる豆大福だけがほっとする

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著者プロフィール

1978年東京都生まれ。上智大学法学部卒業。新聞社勤務などを経て、2013年に『見えざる網』で第33回横溝正史ミステリ大賞を受賞しデビュー。2015年に『事故調』、2021年に「警視庁監察ファイル」シリーズの『密告はうたう』がドラマ化され話題に。本作は地方検察庁を舞台としたミステリ『地検のS』『地検のS Sが泣いた日』と続く「地検のS」シリーズの最終巻にあたる。他の著作に、『巨悪』『金庫番の娘』『事件持ち』『ぼくらはアン』『祈りも涙も忘れていた』などがある。

「2022年 『地検のS Sの幕引き』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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