紙の城

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 149
レビュー : 31
  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062203302

作品紹介・あらすじ

新聞社が消滅する。
東洋新聞は、IT企業からの買収宣告を受けた。経営権がIT企業に移れば、宅配の少ない営業所は閉鎖し、配達員はクビ。ウェブファーストに移行し、ポータルサイトを持って世界に打って出ていくことになる。
社会部デスクの安芸稔彦は、昔ながらの新聞記者だ。パソコン音痴で、飲み会の店も足で探す。安芸は部長以上のみ出席する会議から戻った同期の政治部長に話を聞く。IT企業の社長を裏から操っているのは、かつて東洋新聞に在籍していた記者だった。時代の流れは止められないのか。旧いものは、悪なのか?

感想・レビュー・書評

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  • 図書館で結構待って借りて読んだ。返却もあるので、通勤時間を中心に、1週間程度読了。
    偶然にも先月、新聞社が舞台の映画「クライマーズ・ハイ」を見ていたので、リアルな映像を浮べながら読むことができた。結構分厚いなぁと思っていたのに、映画の様な疾走感♪

    最終章、主要キャラクター2人の言葉が心に残った。
    ●308ページ 安芸の言葉
    「いつも身近にあったものが突然なくなった時、あとで大切だと気付いても遅いからです。私は過去にそのような苦い経験をしているんです。だから大切だと感じたものは絶対になくさないよう守ろうと決めたんです」

    ●313ページ 権藤の言葉
    「お言葉ですが、潤沢な資金と知恵があったとしても、記者の心までは買うことはできません」

    そして、最後の最後、桐島と尾崎の生き生きとした記事が飛び込むシーンで、爽快な気分で読み終われた。

  • ウェブと新聞という新旧メディアの買収劇を絡めた闘いに引き込まれる。
    最後は若干呆気ないが、そこまでのストーリーはなかなか面白い

  • テレビの創成期は親会社の新聞がいて、まだ手探りで試行錯誤を繰り返していたテレビがぶら下がっていた。僕が就職する頃はまだ、新聞社は一流企業には違いなかったが速報性という点でテレビに勝てないことは周知の事実だったし、待遇という面ではグループ会社なのにテレビに大きく水をあけられていた新聞社もちらほら散見していたのも事実だった。
    新興メディアのITがテレビを猛追しだしたのが、2000年代。ライブドアによるニッポン放送買収騒動は2005年。楽天によるTBSの敵対的買収事件は2009年だった。楽天のオーナー三木谷氏は僕よりひとつ年上で、学生時代にマスコミに就職しようとしていた僕とは違い、起業家としてマスコミを乗っ取ろうとしていたことに半ば呆れ、感心した。氏はプロ野球チームのオーナーにもなり、その後も数々の企業を傘下に収め、一方、ライブドアのホリエモンは粉飾決算で実刑判決を受けた。
    著者の本城雅人氏は産経新聞出身だから、ネットニュース(新)VS紙メディア(旧)という物語の構図では当然、紙メディア寄りである。東洋新聞を買収しようとするインアクティブの轟は前述のホリエモンのエッセンスを取り入れた分、キャラクターに既視感もあるが、上場しているテレビ局に敵対的買収をかけて、非上場の新聞社を狙うというのが目新しい。大手広告代理店から転職した知人に聞いたのだが、新聞の一面から四面までの広告欄に出稿できるのは出版社だけだという。旧メディアはお互いに談合し、もたれあい共存しているが、外部から世間の常識を突き付けられたら、本書が指摘したいくつかの身勝手な業界の常識は通用しないし、自由競争に晒されて、すべての企業が生き残れるとは到底考えられない。転職は同業界限定。互助会である。外部からの参入障壁の高さを思い知らされた。
    「お言葉ですが、潤沢な資金と知恵があったとしても、記者の心まで買うことができません」という権藤の言葉にすべての結論が込められている気がした。経済、効率優先。おっしゃるとおり。でも、人は感情や理想で動く。主人公の安芸を慕う安芸会の若手記者たちに新聞メディアの進化を託したい気持ちになった。

  • 本城雅人「紙の城」読了。
    新聞社がIT企業に乗っ取られそうになる。
    なんとかそれを阻止したい新聞記者達が奮闘する。
    結末は然もありなんではあったが、新聞の将来、ネットとの共存、などなど考えさせられる。
    本、雑誌を含め紙という媒体の行方に思いを馳せた。

  • 第3の権力、新聞の未来予想図を垣間見ることが出来る一冊。新聞社間協定、記者クラブ制度、軽減税率など、新聞自体が取り扱い難いセンシティブな内容まで踏み込んでいるのが特徴。
    (1)これだけ新聞離れが起きてもなお新聞に載っている記事は正しいという性善説の下で読まれている。
    (2)人間というのは成功を手に入れる者の顔が見えた途端、その人間の失敗した顔を見たい衝動に駆られます。
    (3)新聞社がインターネット業界に参入して来ていたら脅威だった。新聞社がニュースを売るのではなくポータルサイトの運営に乗り出していたら成長出来なかった。
    (4)新聞社というのは何千人の大所帯ですからね。学歴が高くプライドが高い人間が多い。まぁプライドが高くても本当に優秀なら会社を変えてますけど。
    (5)若い頃は最前線でネタを取る記者が買われるが、デスクになる年齢が近付くに連れ、自分を押し通す記者より上司の意見に忠実な記者が出世していく。
    (6)悔しさって何かに残さないと直ぐに忘れてしまう、いかに身に染み込ませるかの方法を持っている人がビジネスでも勝者になると思います。

  • IT企業に買収されかけている新聞社の生き残りをかけた戦い。
    そこにあるのは記者としての矜持と紙の新聞への思い。それはそのまま毎日届く新聞を楽しみにしている私たちの声でもある。
    確かにネットの情報の方が先に届くし、必要な時に必要なものが取り出せて便利ではある。けれど、そこには出自不明なうわっつらだけの言葉の羅列も多くある。それを取捨選択するだけの目が私たちにあるのだろうか。じゃぁ、紙でモノを読むことって何だろう。ただの文字や情報だけではないなにかがそこにはあるはず、だからこそ私たちは紙の情報を必要としているのだろう。安芸たち記者が必死に守ろうとしていた「新聞」を今日はちょっといつもよりゆっくり読もう。ひとつひとつの記事の後ろにいる彼らの、そしてそれを届けてくれるたくさんの人たちのことを考えながら。
    しかし、これだけの買収を目の前にして、最後はこうなのか、ってところに違和感もあったのだけど、それが短期間にのしあがってきた轟木たちの薄さってことなのか、とも。

  • アナログとデジタルの狭間って感じの今の時代。
    この小説も紙で読んだわけで、なんでもデジタルだと重みが違うよなって思いながら読んでいました。

  •  変わりゆくものへの哀悼と賛歌。
     本城さんの基調。

  • 新聞というものを殆ど読んだことがありません。それでも家には必ず新聞がありました。テレビ欄しか見なかったけれど。良く考えたらそれだけの為に買っていた家も有ったんじゃないかな?
    昔、新聞紙を学校に持っていく時に困った事なんて無かったけれど、今工作で新聞必要なんて言われたらコンビニに買いに行くしかないよなあ。
    と、内容ではなく、個人的にはそんな思い出しかない新聞ではありますが、新聞を毎朝読むような大人に憧れる自分もいます。
    は!そういえばこの感覚って、本を読まない人と読む人の反応と同じなのでは?必要なものだし否定する気はさらさらないという所を鑑みても、本を読まない人の感覚というのは、僕が新聞に対して抱く感情と同じなのか?!うーん新発見。
    そう考えると新たなメディアが目白押しの中、あえて新規に紙メディアに没入していく人が増えるとはとても思えないです。そう考えると出版全体の危機ですねえ、本当に。

    本書は、デジタルメディアに買収される新聞社の奮闘。という簡単な一言に集約されてしまうのですが、作者がそこまでがっつり勉強して書いたわけではないのか、買収話についてさほど突っ込んだ記述がありません。そしてその辺に関心が無い僕には逆に楽しんで読める要因だったと思います。経済小説好きには物足りないのではないかと読んでいて感じました。
    新聞というメディア自体の衰退を示唆していますが、誰もがそうだよねと思っている事なので新味が無いのも弱い。しかし、これから新聞という威厳のある看板を利用しようとする企業が出てくることはあり得る事なので、一企業のお抱えになる事で、ジャーナリズムとしての客観性を保てるのか?という問題提起はなされています。

  • 紙媒体の新聞の存在意義とは?
    現実の朝刊を真夜中2時台に騒音と共に届けている迷惑行為と内容の薄さを思い返し、小説がぬるいと感じた。


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    東洋モーニング
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    ゼロ・オア・アライヴ

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著者プロフィール

1965年神奈川県生まれ。明治学院大学卒業。産経新聞社入社後、産経新聞浦和総局を経て、その後サンケイスポーツで記者として活躍。退職後、2009年、『ノーバディノウズ』が第16回松本清張賞候補となり、デビュー。同作で第1回サムライジャパン野球文学賞を受賞。2016年、『トリダシ』が第18回大藪春彦賞候補、第37回吉川英治文学新人賞候補となる。2017年、『ミッドナイト・ジャーナル』で第38回吉川英治文学新人賞を受賞する。その他の作品に、『スカウト・デイズ』『紙の城』『傍流の記者』『オールドタイムズ』『あかり野牧場』『終わりの歌が聴こえる』など。

「2021年 『時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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