人間と機械のあいだ 心はどこにあるのか

  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062203852

作品紹介・あらすじ

「生身の肉体」は「人間」の条件から外れつつある――石黒浩

シンギュラリティとは、人間が変わっていくことである――池上高志

数年後、われわれの世界認識は今とどのくらい変わっているだろうか。
人工生命やアンドロイドと暮らす未来は、すぐ近くまで来ている。
人間の制約を取り払い、なお「人間」であるとはどういうことか?
爆発的な技術進化の時代の、「明日」の考え方。

感想・レビュー・書評

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  • ワシには難しくて分からん。(キッパリ)。
    でも面白い。(スッキリ)
    このアンドロイド、生命っぽいと
    決めるのは数値条件なのか、
    観察者の主観なのか、と対談してるところで、
    ちょっと喧嘩してる感じになってる
    ところ、この本読んでて一番心が動きました。
    私の心が、です。
    観察者の私が感じるところの 私の心が、です。

  • 生命に関してのポエムとして大変おもしろかった。特に池上高志さんの意志が時間を遡るような形だとか、荒川さんの話だとか。でも、わかったと思った瞬間に消え去る感じの理解。それぐらいがちょうどいい感じもするけど。

  • 池上先生と石黒先生による「生命感」の対談+記事。
    正直難しくて、半分ぐらいわかったような、全然わかっていない様な気になる。

    ただ、示唆にとんだキーワードが多く、大変刺激になった。
    一番響いたのは
    「自己意識は、記憶を参照する主体だ」という石黒先生の言葉だ。これはみた瞬間ビビビと来た。

    確かに記憶がなければ意識は生まれない。
    そして記憶を意識することで客体としての「自己意識」が生まれて来ている気がする。

    (赤ちゃんや、認知症の方に自我を成人より感じないのは、そこに記憶が定着しておらず、それ故に自己意識をうまく立ち上げられないのだろう。ここでいう記憶は無意識、意識両方ありそうだ。)

    生命は、内部の構造の秘密というより、観測者の問題だという提言も興味深かった。

    # リベット、下條さんの実験
    => 逆行性遡及(ポストディテクション)の発見
    赤、格子、緑の紙を順に見せる
    格子を見せた時に磁気刺激パルス(TMS)を視覚野に与えると、「緑色」が見えたと錯覚する。
    = 心的時間順序は、逆行して編集される!!

    また、時間をおいて再読したい一冊。

  • 人間と機械のあいだ 心はどこにあるのか
    2020.10.23.読了

    人と関わるロボットを研究する石黒氏と、人工生命の研究を行う池上氏の共著。

    まえがきでも述べられているが、石黒氏は「人間の日常生活における様々な行動を注意深く観察し、それをロボットにプログラムしていく。」一方、池上氏は「生命らしい振る舞いを生み出す原理を探索」している。
    一見、同じ研究を行なっているように見えて、両者のアプローチが全く異なっているのだ。

    これは二人の文章にも顕著に現れており、アンドロイドの心について、全く異なる目線から述べられている。

    石黒氏は、心とは「社会相互作用に宿る主観的現象」とし、社会において共有されるものとする。
    つまり、心とは社会の中で形成されるとしている。

    一方、池上氏はアンドロイドの人間性を、認識の観点から論じている。
    また、人工生命研究には「中間層」(例えば、テレビは近すぎても遠すぎても、画面に何が映っているか分からない。画面に映るものがちょうどよく見える位置、それが中間層と説明されている。)が存在するとしており、下のレベル(原子分子などの法則レベル)によらず、中間層を再現することが生命の原理の理解につながるとする。


    もっとも興味深かったことは、アンドロイドや人工生命研究、つまりは技術開発が、人間の理解に繋がるということだ。

    理科学的な研究であっても、「人間とは何か?」という、もっとも単純で深遠な哲学的な問いに行きついてしまう。

    私たちの生きている間に、人工生命が完成することはできるのだろうか。

  • 「人工生命」とは?

    生命に見えるものを作るのではなく、人の背後にあるものやシステムの志向性にこそ「生命らしさ」が生まれるというアプローチ。

  • 「人間とは何か」「生命とは何か」を問い続けていくと、最後は(副題にあるとおり)「心とは何か」にたどりつくのだろう。これまでも多くの思想家がこの問いに取り組んできたが、本書の著者である二人は、それぞれ独自の実験により、その問いを検証してきた。石黒が、人間の心身をできる限り機械に置き換えようとする一方で、池上は、多くのセンサーを備えた自律的な装置に最小限の規則を与えることで、生命や心にあたるものを生み出そうとする。正反対のようにみえる両者の試みはしかし、そのどちらも、他者としての人間の存在なしには、心という現象はありえないことを示している。どちらの試みもおもしろいが、人間の思考力・計算能力を超えたコンピュータの力を駆使して、これまでの「生命」「心」概念から自由になろうとする池上の議論は刺激的だ。

  • 心はどこにあるのか、ということで哲学的な問題を期待されたあなた。残念!メインではありません。ただ考え方としては沢山出てくるので読む価値ありです。

    刺激を避けながら適当な行動を見つける、という機械人間(?)オルタの仕組みが非常に興味深かったです。また、生命は中間層にあるという考えも、なるほどと思わされました。

    固有名が沢山出てくるので、何言ってるか分かんないところが沢山あります。雰囲気で読むのをお勧めします。ただ本当に面白い考え方が沢山載っていたので、もっと変にまとめようとせず、ぐだぐだでいいから言葉を紡いで欲しかった感はあります。スッキリまとまりすぎていて、自分の理解が不安になります。

    また、これは何をテーマに何について語ってるところなの?という読みにくさがありまして、やっぱり「ふーんふーん、そうなのね〜」とやんわり雰囲気だけしか掴めない点も多かったです。

    総じて、読んで良かった。まだ僕たちにも分かってないんだけどね、って言ってる研究者様の頭の中を覗かせてもらったような本になってます。

  • 14:抽象的アプローチで生命の創発を探る池上、実際にアンドロイドを製作するというアプローチで人間性に迫る石黒の両者による「機械人間オルタ」の試み、それを通して「生命とは」「人間とは」に言及した本。
    天才どうしの対談とあって、ついてくだけで精一杯、なんだけどこれは繰り返し読みたい。資料として図書館で借りてきたけど、付箋を貼りたいがために買い直した。たぶん、一部の人からすればとんでもなく不遜な試みなんだろうけど、めちゃくちゃ面白かったな……。

  • まるで、哲学史を辿り直すようだった。いわば、石黒浩が、「我思う故に我あり」のデカルト、あるいはヘーゲル、ニーチェ。池上高志がライプニッツ、ベルクソン、ドゥルーズ。いわば相入れない二人が、共同開発に取り組んだ意義は大きい。

  • 二人の科学者が人間とは何か、生命とは何かについて最先端の研究をもとに、対話も含めて深い思索をめぐらせます。正直、理解が難しい内容でしたが、お二人とも具体的な研究成果、例えば機械人間オルタを通じてお話をすすめてくれるので読了はできました、というレベルです。一方、本書に刺戟を受けてぼんやりと考える機会ができました。限りなく人間に似せて造るとそれは人間なのか。どの程度似ると意識が芽生えるのか。構造、代謝、増殖の三つが実在の物体でなくても、現象の再現ができればそれは生命なのか。人工頭脳(不完全だったり、自意識をもっているのか不明瞭だったりしても)で脳を代替した人の人格はその人のものなのか。

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著者プロフィール

1989年東京大学・理学博士(物理)。1990-91年京都大学基礎物理学研究所・研究員。1990-94年神戸大学自然科学研究科・助手。1994年より東京大学大学院広域システム科学系・教授。専門は複雑系の科学、特にロボットやコンピュータを使って生命現象を探る研究を行なうほか、メディアアートの分野でも活躍。

「2011年 『娘と話す 数学ってなに?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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