- Amazon.co.jp ・本 (426ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062203340
作品紹介・あらすじ
「あなた、まだ、自分が生きていると思っているんですか?」
編集者の須賀は作家と渋谷で打ち合わせ中、スクランブル交差点で女の子を襲うゾンビを目撃する。各地で変質暴動者=ゾンビの出現が相次ぐ中、火葬されたはずの文豪たちまで甦り始め……。
デビュー10年目の極貧作家K、久しぶりに小説を発表した美人作家の桃咲カヲル、家族で北へ逃げる小説家志望の南雲晶、区の福祉事務所でゾンビ対策に追われるケースワーカーの新垣、ゾンビに噛まれてしまった女子高生の青崎希。
この世界で生き残れるのは誰なのか!? 芥川賞受賞で話題を攫った羽田圭介が現代日本を撃つゾンビ・サバイバル問題作!
感想・レビュー・書評
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もともとゾンビが好きだ。ロメロ監督のゾンビ映画もみるし、それ以外の超B級ゾンビ映画もみるし、ゲームでバイオハザードもやるし、海外ドラマのウォーキング・デッドも最新シーズンまで、みている。だから、本屋で『コンテクスト・オブ・ザ・デッド』を見かけた時、すぐに買うことにした。真っ赤な表紙に真っ青な顔色の女の子の写真。アメリカ映画っぽい「DEAD」の文字。しかも作者は羽田圭介さん。
ゾンビって映画やドラマやゲームのイメージで、小説では読んだことなかった。マンガでも最近はやってるのがあるけど、わたしは読んでない。映像なし、視覚情報なしで、どうゾンビが描かれるんだろうと思ったけど、想像以上に面白かった。
日本人の妙に察しがいい、順応性の高い感じがよく出ていて、自分でも実際こういう行動をとるだろうな、と想像できた。銃社会じゃないけどどうするのかなと思ったら竹槍だし、しかも日本が誇る武器にまで昇華させちゃうし。「あれ、ゾンビじゃね?」ああ言いそう。
ゾンビものだからってサバイバルや乱闘シーンに終始するわけでもなく、むしろ「小説」を巡って、内省を深める静かさがあった。ただし、一度でも小説を書きたいと思ったことのある人間にとっては、その静かな内省シーンこそが、ひりひりと痛みをもって突いてくる。ゾンビになる文脈。作中の創作論でがんがんハードルをあげておきながら、作者の羽田さんは、見事にそれを超えたんだと思う。こんな小説読んだことない、と思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
【概略】
変質暴動者=ゾンビが出現する世界の中、日本国内でゾンビの増加、人間への影響が増す中、編集者・デビュー10年目の売れない作家、寡作の美人作家、小説家志望の若者、福祉事務所につとめるケースワーカー、ゾンビに噛まれた女子高生、それぞれがそれぞれの立ち位置で、それぞれの文脈を背負い、ゾンビから逃げ、時に立ち向かい、時に共存する。どのようにしてゾンビが生まれ爆増したのか?この世の食物連鎖の頂点は取って代わるのか、はたまた・・・。芥川賞受賞作家によるゾンビ世界を下敷きにした日本文化の風刺作。
2019年11月20日 読了
【書評】※若干のネタバレ含む
自分は、無類のゾンビ好きである(但し、ウォーキングデッドを除く)。そういったこともあり、本屋さんでぶらついていてタイトルに目がいってしまい、ジャケ買いならぬタイトル買いしてしまった本作。羽田圭介さんの作品を読むのは、実は本作品がはじめて。
無類のゾンビ好き、であるからして、「ゾンビとはすべからく〇〇である」「最近のゾンビは、〇〇だ」などいった文脈は、わかる部類に入る。しかもタイトルが「コンテクスト・『オブ・ザ・デッド』」というタイトル・・・ゾンビが登場する。読みながら脳内では、勝手にゾンビに関するストーリー・フローチャートが構築されて、それに沿って文章を進めていったんだよね。それが第一部。
ところが実際に、南雲晶という登場人物が、元AV女優に向けて「今、自分が見ているモノから判断をする(=過去の文脈に頼らない)」といったセリフを自身に投げかけたり、女子高生高崎希という登場人物が同級生が企画しているデモに加わらない決断をするあたりから「うん?おかしいぞ?普通のゾンビものとは違うぞ?」という違和感が。そりゃそうなのだけどね、ただのゾンビものを書くこと自体、羽田圭介さんじゃないだろうからね。
第二部の中盤あたりからやっと「『コンテクスト』・オブ・ザ・デッド」の意味が色濃く出てくる。自分自身もそうだけど、最近はストーリーを自身のコンテンツにくっつける意識が本当に流行していて・・・自分自身も、その意見に大いに賛成で、なんとかしてストーリーを作ろうと思案している。このストーリーはコンテクスト(文脈)と読み替えることも可能なのだよね。「いかに内輪ウケを増やすか?」という斜に構えた書き方にもできる。このコンテクスト=文脈に、この作品は違った角度で切り込んでいるのだよね。その下敷きとして文脈が積み上がっている「ゾンビ」というコンテンツを利用したというね。ゾンビって、どんな他ホラーキャラも肩を並べることができないぐらい多種多様な分派がされていて、綿々と、脈々と(まさしく「脈」!)、過去から現在まで「ゾンビとは?」という川ができてるからね。
そこに、おそらくは羽田圭介さんご自身が色々と抱えているであろう出版業界・文壇・・・いわゆる物書き界隈の沢山の文脈、そして、日本人の文脈への依存・・・そもそもハイコンテクストである日本語という言語の特質・・・そういったものが加味されて、この作品に昇華されたのだろうねぇ。
「ストーリー(文脈と読み替えてもいい、ここでは)」を重視してきた自分にとっては、少しショックだったし、基本に立ち返らなくては・・・と、身につまされた思い、あったね、正直(笑)もう少し正確に自分の感情を描写するなら、クリエイターの部分として身につまされ、そしてプロモーターの部分としては相反する感覚だった。
ただこの作品、これこそが「ゾンビ」という文脈を下敷きにしているから読者の反応は大きく分かれるだろうなぁと思った。純粋に「おぉ、羽田圭介がゾンビものを書いたか!」なんて感じで「ゾンビ物語」を楽しみたい・・・という文脈を期待した読者にとってはマイナスな展開だろうなぁ。逆に言語や文化の違いを楽しめるような読者からすると、「おぉ、そうきたか」というニヤリとした感覚、湧き上がると思う。読み手を選ぶ作品だよね。自分は両方とも楽しめる立場だったからよかったよ。
最後に本作品で文脈に苦しむクリエイターの箇所、それを全て「トーストマスターズクラブのコンテストスピーチ」と置き換えて読むと、とても興味深い印象になったよ。傾向と対策の向こう側に・・・どうやっていけるか?そんなことを考えるキッカケになったよ。 -
「コンテクスト・オブ・ザ・デッド」
あなた、まだ、自分が生きていると思っているんですか?
路線バスZ、始まりましたね。キャラは相変わらず立ってましたが、声も相変わらず聞き取りずらかったですが、頑張っておられました。番組レギュラー開始に合わせたような成功者Kの発売、さすがです。そんな羽田圭介によるゾンビ柄小説です。
ゾンビと言えばパニック。xxxオブ・ザ・デッドに連なるタイトルに加え、青白い顔色にがっつりしたクマのある女子高生?の表紙、おまけに血をイメージしたかのようなレッドとなると余計そうかなと。でも、違いました。先入観は怖いですね。
ゾンビは急に発生し、ふらふら歩き噛み付こうとする。意思はない模様。噛まれたらゾンビになる等ここら辺は、ゾンビ映画の通り。でも、パニック度はそこまで高くない。中盤以降から人間対ゾンビの戦いが高まりますが、それまでは「ああ。最近ゾンビいますよね」程度に落ち着いてます。噛み付こうとするけどふらふらしてるから避けれるなら大して気にしない人々、なんでや?となる設定です。なので、パニック系を期待して読むと萎える可能性があります。
また、どんなにゾンビが出ようとも、物語の中心は、物書きのあれこれなので、パニック度は更に薄まってる印象です。
編集者の須賀が、作家Kに心の中で言い放つ「あんた、まだ生きているつもりなのか?」は、随分売れてないのに自分の立ち位置を理解できず、まだ文壇の世界で生きている(しかも受賞当時を忘れられず)と思っていることへの痛烈な皮肉は、強烈です。この須賀、作家Kを始め、久しぶりに小説を発表した美人作家の桃咲カヲル、家族で北へ逃げる小説家志望の南雲晶と物書きが登場人物に多く、各々の視点から文壇が語られます。なので、ゾンビ小説よりは、文学チック。
面白いのは、過去の文豪がゾンビとして復活することやワナビーゾンビという物書きだったひとが噛まれてないのにゾンビになるという設定。ゾンビに噛まれてしまった女子高生の希は、何故か噛めばゾンビを治せる、ただ確実性はなく失敗したらゾンビは爆死というのも普通のゾンビ設定ではないですよね。ここらへんが羽田圭介のオリジナリティなのでしょうか。ゾンビによって復活するKや最後は、受賞書評で締める辺りもパニック系ではない形で書きたかったのが伝わりました。ただ、ボリュームは400Pと若干間延び感があり、もう少しコンパクトにした方がテンポも出て良かったのではと感じました。
という訳でパニックを期待したら肩透かしくらう可能性大と思います。だから、この世界で生き残れるのは誰なのか!とかの紹介はやめたほうが良い気がしますw。あくまで中身は、物書きの世界に対するあれこれ(皮肉もあり)ですから。 -
羽田ワールド全開の不思議な小説。
交差点を渡りきり、騒ぎを覗こうと須賀が少し人をかき分けるとぽっかり空いた輪の内側へと躍り出た。そして、輪の中心にいるそれと目が合った。
・・・
彼がなにであるかを理解した。
「あれ、ゾンビじゃね?」
(本文より)
小説家や出版業界、編集者に対する痛烈なアンチテーゼ。
何故ゾンビ化した人達が大量に発生する中、バスが動いてたり、コンビにが開いてたり(その人達は働いてるって事)するのか、矛盾する事だらけだけど、
羽田くんの本。何冊か読んだけど結構きらいじゃないんだよね。
contextとは
(文章の)前後関係、文脈、脈絡、コンテキスト、状況、環境 -
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2018/03/12
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2018/03/12
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中盤くらいまではとても楽しめた。もしかしたら伊藤計劃の「屍者の帝国」っていうのはこういう物語だったんじゃないのか?とまで思ったが、終盤にいくにつれて一般論が文学論に収束していく様が読んでいてつらかった。また、付和雷同、画一的、既視感、の範囲が広がりすぎて、そこかしこで、それを言ったら生きている人間は全員がゾンビにならなきゃダメでしょ、ゾンビにならなかった人はその範疇にいないの?という素朴な疑問が解消できなかった。
ただ、内容自体はとても面白く、エンタメ的なストーリー運びにも引き込まれた。他の作品も読んでみたくなった。 -
読まずに返却。
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たしかに他人のレビューも読んでしまう。
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読み終わったという印を全部忘れてた。