白い衝動

著者 :
  • 講談社
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レビュー : 32
  • Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062203890

作品紹介・あらすじ

小中高一貫校でスクールカウンセラーとして働く奥貫千早のもとに現れた高校1年の生徒・野津秋成は、ごく普通の悩みを打ち明けるように、こう語りだす。

「ぼくは人を殺してみたい。できるなら、殺すべき人間を殺したい」

千早の住む町に、連続一家監禁事件を起こした入壱要が暮らしていることがわかる。入壱は、複数の女子高生を強姦のうえ執拗に暴行。それでも死に至らなかったことで、懲役15年の刑となり刑期を終えていた。

「悪はある。悪としか呼びようのないものが」

殺人衝動を抱える少年、犯罪加害者、職場の仲間、地域住民、家族……そして、夫婦。
はたして人間は、どこまで「他人」を受け入れられるのか。

社会が抱える悪を問う、祈りに溢れた渾身の書き下ろし長編。

感想・レビュー・書評

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  • 第20回大藪春彦賞受賞作品。
    スクールカウンセラーの千早のもとに、高校生の野津が相談に来て、「人を殺さずにはいられそうもない」と打ち明ける。また、同じ街に「関東連続一家監禁事件」を引き起こした入壱が出所し、住んでいるとの噂が。被害者の叔父・白石は、千早の夫・紀文がパーソナリティを務めるラジオの生番組で入壱の現住所を話してしまい・・・
    人はどこまで人を許せるのか。夫婦、子供、友人・・・理解をすることができれば、考え方が相容れなくても共存が可能なのか。その考え方が、あまりに自ら考える”常識”とかけ離れていたら・・・
    考えさせられる一冊だった。

  • スクールカウンセラーの千早を訪ねてきた少年は、人を殺したいと思っていると告白した。
    千早の住む街に、刑期を終えた凶悪犯が暮らしているという噂が広まる。

    他人を受け入れるということについて、しみじみ考えさせられる話でした。
    私は凡人の一般市民なので、入壱が同じ街に住んでいたら、やっぱり嫌だなと思ってしまうし、まだ犯罪を犯してはいなくても、その恐れのある人に対して心を許すことは出来ないなと思います。
    千早だっだから、排除ではなく包摂を考えたということにしっくりきました。

    興味深いテーマで、出会えて良かった。

  • スクールカウンセラー千早のところに少年が相談にやってくる。「僕は人を殺してみたい」。その少年秋成と千早、同じ町に暮らす入壱という前科者の男。いろいろな人が共存していけるのか、という話。とても引き込まれて読んだが、最後は何を言いたいのかよくわからなかった。

  • 純粋な殺人衝動。それを受け入れることは出来るのか?受け入れるとはどんなことなのか。私立の一貫校の高等部でスクールカウンセラーを勤める奥貫千早は、ある一人の生徒と出会う。その頃学園で育てていた山羊が傷つけられる事件が起きていた。彼は、山羊を害したのは自分であり、人を殺したいと思っていると千早に告げた。

    非常にしんどい読書体験だった。上手に主人公に没入させられてしまったので住民たちの憤りが怖かったし、腹立たしかった。一歩踏み違えた途端に異端になってしまう恐怖。悲しみ。それはよく分かるのだけど、受け入れたいと思う主人公の衝動をどうしても理解したいと思えなくて、相反する気持ちが辛かった。なかなか強烈だったなあ。

  •  スクールカウンセラーとして働く奥貫千早は、高等部1年生の野津秋成に殺人衝動を打ち明けられ、そして学園で起こった山羊殺しについても自分がやったと打ち明けられ、戸惑う。彼が言っていることはどこまで本当なのか?そして同時期、千早の夫でラジオの仕事をしている夫から、千早の住む町に、複数の女子高生を惨い方法で殺して懲役15年の刑に服して出所した男・入壱要が住んでいると聞かされる。

    絶対悪というものは無く、排除ではなく共生・包摂が大事だと信念をもつ千早だが、入壱や野津、かつての師や夫の言動に翻弄され、自問自答を繰り返す。ミステリーの部分はあるけれど、問題提起や精神論的な話がかなり多め。千早の考えはやっぱり理想論ではないかと思ってしまうなぁ。

  • サイコパスとの共存はできるのかという思考実験的な小説なのかな。
    現実的にも排除と人権との対立の構図になるだろうが、身近になるに従って、理性より感情が勝っちゃうよね。どうしても。

  • いろいろと思うところはあるのだけど、このいろいろ思わせることに意味があるのかも。
    常識では考えられないような凄惨な事件を起こした者と、これから罪を犯しそうな者。社会の中で彼らと共に生きていくことはできるのか、もしくは共に生きていくべきなのか。
    人が人に対して「理解できない」ときに恐怖を感じる。純粋に「人を殺したい」というだけの衝動は、その最たるものだろう。まっすぐな道の向こうから誰かが歩いてきたらきっと恐怖で顔が引きつる。

  • なんともいえず、いろいろなことを考えさせられてしまうミステリ。犯罪者の更生、というのはよくあるテーマではあるのだけれど。それ以前に、もともとの「性質」がある場合いったいどうすればいいのか、というのはとんでもなく難しい問題だなあ、と悩まされます。
    この作中に登場する、殺人犯でこそないもののとてつもなく残忍な犯行を行った人物と。一方で充分に理性的であるにもかかわらず、殺人衝動を抱える人物と。いったいどちらが社会にとっての「危険」であるのか。もちろんどちらも「異分子」とされてしまうのだろうけれど。自覚があるだけに、そういった衝動を止められない彼らは悲劇的に思えます。いったいどうすれば救われるのか。
    そして主人公の抱える問題もまた……うわあ、そういうことだったのか。

  • 小中高一貫校でスクールカウンセラーとして働く奥貫千早。
    千早のもとに現れた殺人衝動を抱える高校生・野津秋成。
    一方、千早の住む町には、複数の女子高生に強姦のうえ残虐な暴行を加え、15年刑期を終えて出所してきた入壱要が。

    人は、どこまで「他人」を受け入れられるのか、また受け入れなければならないのか?

    私は、できるなら遠ざかっていたい。
    性犯罪者の近くになんて住みたくないし、家族にも住ませたくないし、近寄らせたくもない。

    もし、息子が殺人衝動を抱えていたりしたら・・・。
    考えたくないけど、隔離された空間で、息子に殺されてあげて、息子はそのまま餓死・・・とかね。

    包摂とか、わかるけど・・・誰も責任取れないじゃんって思うし。

    殺人衝動も性犯罪も、病気なんだから、絶対的に安全とか、誰も保証できないんだから・・・無理だよぅ。。。

  • 考えさせられる内容でした。
    スクールカウンセラーの千早。相談者の秋成。そして刑を終えその街に住み始める入壱。
    様々な問題が起きて、その中で成長していく千早。
    結局結論なんて出せないし、これはそんなに簡単に解決できる問題でもない。
    どこに行きつくのかと思いながら読み切ってしまいました。

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著者プロフィール

呉 勝浩(ご かつひろ)
1981年青森県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒業。2015年、『道徳の時間』で第61回江戸川乱歩賞を受賞。2018年『白い衝動』で第20回大藪春彦賞を受賞し、吉川英治新人文学賞候補にもなった。

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