八月は冷たい城 (MYSTERY LAND)

  • 講談社
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本棚登録 : 720
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062203456

作品紹介・あらすじ

夏流城(かなしろ)での林間学校に初めて参加する光彦(てるひこ)。毎年子どもたちが城に行かされる理由を知ってはいたが、「大人は真実を隠しているのではないか」という疑惑を拭えずにいた。ともに城を訪れたのは、二年ぶりに再会した幼馴染みの卓也(たくや)、大柄でおっとりと話す耕介(こうすけ)、唯一、かつて城を訪れたことがある勝ち気な幸正(ゆきまさ)だ。到着した彼らを迎えたのは、カウンターに並んだ、首から折られた四つのひまわりの花だった。少年たちの人数と同じ数――不穏な空気が漂うなか、三回鐘が鳴るのを聞きお地蔵様のもとへ向かった光彦は、茂みの奥に鎌を持って立つ誰かの影を目撃する。閉ざされた城で、互いに疑心暗鬼をつのらせる卑劣な事件が続き……? 彼らは夏の城から無事に帰還できるのか。短くせつない「夏」が終わる。

感想・レビュー・書評

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  • 酒井駒子さんのイラストを見るために単行本へ
    『7月に流れる花』に比べると不気味さが際立つ挿入絵

    巻末にある作者の「わたしがこどもだったころ」
    誰にでもある男の子の部分として謎、秘密、ミステリー、謎解きのわくわく感を挙げている。
    解きたい謎のことを考えることは、“「生きる」ということと同じことなんだな”と。

  • 夏流城に招待された四人の少年の夏休み。緑色感冒という過去にはパンデミックになったこともある病気の隔離、治療、研究をしている城だ。そこに招待される子どもは、隔離されている親の死期が近いということだ。光彦も招待され、母親の死期が近いと知る。この病気の最期は悲惨な姿になるので残される子どもは会うことはできず、亡くなる患者からだけ子どもが見られる。この城に感じる違和感はなんだろうか。

    「七月に流れる花」の続編と知らずに、こちらから読んでしまった。状況を理解するのに時間がかかってしまった。そして、新種の感冒、パンデミック、死期に会えないなど、コロナ禍の今と似たところが多く、ちょっとひいてしまった。

  • 『七月に流れる花』で残った謎の数々が解き明かされています。みどりおとこ、想像してみるとちょっとどころか結構おどろおどろしい。大人の今読んでよかった。なかなかのトラウマになりそう。でもこの雰囲気が、どうしようもなく好きなんだよなあ。

  • 光彦は夏流城の林間学校へ参加していた。
    みどりおとこに差し出された招待状の意味を、夏流に住んでいて知らないものはいない。母親が緑色感冒に侵され、施設へ隔離されてから覚悟はしていたはずなのに、光彦の気持ちは考えるほどドライには成れなかった。
    光彦のほか、幼馴染の卓也、どこか中世的な少年幸正、体の大きな一見おおらかそうな耕介の四人はともに理不尽なひと夏を過ごすこととなる。彼らは城に到着してすぐ首をおとされたひまわりを見つける。ご丁寧に人数分4つ並べられたひまわり。そして彼らの周りで悪戯では済ませられない事件が起こり始める。

    7月よりおどろおどろしかった。というか途中までホラーへまっしぐらだった。ラストでころりと感動してしまったけれど。蘇芳を主人公にした物語がいつかでたらいいな。もちろんそっとミチルや光彦もでてほしい。

  • 七月に流れる花のB面。
    同時期の男子のお話。
    七月に登場する佐藤蘇芳の従兄弟が主人公。
    こちらは始めからお城やみどり男の県は明かされています。
    時々蘇芳と光彦は待ち合わせ、互いの近況を報告しあっています。
    七月に比べると不穏な雰囲気が増している。
    挿絵もどきっとするものが多い。
    ファンタジーであり、ミステリー。
    両方読んで納得です。

  • ミステリーランド、ラストの刊行本。ところどころ「??」な本もあったけど良いシリーズだった。
    今読んでも面白い本が多かったけど、やっぱり少年少女の年頃に出会いたかったシリーズ。

    舞台は「七月に流れる花」と同じ夏流城で、林間学校に集められた男の子サイドの話。舞台が同じだけでなく、同時進行のB面らしい。
    蘇芳といい幸正といい、この状況に慣れてる子どもがいることがつらい。そら幸正もああなるよ…

    七月〜に比べるとだいぶサスペンス?色が強くて、緊張しながら読んだところも多かった。ていうか夏の人の真相(蘇芳の予想)、グロすぎないか!?鳥肌立っちゃったよ。
    しかし蘇芳、七月〜でミチルの面倒を見て亜季代の件の対応をもして、八面六臂の大活躍をしながら両親を亡くして、更に光彦の相談にまで乗ってたのかよ〜〜〜超人!?気が紛れるという蘇芳の言葉が本心からのものだと救われる。蘇芳にも気休めがあってほしいので。

    ていうか結局、初日の不気味なひまわりは何のメッセージだったの?

  • 七月に流れる花とまた違う角度から見た(七月のの男の子版みたいな感じ)物語。

    七月と違い、今度は鐘がなった時の行動の意味もわかっています。

    ただ、なんでこういう事をしないといけないのか?もしかしたら、大人たちが何か仕組んでいるのではないか?という感じで進んでいきます。

    七月で、壁の向こうにいたのは誰か?というのが分かります。

  • 謎の病に罹った親が最期を迎える夏、子どもたちはみどりおとこに連れられて城へと行く。
    閉塞感と疑心暗鬼に彩られた、いかにも恩田陸な物語。不条理な真実が想像の向こうにある理不尽さ。
    この怖さは書かれた当時は思いも寄らぬ重みをこの一年で増しただろう。

  • 『七月に流れる花』と一対になった物語というか続編のようなもので、『七月〜』を先に読んでおくべき。こちらを先に読んでしまうと、『七月〜』がすべてネタバレしてしまう。
    林間学校に行った男子たちの話で、こちらは林間学校に呼ばれた理由はみんな知っているが、不穏な事件が続き疑心暗鬼になってゆく。
    『七月〜』で疑問だった点が少し解明されたが、みどりおとこの真実はかなり怖い。

  • 世界観そのものを謎とした『七月』だったけれど、その状況が改めてしっかりと認識された上で物語を作られると、少年少女にはあまりにヘビーな状況だったのだな、と痛感させられた。
    『七月』は状況そのものが謎なためファンタジーに近い印象だったけれど、状況が明らかになっている『八月』では、ホラー+ミステリ要素が強めになっている。
    同じ世界観でこれだけテイストの違う話を作れるのはすごいと思った。
    そして最後に明かされる真相は、やはりこれはミステリーランドだったのだな、と痛感させられる。決して子供向けでは無かった…。

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著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

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